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ファンタジーものの記事 (44)

「くるくる回る花火」~7月の短編ファンタジー

          1

 花火の音がぽんぽんとする。
 想子は最後に花火を見たかったけれど、いろんな管を通された身体はもうどこも動かなかった。
 目を開けることさえ難しい。
 たとえなんとか目を開けたことができても、病室の窓のカーテンを開けてと言うこともできないし、窓のそばに行くこともできなかった。
 娘と息子がそばにいて、手をにぎり声をかけてくれていた。
 92歳になる私の最期を見届けるために。

 ああ、これまでいろんな花火を見たなあ。
 まぶたの裏にこれまで見た花火を思い浮かべている時だった。
 まぶたの裏で、花火がくるくるっと回った。
 
 くるくる くるくる

 目が回りそうだと思った時、想子は空に上がった花火を見ていた。
 急に、もわっとした夏の夜の熱された空気が身体を包みこんだ。

「ゆうみちゃん、見える?」
 若い女の人の顔がまじかにあった。
 ああ、この人はお母さんだったと思いだしたとたん、優未(ゆうみ)としての自分を思いだした。
 そのとたん、想子としての自分がだんだんと消えていく。
 あれ、あんなにはっきりと「想子」を覚えていたのに。
 一秒たつごとに、「想子」はかすみのように消えていき、十秒たった時にはもう名前も思いだせなかった。

 3歳になる優未は若い父親に抱っこされ、母親がそばで優未の顔をのぞきこんでいた。
 ぱんっと赤い花火が空に上がった。
 広がっていき、消えていった。

「きれいねえ、ゆうみちゃん」
 母親も空を見上げて言った。
 優未は着せられた浴衣が汗で首の後ろにはりつくのを感じながら、なんだかすべてが夢のようだと思った。
 自分のあやふやさに怖くなって、父親の胸にぎゅっとしがみついた。
「どうした? 音が怖いか?」
 父が優しそうに聞く。
「眠くなったのかしらね」
と母。
 ああ、違う、そうじゃない。
 でもこの感覚をどう伝えたらいいんだろう。
 優未は新しく上がった花火の音を聞きながら、一人とまどった。


 
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「夏至の妖精お茶会」~6月の短編ファンタジー

          1

 27歳になる同い年の従姉妹、花蓮のことが私は大嫌いだった。
 花蓮は名前の通り美しく可憐で、勉強もできた。
 これで性格が悪ければまだしも性格も良いときていたから、私の立つ瀬がなかった。運悪く同性で同い年だったから、親戚で集まると悪げなく比べられた。
 小さなこどもの頃から、私はまるで花蓮の引き立て役だった。
「まあ、かわいいわねえ」
 誰もが花蓮を手放しでほめた。
 その後、花蓮の母親が社交辞令として、
「実奈(みな)ちゃんもかわいいわよ」
とつけたすのが常だった。
 実奈という名前の通り、私はぱっとしない外見だった。色白じゃないし奥二重だったし鼻筋も通っていなかった。
 それでも、目立って不細工なわけでもなかった。花蓮がいなければ、かわいい女の子として親戚にかわいがってもらえただろう。
 成績だって、中の上くらいだった。良くはなかったけれど、悪くもなかった。
 けれど成績優秀な花蓮がいたせいで、私はいつも「できない子」扱いされていた。
 いつも花蓮が光の中にいた。
 その明るすぎる光の隣で、私は影になっていった。
 高校に入った頃、母がふともらしたのを聞いてしまった。
「うちも、花蓮ちゃんみたいな子だったら良かったのに」
 私に直接言ったわけでもなく、私はいないと思って親戚の集まりの後にふと父にもらした言葉だった。
「そういうなよ」
 父はそう言っていたけれど、親戚中で花蓮ちゃんがいい高校に入ったことをほめていたのだから、やはり思うところはあっただろう。
「みんな花蓮ちゃんばっかりほめて、悔しい」
 私には3つ上の兄がいて、兄も私と似たようなものだったから、私たち兄妹だけだったら母も父もそういうものだと満足していただろう。
 それが親戚として近くに私と同じ年の光輝く花蓮がいて、親戚みんなが花蓮をほめるのだ。どうしても自分の娘がつまらないものに見えてしまっただろう。
 花蓮の母親は父の妹だったが、私の母のほうが綺麗だった。母と花蓮の母親と花蓮の3人が並べば、母が花蓮の母親だと思われただろう。そして、私のほうが花蓮の母親に似ていた。
 自分より美しく優秀な娘を産んだ叔母は、花蓮のことが自慢でたまらないというのがだだ漏れていた。母に対して、マウントとも取れるような態度も取っていた。
 だから、より母は悔しかったのだろう。
 それはよくわかる。けれど母の失望は、私の自尊心をそぎ落としていった。
 そしてそれに比例して、私は花蓮を嫌った。恨んだといってもいい。
「なぜあんたがいるの?」
「あんたさえいなければ」
 そう思うようになっていった。

