はこの刃 2024/08/15 19:06

初投稿は…!!

なんと!!!


…ゲームの話ではありません。(すみません)

お盆休み、満喫してますか?
僕の作っているゲームには、前日譚というものがあります。
ゲーム内でも度々触れる内容なのですが、
ここでその冒頭部分を小説みたいにして紹介しておこうと思います!!
少しでもゲームの物語の背景描写として、理解の参考にして頂けたらな、といったかんじです。

後々、この前日譚もゲーム冒頭に繋がるシーンまでどこかのサイトで書ききれたらいいなぁ、みたいなのを妄想しながらゲーム制作をしています。

計り知れない時間がかかりそうです…(^^;

応援頂けたら励みになりますっ!!!プランの開設は検討中


以下、ネタバレを含みますので、見たくない方はブラバしてください。










 ルーピンの天啓より

再会編
  1. 東風が吹いている

■■■■■■■
昔々、世界は荒れ果てていた。雨は降らず、作物は実らず、家畜も死んでいく。
困窮を極めた人々は、死にゆく大地の中でただ願うしかなかった。
”どうか、私たちに御恵みを”と。
——その願いは叶った。恵みの雨が降り、大地は緑で萌え、成った大海の幸を獲り、
さらには魔法の力まで人々にもたらした。このとき、人々はこう考え、信じてやまなかった。
”神は本当にいたんだ”と。
■■■■■■■

穏やかな東風(こち)が、この空間に期待と羨望をもたらしているようだ。
草木のなびく音、風車の音、やけに静まった喧噪。風に乗せて、俺の声が響く。
「この時の雨は大地や人々を救っただけでなく、あるものを人々にもたらしたんだ。何か分かる人はいるかな?」
はい!はい!と全員が元気よく手を挙げる。8人しかいない生徒の中で一番年少の子の名前を呼ぶ。
今日初めて学校に来た子だ。
「じゃあ、トニ。」
「はい!魔法です!」
「正解。よく知ってるね。」
今日は天気がいい。外でする青空教室には絶好の日和だ。
ありがとうトニと言い、元気よく立ち上がって答えを言った生徒を座らせる。誇らしげな表情だ。
俺は外へ持ち出した黒板に向かい、スラスラと図解しながら続ける。
「もう少し正確に言うと、その雨は僕たちに魔力をもたらしたんだ。その魔力を使って、普通じゃ到底できないようなことを実現したものを魔法、もしくは魔術っていうんだ。」
持っていたチョークを置き、手を叩(はた)く。書いた図を指さす。
「魔法には『紅』『蒼』『翠』『楔』という4つの基本属性と、『鈴』『冥』のような2つ希少属性がある。世の中だと、紅が火を使った魔法、蒼が水を使った魔法、翠が風を使った魔法、楔が土を使った魔法。そして鈴は光を使ったり回復したりする魔法、冥は身体強化をしたり、効果付与をする魔法が一般的だね。昔の人たちはこれらの魔法を使って、暮らしを豊かにしていったんだ。例えば、『ファイア』。」
掌に小さな火の玉を一瞬で作り出す。生徒たちが、おおー、と声を上げ目をキラキラとさせた。
「これはみんな見たことがあるよね。お祭りの時とか、家の明かりや暖炉なんかに火をつける時に大人の人たちが使ったり。あとは魔物と戦うためにも必要だったりするよね。そういったところで、魔法は人の生活には必要不可欠なものになっていったんだ。」
周りの草花に引火しないように火の玉を自分の周りを自在にぐるぐると回しながら、火の玉を2つ3つと増やしていく。
スゲーー、と声を上げて目をキラキラさせていたり、口をぽかんと開けたまま固まっている子もいて、思わずクスリとしてしまう。
「基本的に魔法を発動するには、使う人が持っている魔力を消費して、決められた式句を唱えることで発動することが出来る。でも使い慣れてくると、その式句を唱えなくても魔法を発動させることだって出来るようになるんだ。」
そういって、あえて自分の前に見えるように薄緑掛かった小さな風の盾を無詠唱で作る。そこに回している火の玉を勢いよくぶつけた。
ぶつかった火の玉は形を保てず、パァン!パァン!パァン!と音を立て続けに鳴らし、火の粉を散らしながら霧散した。
「・・・」
今度は全員が無言になってしまった。目を見開き口をぽかんと開けてたり、その威力に顔を逸らしながらもちゃんと薄目で見てたり。
でもその目には探求心が見え隠れしている。だから俺はこう聞くことにした。
「他に何か見たいものはあるかな?」
案の定全員の手が挙がった。


