りせ 2022/05/30 17:25

【全体公開】「あやかしやま」振り返り

※2022年1月に書いたものの再掲となります。

2021年12月25日、世間はクリスマス真っ只中…
初めて製作したノベルゲーム「あやかしやま」がマスターアップとなりました。
色々な方にご協力を頂き無事完成、各種のフリーゲーム配信サイトにて順次配信が始まりました。
もうすぐ完成から1か月ということで、あやかしやまが出来るまでを簡単に振り返り残したいと思います。

どうしてノベルゲームを作りたいと思ったのか?

小さいころから絵を書いたり物語を考えることは好きでした。
作文も割と得意で、何回か賞を頂いたこともあります。
父に「感性がある」と言ってもらえて、当時は感性という言葉の意味が分からなかったのですが、とにかく自分はこういうことが向いてるんだと思っていました。

そんな中、中学生のころにプレイした、とある同人ギャルゲーが印象に残り、「自分でも作ってみたい」と思うようになりました。
当時は本当に無知で、「立ち絵、スチル、シナリオ、音楽とあとちょっとプログラムが出来ればゲームができる!」と思っており
ひたすら大学ノートにゲームのシナリオやキャラ、立ち絵をシャーペンで書きまくるという日々を送っていました。
どうすればゲームが作れるのかとか、ゲーム作りに必要な物を調べることはせずひたすら頭の中でゲームの構想を練るだけ。
そのまま月日は過ぎ、社会人になって数年が過ぎました。
紆余曲折があり、ご縁がありリモート環境でとあるソーシャルゲーム会社さんでお仕事をさせていただくことになりました。
主な業務内容はここでは伏せますが、そのソーシャルゲームがいわゆるノベルゲームの要素とバトルの要素があり、中学生のころに思った「ゲームを作ってみたい」という夢に近づくことになったのです。
そして、業務でスクリプトのチェックや編集などをさせていただくようになり、ゲームの仕組みのようなものを勉強させていただきました。

そのころ、世間ではとあるノベルゲームがバズっておりました。
それは「ティラノビルダー」(スクリプトだったかもしれませんが)というソフトで作られたものであり、ソフトを動かせる容量のパソコンさえあれば誰でもノベルゲームが作れるという代物。
これがあればまさしく「立ち絵、スチル、シナリオ、音楽とあとちょっとプログラムが出来れば」ゲームが作れるというものだったのです。
これがあればゲームが作れる! というわけで、仕事や日々の生活の合間を縫って、ひっそり物語の構想を練り始めたのです。

話の構想を練る

「ティラノビルダーを使ってゲームを作ろう」と思い立ってから早くも1年が過ぎようとしていました。
その間、色々自分でゲームの構想をいくつか練っておりました。
しかしどれも自分の実力で作るのは難しいと断念していました。
…それからまた月日は経ち2020年11月。コロナウィルスが猛威を振るっている中、
Go To トラベルのキャンペーンで近場にあるとある旅館に泊まりました。
山間にある鄙びた旅館、といういでたちの場所でしたがとても良い時間を過ごすことができ… そして、「ここを舞台にゲームを作ったら面白そう」と思い立ったのです。
考えたのは、古い旅館に泊まる主人公。そして自分の性癖好みである謎めいた雰囲気のあるロリ系の美少女を出そう。そして何か事件に巻き込まれて…と話を考えました。
事件はどうしよう?と考えて、せっかく好みな感じの女の子を出すんだから事件も好きなのにしちゃえ!と、昔から好きでよく読んでいた5ch(当時は2ch)の「意味が分かると怖い話」「洒落にならないほど怖い話を集めてみない?」とか、怖い書き込みのまとめを読みまくり、そういうネット掲示板に書き込まれた怖い噂を調査する話にしよう。と話がまとまりました。

これがあやかしやまの初期の構想の一部になります。
リリース版とだいぶ違いますね。

これで話を書こうと思ったのですが、書いてみると人物が動かしにくい。
初期の設定はざっくりでこんな感じでした。

・主人公
 とあるWebメディア会社でライターの仕事をしている社会人男性。
・主人公の上司(あやかしやまでいう「東雲」)
・謎の少女
・人妻(あやかしやまでいう「女将さん」)

当時ノベルゲームを作ろうと思っているという話はほとんど誰かに話していなく、自分の中でひっそりと進めていました。
ですが、もうそろそろ難しいな…と思い、色々な人に相談し始めました。

そこで出た問題点が、
「まずどんな話にしたいのか思いついていない(どういう事件が起きてどういうふうに解決していくのか?というのが無い)」
ということでした。

話を考えるために勉強する

最初はホラーゲームを作るつもりでいたのですが、そうすると色々壁にぶち当たりました。
主に悩んでいたのは、

・話が思い浮かばない(怖いものをどうするのか?どう立ち向かっていくのか?)
・読み手(プレイヤー)に面白いと思わせるためにどうしたらいいのか?