 夏至の夜、花蓮は貸していた漫画をうちに返しにきた。
「すごく良かった! 実奈ちゃんのお勧めってハズレないよね」
 私は花蓮を嫌っていたけれど、花蓮は子どもの頃から私になつこく接してきた。花蓮自身は性格も良くマウントも取ってこないので、内心嫌っていたけれどそれを態度で表すことはなかった。
「これ、お礼」
 私の好きなケーキと小さな花束を買ってきてくれた。
「ありがとう」
「一緒にたべてく?」
「うん。ねえ、妖精お茶会しない?」
 花蓮がいたずらっぽく言う。
「妖精お茶会?」
「夏至の日に妖精お茶会すると、妖精がやってくるのよ」
 たまに、花蓮は不思議なことを言う。
「妖精が、願いを聞いてくれるかも」
 よくわからなかったけれど、まあ遊びとしてはいいかもと軽い気持ちでオッケーした。
 紅茶を3つ入れ、お皿を3枚持って二階に上がった。
 自分たちの分と妖精の分のケーキを用意して、花を飾った。
「窓を開けて、石を鳴らすのよ」
 そう言って花蓮は持ってきたラピスラズリと水晶を叩いてかちっと鳴らした。
「妖精さん、お茶会にお越しください」
 すると、部屋の空気がすうっと変わったような気がした。
「紅茶とケーキをどうぞ、お召し上がりください」
 花蓮はいかにも妖精たちがいるように振る舞った。
 そして、しばらくして言ったのだ。
「妖精さん、実奈ちゃんと私を入れ替えて!」
「えっ?」
 驚いていると、部屋がぱあっと光った。
 
