お菓子で小説シリーズ「ポテトチップス」
三日も続けば定番化。
「お菓子で小説」シリーズ
(1話300文字ほど)
お題「ポテトチップス」
薄い電子版から色とりどりの光と共に無数の音楽や声が重なり合って、現実とは程遠い魔法の世界を提供している。俗にいう映画かもしれないが、彼女にとってこれは彼と穏やかに過ごせるほんのささやかな日常でもあった。
「ふつう、ポップコーンじゃないの?」
いくら家で観賞会をするからといって、コンビニで買い占めたお菓子の系統は納得がいかない。
「いいのいいの、こっちのが美味しいし。ポップコーン飽きるじゃん」
そう言いながらバサバサと適当に購入されたお菓子類たちは、現在進行形で彼の口に運ばれては消えていく。映画の内容とはたぶん関係ない。それに、うるさい。
「え、なに?」
集中できないついでに、袋から取り出した薄いお菓子を二枚逆に重ね合わせて彼の方を向いてみた。食べれるものなら食べてみろ。そう目で訴えながら、彼女はアヒルの真似でニヤリと笑う。
「じゃ、遠慮なく」
ニヤリと笑ったのは彼も同じ。映画の中の魔法使いが小さな悲鳴を上げた頃だった。