40Nix 2023/09/13 17:06

【雑記】Wikipedia記事「ダミン語」を編集しました

お久しぶりです

なかなかまとまった時間が取れず実質活動休止中みたいになっちゃってますが、新しい作品の構想はドンドン思いついています。気長に待っていてもらえると嬉しいです。
Ci-enもそろそろ更新したいな~ということで、最近40Nixとして行った活動をご紹介します。
それが表題の通り……

Wikipedia「ダミン語」記事の編集

です。

ダミン語 - Wikipedia
ダミン語はオーストラリア先住民の言語で、ラディル族と呼ばれる人々によって話されていました。現在は文化の衰退とともに使用される機会がなくなりました。
持っている子音の珍しさから、言語学(特に音声学・音韻論)の界隈ではわりと知られた言語です。なんと「息を吸って発音する子音」や、「キス音の逆版」(おまけ参照)のような子音を持っているんです。これは世界中の言語を見ても、今のところダミン語以外に確認されていないそうです。「キス音」や「舌打ち音」なんかも持っていますが、これはアフリカ西南部の言語も持っています。ASMR向きの言語ですね(?)。

このように、ある程度知名度のある言語にもかかわらず、Wikipediaのページがしばらく更新されていなかったんです。かろうじて2020年に記事自体は作ってくれていましたが、英語記事からの機械翻訳で、とても理解しにくいものでした。
これはいかんと思い、この9月に何度か修正を加え、だいぶ読みやすくすることができました。関心のある方はぜひ読んでみてください。まだまだ改善の余地はあると思いますので、気になる点(内容的にでも、文の読みやすさ的にでも)があれば気軽に編集したりコメントしたりしてくださると嬉しいです。なんせ文章を書くのが苦手なもので……。

おわりに

ここまで読んでくださってありがとうございます。かつてCi-enでこんなに言語の話をした記事があっただろうか(いや、ない。でも40Nix的にはあってほしい)。言語関連のWikipedia記事で情報が薄すぎるとか明らか機械翻訳じゃんみたいな記事があったら教えてください。急いで直しに行きます。
X(旧Twitter)の言語アカウントを新設しましたので、興味のある方は覗いてみてください。
https://twitter.com/40netiek
それではまた。Tot ziens!

おまけ:ダミン語とは?

せっかくなので、ダミン語についてもう少し詳しく。
ダミン語は通常の言語とは違って、日常的に用いられる言語ではありませんでした。ラディル族の人々は普段はラディル語を話しており、通過儀礼を行う際に限ってダミン語を用いていたようです。日本で喩えると、神社の儀式で読み上げられる祝詞に厳かな古文体が用いられているのに近いと思います¹。

なお、ラディル族の間では男性だけが通過儀礼を受けていました。その儀式の一環としてダミン語が継承されたため、通過儀礼を受けていない男性とすべての女性はダミン語を解さなかったそうです。

上では音声(子音)について「キス音の逆版」があると書きましたが、キス音(チュッてやつ)がどうやって産出されているか知らないとよくわからないですよね。
一度キスの構えを作ってみてください。できれば人のいないところでやってください。唇どうしがピッタリと合わさっているのは明らかですね。それと同時に、舌の真ん後ろあたりが口の天井(口蓋)にくっついているのがわかるでしょうか。この2箇所を閉鎖することで、唇と口蓋の間に密閉空間を作っているんです。
その状態から、舌の前側~真ん中らへんを下に下げると、密閉空間内の気圧が下がります(=外気よりも低い状態)。そこで唇を開くと、口の外から空気が流入してきます。このときに鳴るのが、「チュッ」というキス音です。
では反対に、舌を上に上げるとどうなるでしょう。密閉空間内の気圧は上がります。そのまま唇を開いてみましょう。「ッパ」という空気が抜けるような音が鳴りましたか?これが上に書いた「キス音の逆版」です。ダミン語はこの音を子音として持っているんです。「パ行、マ行」と同じ様に「ッパ行」があるというわけですね。「ンチュッ行」もありますよ。

ちなみに、舌打ちもほとんど同じ様にして鳴らしています。キス音と違うのは、唇のかわりに舌の先端を歯に当てることで閉鎖を作る点です。動物を呼んだりするときに「チュッチュッ」「コロッコロッ」と鳴らすやつも同じです。舌の前側の閉鎖を作る位置が違うだけで、あとはキス音や舌打ちと同じです。
こういう発音のときに使う気流を軟口蓋吸気流といいます。吸気の反対は呼気なので、「キス音の逆版」は軟口蓋呼気流を使った発音です。後者はダミン語以外に発見されていません。

本文より長いおまけはいかがでしたか?言語の話が楽しすぎてついつい書きすぎてしまいました。また何か面白そうなトピックがあったら書いていきます。

¹こういった言語は典礼言語と呼ばれます。カトリックにおけるラテン語、イスラームにおける文語アラビア語(フスハー)なども典礼言語に含まれます。ただし、ダミン語の場合は漁などの日常的な場面においても部分的に使われたそうなので、典型的な典礼言語とはちょっと異なるかもしれません。

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