「救世主少女」がふりーむ!の審査を通ったのはなぜか?を考える
はじめに
昨年12月に「救世主少女」というフリーゲームを公開しました。
このゲームをふりーむ!様(以下、敬称略)に登録申請している間、下記のととと様のブログ記事を読み、ゲームの内容や描写的に審査に落ちる可能性が十分にあると感じていました。
リンク
(↑ととと様のブログ記事。めちゃくちゃ参考になります。)
しかし、結果的に審査を通過し、無事ふりーむ!にて公開することができました。
そこで、なぜ審査を通過したのか、自分なりに考えた結果をまとめておくことにしました。
記事の性質上、検証とか統計的な裏付けとかは全くなく、仮説というかenc.個人の想像を述べるだけとなっておりますのでご了承ください。また、フリーゲーム「救世主少女」のネタバレを含みます。
なお、この記事はダークな表現(を行いたいフリーゲーム制作者)とふりーむ!の審査基準の共存の方法を探るものであり、ふりーむ!の審査の潜脱を目指すものではありません。
前提
「救世主少女」には、ふりーむ!での審査上問題となりうる要素として、以下の描写が含まれます。
・自傷に関する描写
リスカ痕だらけの腕の画像(OPムービー内)、リストカットをする様子を描いた一枚絵
・自殺の描写
線路への飛び込み(バラバラ死体のドット絵)、高所からの飛び下り(死体のドット絵)、包丁で首を切る(血がふき出すアニメーション、死体のドット絵)
・他殺の描写
包丁で腹部を刺す(一枚絵、死体のドット絵)
以上のとおり、審査に落ちても不思議ではない内容を含むにもかかわらず、ありがたいことに審査を通過したので、「この辺が良かったのかも?」という点を書いていきます。
工夫の余地があるもの
ゲームの基本的要素(ジャンル、メッセージ性、ストーリー等)への影響が少なく、比較的採用しやすいと考えられる方法として、以下の点が挙げられます。
①プレイ推奨年齢の引き上げ
「救世主少女」はプレイ年齢15歳以上推奨としており、推奨年齢以下の方はプレイをお控え頂くように注意書きでお願いしています。
推奨年齢を高めに設定したことにより、多少刺激が強い内容でも許容していただけた可能性があります。
②注意書きを入れる
「救世主少女」では、ReadMe、ゲーム冒頭の2か所に、以下のような注意書きを入れております。
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※注意事項※
このゲームには以下の要素が含まれます。
苦手な方はご注意ください。
また、15歳以下の方はプレイをお控えください。
・ホラー表現
・グロテスクな表現
・集合体、亀裂及びそれらに類する表現
・流血表現
・若干の脅かし要素と追いかけられ要素
このゲームはフィクションです。
実在の人物、団体、事件等とは一切関係ありません。
また、自傷、自殺、犯罪や反倫理的行為を助長する意図はありません。
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このゲームが特に自傷・自殺描写を含むため、最後の行はテンプレートに「自傷、自殺」を追加しています。
若干長くてくどい注意書きにはなってしまいますが、注意書きという予防線を張ることで、刺激の強い内容を許容していただけた可能性があります。
③血を赤ではなくショッキングピンクで描写する。
「救世主少女」には流血表現が結構含まれるので、血を赤以外の色で描くことでショッキング度を下げています。
代替色としてショッキングピンクを選んだのは、赤に近い色であることと、配色を考えてのことです。
この工夫により流血場面のインパクトはある程度低減されたと感じています。
しかし、だからこそ、ゲームのテーマやメッセージ性等によっては採用しにくい場合もあると思います。
自分も結構悩みましたが、「このゲームにおいて真にショッキングであるべきなのは血の赤か?」ということを自問し、「そうではない」という結論に辿り着いたので採用しました。あと使いたい音楽素材がR18作品使用不可だったので、R18-Gにならないようにする必要があったという事情もあります。
工夫の余地があまりないもの
ゲームの基本的要素(ジャンル、メッセージ性、ストーリー等)への影響が大きく、後から採用しにくいと考えられる方法ですが、念のため以下の点も挙げておきます。
①ホラーというジャンル
「救世主少女」はホラー風探索ADVを名乗っています。
ホラーの場合、他ジャンルに比べてある程度の流血表現や猟奇的表現は「つき物」と考えられやすく、審査の通過につながった可能性があります。
②問題となりうる場面がゲームの中盤~終盤に多い
「救世主少女」において、問題となりうる描写が含まれる場面にたどり着くまでは、早くとも15分、普通にプレイしたら30分またはそれ以上かかると思います(OPムービーは除く)。
審査の際のテストプレイが、問題となりうる描写が含まれる場面にたどり着く前に終えられたことで、描写の問題性が表立って審査されることがなかった可能性があります。
要するに、運よく見過ごされたのかもしれないということです。
③問題となりうる描写の描き方
「救世主少女」では、自傷・自殺・他殺を肯定的に描いてはいません。これらの行為に無邪気に憧れるとか、これらの行為により楽しさや嬉しさを感じたり、気持ちが楽になったりするという描写はありません。
自傷に関しては、否定的な描写も大して含まれていません。
自殺に関しては、否定的とまではいえませんが、悲劇として描いてはいます。
他殺に関しては、殺した側が大きなショックを受け後悔する様を描写しています。
問題となりうる行為を肯定的に描かなかったことは、このゲームが「不適切」ではないという評価を受けることにつながったかもしれません。
終わりに
フリーゲーム投稿サイトとして最大手であるふりーむ!に掲載したいという思いと、自分がしたい表現を妥協したくないという思いは、ときに二律背反となります。
自分がしたい表現がふりーむ!の審査に引っ掛かりそうな場合、制作者は(ふりーむ!への掲載を断念するという選択肢の検討も含め)どこでバランスをとるかを模索しなければなりません。
ふりーむ!の審査基準は、(「救世主少女」がなぜか通過するなど)よく分からないと感じられる部分もあり、また、今後いくらでも変わりうるものです。
だからこそ、試行錯誤とその結果の共有が役に立つのではないかと思い、今回の記事を書きました。
この記事が何かしらお役に立てば幸いです。
最後に宣伝ですが、フリーゲーム「救世主少女」を公開中ですので、審査をかいくぐったゲームがどんな内容か具体的に知りたい方は是非プレイしてみて下さい。
以下はふりーむ!の作品紹介ページです。
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