山作戰 2024/04/23 22:47

俺が死ぬ日

今後山援隊のコンテンツはnoteに移行します。

軽い内容なのですが

普段からただでさえ読んでもらえないのに
Xにポストしても
タイトルで誤解されて
リンクにさえ飛んでもらえてないのかもだし
そうじゃない理由かも知れないけれど
とりあえず読んでもらえてないけど
自分では気に入ってるnoteに書いた文です


その日俺は
高知の久礼
他にお客さんのいない露天風呂に浸かり
空を見上げていた

寒くもなく暑くもない
高く円を描いて飛んでいるトンビは
半分の軌道が屋内風呂の屋根に隠れて
飛び去ってしまったのかな
と不安になる頃に
半円分また姿を見せる

このまま死んだら最後に見る景色は
この素敵な暮れていく空なんだな
と思った

俺が死ぬのはどんな日だろうか
というより
どんな日が良いかなあと考えてみた

そして
俺の網膜は最後に
どんな景色を見るのだろう

病気で死ぬのなら病院か
在宅なら自宅の天井だろう
つまらなそうだな

街で倒れたら
地面を向いて死ぬのもいい
蟻の行列なんて見られたら素敵だが
意識がある間は
俺にはたかるのは待って欲しい

仰向けになって少し
空を見る余裕はあるだろうか

クルマの事故なら
何の曲が流れてるだろう
好きな曲に切り替える力が
残ってたらいいな
そもそも
カーステレオが無事でなきゃいけない
(ヒトが死ぬような事故で
カーステレオだけ無事なことなど
あるんだろうか?)

水の事故なら昼間がいい
水面の明るさが愛おしいだろう
沈んで水面が遠くなる中
エラ呼吸して平気な魚に嫉妬したりして…
(そんな透明度の高い水で
俺はなぜ溺れ死んでるのだ?)

ふとしたことでひとは死んでしまうし
望んだ通りに
望んだタイミングではきっと
死ねないことの方が多いんだろう

お湯から身体を少し出し
こんな日に死にたくない
という日に死にたくないな
と思った

その日俺はそもそも
なんでこんな日に死にたくないんだろう
明日素敵なことがある日なのだろうか
せめて明日が終わるまで待ってくれ
という
こんな日に死にたくない
なら理解できるな

その日嫌なことしかなくて
明日何かしら
取り戻すようなラッキーをもらって
死にたいのだろうか

それも
こんな日に死にたくない
と思うだろう
わかるぞ


などと何にもならないことを
熱心に考えているうちに
海の色が深く濃ゆくなっている

トンビが姿を見せなくなったので
露天風呂のお湯の中に立ち上がった
さっきより風が冷えているあからんだ
光度の落ちた空を見渡したが
トンビはもういなかった

俺は
この後のお料理と酒が楽しみだから
いまは死ぬわけにはいかんのだ
などと思いながら
露天風呂を出て脱衣所へ向かったのだった

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