「ガラクタの森のエデンにて」あとがき

このページは自作ゲーム「ガラクタの森のエデンにて」のあとがきです。
Extraを含めた作品全体のネタバレを含んでいますので、クリア後の閲覧を強く推奨いたします。


★★制作終わった所感などの雑記はこちら:【雑談】3作目を公開しての雑感(ネタバレなし)


もはやいつものことですが長文です。あと、語る作者のドヤ顔が浮かぶのが嫌って方は十分気を付けてください!







制作のきっかけなど

ティラノゲームフェスに参加したい!ティラノスクリプトでさくっと短編を作ろう!と思ったのが「ガラクタの森のエデンにて」制作のきっかけです。
もはやお家芸かってくらい、気付けばシナリオも制作期間もボリュームアップしていました。

少年と青年が主役の物語にしよう、というのは最初から決めていました。理由は茶川あくたが少年と青年という組み合わせが好きだからです。
既存作でもそれとなく少年&青年という要素を混ぜ込んでいましたが、一度くらいは全力で少年青年ゲーを作りたいと思っていたため、今作の主人公たちとなりました。


作品全体の話

本作の主人公は、冒険物語の主役(勇者)となるような人物ではなく、勇者の親友、勇者の息子といった位置にいる人物たちです。エファとアリヴィオ以外の登場人物も、勇者(アダン)という存在に大なり小なり影響を受けている人たちです。
脇役にされがちな立ち位置の彼らが、主役である人物から何を感じ、どのように生きようとしたか、そんなお話になりました。


作品で伝えたいメッセージはずばりこれ!というのは特にないのですが、「何事も良いことばかりでもないけれど、悪いことばかりでもないよね」というのは随所でふんわり意識していたと思います。

ある物事に対してひとつ嫌なことがあったからといって、全部なかったことにすれば幸せだったのか。だからといって「あの人も悪いところばかりじゃないんだよね」と一縷の幸せを信じて我慢するのがいいことなのか。両方あると思います。
そういったどちらにも割り切れない難しさに悩んだり、それによって時に周囲を巻き込んでこじれたり、簡単には逃げられない現実に溜息ついたり。世知辛い。

エファもアリヴィオも作中で多くの後悔をしていますが、ではその選択をしなければよかったのか?というものはたくさんあります。

エファがアダンへの献身をやめたり旅を諦めるよう引き止めていたならば、アダンはもっと早く精神崩壊していました。そもそもアダンと旅に出るべきではなかったのかといえば、あの旅が無ければ野営地でアリヴィオと出会うこともありませんでした。
アリヴィオも父と兄と旅を続けていたならばどこかで戦死していたかもしれませんし、エファから記憶を奪うことを選ばなければエファは間違いなく衰弱死していました。
当然、エファもアリヴィオも、選ばなかったら選ばなかったらでもっと良い結果になった可能性もあります。

それでも多くの選択を重ねた結果が、本作のEND1のエファとアリヴィオになります。色々なものを失っても、ほんの少し残ったものでささやかな幸せを掴んでほしいなと思い、お話を締めくくりました。



各章のコメントと簡易解説

◆Chapter.1「親友」
「エファ」と「現在」の話です。
舞台が"崩壊"という災害によりほぼ滅んだ世界であること、小さな島でエファたちがどんな生活をしているか、現在に焦点を当てた話になっています。
記憶喪失の主人公は昨今珍しくもないですが、あの世界では"崩壊"の影響(精神的ショック)で記憶を失っている者は多く、エファもその一人に過ぎない、という位置付けです。

ちょっと楽しい感じを出すために(あとティラノスクリプトの機能を使ってみたかったのもあり)探索マップを入れました。特に自宅はこんな感じで生活してるんだろうな~という同居人たちの暮らしに妄想を巡らせながら描けて楽しかったです。


廃小屋のシーンは書きたかった場面のひとつです。むしろこの場面を書くために世界設定を詰めていったまであります……。

なんとなく気付いている方も多いと思いますが、エファ=ドイツ語の「Eva」=イヴ、アダン=フランス語の「Adam」=アダムで超有名なあれになります。結局ふたりはアダムとイヴにはなれませんでしたが……。前作といい創世記ネタ好きですね

ちなみにアリヴィオはその辺りのネタは一切関係ない、ポルトガル語で「安心」を意味する「alivio」が名前の由来です。


◆Chapter.2「楽園の護り手」
「アリヴィオ」と「過去」の話です。
Ch1のアリヴィオ視点にアリヴィオの過去+エファとの出会いなどを絡め、どのようにして現在まで至ったかの話になっています。
冒頭では旅人、中盤の野営地編ではオレガノやへルックなどCh3で重要人物となるキャラも複数登場します。

