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2020年 03月の記事 (1)

ウェノトラット 2020/03/14 05:04

謎の異世界短編小説掲載とか

具体的なサークル活動はしていないのに、相変わらずアンゼリ会さんがやってるブロマガへの週一の寄稿は続いていて、我ながら割とビックリしている昨今です。
新たにSteamにゲームを出したりしている方が参加したりと賑わってきました。
合うか合わないかはわかりませんが、読んだことのない方は一度どうでしょう。

……さて今回は、活動開始まで何も更新しない方がいいか、それとも……
ということを考えていまして、まあしないにこしたこともないかと思い直し、
寄稿した文章から持ってこれそうなのを記事にしようと思ったわけです。

そんなこんなで第13回で突発的に書いた短編小説を掲載します。
(文字数的にはツイッターの20ツイート分くらいのようです)
なんで突然小説……ということになったかという経緯は元の寄稿文をどうぞ(オイ

……そもそも当サークル、というか私個人としては、
「面白そうなら何でもやってみる」くらいのスタンスなのですな。
だからこういうのもアリかもしれない。
いっそ、なろうのアカウントでも取って小説公開する人にでもなったら、また新たな知見も得られそうですが……そこまではちょっと悩む。


まあそんな感じで、短いので暇潰しにでもどうぞ。
寄稿時に書き殴ったままのもので新たに推敲もしていませんが……。
あ、異世界とは書いてますが転生とかはしないよ。
その辺、小説業界ではどういう定義なのかとかすら知りませんが……ふがふが。

↓↓↓ 以下、謎の読み物




異世界短編小説シリーズ

~魔葬士ティリカと蒼送の雲~

「だからさ、一口に優しさと言っても、スベスベした優しさとかベトベトした優しさとか色々あると思うんだよね。ラサラはどう思う?」

「色々ある、ですか?」

どこか楽しそうに語りかけてきた彼女、
魔法葬儀演出士であるティリカさんに間の抜けた返答をしてしまう。

魔葬士といえば戦力にならない最下級の魔法使いがなる職業であり、
どこか暗いイメージも強いが、彼女にはそれを覆すような内側からの溌剌さがあるようだった。

歳はそう変わらないはずなのに、
滲み出る自信に触れると年上のようにすら感じてしまう。

「うん、例えば貴方のお父さんはキラキラした優しさの持ち主みたいだったから、
 最後はさ、小さな光魔法を青空いっぱいに散りばめて……
 そういうのが良いかなって、ちょっとあざとすぎるかな」

家族をかばって魔物に殺されてしまった父の葬儀。
単なる市井の人である父の人となりまで調べて演出の設計図を描いているティリカさんに、私は自然と好ましさを覚えていた。

「葬送の紅炎もこんなにたくさん置くんですね。
 前の村長さんのお葬式のときに来た魔葬士もやっていましたけど、
 数はこれの半分以下だったと思います、魔力は大丈夫なんですか?」
「任せといて、これでも魔神討伐隊の一員だったんだから」

えっ、と、思わず声に出してしまった。
単純に驚いたのもそうだが、もし本当なら高位の魔法使いのはずなので、
なんでこんなところで、こんなことをやっているのだろうかと思ったのだ。

「……冗談よ」

ティリカさんは、静かに背を向けてからそう言った。



葬儀はルミカミール教の様式で、緩やかに、そして賑やかに進んでいく。
とりわけ洗練された魔葬の技は人々の目を奪ったものだ。
私も、天井の高い聖堂の空を舞う鳥型の魔力塊などには驚かされた。

しかし信仰に熱心でなかった父に女神が悪戯心を発揮してしまったのか、
皆が外に出る段になってから、まるで巨人が泥靴で踏み荒らしていくかのように空は薄暗く染まり始める。

