百合ゲーム『皆に攻略される百合さんのお話』妹、日田アヤメ
ヒロイン(妹):日田アヤメ
佳日の希望。
淡い希望。相の愛。
姉が大好き。
シスコンな妹さんですね!
差分はあんまりなく、まだ一枚絵がないので、ちょろっと作中文章を載せてみます!
アヤメが物心ついた頃に、もう両親はいなかった。家には姉と、叔母の二人。
そして、これでせいせいしたと、一人で家事が出来るまでに成長した百合に叔母が吐き捨てて出ていったために、アヤメが頼るべきは必然的に姉一人となった。
最初は、心細かった。こんなに、触れれば折れてしまうような儚げに、その身を預けるのは怖くって。
しかし、そんな遠慮はどうでもいいと、百合はアヤメを引っ張って笑った。
追いつくために走って、転んだ。そうして、アヤメは空気の美味しさを知って、痛みの大切さも理解したのだった。そうして彼女は広い世界に浸潤していく。
やがて、人の輪で温もりを当たり前にしてしまい、一時アヤメは百合を蔑ろにしていた時期があった。優しさという低刺激を嫌った少女の反抗を、姉はそれでも無視せずに愛してくれたのを、妹はよく覚えている。
そんな複雑な想いが致命的に絡む契機となったのは、アヤメが壁に記した姉の身長と背比べをしてみて、勝ってしまった時から。
淡くて脆い、シニャックの絵のような百合の微笑みを少し上から見つめて、アヤメは溢した。
『おねーちゃんって、ちっちゃいんだね』
『あはは。アヤメったらあたしが気にしていることを、言ってくれるなー』
『えっと、そうじゃなくって……』
ぷんすかとしている姉の前で、アヤメはそうじゃないと慌てる。そう、違うのだ。
かの点描を彷彿とさせる程、アヤメにとって百合は光の印象でしかなかった。だが、これからそれから少しだって離れたところからそれを見るようになるなんて、それは。
『いや、だなぁ……』
そう、本心からアヤメは思う。自分の世界は思っていたより愛で溢れていた。でも、それが愛であることを教えてくれたのは、最初の優しさはやっぱり姉によるもので。
その光から、遠ざかるのは、成長して縋れなくなってしまうのはどうしても辛い。
だからぽろりと、目から雫は落ちていくのだ。瞬いて、それは輝きとなって主張した。
『ええっ、泣くほどおねーちゃんが小さいことが嫌!?』
『違う、違うの……ううぅ』
妹の泣き顔に慌てる姉に、アヤメは温もりを求めて、百合を抱きしめるのだった。