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みみづくえ Astrotec「LYRA Classic」

たまにはクラシックもいいでしょう。

雪の降る夜に、雪が舞うような音を

昔ながらの耳に引っかけるインナーイヤー型(※)のイヤホンです。iPhoneの付属イヤホンと比べると不思議なところからケーブルが飛び出す変化球な形をしていますが、これはShure掛けできるようにという工夫のようです。Classicと言いつつも形は新世代。装着感に個人差があり、耳の穴に差し込むタイプのカナル型イヤホンのようにイヤーピースで調整しにくいのがやや難しいところだったりします。小さいものを大きくできても、大きいものを小さくできない。しかし音質的には大きい方が有利…そんな複雑な事情もあって、時代はカナル型イヤホンに進んだような印象もあります。

カナル型イヤホン全盛の今、わざわざインナーイヤー型なんて…と思うかもしれません。しかしインナーイヤー型にはインナーイヤー型の持ち味があるのです。



本来、インナーイヤー型イヤホンというのはカナル型を含めたイヤホン全体を指す名称らしく、区別するために耳に引っかける形のイヤホンのことをイントラコンカ型と呼んでいる人もいるようです。なかなかまぎらわしい話ですよね…。

本体後部にあるマイクロ多孔質フィルターを拡大してみたところ、細かい金属球がびっしりとくっついています。Bowers & WilkinsのC5やC5 Series 2と似たような構造で、音の散乱を抑えて耳にまっすぐ音を届ける役割のようです。もちろん穴が空いている分だけ音は漏れてしまうんですけどね…。

音質向上のために音を外に出す。必要以上に遮音性を追求する人も多いようですが、音を外に向けて出す設計は構造上の利点でもあるのです。遮音性を捨ててでも音質を求める、そう思うとすてきじゃないですか~。密閉型ヘッドホンと開放型ヘッドホンが違うように、カナル型イヤホンとインナーイヤー型イヤホンはあくまで別腹なんですよ。

LYRA Classicの場合はそもそもインナーイヤー型イヤホンという段階で音が漏れるようにできているので、外で使うよりも家で思う存分音を出して使うのがいいでしょう。少し音が漏れるくらいまで音量を上げてこそインナーイヤー型イヤホンの真価が発揮されるのです。カナル型イヤホンの連投で負担がかかってしまった耳穴に優しいのもいいところですね。

本体前面は通常のイヤホンより網目が多く、強めにフィルターかけてるのかなと思いながら見てます。あくまで推測の域にとどまりますが、こっちは良くも悪くも…な感じなのかな。

ケーブルはPU Silver Wireという名前があるそうです。いわゆる銀線なんですね。少し固めでコシ強めではありますが、クセが付きにくくベタ付きも少なく、一般的なものよりも扱いやすいケーブルです。リケーブルできないのがやや気になるところですが、リケーブルできる方がかえって弱くて壊れやすかったりもするもので、今のところはどっちもどっちなのかなと思ってます。リケーブルできるとケーブル交換で音の傾向を変えられたり、やろうと思ったらワイヤレス化もできたりと、いまどきの楽しみ方があるのはわかるんですけどね。

LYRA Classicはすでに製造終了していて、現在は後継機としてMMCXでリケーブルできるLYRA Natureが発売しているようです。見るからに弱そうなMMCX周りが気になってしまいますが、どうなんだろうなぁ~。

忘れないように音の話

Lotoo PAW5000 MkIIで再生時の比較です。

付属のスポンジパッド、羽根付きイヤーピースは装着してません。

ありがたい

  • 全体的に丸みを帯びた優しい音です。秋の夜長にもいいでしょう。
  • バランス的にはやや高音寄りですが、インナーイヤー型としては標準的です。
  • 音場の広さ。抜けの良さ。インナーイヤー型の魅力を存分に味わえます。

もうちょっとどうにか…

  • 価格の割にはひかえめな解像力。あともう少しだけ欲しかったな…。
  • 良くも悪くもあっさりで、じっくり歌ものに浸るのは向いてないかも。
  • 開放感がある分どうしても迫力不足に。特に低音域の量は物足りないです。
    (付属のスポンジパッドや羽根付きイヤーピース、ヘッドホンアンプの接続で多少改善されます。)