「この先の演出が少し無駄になっちゃいましたね」

共同の埋葬所へと向かう前、空を見ながらそうティリカさんに言葉をかける。
しかし慰めるつもりでかけたその想いを染み込ませる必要は、
彼女には無かったようだ。

「大丈夫、今日というこの日を暗いまま終わらせたりしないわ、ほらっ」

魔葬士は静かに言の葉を紡ぎ、両手を空にかざし、次の瞬間、
私の眼前はただひたすらに、青く、青く。

「ようやく笑ってくれた、ラサラ」

言われて振り向くと、彼女は嬉しそうに笑っていた。
自分もこんな風に笑えているのかと思うと、急に涙がこぼれ落ちてきた。

「私も結構調べたけどさ、本当はずっと辛かったんだよね?
 私が足手まといにならなきゃお父さんは死なずに済んだんだって、
 自分を責め続けていたんだよね」

沈黙、すなわち肯定。
私は人目をはばからず大声をあげて泣いた。
どうして私は、あの時、情けなくて、悔しくて、ひたすら惨めで。

私は私の嗚咽だけを聴いていた。
やけに周りが静かで、心も静かで、
上手く言えないのだけれど、それは私が私を待っているかのようだった。

「ほら、いつまでも泣いてないで、最後のあれ、いくよ」

ティリカさんの腕が光り、次に空が光った。
キラキラと白い優しさが空一面に踊って、私の心も踊るかのようで。

しばらくの間、私は一生懸命にそれを見ていた。
何故だかわからないけど、幸福感と焦燥感とを同時に感じながら、
それを目に焼き付けるように、必死に、必死に、空を見上げていた。


「ありがとうティリカさん、私、もう泣かないですから」

少し落ち着いた私は、もう一度なんとか笑顔を作り、
恥ずかしさを拭うように考える間もなく言葉を続ける。

「本当にありがとうございます。
 こんなに素敵な魔葬士が来てくれるなんて、
 貧乏な我が家には信じられないことで……」

そこまで言ってから、急速に思考が冷える。
冷えた温度のままぐるぐると頭の中を駆け巡り、やがて全てがはっきりとした。

二人共が、見つめあった。
二人共が、もう笑ってはいなかった。

そう、元々貧しかった私達家族は、
あの日からますます苦しい生活を送ることになった。
まだ小さかった私も働き始め、母も隣町に出稼ぎに出たりと苦労したものだ。

そのおかげで少しずつ余裕も出来てきていたけれども、
あの頃は当然、父の葬儀をまともにすることなんて出来なかったし、
ましてや魔葬士を呼ぶなんていう贅沢、そもそもするはずがない。

つまり、この夢のような光景は、かつて私が贖罪の意識から願った景色は、あの時まだ小さいはずの私がこうして大きいように、恐らく、きっと、夢なのであって。
そして本当の私は、今思い出したように、もう二度と夢も見れないのであって。


ティリカさんは私の様子をじっと見ていたけれど、
やがて初めて見せる表情で、どこかすがるように言った。

「ねえラサラ、私、上手くやれたかな」

ああ、こんな自信の無さそうな顔もするんだ。
彼女がようやく同年代の友達のように感じられた私は、
元気づけるように、自然と笑って頷いていた。

「魔葬士って凄いんだね。いや、きっとティリカが凄いんだよね。
 どんな魔法を使ったのか分からないけれど、
 私の心残りを無くすためにここまで来てくれたんだから」
「凄くなんてないよ。働き詰めだったせいで倒れて弱って、病気になっちゃうくらい頑張っちゃったラサラの方が、私なんかよりずっと偉いよ」

彼女も眩しい泣き笑いの表情でそう言ってくれた。

「ねえティリカ、なんだか暖かくて眠くて、とにかくええと、
 今はもう大丈夫だから、もうここで、終わってもいいって思えるから」
「……うん、分かった」

空を見上げた。
白い光は消えていたけれど、真っ青だったはずの空に雲が流れていた。
それは青い空に溶け込むようで、それを見ていると、意識も溶け込むように薄まっていく。いけない、駄目だ。

「「ありがとう」」

良かった、きちんと言えたから、これで―――



「意識に潜り込むなんてさぁ、アンタが凄いのは知ってるけど、
 通常の魔葬士の演出仕事に加えてサービスし過ぎじゃない?
 追加料金も取れなかったし……」
「エルシィ、手伝ってくれてるのは感謝してるけど、
 そういう守銭奴っぽいところ、私はどうかと思ってるからね」

ティリカと同僚であるエルシィは一仕事を終え帰路についていた。

「私だってお金だけじゃなくてやりがいのある仕事だと思ってるってば!
 ラサラちゃんだって、あんなに苦しそうな表情だったのに、
 最後は安らかな顔で逝けて良かったし、親族に感謝もされたじゃないの」

能天気に語る彼女だが、その実、親友の心労を少しでも減らそうとわざと軽い口調で話していることを、ティリカは知っていた。

「さあ、次の仕事場に行くわよ」
「ええ~、討ち漏らした魔神捜索の旅の方が性に合ってるんだけどな~」
「何言ってるの、今日からはそれも並行して不眠不休の勢いでやるのよ」
「……友達止めようかな……」

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