「調子はどうだい?臨時教師を頼んでから一月も経ったけれど?」
家に帰る生徒たちを見送っていると、後ろから声をかけられた。息をつきながら、快活な声の主へと振り返る。
「エリーナさん。だいぶ慣れてはきましたけど、こんな教え方で大丈夫なのかな、って思ってます。」
「なーに言ってんだい。子供たちの姿を見てたら、あんたの授業がすごくいいもんだってのは、よく伝わってくるよ。」
「あの子達が優秀なだけですよ。ちゃんと話を聞いてくれるし、もっとうまく教えられたら、って思います。」
「謙遜もいいけど、もっと自分に自信を持ってもいいんだよ?私だって、コハク先生から魔法について教えてもらいたいって思ってるんだから。」
「いやいやいや。エリーナさんほど、僕はまだ魔法に精通していませんから。」
「本当かい?私の見立てじゃ、君はもう”国魔大”を卒業していてもおかしくないレベルで、魔法を使えていると思うんだけど?しかも独学で。」
エリーナさんの顔がどんどんニヤついてきている。なんだってこの人は、いつもいつも俺の魔法にたかってくるのか。
この人はここユーニス村で唯一の、12歳までの子なら誰でも通える小さな学校の校長先生だ。
国語、算数、身近な社会科授業、そして初歩の魔法が学べる地元馴染みのあたたかな学び舎。
そんなところに40年前に起きた戦争の、しかも第1線に出ていた女性魔剣士様がいる。それを初めて知ったときはとても驚いた。
本当ならこの学校にはあと1人先生がいるのだが、産休中のため今はいない。
代わりに務まりそうな人がいないかと、白羽の矢がたったのが俺だったのだ。
…もっとも、この学校を卒業してまだ1年経ったくらいのはずなんだけど。
「ただ好きで色々魔法を使ってたらこうなれたってだけですよ。」
そっぽを向きながら、澄ました顔で言う。そろそろこのやりとりも飽きてきた。
「もう、ちょっとくらい良いじゃないかぁ。…推薦状、ほんとに良かったのかい?お前さんなら主席卒業、果ては王家に遣えるー、なぁんてことも叶ったかもしれないのに。」
「買い被りすぎですって。それに、目立つのはいやだし、自由に魔法のことを知っていきたかったから、今の仕事を選んだんです。推薦を受けなかったことに後悔なんて、一度もありません。」
これに関しては、本当にこの道を選んでよかったと思っている。なんせ、この窮屈な”世界”を"飛び回れる"のだから。
ちなみにエリーナさんは、俺に剣術を教えてくれる師匠でもある。
そんな師匠はもったいないねぇ~、と口ずさんでから言う。
「確かに、この村の救世主と言えるような働きっぷりだからね。大人達みんな、お前さんに感謝しているよ。ただ…。」
「ただ?」
身長は俺より10cm以上高いが、近付き下から上目遣いで覗き込むような態勢になる。
「周りに同世代の友達がいない~。…いや?女の子がいないっていうのが、心配だねぇ~。」
「っ!!べ別にそんなこと、興味ないです!」
思わず半身引く。とても心を抉られる一撃を食らわされてしまった。
たしかにそんな機会も経験も無いけども。大きなお世話だ。
げらげらと笑いながら、ま、そのうち見つかるさね、と言われ、この人にはまだ勝てそうにないと思った。

季節は春、3の月の終わり。ようやく雪は見なくなり、少しずつ暖かくなってきたと感じられるようになった。
王都の方にいたら学校は学年末になり、来年度に向けてまた胸を高鳴らせたりしてたんだろうな。
俺の名前はコハク。
この村で生まれて13年。ちょうど去年、このユーニス村に一つしかない小さな学校を卒業した。
今は8歳の頃から手伝いをしていた、花卉(かき)師の仕事をしている。
とはいうものの、この村の花卉師は少し変わったことをする、と先人たちから教わってきた。
村の北外れに大きな花畑がある。そこで色とりどりの花を栽培していて、村の人達とはその場で売買している。
もちろんメインは王都などの大きな街で売ることだが、中には特段希少価値の高い花もあり、
王都さらには隣国に至るまで取引されている花もある。
これが俺たち花卉師の、いや村にとっての収入の大半となっているわけだが、
その花に関わる村の人達から感謝され、かつ俺自身メリットになるようなことを1年前から取り組ませてもらってる。
だから今は学校に行けなくたって、この仕事に誇りを持っている。
明日はそれを実行する日だ。帰ったらたっぷり寝て、明日に備えよう。
そう思いながら、夕焼けの中手提げ鞄を右肩に担ぎ、踏み固められた土の帰路をゆっくりと歩いた。


母と一緒に料理を作る。これ自体珍しいことではないと思うが、何かと色んな人に褒められてしまう。
その度に何とも言えない表情になってしまうのは、よくある話だろうか?
母さんを手伝って「いつもありがとうね」と感謝されるのは嬉しいことだし、
何より自分が料理をするのが好きだからっていうのが大きいんだと思う。
向かい合って二人で夕ご飯を食べながら、左腕を半ば失った母さんを見る。
右利きだったから良かったものの、何をするにしてもやりにくそうに
不自由な生活をしている母を見ていると、やはり自分にも何か手助けできないか?と考えてしまう。
__あれは野盗だったそうだ。俺がまだ1歳のとき、夜中に3人の野盗が家を襲った。
父さんはその時に殺されて、母さんは一命を取り留めたものの左手を失った。
その野盗は母さんたちにとって大切な何かを盗んでいったらしいが、
何を盗まれたのか母さんに聞いても何も教えてくれない。
大切なものだったんじゃないのかと聞いても「あなたは知らなくていい」の一点張り。
悲惨な事件であったはずなのに、他の誰もなぜ起きたのか知らないという。
1つ知っているとすれば、両親はどこかから引っ越してきたらしい、ということだけ。
村の人達から聞いた話だ。これは確かな事なんだろう。
だから俺の中ではいまだ何も消化されていない不可解な謎として残っている。
いつか知れる機会があるのかな?
いつものようにそう思いながらこの日の夕食を食べ終えた。

夜が更ける頃。風呂から上がり自分の部屋へと向かう途中、リビングにいつもの光景が見え顔を向ける。
隅の仏壇だ。決められた位置に立てられた魔道具の明かりが点けられ、母が膝立ちで目を閉じている。
手を合わせるようにし、深くお辞儀をする。
するとその背から、白く半透明な光球が1つ、また1つと天井へゆらゆらと向かい、いつの間にか蒸発していく。
いつもこの光景を見るとなぜか胸騒ぎがして、嫌な気持ちになる。
俺は顔を背け、手も合わせず、おやすみと小さく口ずさみ、そのまま自分の部屋へと向かった。

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