まとめ

何と言っても音場の広さです。前回のT3-02に引き続き空間系イヤホンと呼んでいいでしょう。構造上音場が広くなるインナーイヤー型イヤホンの中で比較しても明らかに広く、インナーイヤー型の新しい魅力を存分に体験できるイヤホンです。カナル型イヤホンとの使い分けも楽しいと思います。新しい世界が広がりますよ。

広さに特化しているからなのか解像度はやや物足りない感じですが、裏返すと聴きやすさにつながっていて、寝ながら聴くにはちょうどいいイヤホンでもあります。例えるなら薄味だけど飽きない塩ラーメンというところでしょうか。本体も軽くて、フィット感もいい感じなのも寝ホン向きなところ。断線に気をつけつつローテーションで使ってます。勉強用、読書用として使うのもいいかもしれません。雪の降る夜に、雪が舞うような音を…冬のイメージがあるのは冬に買ったからなのかなぁ~。

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みみづくえ TAGOSTUDIO「T3-02」

この形、食べたくなりますよね。

おいしそうなヘッドホンを信じて

TAGOSTUDIOはおいしそうなヘッドホンのT3-01が好きで、あのクッキーみたいなT3-01のイヤホン版が出るのか!という話を聞いてクラウドファンディングで先走ってしまったのが今回のT3-02だったりします。思えば人生初クラウドファンディング。文房具のクラウドファンディングも試したことなかったのに~!

お値段38800円(税抜)。クラウドファンディングではもう少し安かった気がしますが、この価格でもお得感は十分すぎるくらいです。本体のおいしそうな見た目もさることながら、この丸っこいケースも愛嬌あっていいんですよね。そうは言っても外でケースに入れて使うことはほとんどなくて、カバンのポケットにポンと入れてしまうのが実情だったりします。

T3-01はモニターヘッドホンだけどT3-02はモニターイヤホンじゃないよ!ということで、T3-02はリスニング用途でいながらT3-01のような冷静さも兼ね備えたいいとこ取りのような音に仕上がっています。ただ、装着感が割とシビアで抜け落ちてしまうというのもたまに聞く話で、イヤーピース選びが必要になるかもよ?というくらいの心づもりはしておいた方がいいかもしれません。

付属のイヤーピースはSpinFitがS、M、Lの3種類。Complyのような低反発タイプのものは付属してないのが注意点でしょうか。どちらもMサイズでそこそこ合ってくれますが、ほんの少しぴったりではない感じがありまして、左L、右Mでもちょっとしっくり来ない感じの…左右で耳穴のサイズが微妙に違うとこういう苦労があるのです。

イヤーピースの芯の部分は一般的なサイズなのでいろいろなものが使えます。SednaEarfit、SednaEarfit Light Short、Ortofonのイヤーピースといくつか試してみましたが、最近はSedna Earfit XELASTICで試してるところだったりします。音的にはくっきり感が増すSednaEarfitで、装着感的にはSednaEarfit XELASTICがいい感じでした。ノーマル、XELASTICともに左M、右MSでぴったり。サイズが6種類あって細かく調整できるSednaEarfitシリーズのありがたみを感じてます。

ケーブルはMMCXと見せかけて回転防止の切り欠きが付いているという、前回のCupidと似たような耐久性重視の構造が採用されています。ただ、金属に直接切り欠きを付けてしまったため互換性がほぼ絶望的なCupidと違い、ケーブルによっては収まってくれるらしく、オプションのバランスケーブルが発売される前からサードパーティー製ケーブルでバランス化してる人も多いようです。売れっ子イヤホンは調べるといろんな事例が出てきていいですね!

ケーブルが耳にかかる部分には針金のようなものが入っていて、耳の形にぴったり合わせることができます。持ち歩きはかさばるかな…と思ったのですがこれが意外といい感じで、細くしなやかなケーブルの扱いやすさもあってそんなに違和感なく収まってくれます。立派な構造の割に遮音性は普通よりもちょっといいくらいですが、家でも外でもそんなに爆音で聴くことはないのでほとんど気にならないんだよなぁ~。立派な構造はね、遮音性よりも音の広さで貢献してるんですよ。

T3-01のTAGOSTUDIOだけあってサポートもしっかりで、公式ページでケーブルが買えるようになってます。付属品と同じ3.5mmプラグのケーブルが5500円(税抜)、2.5mmバランスプラグで10000円(税抜)、4.4mmバランスプラグで13500円(税抜)とやや強気の価格ですが、純正品が買えないよりはずっといいでしょう。断線してしまった時のために事前に買っておくと安心できていいのかもしれません。バランスケーブルでグレードアップできるんだぞ!ということですが、アンバランスの方がいい再生環境がそろってるし、十分満足してるので…という家庭環境的な理由で見送ってます。バランス接続の良さもわかるんだけどね…。

忘れないように音の話

Lotoo PAW5000 MkIIで再生時の比較です。

イヤーピースは付属のSpinFitです。

ありがたい!

