ニーハオ三平 2021/02/05 12:37

泙本ニノとの別れ

『泙本ニノ(なぎもとにの)との別れ』
そう見出しに書かれた一枚のメモ。

■県の北部に位置する廃村で発見された。

以下に内容を記す。


19■■年 ■月■4日

 ああ 彼女は一体いくつの命を産み 
 一体いくつの次元をまたぐのだろう
 「次は馬鹿みたいな名前で過ごしてみるさ」
 「それでは皆さん 念のため」
 「会えない時のために、こんにちは、こんばんは。そしておやすみ」
 笑いながら そう彼女は言い 門の奥へと消えていった
 
 村を助け 村を亡ぼし 村を救い 村を終わらせた
 その功績と罪を孕んだまま 正義とは言い難い彼女に
 私は頭を下げて 深々と礼をするしかなかった

 次はどんな姿で 我々の前に立つのだろうか
 いや 私はそれを見ることができない
 
 だがせめて 彼女の行く末に光があらんことをただ祈る。
 祈る神すら既にいないこの村で。



メモはここで終わっている。
現在、この村を亡ぼした存在として私は泙本ニノを追っている。
しかし、彼女が存在していたかどうかすら危ういほどに情報はない。
捜査は間もなく打ち切る。年には勝てない。

だからこそ私はこの文章を残す。
村の悲劇が時代の濁流に押し流されても尚、誰もが忘れぬように。
これを見ている君だけでも覚えてくれているように。


(メモの裏に走り書きで文章が書かれている)

願わくば、雌山羊村で私が体験したことを少女たちの行く末を。
彼女が、泙本ニノが誰かに語ってくれる日を望む。

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