B面 ~BlankMapの裏面図~ 第五回「かいたひと:サトガミ」
言葉を知る為にはまず、その言葉を知る必要がある。
それは書き方であったり、読み方であったり、使い方であったり。
これらは何も言葉に限った話ではなく、何をするにも経験値は必要、という点では一致している。
では、それらとは一線を画す、言葉を知る事における最大の難点とは何か、といえば。
勿論人によって意見は異なるだろうが、私は「使い方」を知ることだと思う。
どのような場面でその言葉を使うべきなのか、というのは簡単に分かるものでは無い。教えられて知ることもあるだろうし、生涯使い方を知ることのない言葉だってあるかもしれない。
人が使っているのを見て、聞いて学ぶこともあるだろうか。よっぽど特殊な状況で無い限り、少なくとも怒られている最中に「ありがとうございます」なんて言う人間はいない。それを踏まえ、我々は「感謝」の仕方を学んでいく訳だ。
しかしここで問題となるのは、その言葉を果たして使えるか、という点。
折角覚えた「ありがとう」を使う場面が来るだろうか。そもそも使い方は正解なのだろうか。意味は通じるだろうか。そもそも日本語は分かるだろうか。
言葉というのは、思いのほか壁が多い。しかも分厚く、高い。赤ん坊が喋り方を練習するのとは訳が違う。
本を読む、歌を聞く、動画を見る……触れる機会は幾らでもある。が、使う機会は自ら作らなければ出会えない。察してもらってばかりでは、育たないものもある、ということだ。
伝える力とは、知る力……なのかもしれない。多分。