アトリエこもれび 2024/03/24 20:35

せみはれ開発のドタバタ劇

色々見返してたら、せみはれの開発開始がだいたい去年の今くらいだったようです。
というわけで、今日はせみはれの開発の裏でどんなどったんばったん大騒ぎがあったのかを書いておこうと。
ついでなのでエンジン選定の話なんかも真面目にしておきます。
本当は公開2ヶ月くらいで上げたいと思ってたのですがまあ色々あって今になってしまった。

【かめの目線のガバ時系列の話】

ご存じの方も多いでしょうが、本作はSuika2大賞2023に合わせて開発しました。
コンテスト参加を決めたのは結構早かったです。発表直後くらいだったと思う。

それでも時間は多くないので、企画をゼロから立てるのではなく、既に私がプロットを書き上げている4本から選抜することに。
私は日頃から発想の練習と称してゲームのプロットやあらすじを書いています。
ネタ帳のストックも兼ねている。
出力することでまとまるものもあるので。


手書き。だいたいこういうアイデア案から作品は始まる。
日付で分かるが5年くらい前に書かれたネタ。
この時点でも主人公のメンタルが死んでるのは確定していた(笑)

話し合いの結果、短編なので攻略キャラが少ないことや季節感、7日間構成でまとまっていることなどから蝉時雨の外れでの原形「蝉ゲー(仮)」が選ばれることに。

この段階ではまだキャラの名前は決まっておらず、主人公と蝉夫と呼ばれていました。


雪白とのやり取りにも書いてある。
序盤の命名シーンの選択肢に「蝉夫」があるのはその名残。

これに決まって雪白に伝えたのは
「攻略対象こと蝉夫なんだけど物語中で変色させたいんだ」
でした。
当然「???」ってリアクションされました。だよね。

https://twitter.com/kameno_ryo/status/1671195647616385025

蝉の羽化後しばらくしてから色が変わる生態のためでもありますが、
一番の理由は「人間の姿をしたものが一晩で色が変わるという人智を超えたことがあれば主人公(とプレイヤー)は蝉夫が普通の人間でないことを信じざるを得ない」からです。
この物語、別に蝉がどうして人になったかを語るつもりはありません。
そこに割く時間は作品規模としても無いし、説明したからといって深くなる物語でもない。それを解き明かすタイプのファンタジーにするつもりもなかった。
本作においてそれは本筋じゃないから。
なるもんはなる、語るだけ野暮。
ただ、多少強引でも「コイツは自分を蝉と信じ込んでる狂人ではなく、本当に人外である」説得力だけは持たせたかった。
ならば人間ではあり得ないことを起こせ……変色させてしまおう!
受け入れてくれた雪白さんに感謝しようね。
なお、言うまでもなくこのために立ち絵枚数が爆増した。地味にバスタオル差分あるし。


企画が決まったならシナリオを書かなければ。
しかし2023年は記録的な酷暑。
PCの部屋に冷暖房がない私はほとほと困り果て、また同じ環境の雪白もデザイン作業が進まない。
部屋で30分過ごすと脳が茹だるんだよ!死んじゃう!

6月頃、新作発表も合わせてTwitterスペースで喋ってみたがまぁ朦朧とする。
さらにこの辺で雪白のPCスペックが絵を描くにはかなりギリギリであることが発覚して差分とか大丈夫なのかと震え始める。しかもWin8だった。
衣装差分無かったとはいえ、よく前作制作出来たな!
マネジメント担当の胃がおかしくなるフラグはこの辺から立ってたのかもしれない。

そして夏、かめのが再就職に成功した。
成功したはいいが時間配分は狂った。
だって出来ると思ってなかったから……!
(過去に何度も失敗しているのでまだ半年くらい無理やと思ってた)

そしてゲ制デーのツイートしたり、暑さで遅々としながらも作業を進めていた8月、事件は起こる。
なんか耳がおかしかった。ずっと高山にいるような耳の詰まり。
転職によって人生一番の高層階で過ごすようになったばかりだったので、てっきりエレベーターとかのせいかと思ってたが、耳抜きを3分に1度やらないと音がまともに聞こえてこない。
さすがに一応耳鼻科に行くかと行ってみたら、
「低音部難聴ですね」
「軽度のメニエール病の所見です」

