もるまさ May/10/2024 20:34

ラジメカノベル制作状況!!

『ラジメカ~スキル0ですがメカニック見習いはじめました~』
本日よりアルファポリスに投稿を開始しました。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/406567137/412878934
上のサイトに時間を空けて投稿していきます。
*アルファポリスアプリからはお手数ですが「もるまさ」で検索してください。


先日フォロワー向けに投稿していた試作版ですが、3話までログインせずに読めるように公開します。


 4月の末、僕はある会社の面接に来ていた。
まぁ会社といっても、小さな田舎町の個人がやっている小さな自動車整備会社なのだけど。
 たまたま実家から自転車で通える距離で求人を出していたのだ。
 小さな会社なので面接と言うほど堅苦しい雰囲気ではなかったが、高校卒業後、希望する地元で就職することができずにいた僕は緊張していた。
 工場の隣にある事務所内で、本来は商談用の小さなテーブルに、僕と向かい合って髪を短く刈り上げた、ガッシリした体型の中年男性が座っていた。男性の手には僕の履歴書があった。

「資格も免許もなしか。あ、原付免許はあるのな。車の免許がないのはきついなぁ。ウチが何屋か知ってるよな?」
「は、はい……」

 社長である中年男性が落ち着いた口調で言う。いかにも熟練の職人と言った雰囲気だった。
 しばらくの沈黙。パサパサと、社長が履歴書を手に持つ音が妙に大きく聞こえた。僕の背中に妙に冷たい汗が流れたような気がした。

「じゃあ、来週月曜日の朝8時前に事務所の裏口のドア前に来てくれるか?」
「はい!よろしくお願いします!あ、ありがとうございます!」

 僕はできる限りの愛想を振り絞って答えた。簡単には雇ってもらえないだろうと言う予想とは裏腹に、あっさりと就職が決まったのだった。

 週明け、僕は約束の時間より少し早めに事務所前に立っていた。
 『株式会社ラジアル』と看板を挙げた敷地内の、駐車スペースと思われる空きスペースに自転車を止め、ヘルメットをリュックに仕舞い、歩いて事務所の裏口に回ろうとしたところで後ろから声をかけられた。

「おはようさん」

 振り向くと、そこには事務所正面ドアから顔を出している社長の姿があった。

「おはようございます!」
「早かったな。作業着渡すから入れ」
「はい!」

 そう促され、僕は事務所正面から中へと入っていった。

「これがお前さんのタイムカードな。出勤時と退勤時には忘れず打刻するように」

 作業着と安全靴、タイムカードを渡された。アニメやドラマで見たことがあったが、ろくなバイト経験もない僕は現物を見るのは初めてだった。 安全靴にはつま先に鉄芯が入っているのだろう。ずっしりと重く、やや無骨なデザインだった。
 事務所の奥、そこにある休憩室を抜けた、狭い廊下にタイムレコーダーが置いてあった。
 タイムカードの表には僕の名前がカタカナで書かれていて、専用の機械に読み込ませることで、勤務時間を管理することができるものだ。
 簡単な操作の説明が終わり、タイムカードをしまうラックをふと見ると、もう一枚カードがあった。

『アキヅキ ミツル』

 そうカタカナで書かれていた。秋月……満……かな。

「こいつはお前の先輩整備士になる。なかなかいいセンスを持ってるから、色々勉強するといい。……まぁ、まだ来てないんだがな。あの野郎、いつもギリギリで出社しやがるからな」

 整備士になるような人だ。おそらく体育会系の人だろう。僕は頭の中で大柄でガッチリした中年男性を想像しながら、タイムカードラックの最下段に自分のカードを差し込んだ。
 タイムレコーダーのある廊下の途中の扉を開けると、そこはロッカールームだった。
 ロッカールームと言っても、縦長のスチールロッカーが5人分ほどあるだけの小さなもので、部屋の半分はこの建物2階へ続く階段で占領されていた。
 与えられた自分のロッカーに荷物を放り込み、作業着に着替える。
 作業着は所謂ツナギと呼ばれるもので、上下がつながっていた。
 ズボンを脱ぎ、ツナギに片足を通したところで廊下の方からドカドカと足音が近づいてくるのが分かった。しばらくの間の後、勢いよくロッカールームのドアが開け放たれた。