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「五月に降る雪」~5月の短編ファンタジー

          1
 
 新型コロナが現れない世界線の話です。

 朝、病院のベッドから窓の外を見ると、五月も下旬になったのに雪が降っていた。
 近年の気象は猛暑や豪雨などおかしなところが多かったけれど、さすがに東京で五月に雪が降るのは驚きだった。
 綾乃の部屋は四人部屋だったけれど、窓際のベッドだったので八階の窓から街に降る雪がよく見えた。
「あら、雪だわ」
「まあほんと、雪だわ」
 窓際ではない患者二人が、雪を見に窓際にやってきた。
 二人とも元気に歩ける状態ではなかったけれど、五月の雪ともなれば見たくもなるだろう。杖と足を引きずる音が病室に響いた。
 綾乃は28歳だった。
 最初に窓際にやってきて「あら、雪だわ」と言ったのは豊川さん50歳、白髪が目立った。その言葉に釣られてやってきたのが斉藤さん、42歳、焦げ茶に染めた毛が伸び頭頂がプリンになっていた。
 窓際のもう一人は鈴本さん、32歳。
 四人とも、まだまだ寿命とは言えない年齢だった。
 けれども皆、余命1ヶ月~半年と言われていた。
 28歳の綾乃は、余命3ヶ月だった。
 ついこの前まで健康体で、何の問題もなかった。趣味で週に一回ダンススクールに行っていたくらいだ。
 それが、流行の健康ハーブ茶を飲んでいたことでいきなり身体のあちこちが硬くなった。しだいに身体がどんどん硬くなり、最後は石のようになってしまうという奇病にかかっていた。
 充分健康だったのに、なぜ健康ハーブ茶なんて飲んだんだろう。
 綾乃は幾度も悔いたが、今さら悔いても遅かった。
 その健康ハーブ茶は、二年前にマスコミが一斉に勧めだしたものだった。
「この健康ハーブ茶を飲むことでインフルエンザにも感染症にもかからないんですから、他の人への思いやりでもありますよね」
「そうですよね。感染症にかかると、自分だけではなくまわりに移してしまいますからね」
 どの番組でもコメンテーターたちがにこやかに勧めた。医者や医学博士も出てきて勧めた。
 新聞雑誌でも薦められた。
 そのおかげで、その健康ハーブ茶は、全国で爆発的な流行となった。流行となるだけではなく、コメンテーターたちの言葉によって飲まない人間はまるで思いやりがない人間であるかのように思わされた。
 その結果、日本の八割の人たちがその健康ハーブ茶を飲み続けた。150グラムで1,000円くらいだったから、思いやりのない人間と言われないための免罪符としてはそう負担ではなかった。
 自分の意志でというより、「飲んでないの?」と言われるのが嫌で飲んでいたという人も多かった。綾乃もその一人だった。
 綾乃は緑茶が好きだったし、コーヒーが好きだったし、ハーブティはローズヒップティやルイボスティを時々飲んでいた。
 それでも、まわりからの「飲んでないの?」という同調圧力は思った以上に強かった。
 どこか砂のような味がして好きな味ではなかったけれど、みんなに合わせて飲むようになった。家で飲むのだから、「飲んでるよ」と嘘をつけばいいだけなのだけれど、あの健康ハーブ茶を飲むと不思議なことに瞳が灰色がかってくるのだった。
 それで普通の焦げ茶や黒い目をしていると、「飲んでないでしょ?」と言われてしまうのだから面倒だった。飲まずにインフルエンザにでもなれば、「飲んでないからよ」と迷惑そうに言われてしまう。
 綾乃はそれにあがらえるほど強い性格ではなかった。だから、まあしょうがないと好きでもない健康ハーブ茶を飲んでいた。
 ネットのSNSで、その健康ハーブ茶の危険性が言われるようになったのは3か月前くらいだった。一年前頃から、身体が硬くなる奇病にかかる人が増えていた。
 けれど、その原因はまったくわからなかった。
 だから綾乃は身体のあちこちが硬くなっていくほどに、その健康ハーブ茶を多く飲むようになっていた。
 その結果が、余命3ヶ月だった。
 最初に窓際にやってきた50歳の豊川さんは、余命1ヶ月と言われていた。
 豊川さんが、窓の外の雪を見ながらしみじみとした声を出す。
「雪を見るのも、これが最後ね」
「私もそうだわ」
 豊川さんの隣でそう言った42歳の斉藤さんは、余命2ヶ月だった。
 すると、窓際のもう一つのベッドからすすり泣きが聞こえてきた。32歳の鈴本さんは、余命半年だった。
 雪が静かに降るなか、鈴本さんのすすり泣きが響いた。
「どうして、こんなことになったのかしらね」
 50歳の豊川さんがつぶやいた。


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「アクアファンタジア」~4月の短編ファンタジー

          1

「書き順が違う! 漢字もまともに書けないのか!」
 送り先の住所なんて自分で書けばいいのに人に書かせておいて、ずっと文句を言っている。
 50代前半だろうか。医者だそうだ。
「何謝りもしないですませてんの? こっちは客だよ」
「申し訳ありません」
 この大型電気店は全国展開しているけれど、水菜が勤めているW店は客のクレームがかなりひどい。
 東京の高級住宅街にあって客層は金持ちが多いのに、クレームがひどいのだ。
 目の前の客も医者だそうだけれど、ねちねちと30分も怒っている。
 昨日は弁護士だった。
 ようやく医者が帰って、先輩が声をかけてくる。
「嫌な客だったね」
 声が大きく雑な上司は苦手だったけれど、それ以外の従業員の人たちはみないい人たちだ。
 けれど、客がひどすぎた。水菜は四大を出てこの系列会社に入りこの店に配属された。もう四年たつ。
 限界だった。
 でもここを辞めても、再就職先がみつかるかどうか。
 学生時代に就職活動した時も、なかなか受からなかった。ここは卒業まぎわの四年生の1月にようやく受かった会社だった。最初に高望みしたのが失敗のもとだったのかもしれない。水菜はまじめだけれど、今一つ要領よくできないのだ。
 ため息をつきながら、後片付けをして夜九時近くに店を出た。
 夜も10時を回ってマンションの最寄り駅に着き、夕飯を買うためにスーパーに向かった。すると途中に、花屋が開いていた。
「こんなに遅くに花屋さん?」
 そこは、短期でいろんな店が入るテナントだった。たいていはバッグ屋だったり服屋だったり雑貨屋だったりする。
 ぱっときれいな水色の花が目についた。
 水菜は名前のとおり、水色が好きだった。
 手のひらくらいの大きな花が一つ咲いている。花びらが大きく、まるで水のように柔らかそうな花だ。他のつぼみはない。
 思わず見とれていると、奥から女性が出てきた。
「きれいでしょう」
 40歳くらいだろうか。長いやわらかなウエーブの黒髪が似合っている。美人だ。
「あ、はい」
「アクアファンタジアって言うのよ」
 名前もきれいだが、初めて聞く。
「この花ね、一つしか咲かないんだけれど、五月終わり頃まできれいに咲いていてくれるのよ」
「そうなんですか」
「ええ。多年草だから、花が散っても大事にしてあげればまた来年4月になったら咲くわよ」
「へえ」
 値段の札は1000円と書いてある。安いのではないだろうか。
「手入れも難しくないわよ。窓際において、土が乾いてきたら水をあげればいいだけ」
 それなら水菜にもできそうだ。
「それにね」
 女性が水菜の耳元にそっと口を寄せた。
「あなたの嫌いな人を食べてくれるわよ」
「え?」
 驚いて女性を見た。今、食べるって言った?
 女性がにこやかに笑う。
「ふふふ。そんなおまじないがあるのよ。あなたの嫌いな人の名前を書いた紙をこの花に寄せると、その人を食べてくれるっていうおまじない」
 今日の嫌な医者をこの花が食べてくれたらいいのに、と水菜はまじめに思ってしまった。そのくらい嫌だったのだ。昨日の弁護士も。
 水色の大きな花が、まるで水のように揺れた。
 水菜はその花を買った。 