こんな感じ。
色々こういうシーンを入れたいなという構想はありましたが、それらをゲームとして成り立たせるにはどう話を考えればいいのか…
かなり悩んでいました。

そこで、一旦話を考えることをセーブし、話づくりのために勉強を始めました。
まず、作品の大きなテーマになる
「怖いもの」、「未解決事件」、「田舎」について。
それから話の組み立て方として、色々有名なミステリ作品を読み込みました。
具体的には、こんな感じでやりました。
・Youtubeやレンタルで心霊系の動画やビデオを鑑賞し、ゾクッとくる、怖いと思わせるような演出を勉強
・Youtubeのまとめ動画や2ch、書籍などで未解決事件について調べまくりどんな経緯で「未解決」になったのかなどを知る
・ミステリ系の小説やゲームで伏線の張り方や叙述トリックについて勉強
・山や神社などに行き観察

こんな感じで勉強しつつ、「あやかしやま」のプロットを書き始めました。

書けない

色々あって全体的な話の流れと話の仕掛けも決まり、あとはプロットを組み立てて話を書けば完成… なのですが。
文章って本当に書くのが難しい。
なにか一文書くたびに、前後の文とつじつまが合うようにしなくてはいけない。
特にあやかしやまの場合は話の都合上、何かぼろが出ればもう駄目なわけです。
(とはいえ実際にリリースされたものはボロボロだったかもしれませんが…)
色々勉強したおかげでアイデアはたくさん思いつけましたが、それの取捨選択が難しく、かなり悩みました。

だいぶモチベーションが落ちてしまったので、気分を入れ替えるためにグラフィック面の準備を始めました。
「あやかしやま」は当初、UIや立ち絵なども全部自分で行うつもりでしたが「ノベルゲームコレクションのランキングに載る」という目標があったため、それをするには多分自分一人では出来ないな、と思いここは外注することに。
まずUIやロゴに関しては、「ココナラ」というクラウドソーシング?のサイトで募集をかけました。
たくさん応募をいただきましたが、その大半が「多分これコピペして他の人にも同じ内容で送ってるんだろうな」というものばかりで、まあネットで募集するってこんなもんだよねと思っていたところ、実際に私のお仕事の相談の文面を読んで、簡単なイメージと共にとてもやる気に満ち溢れた内容を送っていただいた方がおりました。
その簡単なイメージも私が想像していたものとほとんどぴったりで、もうこの方しかいないと決定。
何度もすり合わせをさせていただき、納得のいくものを仕上げていただきました。大変感謝です。

次に人物イラスト。こちらはTwitterで募集をかけました。
たくさんの方から応募を頂きました。
その中から、送っていただいたポートフォリオを見ていると私の目に留まるものがありました。
薄暗い印象でしたが、そこから光が差していてとてもきれいな絵で、一枚の絵で色々ストーリーが考えられる素晴らしい作品でした。
絵柄も私が求めているようなもので、ぜひこの方にお願いしたい、と思いご連絡させていただき、
念のため実際にご依頼する前に認識合わせとして簡単な設定資料をお送りし立ち絵のラフをご制作いただきました。
送っていただいたラフは、季節が夏か冬かの違いだけでこちらの想定していたものをほぼ再現していただきました。
ありがたいです。

そんなこんなでデザイナーさん、イラストレーターさんのお力をお借りすることができたのですが、プロットはなかなか完成しませんでした。

まだその頃は2021年2月の構想にあった通りの設定をほとんど変えていなくて、
当時会社の上司と部下という設定の主人公と東雲がとにかく動かしにくい。
私は一応社会人をやっていますが、上司と2人で出かける、みたいなことをやったことがなくて、主人公と東雲の会話が書けなかったのです。
そこで熟考した結果、リリース版のような設定が浮かびました。

そして、話をどう落ち着けるか。
これに関してはとてもとても苦しみました。
ですが、色々「怖いもの」に関して勉強してきた結果、その怖いものに対してどう向き合っていけばいいのか?という結論に至りあのような結末となりました。
本当はもっと長い尺で制作できれば話をもっと深く掘り下げられたのかなと思いますが、また別の機会であやかしやまの続編みたいなのを書いてそこでやろうかなと思っています。

…と、プロットで非常に苦労したのは記憶にあるのですが、
実際にお話の本編を書いていた記憶はほとんどありません。
手がめちゃくちゃ痛くなったことくらいですかね?

