【大会主催の助け】ノウハウ伝授!格闘ゲームの実況・解説のコツ【第2回】
-----はじめに-----
いらっしゃいませ。格闘ゲーム実況解説のコツを簡単な言葉でお伝えする記事の第2回でございます。話は長くなっちゃってますが、そこはご勘弁を。
第1回は大枠とも言える大会の雰囲気作りについて話しました。
(第1回記事はこちら)
今回は【喋る内容について】です。
実況部分と解説部分に関わってきます。といっても、一連の記事の対象はこれまで実況解説役に慣れていない人たち向けです。どちらかというと気負わなくていい話ばかりになっています。
それでは本題にいきましょう!
【何について喋るか?気にするけど気にしすぎない5つのポイント】
①"全部を喋らなくていい″
誤解されている場合もあるのでまずはこれを。起きてることをぜーーーんぶ話す必要はありません!
全部を喋ろうとすると必ず無理が出ます。
これはゲームへの理解度だとかゲームスピードが早すぎるだとか早口になるだとか、そういう難しさとは違うデメリットがあります。
どうしても聞き苦しくなってしまうのです。
全部喋るやり方が評価されるのは「マジで対戦で起きることをほぼ把握している・自分の中で理論が確立されていてそれに沿って解説できる・口が追いついている・言葉に詰まることなく立て板に水」です。
一つの完成形でしょう。
これをやれとは言いません。
聞き苦しくなる、と言った理由は上記の完成例の失敗版を想像すれば容易です。
「対戦で起きていることへの理解度が足りていない」
(言ってることが的外れ)
「自分の中で理論がない」
(解説に一貫性がない)
「口が追いついていない」
(グダる)
「言葉が詰まって出てこない」
(気まずい)
じゃあどうするか。全部を話さなければいいのです。見方を変えましょう。物事は捉え方を変えれば良くなるものです。
↓(AFTER)
「対戦で起きていることを己が『理解しきれていないこと』を理解している」
(起きたことだけ・理解できた読み合いや強力な攻め方だけを喋る)
「自分の中で理論立ってないことは長く話さない」
(その場その場で起きたことにリアクションを取るだけでOK。[例]「無敵技をガードした後のコンボ、しっかりしてますね!すごいダメージが出ました!」こんなのでいいんです。読みとか前の攻防での技の見せ方だとか安全飛びとか何かしらそこに至る過程と要因があってもそこに触れないで喋れば困りません)
「口が追いつかないなら焦らず喋ればいい」
(無理に話そうとすると実況が聞き取れない、めちゃくちゃ噛む、何を言ってるか不明。喋りが追いつかないことよりもこちらの方がデメリットです。焦らず話して大丈夫です、全部を話さなければいいだけです。何を喋ればいいかは②以降で書きます)
「言葉が詰まるなら簡単な言葉を選ぶ。困ったら言い切りの文言を放つ」
(アドリブでオシャレな言い回しを状況に応じてスラスラ言えるだなんてのは特殊技能です。チャレンジは良いですが、別になくとも困りません。簡単な言葉の基準としては小中学生が理解できそうな単語を選んで話すのが良いです。あとは言葉に詰まりそうになったら「すごい!」「偉い!」「しっかりしてる!」など場面に合った言い切りで一旦言葉を切りましょう。言葉を整理する時間を自分で稼ぐのです)
以上を押さえて喋ったらどうなるかをまとめると「聞いていられるスピードでその場その場で起きたことに即した難しくない言葉が試合を観ながら飛んできてくれる」と喋る側も聞く側もストレスの少ない形での実況になります。
②"見える部分"
何を喋るか、の更なる中身に踏み込んでいきます。
その一つがこれ、『見える部分で起きていること』です。
相手のジャンプを迎撃した、投げが入った、投げを抜けた、コンボが入った、コンボを落とした、なんかカウンターした、無敵技で切り返した、無敵技ガードされた、大ダメージが入った、倒しきりのリーサルコンボが入ったetc……
起きたことを喋る。これは実況の基本です。格闘ゲームではどちらかの体力がゼロになるまでは何かが起き続けます。それを追うことが臨場感を伝えることにも繋がります。
ただ、画面で起きていること・見て分かることというのは視聴者も見れば分かります。なので、①で言ったように起きたこと全部を喋る必要はありません。
では何を話すか。
オススメは、
「インパクトのある場面」
「試合の流れが一瞬緩やかになるところ」
です。
インパクトがある場面というのは、見た目がすごい技の応酬があっただとか、大技が決まっただとか、派手なエフェクトの攻防があっただとか、すごいダメージが入ったとかです。
「ここは盛り上がりどころ!」という場所でリアクションがあると観ている人は共感ができます。
試合の流れが緩やかになるところというのは、投げとか演出が入る超必殺技が入ったとかで物理的に一旦試合展開が止まる場面です。
「さあここからどうするか」
試合展開の切れ目であり再スタート箇所だと伝えることで試合の緩急を見ている側に意識させられます。
時折起きる、お互いが近めの距離でピタッと動かなくなってから急に動きだす、なんて場面も取り上げたいポイントですね。
「両者様子見……動いた!うわー!」とかなんとか。そんなのでもいいのです。みんな同じ気持ち、というのを伝えるのも臨場感の演出に一役買います。
理解している人には共感を。よく分かんないけど観ている人には「ここが盛り上がる注目ポイントですよ!」と伝わる箇所を話すと良いです。サッカーでシュートした瞬間、野球でピッチャーの球を打った瞬間に何も触れずにスルーする実況はいないでしょう?
