sasoriken-games 2026/08/08 00:28

新作『悠久の魔剣鍛冶師』── 剣は残り、人は死ぬ。8月中旬に DLsite で出します

sasoriken-games です。

このアカウントでは『深淵のブリーダー日誌』の話ばかりしてきました。今日は、その裏でずっと動いていたもう一本のご報告です。

『悠久の魔剣鍛冶師』(Eternal Swordsmith)。DLsite に予告ページを公開しました。配信は 2026年8月中旬の予定です。

紹介動画です。53秒、実機の映像だけで組んであります。文章より早いと思うので、先にどうぞ。

ちなみに、この作品のことを今日までここに一度も書いていなかったのは、単純に私の段取りが悪かったからです。 並行して作っていたのに、片方の進捗だけを書いていた。予告ページが出て「まだ言えない」という言い訳が消えたので、今回と別記事の2回に分けてお話しします。本内容ではどんなゲームかを、別記事では作りながら何を間違えたかを書きます。


1. まず、これは何のゲームか

不老のエルフの鍛冶師になって、魔剣を打つゲームです。ただし本作でいちばん重い選択は、打つところではありません。打ったあと、誰に渡すかです。

一日の流れは四つの動詞でできています。

  • 打つ(Forge) ── レシピと素材を選び、炉に火を入れる。鍛冶は数日かけて進む背景プロセスで、その間も店は開きます。
  • 売る(Deal) ── 来店した客の《器》《野心》《倫理》《寿命》を鑑定眼で読み、この人に売るべきかを決める。
  • 見届ける(Observe) ── 売った剣は世界で生き続けます。数日後、持ち主は英雄になるか、暴走するか、天寿を全うするか。その顛末が物語として返ってきます。
  • 継承する(Inherit) ── 人は死に、剣だけが残って手元へ還る。使い込まれた魔剣を鎔かして素材にすれば、そのスキルは次の一振りへ受け継がれます。

工房は一枚のジオラマで、設備に近づいて開きます。右下の赤い台が店頭の展示ケースで、ここに並べた剣が客の目に入ります。

炉の画面です。ここで一つ、たぶんいちばん誤解されそうな仕様を先に。レシピは100種ありますが、最初から知っているのは1つだけです。 残りの99は「自由配合(実験)」で素材を組み合わせて掘り当てます。画像の左側に「未発見(99)」と出ているのがそれです。

この掘り当てが実際どれくらい機能しているかは、別の記事に実測を書きます。正直、私が一度大きく読み違えたところでもあります。


2. 実は、こちらのほうが先に始まっていました

『悠久の魔剣鍛冶師』の構想は、『深淵のブリーダー日誌』より前です。 1年以上前から手をつけていました。当時は RPG Developer BAKIN(C#)で作っていて、そのころ書いた企画書が、いまもリポジトリに原文のまま残っています。この一節です。

  • コア体験:
    • 「世界を救う」のではなく、「魔剣という『異物』を市場に流し、世界がどう歪むか(あるいは救われるか)を観察する」。
    • 「剣は残るが、人は死ぬ」 という無常観と、それを利用した世代を超えた育成。

ここから一歩もぶれていません。いまも文書の最上位はこの企画書で、他の設計書と食い違ったらこちらを優先する扱いにしています。

引っ越した理由は単純で、BAKIN のイベントシートと配列変数では、このゲームの状態量に耐えられなくなったからです。顧客が100人いて、それぞれに寿命と浸食度と信頼度があって、売った剣ごとに世界側でシミュレーションが走る。いまはコアロジックがエンジン非依存の TypeScript として独立し、乱数生成器も差し替えられるので、同じシードなら何百日先まで完全に同じ結果が出ます。

そして、ここからが段取りの悪い話です。その書き直しと『深淵のブリーダー日誌』の大型アップデートが、まるまる同じ時期に重なりました。 片方で「地上戦記」を書きながら、もう片方で顧客の寿命システムを直している日が何週間も続いて、結果として魔剣鍛冶師のほうは進捗を一度も書けないまま完成してしまったわけです。作っている本人が一番びっくりしています。