しかも、プロローグ部分については実際にゲームに乗せるときに書き直しました。
自分でもどうやってあんな話になったのかはわかりません。
ただ書き直す前は結構回りくどく無駄なシーンが多かったり、ふわふわした内容だなぁという印象があったので、
書き直して良かったと思っています。

スクリプト作業

難しかったけど楽しかった記憶があります。
文字を入れるのは非常に面倒でしたが、
立ち絵の切り替えやBGM、効果音のタイミングなど…演出はかなりこだわりました。
特にこだわったのはこんなところです。
実際にゲームにて確認していただけますと幸いです。



とある人物が話した後にセミの鳴き声を鳴らせる

「ひぐらしのなく頃に」「ダブルキャスト」が好きで、どちらも夏の作品なのですがセミ?ひぐらし?の鳴き声を使用した演出がかっこよかったので真似させていただきました。

時間の切り替えをテキストではなく空の背景で表現した

(朝→昼→晩)という感じ
この表現の仕方はお仕事でやっているソシャゲを参考にさせていただきました。

調理場に入るシーンで真っ暗な部屋が明るくなるシーン

元の調理場の背景の上に、透明度を下げた黒い背景を重ねて元の背景を暗くするよう表現。
主人公がスマホのライトを使っているので本当は一部だけ明るくなるというのが良かったと思いますが…まあ、…

雷が落ちるシーン

実際に雷が落ちたように表現するのが難しかったです。
真っ白な背景を用意して、一瞬その背景を表示させそのあとに雷の効果音を鳴らしましたが、タイミングが難しく何度も直しました。
かっこよくできてよかったです。

とある人物の立ち絵の表示のタイミング

これね…!!
やっててこれは面白くなるぞ!と興奮しながらやってた記憶があります。
実際嬉しいお言葉を頂いておりますのでまだ見ていない方はぜひ実際に確認していただきたいですね。
ちなみに、こちらの人物ですが表情の切り替えもこだわっておりまして、特にゲーム終盤は注意深く見ていただけますと嬉しいです。

エンディング

ほぼ丸一日かけて作ってました。
ロゴやイラストは立ち絵や背景表示で何とか頑張りました。
曲に合わせて表示させるタイミングが難しかったです。
曲は「1%の革命前夜」という楽曲を使用させていただきました。このクオリティでフリー音源ってすごい…
初めて聴いたのはゲームを作り始めて間もないころでしたが、歌詞が某キャラにぴったりだなと思い、絶対に使おうと決めていたので無事に使えてよかったです。
配信サイトでも配信されてるので気になった方はぜひ…!


1%の革命前夜

他にも色々こだわった箇所はたくさんありまして…
是非、実際にプレイしていただきたいです。

デバッグ

地獄でした。
ここでも演出関係を何度も直したり、とあるエンドが開放したのにリストに載らないとか、何故かとあるバッドエンドにばかり行っちゃうよ?とかそういうことが多かったです。
専門的な話になりますが、
トゥルーエンドのスクリプトファイルの名前が「ture●●.ks」だったんですね。
また、あとは変数の名前にも「true」を入れていました。
変数などをやったことがある方はこの時点であっ、となると思うのですがこれが原因でいろいろなところでバグが出ていました。
すごく簡単な原因だったのに気付くのが遅れてしまいました。
最終的には「toxuruend」みたいなやけくそな名前にしていました。笑

公開!

ここで、話を変えて制作期間の話をさせていただきます。
実は「あやかしやま」は具体的な制作期間というものは設けていませんでした。
一応、「●月までには…」という目標はありましたが、本業としている仕事のスケジュールが流動的で、この期間なら暇というのが無いんですね。
なので、少し落ち着いたかな…?と思ったとたんに差し込みで他の仕事が来たり、落ち着いている時間は先のスケジュールで忙しくなりそうなところを早めに着手、ということをしていたのでなかなか集中して制作が行えていませんでした。
…が、とあるコンテストが開催されていることを知りました。

新人フリーゲームコンテスト
新人のフリーゲーム制作者のためのゲームコンテストです!多くの人のご支援次第で賞金も変動します!初めてゲームを作る方も、ぜひ
freegame-contest.com
新人フリーゲームコンテストですね。こちらが12/31締切ということで、
コンテスト応募を目指して年内完成を目指すことになりました。
……決めたのが12月の中旬でしたため、ちょうど本業が年末進行となっていたこともありかなり辛かったです。
夜は遅くまで本業をし、朝早く起きてあやかしやまの作業をやっていた記憶があります。

あやかしやまは、下記のプラットフォームにて公開しております。

・フリーゲーム夢現 様
・ノベルゲームコレクション 様

本当は「ふりーむ!」様でも公開したかったのですが、こちらは審査が厳しいという噂を聞きまして、
審査を待っていたらコンテストに間に合わないかもと思い今回は除外させていただきました。
そこでひとまず上記2ヵ所にて公開の手続きをしまして、
フリーゲーム夢現様が一番早かったのでそちらで公開されたタイミングでコンテストにも応募いたしました。

…実際に手続きをし、審査を待っている間もゴロゴロバグが出てきまして…。
何度も差し換え等を行い、各プラットフォーム様にはご迷惑をおかけいたしました。
大変申し訳ございませんでした。

…紆余曲折ありましたが、あやかしやまは無事目標であった2021年12月下旬にリリースとなりました。
プレイしていただいた方、感想を頂いた方、そして制作にご協力いただきました皆様に御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。

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