分かりやすい「何かが起きたら」言葉を発しましょう。
③"見えない部分"
厄介で難しい部分です。見えない部分で何が起きているか。こちらは解説の領域になってきます。
いわゆる「読み合い」と呼ばれる、格闘ゲームおよびタイトルに理解度があると分かる互いに持つ行動選択肢のやり取りに言及すること。
またはここで下手に動くと片方が一方的に勝つ「有利な場面での攻め」について言及すること。
これらが見えない部分に当たります。
これらの結果、②で取り上げた「何かが起きた瞬間」が訪れます。
そこに至るまでの見えない過程を言葉にすると解説になっていきます。
心理戦やリスクリターンに拠る行動、そこには体力差・残りリソース・残り時間も絡んできます。中々難しい領域です。
これを全部理解して的確に理路整然と伝えきなければいけないのか?
いいえ、その必要はありません。
解説は「なくても大丈夫」だし「流れを止める」し「変なことを言ってしまうリスク」でもありますから。
ただ、1試合の中で1箇所でも実況の中に解説パートが入るとなんだか『本格的』な感じがしてくる部分でもあります。
なので、「その攻防は知っている!」という箇所があったならば、それだけ話すといいです。
もう少し詳しく喋ってみたい、という方向けの話も含めて踏み入った話は⑤で後述します。
なお、試合展開が早い格闘ゲームで解説を入れたいなと思ったらオススメ場所はラウンド間です。
相手を倒した行動や試合の流れを変えた攻防に見当がついたなら、ラウンド間の少しの時間が解説のチャンス。ラウンド間でついつい黙ってしまうのを防ぐ効果もあります。
また、ラウンドを跨いでいる間に「誰が見ても分かる」残りリソースを見て、次はどちらの展開が有利なのか不利なのか五分なのかを付け加えるとそれっぽさが増します。
④"視聴者層によって話の焦点を変えているか"
かなり大切な要素です。実況・解説、共に関わってきます。
・この大会&配信を観ている人は既存プレイヤーだらけか?
・新規プレイヤー参入タイミングでよく知らない人も多く観ていると予想されるか?
・ストリーマー目的などそもそも格闘ゲームに詳しくない人が観ていそうか?
話す姿勢、というのは話す相手によって変えるべきです。
上記要素を鑑みて、
・「タイトルを知ってる人たちが観に来ているなら多少詳しく話してもいいかな」
・「新規参入者がいそうならゲーム紹介をメインに話そうかな」
・「初めて見る人向けの視点で話すならゲームタイトルの世界観とか見どころだけ話そうかな」
のように、話す内容は変わります。話せる時間は有限で増えない以上、選択する必要があります。その選択を意識してできていると話に一貫性が出ます。
誰に向かって話しているか。この意識を持つとグッと良くなります。
⑤"知っていることだけを喋ろう"
解説部分でとても大切なことです。今まで触れてきた部分と共通するところでもありますが別項目として改めて取り上げます。
クオリティアップのポイントでもあり、マイク役の自己防衛ポイントでもあります。
『知っているから喋れる。なので実況の合間に解説として喋った』
これでいいんです。完璧です。
では無理したらどうなるか。
『よく知らないけど無理して喋った。実況のペースを遮った上に訂正コメント来たからそれについて訂正したり謝ったりしてたらもう試合展開進んでてグダる』
といった感じになってしまいかねません。
デメリットが目立ちます。
そのデメリットを消す方法が「知っていることだけを喋る」、です。
時折的確に挟み込まれる解説が実況の質を上げてくれます。
シンプルな話ですが、これを念頭に置いておくとお守りみたいなもので、「何か喋らなきゃ…!」という気持ちが減るので気負わずに済みます。
-----おわりに-----
以上、第2回のお話でした。
「全部喋らなくていい」「無理をしない」ことを前提にしつつ、「誰に向かって」話しているかを意識して「わかるところだけ喋る」。
まとめてみればシンプルなことですが、これを意識してやるとかなりスマートな実況解説が実現します。
第1回の要領で雰囲気を作り、今回の要領で話せば無理はないけれどしっかりした内容ができあがります。
難しい言葉遣いも流暢さも必要ありません。なので気軽にチャレンジしてみてください。
次で一旦最後になります。第3回の中身は大きな話から小さい話へ向かった終着点、【喋る際に気をつけるべきポイント】になります。次回も乞うご期待。
ここまでお読みくださり誠にありがとうございました。