アリヴィオは口数が少ないものの、内心ではかなり色々と考えているということを彼の視点によって書くことができました。地の文がたくさん書けるノベルゲーム形式なくしてその人物像は描ききれなかったと思います。

アリヴィオが父アダンや兄フラテとの旅をやめると決断したのが15歳、エファがあの野営地で不安定なアダンを身体を張って支えていたのが15歳と、そのあたりの対比も意識しています。
野営地編の最後の独白にあったエファ=「鞘」はダブルミーニングです。(アリヴィオはそういう意図では語っていませんが。)


END2で村人がガラクタの森に"魔獣"がいると語ったのは、かの草原にいた"魔獣"と同じ行為を彼が行なっていたためです。楽園を守るために道を踏み外したのは父親だけではなかったようです。
また作中では明記されていませんが、エファは家とその周囲以外の外出を許されていない軟禁状態にあり、それまでとは異なる「関係」を築いています。


◆Chapter.3「奇跡なき世界にて」& Last Chapter
「エファとアリヴィオ」と「未来」の話です。
"崩壊"の混乱も大半が収束し、再び変化しつつある世界の象徴として、アダンの名を騙る旅人やかつての仲間であるオレガノがある思惑で島へやってきます。
そして騒動のさなか記憶を取り戻したエファと、それを受け入れざるをえないアリヴィオが、過去を清算した上でやっと未来へ歩み始める話です。

島の外からの来訪者によってエファは内側から、アリヴィオは外側から存分に暴力を振るわれます。楽しかったです。
エファはディープ以上のことはされていません。一応!念のため!

オレガノは旅人のせいで正気を失ったとか騙されたとかではなく、アダンたちと旅していた頃から「理解したかった」ため、そういう存在を見つけられたことにむしろ安堵し、全て自分の意志で行動しています。何も変えられなかったかわりに、友人であるエファの考え方に近付きやっと「理解できた」ことが、彼女にとっての心の支えになっています。騒動の後、島を去った彼女たちがどのように旅をしているかは、彼女たちと、手紙を受け取っているマロウしか知りません。
ちなみにオレガノの花飾りは芍薬→馬酔木(あせび)に変わっています。気になる方は花言葉をググってね。


Ch3とLast Chapterはどの場面もテキストを書くのに時間がかかりましたが、ガラクタの森でのエファとアリヴィオの氷解~エピローグは特に大事に仕上げました。書きたいと思ったシーンは全部入れました。お弁当は渾身のいちゃいちゃ(?)シーンです。
エピローグ後のエファとアリヴィオは、世界や周りほど大きな進歩はないけれど、小さな歩みをゆるやかに二人で一緒に進んでいきます。


◆Extra「ある嵐の夜にて」
本編のその後の話です。
Last Chapterが7月頭、エピローグが8月、この話が9月上旬くらいの想定です。

しがらみが無くなったからすぐに全部すっきり解決というわけではなく、その後まだ少し尾を引くものもあるよね、という方針で書いています。

記憶を全て取り戻したことで、しばらくエファは本人の意志に関係なく豆腐メンタル状態が続きます。本人も薄々その自覚はあるものの、作中でマロウに相談するのも迷っていたように、アリヴィオにもなかなか言い出せないままでいます。
アリヴィオはエファをよく見ているので同居人がそんな状態にあることになんとなく気付いていますが、今まで散々エファに干渉したこともあり、求められてもいない行動に出ることを躊躇います。
が、そのままじゃまた繰り返してしまうのはお互い理解しているので、嵐の夜の日、アリヴィオが先に歩み寄ったことを契機に、エファもつらい時はちゃんとつらいと伝えるようになります。


超余談ですが、2019年某日の夜に台風の音がうるさすぎて眠れなかった時に思い浮かび、次の日に一気に書き上げたお話です。田んぼや川の様子を見に行ってはいけない。


◆Extra「ある旅人の手記①②」
あの人の手記です。
旅人の出自、何も特別な力を持たないある一人の人間の吐露、ある研究者の思惑の一部などが綴られています。

旅人もまたアダンという存在にいい感情を抱かなかった人物の一人ですが、若い頃から特別な才能を持たず何をやっても中途半端な自分に強い劣等感を持っていました。教師だったあの人は、彼のような学生を多く見てきたことで何か思うところがあったようです。それもまた「優しさ」のひとつだったのは間違いないのでしょう。


おわりに

長くなってしまいましたが、本作をプレイしてくださった方、本当にありがとうございました!

続編や関連作については現時点では未定ですが、この作品関連でやりたいな~と思っていることがいくつかあるので、のんびりやっていこうと思います。
今後も思い出したころにそっと見守っていただけたら嬉しいです。

茶川あくた

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