 振り返るとそこにはツナギを着た、ややウェーブのかかった黒髪をポニーテールに結わえた小柄な女性が立っていた。

「あ……、おはようございます……」
「ふぎゃくぁwせ!」

 女性は悲鳴にも似た奇声を上げると、開けた時と同じくらいの勢いで扉を閉めてしまった。着替えている途中の僕は、ヨレヨレのトランクスが丸見えだったのだ。
 「事務員さんかな?」と、考えながら、僕は慣れないツナギを着終えると、さっきのツナギ姿の女性が誰だったのかやっと気づくことができた。

 あの人が、『アキヅキ ミツル』さんだ。
 てっきり男性だと思っていたが、女性だったのだ。


「で、新人。お前、何ができんの?」

 休憩室で、目の前のツナギ姿の女性が見た目に似合わないハスキーボイスで腕を組んで僕に聞いてきた。
 彼女の名前は『秋月 美鶴』。この自動車整備会社『ラジアル』の先輩社員にあたる。 年齢は僕とそんなに変わらないくらいだろう。見た目は小柄な女性だが、ここでは社長に代わり整備全般を担当しているらしい。
 彼女の問いに対し、何があるのだろうかと少し考えたが、残念なことに何も思い浮かばなかった。

「さ、さぁ……?」

 妙に自分が情けなくなり、「なんでしょうね?」まで言葉が続かなかった。

 「チッ。しょうがねぇ。ついてこい」

 少しの間の後、秋月さんが舌打ちしたあとに休憩室から続く、工場内へのアルミ製のドアを開いた。

 「ここがあたしらの職場。手前にリフトが3台。奥にフレーム修正機とテスター、さらにその奥に塗装ブースがあるから」

 ラジアルは、敷地中心にある駐車スペースを囲うように、道路から見て左側に事務所、正面から右側までL字型の工場が建っていた。
 秋月さんが壁のスイッチを操作すると、真っ暗だった工場内が水銀灯の光で照らし出される。工場内はここから全体を見通すことはできないが、確かに小さいながらもそれなりの設備が整っているようだった。

 「お前、18歳だっけ?働いたことは?資格は?」
 「いえ、全然なくて……」
 「マジか。社長、何考えてんだ……」

 僕から目をそらすように横を向いた秋月さんはあきれたような口調でそう言うと、顎で来いと命じ閉じられたシャッターの前に向かった。
 数枚ある電動シャッターを開けると、表の駐車場から刺すような朝陽が工場内へと差し込んでくる。
 そして、そこには僕の自転車が置いてあった。中学生の時からの愛用品だ。

「なんだこれ?誰の自転車だ?」

 怪訝そうな顔をする秋月さんに、僕は言った。

「すいません。それ僕のです」
「はぁーっ!?なんでこんなトコに止めてんだよ!邪魔だろうが!事務所の裏に置いて来い!」
「すっ、すいません!」

 怒声に近い秋月さんの声に僕は驚いて、慌てて自転車を事務所裏に移動させる。朝から失敗続きのような気がした。このわずかな時間で秋月さんの機嫌が少しずつ確実に悪くなっているのが、初対面の僕でもわかったからだ。

 自転車を押しながら事務所を迂回するようにして回ると、裏手に続く隣の敷地との間に積載車と少し古いクロカンタイプの軽自動車が並んで止まっていた。
 おそらくこの軽自動車が秋月さんの車だろう。朝はここに回る前に社長に呼び止められたので気が付かなかったが、ここが従業員用の駐車スペースのようだった。
 積載車と軽自動車の間をすり抜けるとさらに後ろにスペースがありそうだったので、そこに自転車を置くことにした。

 車の間をすり抜け奥へ進み、産廃用のコンテナ容器、所謂バッカンと呼ばれるものが置いてあるなと、わきを見ながら歩いていると、ジャラリと前方で金属が擦れるような音がした。
 目をやると、事務所の陰から現れたであろう、鎖につながれた灰色の毛むくじゃらの生き物が唸り声をあげながらこちらを睨んでいた。

「ひぃっ」

 目が合うや否や、同時にその灰色の肉食獣は自身の獰猛さを証明するかの如く牙をむき出しにして僕へ飛び掛かってきたのだ。

 「ワンッ」と鳴きながら。

 とっさに身の危険を察知した僕は自転車を放り出し、慌てて積載車の荷台へと飛び乗った。
 幸い鎖の長さが積載車まで届くことはなく、その牙が荷台上の僕へと届くことはなかった。しかし、それでもなお灰色の肉食獣は、鎖を引きちぎらんばかりの勢いで牙を見せながら吠え続けていた。

