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ニーハオ三平 2021/01/20 22:44

夏の迷宮の出口にて

夏の迷宮の出口にて

 「令和最大の失踪事件となりました」
 
 ニュースキャスターは落ち着いた声で雛抱町で起こった集団失踪事件について語っている。この失踪事件の真実を知っているのは私とあの方たち、そして共に闇へと立ち向かってくれた親愛なる友人たちだけだろう。町に潜んでいた雛たちは、父の元へと旅立った。亡くなって雛に成り代わられた人たちは、ようやく今、死ぬことが出来たのだろう。それが幸せなことなのかは、唯一残った雛人形の私には分からない。「元の私」は私が生きることを疎ましく思っているのかもしれないし、恨んでいてもおかしくはないだろう。でも、あの方たちが私の名を呼んで父の元へ行くことを止めてくれたのだ。少なくともあの方たちの中では「光」として存在することを許されていると思う。そう考えるだけで、私は今日も生きていける。

 前髪をあげ、霞さんに貰った髪留めをする。まだまだ髪をあげることには慣れないが、なんだか勇気が湧いてくる。そこまで身支度をしてから思い出した。今日は休日であることを。

 手持ち無沙汰になった私は霞さんの為に朝食のおにぎりをいくつか握ると、二つほど銀紙に包んでカバンにしまい、散歩へと出かけた。朝の陽ざしが私を照り付け、額に手を当てて目に影を作る。空には真っ青な空を貫くほどに大きな入道雲があり、私を見下ろしていた。私の胸元のササンタンカの花が装飾された髪留めがキラリと光っていた。

 


 孤児院の方から子供たちが元気に私の前を駆けていった。
 カチューシャが特徴的な少女は通り過ぎざまに、
 朝日にも負けないくらいの笑顔を見せて手を振ってくれた。

 通りを歩いていると正義感の強そうな警察官がおばあちゃんの荷物を持っていた。
 私がお酒を呑むと、とっても明るくて面白くなるんですねと言うと、
 彼は照れ臭そうに頭をかいていた。

 楽し気な歌が流れるデパートに行ってみるとマスターとメイドさんを見つけた。
 私に気が付いたマスターがニコリと笑って少し会釈をすると、
 メイドさんもいつも通りの笑顔で深々と頭を下げていた。
 慌てて私が頭を下げるころには二人の姿は消えていた。

 池の傍でタバコをふかしながら釣りをしている銀髪の老人に出会った。
 釣りの成果を聞いてみると何も言わず、空っぽのクーラーボックスを見せてくれた。
 タバコを控えるように言ってみると「母親に似てきたな」と言っていた。
 なんだか少し嬉しくなった。

 儀式のあった洞窟に入って、奥にある小さな社にようやくたどり着いた。
 カバンからおにぎりを取り出して、二つ置く。
 あちらで二人で食べられますようにと手を合わせて祈ってみた。
 
 


 外へと出る。新鮮な空気を目一杯肺に入れて伸びをする。
 
 これが私の何気ない日常。
 
 あの日、取り戻したかけがえのない日常。

 しかし今日はちょっと違う。

 ほんの少しの楽しみがあるのだ。

 スマホが震える。

 少し踊った心を静めるために一つ二つと深呼吸。

 画面に映った文字はあの方たちの名前。

 思わずほころぶ口元なんか気にせずに通話を開始した。


 「みなさん!待っていました!私話したいことがいっぱいあって・・・」



 木々の間に私の話声がこだまする。

 楽し気な会話の裏で、林のどこかでカッコウの雛が楽しそうに鳴いていた。



 
 夏の迷宮の出口にて  END
 

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ニーハオ三平 2020/12/07 17:01

Vtuberという作品

私がVtuberとして活動を始める前のお話。

やろうとしていたことがあった。
Vtuberだからやれる。そんな物語が。


終わった世界。衰退した世界。誰もいない世界。
そんな世界にたった一人の少女がいた。

一人で凍え、飢えに立ち上がることもできず、助けてくれる手などどこにもない。
今にも死んでしまうと思われた少女に終わった世界の寄生生物が取りついた。
そこから始まる一心同体の一人と一匹の物語。

少女の半身は黒い泥のような何かに覆われ、
そこからカタツムリのような目と長く伸びた口のようなものが這い出てくる。
寄生生物は男の声で死にかけの少女に話しかけた。
「おい・・・おい…お前。死ぬな。死んだら私も死んでしまう」
「全く。宿主がいないとはいえ死にかけの人間にとりつくとは・・・」
いやはや運がない。そうぶつくさ言いながら伸ばした触手で部屋を漁り始める。

幸運にもそこには死肉を求めてやってきた大きなネズミがいた。
触手でそれを一突きして呑み込み、どろどろに溶かして少女に呑ませた。
しばらくして少女が目を覚ますと自身の体についた泥の寄生生物に気が付いた。

「ようやく目を覚ましたか。早く食べ物を探しに行こう。」
少女は答えない。
「混乱するのは分かる。だが私もお前もこうしなければ死んでいた。」
少女は首を横に振る。
「私のことが怖くないのか?なら一緒に話をしようじゃないか。」
少女は少しはにかんでみせる。
痛々しいくらいにやさしい笑顔だった。

