しゃちまる☆からおけにいく~うたのひろば~



――まるちゃん幸せけいかく:からおけのまき

ぴよぴよの朝。
しゃちんくんの中で、ひとつの作戦が動いていた。

(まるちゃんを、もっと幸せにするお)

ノートには大きく書いてある。

まるちゃん幸せけいかく~うたのひろばにいく~

「まるちゃん!」

「なんだお?」

「今日は、うたのひろばに行くお!」

まるちゃんは、ぴくっとする。

「……からおけ?」

「そうだお!」

「い、いいのかい……!たかいお!!」
「へいきだい!しゃちんくんはおかねもちなんだい!!」

しゃちんくんはドンと胸をはった。
嘘でした。
普段はしょくひをきりつめるはりぼてしゃちん君です。でもまるちゃんのためならいくらでも奮発しちゃうのです。

まるちゃんはちょっとだけ、もじもじ。

でも、目は少しだけ楽しそう。

「いくおーーーーー!」


まるちゃんクリエイトのお星にのって移動しました。
ブーン、ブーン。
そして、とことことことこ。

二人は、にぎやかな建物の前に立ちました。

色のついた看板。
階段をのぼると、受付のおねえさんがにこっとする。

「いらっしゃいませ〜」

しゃちんくんは元気に言う。

「二人だお!」

部屋の番号を書いた紙と、小さな機械を受け取る。
とことことことこと歩いていく。

コップと、飲み物。氷がからん、と音を立てる。

「やっぱり……この感じ、すきだお」

ドアが閉まる。

外のにぎやかさが、すっと遠くなる。

部屋の中は、少しだけ暗くて、
大きな画面だけが、やわらかく光っている。

「……なんか、ここだけ別の場所みたいだお」

まるちゃんは、そわそわしながら座る。

「いいところだお」
しゃちんくんは、どこか得意げ。

テーブルには、飲み物。
氷が、からん。

「まずは、しゃちんがいくお!」

しゃちんくんは立ち上がって、
マイクをぐっと持つ。

音楽が流れる。

「よーーーーし!!」

元気いっぱい。

ちょっとズレる。
でも止まらない。

「ら〜ら〜〜〜〜!!」

まるちゃんは、思わず笑う。

「しゃちん……なんか自由だお……」

「自由がいちばんだお!!」

一曲終わる。

「ふぅ!」

しゃちんくんは、満足げに座る。

「つぎ、まるちゃん!」

「えっ」

まるちゃん、ぴたっと固まる。

「む、むりだお……」

「だいじょうぶだお!」

しゃちんくんは、横でやんややんや。

「ここはね、うまさ関係ないお!」

「たのしんだもん勝ちだお!」

「へたれも、ぜんぶ正解だお!」

まるちゃんは、マイクを受け取る。

ちょっと重い。

「……むむ……」

画面に歌詞が出る。

音楽が流れる。

最初の音。

「……もえもえ……」

小さい。

でも、ちゃんと出た。

しゃちんくんの手が、ぶんぶん振れる。

「いいおーーーー!!」

「それだおーーーー!!」

まるちゃんの声が、少しだけ前に出る。

「……もえもえ……」

「もっといけるおーーー!!」

しゃちんくんは、後ろでぴょんぴょん。

手拍子ぱちぱち。

「なかよしボイスだおーーー!!」

まるちゃん、だんだん笑ってくる。

恥ずかしい。
でも、楽しい。

「……もえもえ……♪」

「きたおーーーー!!」

しゃちんくんも、一緒に歌い出す。

「もえもえーーー!!」

「ぽぽーーー☆」

二人で、ぐちゃぐちゃに歌う。

リズムも、ちょっとずれる。

でも、気にしない。

部屋の中だけの世界。

へたれでもいい。
むしろ、それがいい。

曲が終わる。

「はぁ……」

まるちゃんは、ソファにころん。

「しゃちん……」

「なんだお?」

「たのしかったお……」

しゃちんくんは、にこっと笑う。

(成功だお)

心の中で、チェックをつける。

まだ時間は、残っている。

「つぎ、いくお?」

「いくお」

今度は、二人で一緒に歌う。

マイクは一本。

ぴたっと近づく。

「ちょっと近いお……」

「なかよし距離だお」

「ぽぽ……」

「せーの」

「もえもえーーー♪」

声が重なる。

ちょっとズレる。

でも、それがちょうどいい。

飲み物を飲んで、
また歌って、
また笑って。

時間が、ふわふわ進む。

この部屋の中だけ、

へたれも、まちがいも、
ぜんぶ正解。

だから、まるちゃんは思う。

(また、ここに来たいお)

そして、しゃちんくんは思う。

(もっと、幸せにするお)

そんな、なかよしの時間でした。
ずっとずっと続くと思うような、しあわせな時間でした。

曲が終わる。

でも、すぐに次の曲が流れる。

「つぎ、これにするお」
「いいお〜」

ぽちぽち。

音楽。
笑い声。

「もえもえ〜♪」

部屋の中は、ずっとにぎやか。

時間は、ふわふわしていて、
なんだか止まってるみたいで、
でも、ちゃんと進んでいる。

「しゃちん」

「なんだお?」

「いま、すごく楽しいお」

「うん」

しゃちんくんは、うなずく。

「しゃちんもだお」

二人で、ちょっと笑う。

でも、曲が終わるたびに、
画面の右上の時間が、少しずつ減っていく。

それに気づいて、まるちゃんは、ほんの少しだけ静かになる。

「……もうちょっと、いたいお」

「うん」

しゃちんくんも、同じことを思っていた。

最後の曲。

「これ、さいごにするお」

「うん……」

音楽が流れる。
さっきより、少しだけゆっくり歌う。
いっしょを大事にするみたいに。

「……もえもえ……」

声が、やわらかい。

重なって、ほどけて、また重なる。

曲が終わる。


部屋を出る。

外の音が、戻ってくる。

明け方の光が、少しだけさびしそう。

帰り道。二人で、ゆっくり歩く。

「しゃちん」

「うん?」

「また、こようね」

「もちろんだお」

しゃちんくんは、すぐに答える。

でも、そのあと、少しだけやさしい声になる。

「また、来れるお」

まるちゃんは、うなずく。

「うん!またいっしょにいくお!まるちゃんぜったいわすれないお!!」

まるちゃんはしあわせでいっぱいの笑顔を浮かべました。

「しゃちん……」

「なんだお?」

「たのしかったお……」

しゃちんくんは、にこっと笑う。

(成功だお)

心の中で、チェックをつける。

帰り道。

夕方の光が、少しやわらかい。

「しゃちん」

「うん?」

「また、いきたいお」

「もちろんだお」

しゃちんくんのノートに、
次のページがめくられる。

まるちゃん幸せけいかく②
つづくお

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