 飛び道具もない、魔力もない、ダンジョン入り口で僕のパーティーが全滅してしまう!
 一人でそう思ったその時だった。
 「おい新人!自転車止めるのにいつまでかかってんだよ!」
 まだ出社して30分ほどだろうか。秋月さんの、本日2回目の怒声が飛んだ。


「さっさとしろよ!時間ねぇんだぞ!」

 秋月さんは怒りながら近寄ってきた。その怒声に呼応するかのように、灰色の猛獣はさらに吠え続けた。

 「こらうるさい!」

 猛獣は秋月さんが近づいたことに気が付くと、舌をペロリと出してその場に座り静かになった。

 「アッシュ、こいつはウチの従業員だから吠えたらダメだぞ」

 アッシュと呼ばれた猛獣は、フンと鼻を鳴らした。まだ警戒しながら僕を睨みつけるその目は「吠エナケレバイインデスヨネ?」と、言ってるような気がした。

 「おい、降りて来いよ」
 「は、はい。怖い番犬ですね……」
 「そうか?こんなに人懐っこいぞ?」

 秋月さんはそう言うとしゃがんで、転がるアッシュのお腹を撫でていた。見た所、雑種の中型犬のようだ。
 事務所の建物裏には裏口ドアがあった。このドアがタイムレコーダーの置かれた廊下へとつながっているらしい。社長が言っていた裏口ドア前とはこのドアのことだろう。そしてそのドアのわきには、アッシュの小屋が置いてあった。
 アッシュは秋月さんに撫でてもらうと満足したのか、そそくさと自分の小屋に戻ってしまった。
 自転車を適当な場所に止め工場内に戻った僕は、秋月さんから車のカギを受け取った。
「そこにあるウチの代車2台のキーな。駐車場の邪魔にならない隅のほうにでも適当に出しといて」

 そう言いながら事務所とは反対側にある駐車スペースを指さしていた。ふと見ると、リモコンキーは2台分がキーリングで纏めてあった。
 おそらく、僕にそこにある軽自動車2台を動かせということだろうと思うのだが、躊躇していた。

「なんだよ?さっさとやれよ?」
「あのですね……実は……、車の免許まだ持ってないんです……。運転してもいいんでしょうか?」

 そう、実は僕は車の免許を持っていない。正確に言えば取得している最中で、今現在も教習所に通っているのだ。一応履歴書の資格欄は空白だったし、社長には口頭でも伝えておいたが、秋月さんは初耳だったようだ。大きな目をさらに見開いてこちらを見ている。
「はぁ~っ!?」

 大きく息を吸い込んでからそう言うと、一瞬黙り込んだ後、事務所のほうへ走って行ってしまった。

 勢いよく事務所のドアが開けられる音が響く。
 そして、僕が免許を持っていないことを社長に報告している秋月さんの声も。

「あいつ、地雷どころか地雷としても機能しなさそうなんだけど!」

 地雷だとか不発弾だとか、なんかそんな感じで言われているのが聞こえてきた。と言うか、この短い時間で秋月さんにとって僕は地雷のようなものと認識されてしまったようだった……。

 しばらくして工場内に戻ってきた秋月さんは、やや諦めたような表情をしているように見えた。

「しょうがない。とりあえず、掃除、な」
「は、はい」

 掃除用具のしまってある場所を教えてもらい、ひとまず床掃除から始める。
 その間、秋月さんはお客さんの車を運び入れ、2柱リフトと呼ばれる機械で車を持ち上げ、慣れた手つきでタイヤを取り外していく。
 その間にも業者が補充用の備品を持ってきた。事務所から顔を出した社長に言われ、段ボールに入った備品を受け取った。

「秋月さん、荷物が届いたんですが……」
「そこの棚に並べておいて!」

 作業中の秋月さんに聞くと、少しイライラした様子で返事があった。
 ダンボールの中身は、小箱に入った交換用の部品だった。言われた棚にも同じパッケージデザインのものが並べてある。

「ここに全部入れればいいのか」

 ふと見ると、少し大きさが違うものもあった。確認しようかと思ったが、忙しそうにしている秋月さんに聞くのも気が引けたので、大きさだけそろえて棚に並べることにした。
 並べ終えて床掃除を再開させ、しばらく経ってからのこと。秋月さんが僕を呼んだ。

「お前これ、エレメントの品番がバラバラじゃねぇか!」

 どうも大きさだけで揃えたのはまずかったらしい。パッケージにはラベルが貼られていて、それを基準に並べなければならなかったのだ。

「勘弁しろよー!」
「す、すみません!」

 朝から何度も謝っているような気がした。

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