3. いちばん見てほしいのは、剣が「開く」一瞬です

本作の見せ場は鑑定です。

寒色のヴォイドが開いて、暗転 → 輪郭 → レア度の光 → 紋章 → 数値の順に、真の姿が一段ずつ顕現します。一枚絵をぱっと出すのではなく、0.3秒ずつ焦らす作りです。

上の画像はいいものが出たときです。丁度刃が手前に向いている画像ですが、ドット絵アニメーションで回転しています。
品質110、真価181万G、ユニークスキル《時還り》。こういう剣は滅多に出ません。

そして、あと一歩で伝説だったとき/魂が宿りかけて宿らなかったときには、金色の光が一瞬だけ差して逸れます。 ニアミス演出と呼んでいます。惜しかったことを、数字を読む前に体で分からせたかった。スロットマシンの設計をそのまま借りている自覚はあります。


4. 「この人に売るべきか」── 剣に相性フラグを持たせなかった話

接客の画面です。

左が来店客、右が売る剣と値付けです。客には《信頼度》《野心》《倫理観》《器(適合率)》《寿命》があり、鑑定眼のレベルが上がるほど、見える項目が増えていきます。 最初のうちは名前と所属しか分かりません。

判定の仕組みについて、企画書の段階から一つだけ決めていたことがあります。剣の側に「このタイプの客と相性が良い」というフラグを一切持たせないことです。野心の高い客に強すぎる剣を渡せば暴走する。倫理の高い客に託せば英雄が生まれやすい。それだけで、最適解を計算させる仕掛けは意図的に作っていません。

フラグを置いた瞬間に「正解」ができてしまうからです。正解があるなら、プレイヤーがやるのは正解を探す作業になります。やってほしいのはそれではなくて、「たぶん大丈夫だと思うんだけど、この人ちょっと目が据わっているな」という、証拠の足りない判断のほうです。

上の画像の客は倫理観100・野心15で、渡して危ない相手ではありません。ただし成約の見込みは0%です。支払い上限30万Gのところへ44万Gを吹っかけているからで、売れる相手に売れる値段で売る、というだけのことが毎回わりと難しい。 ここは値付けのゲームでもあります。


5. 剣は残り、人は死ぬ

タグラインをそのまま仕組みにしています。

売った相手の寿命はゲーム内時間で120〜360日です。以前は30〜120日だったのを、意図的に延ばしました。短いと客がすぐ死んで、天寿の死が「よくあること」になってしまう。剣が還ってくる嬉しさと、人が死ぬ重さが、両方薄まりました。

冒険者の母集団は100人。物語の常連であるユニーク24人(それぞれ7段階の関係アークがあり、通うほど話が進みます)と、自動生成のモブ76人。そして、全員いずれ死にます。 ユニークが死ぬと、その二つ名と所属を継いだ「N代目」が能力ひかえめの Lv1 として出てきます。モブは完全に別人として補充され、名前も二つ名も、いま生きている誰とも被らないものが選ばれます(二つ名は人物を指す記号なので、生きている人と被ると嘘になる)。

そうやって世代が回るあいだ、剣だけが残ります。還ってきた剣は、何代の持ち主を経て誰がどう死んだかという来歴を抱えたまま在庫に並びます。それを鎔かせば、スキルが次の一振りへ移る。育てているのは鍛冶師ではなくて、剣の系譜のほうです。


6. 発売の予定と、いま入っているもの

DLsite で 2026年8月中旬の配信を予定しています。 予告ページはもう公開しているので、お気に入り登録していただければ配信開始のお知らせが届きます。全年齢です。

価格はまだ決まっていません。 私の見立てでは1,200〜1,500円あたりですが、確定していないものを書くのは嫌なので、決まったらお知らせします。Steam はまだページを出せていません。 カプセル・スクリーンショット・トレーラーは揃っていますが、残っているのは Steamworks 側の設定と実ビルドの提出で、DLsite が先、Steam が後になります。

以上で今回の話は終了します。本業関係で私は某車メーカーのカレンダーで生きており、長期連休に入ったので、近日中にまた記事を投稿予定です。

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