yoho 2023/08/27 23:12

曲構成について2

今回は、大域的な曲構成の話を書く。
その前に最後の前置き。

最後の前置き

曲の構成とはなんだろうか?
次のような定義を採用しようと思う。
「人間が、曲をいくつかの時間的な出来事や流れの組み合わせとして認識したもの」
これは当然、人間の認識の中にしか存在しない。この意味では曲構成の研究=人間の認識の研究だ。おれは他人に詳しいわけではないので、この文章は自分の曲認識の研究だ。当然、正しいとか正しくないとかは全く保証できない。方針として第一に自分にとって素直に書けていれば良いと思っている。
だから仮にこの文章を読んで役立てようと思う人間がいるのなら、具体的な理論を受けとれとは全く思わない。各々が好きな部分を拾うなどして、あくまで自分で自分の認識を研究して理論を作って頂ければと思う。


ようやく本論を始める。
対象は自分の興味関心から、大体下のような感じの曲に限定する。

  • 尺が1分~3分
  • 聞いていて展開が意識されるような曲
  • ジャンル的には音ゲー曲、ゲーム音楽、ポップス、アニソン、クラブミュージックらへん

話はストーリーが上手く行く順に進めようと思う。まずはサビとドロップをまとめて呼ぶ名前が欲しいので、それを導入していく。

サビとドロップの拡張概念Sの導入

さて、まず作ろうとしている理論の体系の規則として次の2つを認めることにする。

体系規則1. 曲が落ち着いたなら手前に盛り上がりがある。
体系規則2. 曲が盛り上がったらその後に落ち着きが発生する。

落ち着き=終わった、あるいは一段落ついて次の展開に行った としよう。

この2規則の妥当性はどうだろう?反するものが浮かぶだろうか?
「落ち着いたけど、盛り上がりが手前にない」
「盛り上がったけど終わりというのがなかった」
人間の認識上あんまり起こらないような気もする。

ひとまず反例を明確にイメージ出来ないし、今回の前提である「聞いていて展開がきっちり追えている曲」についてはこれらを認めることにする。

さて、この落ち着きを伴う盛り上がりをSと命名することにする。

これは最初に断ったようにサビやドロップの拡張概念(抽象化)になっているだろうか?
よくいわれる曲構成をイメージしてみよう。
・ポップス・アニソンのいわゆる教本的な意味でのサビ
・クラブミュージックのいわゆる教本的な意味でのDrop

ポップスの構成としてよく紹介される例では、サビの後は2番だったり間奏が来て雰囲気が変わったり、曲が終わったりする。クラブミュージックではベースドロップのあとブレイクしたり、ドロップした後で曲が終わったりする。
どちらの場合も、サビ(ドロップ)が来たあとでオチがついて次に進んだり曲が終わったりする構造になっている。
大丈夫そうだ。

ついでにこのSについては次のことも弱めに認めてみよう。

体系規則3. Sの手前には何かしらの準備時間がある。

準備の長さや内容は分からないが、まあこれもそれっぽいだろう。
「いきなり盛り上がりが来たら(?_?)ってなんねんな」と大阪のおばちゃんが言えば頷いてしまう。準備-Sという繋がりはあることが多いと認めてみよう(ただし、経験から準備は存在しない場合も許容する。聞いているうちにいまが盛り上がりなのだと認識することもあり得るからだ)。


さて、ここまでの3つの体系規則によって、Sは(準備-S-落ちつき)という3つ組の形で曲中に存在することになった。

体系規則4. 人間の認識は1~3分間の間に起こる出来事を、何十回もどこかへ行って戻ってという風にジグザグには捉えない。

この規則を入れてみる。すると、3つの展開情報を持つこのトリオは曲構成の認識として大きな割合を占めることになる。この大域的な構成の議論では、この3つ組(準備-S-落ち着き)の配置と機能が曲の大枠を決めると考える。この節はここまでにして、次節で詳しく見ていこう。

※捕捉1
童謡や校歌にはこの三つ組はないとしてみる。クラシックとかにもないとする。頑張ってどこかをSとか呼んでみても良いが、私はもっと良い分類を思いついている。これらは今は体系の対象外ということにして後で議論する。

※補足2
Sはエスと読むと馴染みがない。気が向いたらサビと発音してしまおう。広義サビというお気持ちだ。

(準備-S-落ちつき)トリオによる大域的な曲構成の分類

このトリオを軸に曲を分類してみる。
大域的な分類のため、次の制限を導入することにする。

体系規則5. Sは、(準備-S-落ちつき)トリオとして30秒~1分程度消費するものについてだけいう。

(準備-S-落ちつき)として短いものもあるだろうが、曲構成の中で1~3位程度に影響があるものを議論したいのでこの制約をいれる。

尺の制限を導入したから、実際こういったものを排除できる。
ほんの一瞬の盛り上がり
盛り上がりではあるが、曲の別のところにより主要な印象を与えるトリオがあって、曲全体の中での盛り上がりとは思わないもの。