  • 聴き疲れしないやわらかい音でいて、出すところはしっかり出してくれます。
  • バランスはやや低音寄り。抜けが良くクセが少ない万人向けな印象です。
  • 解像系と言うよりは空間系。自然な空間表現が楽しいです。

もうちょっとどうにか…

  • 全体的にややゆるめで、もう少しくっきり感が欲しくなることも…。
    (バランス接続でやや改善されるかもしれません)
  • 良くも悪くも乾いた音で、物足りなくなる人はいるかも。
  • 再生機器や曲によっては低音域が目立ちすぎてしまうことがあります。あと少しだけT3-01寄りのバランスなら良かったのに~。

まとめ

音はそんなに書くことはなくて、まとめを書き忘れてしまうくらいで…。もう少しだけ低音域の輪郭がタイトならうれしかったかなくらいです。ほど良いゆるさが聴きやすさにつながっていて、解像度が高かったらいいってものでもないんだなぁと改めて感じたイヤホンでもあります。だからといって解像度が低くはないんですよ。価格相応程度はあるんですよ。もうちょっと装着感が良かったら付けたまま寝てます…。

確実に頭一つ抜けてるのは音場ですが、これも広いというよりは自然な印象でTAGOSTUDIOらしい空間表現でいいなと思うところです。音を響かせることで広く見せかけてるイヤホンとは見える世界が違うんです。気に入ったらヘッドホン版のT3-01もまた違った世界を見せてくれることでしょう。数字的にも02を買ったら01が欲しくなりますよね。おすすめです。

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みみづくえ oBravo「Cupid」

中国語ではイヤホンもヘッドホンも「耳机」になるそうです。

もちろん「みみづくえ」とは発音しませんが、そこは日本人なので~。

黄金の矢か、鉛の矢か

今回の耳机は台湾にあるoBravo(オーブラボー)社の「Cupid」です。オー!ブラボー!思い切り良さそうでいい社名ですよね。金属製で耳に引っかかりやすいような流線型になっているといういわゆるShureがけできるタイプのイヤホンです。耳の後ろからケーブルをぐるっと。よく見る形ではありますが、この「Cupid」はまだ店頭で見たことはありません。箱を見ると吊り下げられるようになっているので、本国では吊り下げて売られているのかなぁ~。

ドライバー構成としては高音域用に8mmプラナ・ーマグネティック(平面振動板)ドライバー、低音域用に6mm・ダイナミックドライバーを積んだハイブリッドな感じになっています。今となってはいろいろなメーカーが発売しているハイブリッド型イヤホンですが、平面振動板のハイブリッドはそう多くはないと思います。

種類としては

  • ベーシックモデル(19500円)
    本体、一般的な3.5mmプラグが付いたケーブル
    (ちゃんとケーブル付いてるよ!)
  • プレミアムモデル(35000円)
    本体、Newton バランスケーブル(2.5mmバランス)、2.5mmバランス→3.5mmアンバランスへの変換アダプター
  • アルティメイトモデル(39800円)
    本体、Newton バランスケーブル(2.5mmバランス)、2.5mmバランス→3.5mmアンバランスへの変換アダプター、2.5mmバランス→4.4mmバランスへの変換アダプター

と3種類。けっこうな価格差があるのでケーブルや手元の環境とご相談というところでしょうか。手元にあるのはベーシックバージョンですが、Newtonとそっくりないいケーブルをイベントでいただきまして、ありがたく楽しませてもらってます。(※)

いいケーブルこと、Newton単品ではプレミアムセットが21800円、アルティメイトセットが26800円になるそうです。ベーシックモデルより高いぞ!なんてことだ!



