しゃちまる☆からおけにいく~うたのひろば~
――まるちゃん幸せけいかく:からおけのまき
■
ぴよぴよの朝。
しゃちんくんの中で、ひとつの作戦が動いていた。
(まるちゃんを、もっと幸せにするお)
ノートには大きく書いてある。
まるちゃん幸せけいかく~うたのひろばにいく~
「まるちゃん!」
「なんだお?」
「今日は、うたのひろばに行くお!」
まるちゃんは、ぴくっとする。
「……からおけ?」
「そうだお!」
「い、いいのかい……!たかいお!!」
「へいきだい!しゃちんくんはおかねもちなんだい!!」
しゃちんくんはドンと胸をはった。
嘘でした。
普段はしょくひをきりつめるはりぼてしゃちん君です。でもまるちゃんのためならいくらでも奮発しちゃうのです。
まるちゃんはちょっとだけ、もじもじ。
でも、目は少しだけ楽しそう。
「いくおーーーーー!」
■
まるちゃんクリエイトのお星にのって移動しました。
ブーン、ブーン。
そして、とことことことこ。
二人は、にぎやかな建物の前に立ちました。
色のついた看板。
階段をのぼると、受付のおねえさんがにこっとする。
「いらっしゃいませ〜」
しゃちんくんは元気に言う。
「二人だお!」
部屋の番号を書いた紙と、小さな機械を受け取る。
とことことことこと歩いていく。
コップと、飲み物。氷がからん、と音を立てる。
「やっぱり……この感じ、すきだお」
ドアが閉まる。
外のにぎやかさが、すっと遠くなる。
部屋の中は、少しだけ暗くて、
大きな画面だけが、やわらかく光っている。
「……なんか、ここだけ別の場所みたいだお」
まるちゃんは、そわそわしながら座る。
「いいところだお」
しゃちんくんは、どこか得意げ。
テーブルには、飲み物。
氷が、からん。
「まずは、しゃちんがいくお!」
しゃちんくんは立ち上がって、
マイクをぐっと持つ。
音楽が流れる。
「よーーーーし!!」
元気いっぱい。
ちょっとズレる。
でも止まらない。
「ら〜ら〜〜〜〜!!」
まるちゃんは、思わず笑う。
「しゃちん……なんか自由だお……」
「自由がいちばんだお!!」
一曲終わる。
「ふぅ!」
しゃちんくんは、満足げに座る。
「つぎ、まるちゃん!」
「えっ」
まるちゃん、ぴたっと固まる。
「む、むりだお……」
「だいじょうぶだお!」
しゃちんくんは、横でやんややんや。
「ここはね、うまさ関係ないお!」
「たのしんだもん勝ちだお!」
「へたれも、ぜんぶ正解だお!」
まるちゃんは、マイクを受け取る。
ちょっと重い。
「……むむ……」
画面に歌詞が出る。
音楽が流れる。
最初の音。
「……もえもえ……」
小さい。
でも、ちゃんと出た。
しゃちんくんの手が、ぶんぶん振れる。
「いいおーーーー!!」
「それだおーーーー!!」
まるちゃんの声が、少しだけ前に出る。
「……もえもえ……」
「もっといけるおーーー!!」
しゃちんくんは、後ろでぴょんぴょん。
手拍子ぱちぱち。
「なかよしボイスだおーーー!!」
まるちゃん、だんだん笑ってくる。
恥ずかしい。
でも、楽しい。
「……もえもえ……♪」
「きたおーーーー!!」
しゃちんくんも、一緒に歌い出す。
「もえもえーーー!!」
「ぽぽーーー☆」
二人で、ぐちゃぐちゃに歌う。
リズムも、ちょっとずれる。
でも、気にしない。
部屋の中だけの世界。
へたれでもいい。
むしろ、それがいい。
曲が終わる。
「はぁ……」
まるちゃんは、ソファにころん。
「しゃちん……」
「なんだお?」
「たのしかったお……」
しゃちんくんは、にこっと笑う。
(成功だお)
心の中で、チェックをつける。
まだ時間は、残っている。
「つぎ、いくお?」
「いくお」
今度は、二人で一緒に歌う。
マイクは一本。
ぴたっと近づく。
「ちょっと近いお……」
「なかよし距離だお」
「ぽぽ……」
「せーの」
「もえもえーーー♪」
声が重なる。
ちょっとズレる。
でも、それがちょうどいい。
飲み物を飲んで、
また歌って、
また笑って。
時間が、ふわふわ進む。
この部屋の中だけ、
へたれも、まちがいも、
ぜんぶ正解。
だから、まるちゃんは思う。
(また、ここに来たいお)
そして、しゃちんくんは思う。
(もっと、幸せにするお)
そんな、なかよしの時間でした。
ずっとずっと続くと思うような、しあわせな時間でした。
■
曲が終わる。
でも、すぐに次の曲が流れる。
「つぎ、これにするお」
「いいお〜」
ぽちぽち。
音楽。
笑い声。
「もえもえ〜♪」
部屋の中は、ずっとにぎやか。
時間は、ふわふわしていて、
なんだか止まってるみたいで、
でも、ちゃんと進んでいる。
「しゃちん」
「なんだお?」
「いま、すごく楽しいお」
「うん」
しゃちんくんは、うなずく。
「しゃちんもだお」
二人で、ちょっと笑う。
でも、曲が終わるたびに、
画面の右上の時間が、少しずつ減っていく。
それに気づいて、まるちゃんは、ほんの少しだけ静かになる。
「……もうちょっと、いたいお」
「うん」
しゃちんくんも、同じことを思っていた。
最後の曲。
「これ、さいごにするお」
「うん……」
音楽が流れる。
さっきより、少しだけゆっくり歌う。
いっしょを大事にするみたいに。
「……もえもえ……」
声が、やわらかい。
重なって、ほどけて、また重なる。
曲が終わる。
■
部屋を出る。
外の音が、戻ってくる。
明け方の光が、少しだけさびしそう。
帰り道。二人で、ゆっくり歩く。
「しゃちん」
「うん?」
「また、こようね」
「もちろんだお」
しゃちんくんは、すぐに答える。
でも、そのあと、少しだけやさしい声になる。
「また、来れるお」
まるちゃんは、うなずく。
「うん!またいっしょにいくお!まるちゃんぜったいわすれないお!!」
まるちゃんはしあわせでいっぱいの笑顔を浮かべました。
「しゃちん……」
「なんだお?」
「たのしかったお……」
しゃちんくんは、にこっと笑う。
(成功だお)
心の中で、チェックをつける。
帰り道。
夕方の光が、少しやわらかい。
「しゃちん」
「うん?」
「また、いきたいお」
「もちろんだお」
しゃちんくんのノートに、
次のページがめくられる。
まるちゃん幸せけいかく②
つづくお
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