ちなみに、この時間の長さは経験から設定した。曲の中で主要な盛り上がりだと感じるものは、30秒くらいは周囲を巻き込むだろう。もっと短いこともあるかもしれないが、そういう場合は適宜拡張することにする。


このまま曲をSトリオの登場回数で分類してみよう。
1~3分の曲が対象なので、上の規則から以下で十分なのだ。
1. 一凸型
2. 二凸型
3. 三凸型

0凸型はないのだろうか?1回も盛り上がらない曲。1回も終わった感じにならない曲。まあ無視して良いことにしよう。
4凸型は......作ってみますか?3分で4回サビ......?可能ではあるかも。でも、もはや4凸以上型とでも呼んで隅っこに追いやれば十分な特殊例だとは思う。

この3つのタイプの特徴を見ていく。
予告として、私が知っているパターンを列挙する(次回に全然違う分類をする可能性はある)。説明のために記号をもっと導入したいので、中身は次回ということにする。先に進むには、いわゆるAメロとかBメロの拡張概念も欲しいのだ。あと自分がしっくり来た分類記号もいくつか増やす。

1凸型

  • 単調増加型
  • A-B-S型(90秒程度)
  • Very Long A-B-S型(2分以上)
  • 偽S始まりA-B-S型

2凸型

  • 1番2番型
  • S+S型
  • AS+S型
  • 真S始まり1凸型

3凸型

  • 1番2番+S型
  • 真サビ始まり2凸型
  • S+S+S型

S以外による大域的な構成

最後に大域構成論として、S以外の枠組みで拾った方がしっくり来るものも分類しておく。


竜頭蛇尾ループ型

例:ゲームBGMなど。ある程度の数のクラシックもループはしないがこれに該当する気もする。
イントロでサビと同等の盛り上がりが起こり、そのまま自然に流れていってループするなり完全に他所へ行くなりする。盛り上がりのイントロフレーズはSと呼んでも良いんだけども、曲の終わりと繋がっていないからか印象が異なる......と私は思っている。このタイプの構成に出てくるイントロフレーズはM(モチーフ)と呼んでみる。終わりはしないが曲の顔である構成パーツだ。
ところで、この構成は実は人間の時間認識において「起承転結」に次ぐ二番目の大勢力だと思う。出来事の時間の流れを、最も大雑把に"記憶のひきだし"に入れる手段をイメージしてみよう。それは「起承転結」と「竜頭蛇尾」(最初の衝撃からの鎮火)ではないか?次回、具体例を見る。


ABA型

例:校歌、24小節のピアノ練習曲など。
主に短い曲。世間一般で言うABAB...みたいな繰り返す型じゃなくて、曲全体がぱっと見ABAの3まとまりに見えるもの。メロディ性が強ければM始まりといってみてもよいかもしれない。ちなみに表記は後に定めるAやBとは別で、単にまとまりが二種類あるという意味である。


次回はここで分類したサブクラスの話をしていく。AとかBの記号も導入する。他にも記号を入れることで具体的な曲を記号書き下しすることができるようになる。AとかB以外もいくつか独自のものが入るはずだ。



今回のまとめ

  • サビの拡張概念Sを(準備-S-落ちつき)のトリオの形で登場するものとして定義した。
  • 1~3分の曲をこのトリオの数で1凸型、2凸型、3凸型と分けることができる。
  • 上記の分類に適さない型として、竜頭蛇尾型とABA型もある。

書いた感想

論理通すのむずすぎ。4倍くらい書いて消した。最初、論じかたとして体系規則は公理という形で書こうと思った。だがぱっと見で納得しづらかった。結局、この理論体系ではこういう規則を認めて話を進めます(それでもカバー率は高いままですよね?)、という論法に落ち着いた。こちらの方が納得しやすく感じたので良かった。
具体例を出せてないのはあんまり良くないし、次の話をするまでまだ全貌が見えないというのもよくないと思う。より短くて筋のよい書き方もきっとあるのだろう。IQのお恵みを!

それにしてもサビという語をポップスの外まで持っていきたいだけなのに大変すぎだ。とはいえそのまま使うと語の濫用だし。

ところで、今回の議論では実は音楽ということすら仮定していない(人間が1~3分のあいだにどのように出来事を解釈するかしか仮定していない)つもりなので、同様の尺のものなら別の媒体でも通じるかもしれない。(※もっと尺が長い場合は起承転結や竜頭蛇尾ぐらいの大雑把さでしか捉えられないだろう、ということは注意しておく)

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