かめの、メニエール病になる。
耳詰まりの感覚って難聴の症状なんだって。
誰か教えてくれよそれ。義務教育で教えろ。
みんなは早く医者に行こうな。
有名な症状であるめまいはあまり出てないのだが、耳閉感だけでもかなり生活の邪魔だし仕事の邪魔だし作業の邪魔。
蝸牛型メニエールってめまい無いタイプのも普通にあるらしいんでマジで病院は行こうな(2回目)

私のゲ制は暑さ、メニエール、仕事が思いの外バリバリになって残業と三重苦と戦う羽目になった。
想像以上に長くなってしまったシナリオもとうとう8月中に終わらず。


9月
とりあえず9月上旬にシナリオを終えるもメニエール悪化、めまいは依然無いが吐き気で何食っても胸がムカついてボロボロになって食欲が落ち1ヶ月で4kg痩せました。
あと薬が不味い。めっちゃ不味い。
イソバイドって検索かけるとサジェストにまずいって出てくるんだぜ。
毎食後の薬が不味いと思うと食欲が落ちるんだ……

雪白も立ち絵を完成させスチルに入るも、立ち絵出力の暇をなくしていつの間にか私が全部出すことに。
※衣装差分も多く出力が雪白PCでは不安があったのも一因
かめの、各種演出のスクリプト組みながら差分出力をする。
残業から戻って睡眠前1時間作業する。土日は全部作業。
死ぬ。この時はホントに過労死が見えた。
まぁ演出をつける人間が表情指定した方が出力を必要なものだけに絞れるという利点はあります。
私は二度とやりません。
服装差分こんなに増やしたの誰だ。
夏の一週間に着た切り雀はおかしいと言った奴は誰だ。俺や。
多すぎる。差分が多すぎる。容量もえげつねぇ。
ただ、今作において特にナナの服装がちゃんと変わるのは「彼のための服が用意され、彼が人間になって生きている」演出のために外せなかったので意地でもやる。
被服文化は人間だけのものなので……人間生活の象徴なので……
そして服装指定をミスる不具合が頻発しデバッグの手間がえらいことになった


9/29、コンテスト締切前日。そしてかめの28歳最初の朝。

かめのはとうとう朝から吐いていた。
食ったもの戻してるので体力も湧かない。震えが止まらん。
仕事は休んだ。
しかし仕事を休んだのをこれ幸いにスクリプトと戦った。イカれてやがる。この狂人め。

不具合検出は雪白にほぼ一任。私は改修に回る。
かめの、一瞬だけゲームではないもののプログラムのテスター業務にいたことがあるので、そのときのバグ報告のテンプレート作成の知識が地味に生かされる。
しかし雪白にはもうちょっと丁寧に心得というかやり方の説明をしたかった。
今回の一番の心残りです。次回以降にも使える知識だしね。
とはいえほぼ完璧というか、何も言わなくても丁寧なテストしてくれたのでありがたかった。
雪白よ、君テスターの才能あるよ。
でも最終日の朝に昼まで起きてこなかったのは心臓止まりかけたから許さん。電話かけちゃっただろ
※雪白は夜型

そして、まぁ……あの……Suika2開発様を最終日までバッチバチにこき使ってお問い合わせしまくってしまいましたよね……
これ不具合ですかーーー!?!?これってどうやるんですかーーーーーーー!!!!!
アーーーーーッ
お前の修羅場に人を巻き込むな


マスターアップしたときは達成感と虚脱感で倒れました。
そして制作中の迷言ツイートを作りました。

https://twitter.com/kameno_ryo/status/1708442889158836378

壊れてんなー。


そしてサボりにサボってた広報作業をポチポチしたりSuika2のアプデに合わせて機能追加してみたりすること1ヶ月。

コンテスト結果発表。


なんと短編賞
嬉しいね!

