お菓子で小説シリーズ「源氏パイ」
こんにちは、皐月うしこです。
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「お菓子で小説」シリーズ
(1話300文字ほど)
お題「源氏パイ」
朝礼も無事に終わり、さあ朝の仕事を始めようかと気合を入れたところで、とても面倒くさい客に当たったことなど誰に文句が言えただろうか。説明をしても通じない。簡単に噛み下した言い方をしても伝わらない。聞き役に徹すること数時間、ようやく納得して笑顔でサヨウナラを告げるころにはお昼の時間になっていた。
「まじ、疲れた」
昼食のお弁当を持って同僚と過ごせるわずかな時間。こんな日は、午後も大抵ろくなことがおこらない。歯車はいつだってそういう風に出来ているのだ。
「まあまあ、そう言いなさんな」
茶化したようにお茶を差し出してくるかと思いきや、その手には久しぶりにみた源氏パイ。
「インスタ映えの写真でもこれで撮りなよ」
「いや、私インスタやってないし」
他愛のない会話に救われる。口の中に広がる甘さが、午後からの仕事も前向きに変えてくれそうだった。