架神恭介ワークス 2023/06/12 12:57

「きさらぎ駅? 攻略法は全て頭(ココ)に入っているが?」(レビュー:『きさらぎ駅』)

**オススメ度:★★★★★

大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。ようやく純子への連絡先を知り、純子と会う約束を取り付ける。指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。部屋へ案内され、早速、ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対し、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべる。続けて、純子から「きさらぎ駅」へたどり着いた経緯、その後の出来事などを聞く。純子と別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かうが…**

https://twitter.com/cagamiincage/status/1667741193185423360

 清水崇監督の『村』シリーズにガッカリさせられてきたので、同じく都市伝説モチーフの本作もやや警戒してしまったが、蓋を開けてみれば、思いの外爽快なホラーへと仕上がっていた。これは大当たり作品だ。

 都市伝説「きさらぎ駅」自体は既にわれわれにも広く知られた物語である。それを映像化するだけでも一応の価値はあるのだが、本作はさらにそこから一歩進んだ作りを目指している。本作は大きく分けて二部構成となっており、「既に知られた物語」を映像化したのが第一部だ。

 しかし、それに続く第二部はそこからさらなる飛躍を見せる。そして、ここが重要なところだが、第一部と第二部はラストにおいて合流し、だいぶアレな方向へと突き進んでしまった第二部を、きちんと"ホラー"の枠内へ引き戻して見事に着地させているのである。本作は十分にアレな異色作だが、しかし紛れもなくホラーだと断言できる。

 演出面から見てみよう。葉山純子氏の恐怖体験回想という形で描かれる第一部は、葉山氏の主観映像となっている。POVに近い作りだが、むしろFPSや主観視点アドベンチャーゲームを意図した「ゲームっぽい」作りと言えよう。実際、落ちてる棒を拾って怪異を殴る描写などは完全にFPSのそれである。これを妻は「VRきさらぎ駅」と呼んでいたが、それも言い得て妙であろう。この意図された「ゲームっぽさ」がフリとして後に機能する。

 そして第二部だが(ここからはネタバレ注意!)……

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