製品版とは微妙に異なる可能性があります。ご了承ください。

独自規格のケーブルは音のために

ケーブルはよくあるMMCXと見せかけて、プラグ側と本体側に切り欠きを入れて凹凸で組み合わせるような形の独自規格(oBravo-MMCX)になっています。不意にケーブルが回転して摩耗しない分だけ接触不良を起こしにくく、故障しにくい構造になっているのがいいところで、oBravoの上位機でも同じ規格が採用されてます。ケーブルがキツキツでなかなかつながってくれなくてどうしようかと面食らいましたが、そこは壊さないよう冷静に。本体を持って差し込もうとするとツルツル滑るので、思い切って本体を机の上に置いてトンと押し込むくらいでもいいと思います。外す場合はFinalのMMCX ASSISTを使うと少しは楽になれる…かな。

一見サードパーティーのケーブルも収まりそうに見えますが、ケーブル側が奥まで入らないようになっていて互換性はありません。独自規格にするなら別にMMCXみたいな耐久性不足の規格に乗らなくてもいいのになと思うのですが、そこは既存の規格を流用した方が安いみたいな予算の問題もあるのかなぁ~。

余談ですが、ベーシックモデルに付属する布巻きケーブルは上位版のeamtシリーズやeribシリーズと同じものになります。そう、何十万円もするアレやお値段3桁万円の上限突破を果たしたアレと同じケーブルですよ。文房具で言うとパーフェクトペンシルの鉛筆みたいな。そう思うとベーシックケーブルにもありがたみが出てくるってものです。

忘れないように音の話 - ベーシックモデル

Lotoo PAW5000 MkIIで再生時の比較です。

付属のイヤーピースは耳が痛かったのでFinal Eタイプを使用しています。

ありがたい!

  • 平面駆動型らしいカチッとしていてよく伸びる高音域が特徴的です。
  • バランスとしては低音寄りのかまぼこな感じです。
  • 平面駆動型ならではの存在感と切れ味がありすぎるくらいの高音域を抑えるように、中~低音域の厚みでバランスを取っているような印象です。例えるなら曇り空の中から突き抜ける一筋の光というところ。自然と中~高音域にフォーカスが当たり聴き疲れしにくいのもいいところでしょう。低めの女性ボーカルものがいい感じです。
    (oBravo製のイヤホン共通の傾向ではありますが、Cupidでは中~低音域の厚みがより強めに感じます。高音域のクセがだいぶ抑え込まれているような…。)

もうちょっとどうにか…

  • 低音域はややゆるめで、低音域に解像度を求める人は物足りない感じあるかも。
  • 音場はそこそこありますが、oBravoらしさとしては微妙なところ。
  • 暖色系でややこもる感じがあります。いまどきのイヤホンらしい弱ドンシャリでスパッとした明瞭感は他のイヤホンに譲りましょう。

忘れないように音の話 - Newton バランスケーブル接続後

ありがたい!

  • 全般的に音の輪郭が引き締まることで分離が良くなり、音場も少し広がります。
  • バランスとしてはベーシックモデルよりも少し低音寄りで、迫力が増します。
  • バランス接続にありがちな迫力不足な感じや分離が良すぎてカリカリした感じが出ないように、さらに低音域を底上げすることで上手く仕上げている印象です。解像度が上がって男性ボーカルもいい感じになります。

もうちょっとどうにか…

  • バランスでもこもる感じは残ります。むしろそこがいいところですが…。
  • 環境によっては低音域が強調されすぎて違和感を感じるかもしれません。全体的なバランスとしてはベーシックモデルの方が好印象です。
  • 情報量が多くなった分だけ全体にフォーカスが当たってしまい、聴き疲れしやすい印象があります。市販の高額モデル(おそらくBA型多ドライバー機)を参考にしたチューニングが裏目に出ているところかもしれません。アンバランスに変換すると少し楽になりますが、音場や分離は犠牲になるので好みが分かれるところでしょう。

まとめ

いいケーブルをいただいたものの音的な好みが合わなくて、結局はベーシックモデルの構成で落ち着いてます。厳しいことも書きましたが、2万円台でこの音なら大満足ですよ~。

oBravoで35000円、38000円出すならケーブルが交換できないタイプのエントリーモデル、erib-7aerib-6aの姿も見えてくることでしょう。Cupidよりも高音域重視の構成になっていて、また違った意味で楽しいイヤホンだったりします。高音域のクセが強めに出てしまう面はありますが、そこも楽しみどころなのです。

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