シナリオ担当的にはシナリオ賞狙ったが!?!?くそぅ!!(CV.チエミ)


【エンジン選定について】

大前提として、かめのはITとかシステム系は門外漢です。
そして論理とかめちゃくちゃ苦手です。英語もそんなにちゃんと読めてはいない。
だからあんまり……ちゃんとしたことが書けていない。間違ったこと書いてるかも。
高度なことは出来ないです。
本当に幸いしてるのは、性格上、説明書を読みこんでそれを再現することは苦でないということ。
これのおかげでソフトウェアを動かすことはそれなりに出来ます。中身あんまり分からないブラックボックスとしてな。


サークル一作目にして前作『恋のかけらはすぐそばに』(以下かけそば)は吉里吉里2で制作しました。
吉里吉里2はかけそばリリース時点で更新もサポートもとっくに終わっていましたが、それでも使ったのには理由があります。

吉里吉里はタグでスクリプト打ち込み式ですが、専用エディタKKDEがありタグの入力補完をしてくれます。
コイツが非常に優秀で手放しがたい。専用というのは強いです。
特化型のツールは出来ること限ってる分安定しますし、わざわざそれが作られるということは吉里吉里がそれだけ広く使われたツールである証でもあります。

広く使われているものはそれだけ知見も多く存在する。
ググれば様々な解説やプラグインがあるということ(もっとも古すぎてジオシティーズなどの終末とあわせて消えてるものもあったが……)。
また、広い人気ゆえ、そして時代もあって解説書籍が出回っていました。
中古で観測できた範囲は全部持ってます。
これがサンプルデータディスクとかついてて豪華なのだ。コマンド一覧もあるし、PCの横に置いて首っ引きしつつ学べるのがいい。私が古いタイプの人間だからかもしれない。デュアルディスプレイ環境も無いしな……

ぶっちゃけ更新終わってようがサポート切れてようがWindowsの後方互換が強いのもあり動くので、乗り換えはしないつもりでいました。
一度身に付けた知識も財産だし。捨てるのは惜しいところもあった。
ゲーム作りにもう少し慣れてから考えてもいいや。と。
ティラノは動作がもっさりなイメージが強くてピンと来ないし、
Ren'pyは日本語訳はされてるとはいえ海外エンジンでサポートの不安。それなりに日本語ユーザーいるっぽいけど、という感じ。

とはいえ何があるかは分からんのと、個人的な趣味で情報収集はしていました。
Suika2についてはそこそこ前から興味を持っていて去年秋辺りから情報チラ見たまにサンプルいじったりしてたんですが、本格的に乗り換えるのはまだ先かなと思っていました。

\そこへやってきたゲーム大賞のお知らせ/
チョロいので乗りました。波に。
あと雪白のPC買い替えのために。
こんなに綺麗に教科書通り開発さんの思う壺なヤツおる?

というのは半分くらい冗談として、この頃公式Discord(これもしれっと参加していた)に有志がVSCodeスニペットをアップ。
これ、私としては大革命。
VSCode上でコマンドの入力補完が出来る……つまりKKDEで便利と思ってた機能の一つがやって来る!
いやまじでコマンドポチポチやコピペだけで作るの手間なんやぞ!
VSCode自体初めてだったのでまずは落とすところから。
うわーーこれが噂のVSCode!エンジニアみたいだな!!!
※Ren'pyはVSCodeに拡張機能があるのでたぶん似たこと出来るはず。たぶん。

他にもKKDEの有用性ってその場でビルドして作ったものを実画面で見ることが出来ることもあったんですけど、Suika2はそもそも同梱のPro(開発用起動ソフトのようなもの)で起動すれば同じことが出来ます。
さらにスクリプトの行数指定してゲームを任意の位置から走らせることも出来ます。これKKDEでやるなら開始位置をずらすためのタグを仕込むかデバッグ用にメニューを作るくらいしかなかったので上回ってますね。
長編作るにも困りません。
これでデバッグにも見通しが立ちました。

……てなわけで、吉里吉里の有用性として私が気に入っていたものが吉里吉里以外にも現れた。
これなら十分私の技量でも制作を回せると考えてコンテストの参加を決める。


【結末、挨拶、今後】

結果は見ての通り。なんとかなりました。なったのか?
雪白さんはじめ、Suika2制作のktabataさん、Discordの皆様などとにかく方々にお手数かけまくりました。
改めてお礼とお詫び申し上げます。本当に。
特にSuika2制作には足向けて寝られない。
今後の発展には微力でも添えたい、ので、各種知見の共有や公式Wiki編集など出来たらなと思っています。まずはWiki文法を勉強だな!!!

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