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「大叔母からの遺産」2月の短編ファンタジー


                  1               

 占星術師の大叔母が亡くなって、遺産が遺された。
 享年八十六歳。父の叔母である大叔母は、占い好きの間で大占星術師として有名だった。海外のお金持ちたちにも、幾度も海外に招待されていたほどだ。
 十二年前、私は大叔母のように未来を拓こうと、一生懸命勉強して田舎から東京の大学に入学した。なのに結局三十歳にもなって、心療内科に通院する派遣の独身女性にしかなれていない。結珠(ゆじゅ)という名前を付けてくれたのは大叔母だというのに、いったい何が悪かったのだろう。
 遺産は大叔母の手配した弁護士から宅配便で届いた。配達員から渡された段ボールは、ワインが入るようなサイズの縦長のものだった。
「高価なネックレスとか?」
 どきどきしながら段ボールを開けると、入っていたのは美しい宇宙柄の筒だった。なめらかな手触りで素材もいい。
 筒のふたを開けると、すぽんと音がした。
 入っていたのは、一枚の紙だった。
「紙? 土地の証書とか?」
 けれどそれは、どうやら地図のようだった。まさか、宝の地図っていうわけじゃないよね。
 よく見るとそこには、私の人生が書かれていた。卒業証書くらいの紙に、私の人生が細かくびっしり書かれている。不思議なことに、それは過去だけではなく未来も書かれていた。
 大叔母は大占星術師と呼ばれていたけれど、同時に魔術師とも呼ばれていた。それは、単なるブランディングだと思っていた。けれど目の前の人生地図は、それが魔術であることを私に見せつけていた。まるでスマホのマップのように、詳しく見たいところを手で触るとぐわんと拡大する。どう見ても紙なのに。
「私の未来はどうなるの?」
 なんと私は、三年後の三十三歳で死ぬことになっていた。死因を指先で拡大して見ると、アパートで睡眠薬を大量に飲んでいた。しかも、発見されたのは死後一ヶ月後。
「ちょ、ちょっと、こんな最期、じょうだんじゃないわ!」
 思わず大きな声を出してしまった。確かに大学新卒で就職できたのはブラック企業、四年で心を患って退職。それからずっと派遣をしては休みまた派遣をしての繰り返し、心療内科に通院中で恋人もできない。未来が見えない。
 これが後三年も続いたら? 死後一ヶ月後にアパートで発見される無残な姿が脳裏に浮かんで、ぞっとした。
「これが大叔母さんからの遺産? こんなのってひどい! 大叔母さんは昔の女性なのに自分の力で活躍してすごいって、憧れていたのに。私だって、東京で頑張りたかったのに! 頑張ったはずなのに!」
 平凡な人間ばかりの親族で、大叔母だけがスターのように光り輝いていた。そんな大叔母に憧れて、高校生の頃に熱烈な手紙を送ったことがある。
 すると、大叔母の書いた本『占星術入門』と私の生まれた時の星の配置(ホロスコープ)、簡単な解説が大叔母から送られてきた。
 そこには、「三十歳で大きく運命が変わる」と書かれてあった。
「何も変わらないじゃない! それどころか、三年後に死ぬなんて!」
 涙があふれて視界がぼやけた。
 すると、筒が光りだした。


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