「お前。話せないのか。」
少しの沈黙の後に出た答えに少女はうなづいた。
寄生生物は少し考え、人間のようにため息を一つつく。
「まあ。支障はないか。」
「さあ食べ物を探しにいこう。腹が減って仕方ないだろう?」

少女はうなづき立ち上がる。寄生生物のおかげか足取りは軽かった。
寒さで酷く冷たくなった扉に手をかけ、
痛いほどに冷たいドアノブを回して世界を開く。

雪の山に瓦礫の山。高いビルには亀裂が走り、
ガラスのなくなったいくつもの窓の先は何かの巣穴になっている。
空には大きな鳥が飛んでいて、くるくると少女の上で回り続けていた。

「宿主に名前がないのも変な話だ。」
ふと何かを閃いた寄生生物が語り掛ける。
「ロンリー。ひとりぼっちだから、ロンリー」
「そして私を見ても怖がらなかったたった一人の人間だから」
「お前はロンリーだ。」

こうして一心同体の一人と一匹は旅をする。
ただ生きていくために。ただぬくもりを求めるために。


そんな物語があった。
そしてある「箱」を用意した。
この箱は別の世界に繋がっていて、そこを通して別の世界の人間と会話ができるのだ。

その別世界こそ視聴者がいる世界で、彼らは少女たちの旅路に協力することができる。
少女たちは彼らが「北へむかえ」と言えば北に行く。
そうして視聴者の選択が少女たちの運命を決めていくのだ。

私は本来、寄生生物としてVtuberの活動を始めようと思った。
少女と共に旅をして、視聴者の選択によって変わる未来を見たかった。

しかしあまりに足りなかった。
技術力、演技力、知名度、回線環境。
上げればキリのないほどに問題は山積みだった。
そもそも私はゲームマスターとしてシナリオを動かすのは得意だが、
プレイヤーという主人公には向いていない。
結果として私は普通にVtuberとしてデビューすることにしたのだった。

それからもう一年近く活動をし、多くの出会いと経験を得た今。
そう。今になってこの物語のことを思い出す。

私の物語に主役として活動してくれる存在が、
ふっと見つかった時にこの物語は動き出すのかもしれない。

長くとも一年近くで終わり、世界観を壊さぬような卓越したロールプレイが必要だろう。
私がストーリーを考えるとはいえ、主役も共につくっていかねばならない。
きっとそんな存在は現れないだろう。

でももし、そんな存在がいるのであれば、
私が終わらせることのできなかった物語に結末をもたらしてほしい。

願わくば、素晴らしき存在から連絡が来ますように。
その時はアナタの為にこの物語を再構築しようではありませんか。


ニーハオ三平

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ニーハオ三平 2020/10/01 00:04

【メカクレちゃんになりませんか】企画終了宣言

メカクレちゃんの生まれは悪ノリから始まったのかもしれません。
しかし、それでも可愛らしく魅力的なキャラクターになったと思います。
ですがどうでしょう。体はあれど魂は存在していない。
人形がひとりでに動かぬように、魂が存在しなければ意味がないのです。
この子は生きないのです。

どうもニーハオ三平でございます。
皆さま、今回の企画の拡散やご参加、誠にありがとうございました。
皆さまの支援のおかげで今回も無事魂が決まったことをご報告いたします。

魂に選ばれた方にのみ連絡をしたので、連絡のなかった方々はまた次回があれば参加してくださるとありがたいです。今回はアナタという存在を見せてくれてありがとうございました。

また私と共に審査役を務めてくれた紫恒くんにもこの場を借りて、感謝の念を送らせていただきたいと思います。彼から一言メッセージも受け取っていますので、以下に掲載させていただきます。

紫恒より
応募者よりも緊張している自信がある紫恒です。いやとうとう決まった我が性癖、我が妹の魂、一体どんな子なのかとか、その辺りは生暖かい目で見守ってください!!


それでは皆様。新しく生まれるメカクレちゃんと私の子供たち、あとオマケで私を応援してくださるとありがたいです。


ニーハオ三平









・・・終わると思ったか?

やあや。自身の面白いものをみたいという欲求に駆られてVtuberの体を無償提供している酔狂な武器商人こと私だよ。

ところでスカウトってあるじゃないですか。

あれですよ。なんか能力がありそうな人を見つけて声かけて~っていうナンパの上位互換みたいなやつ。そうですそうです。あれですよ。

ここで一つご報告・・・というか確認なんですが。





募集者の中で落とすには惜しい人っているんですよね。
で。私、企画の募集概要にスカウトはしませんって書いてませんよね。






まあ。そういうことです。
といっても私が声をかけてもOKをくれるかどうかは分かりませんが。


さてさて。ここまで見てくだすった皆様には盛大な感謝を。

そして私から最後に一言。

募集して落ちたとしてもワンチャンあるぞ。



それでは次回がありましたら、またよろしくお願いしますね。
お相手はニーハオ三平でございました。


審査員
ニーハオ三平
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Twitter

紫恒
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ニーハオ三平 2020/09/30 23:48

夏の迷宮 現時点の情報まとめ

※この記事は私がGMを行っているキャンペーン『夏の迷宮』を視聴していることが前提となります。まだ見ていない方は是非。

序章『ああ綺麗だ』
https://www.youtube.com/watch?v=k31tV4-B4bE&list=PL9nQcMjZ8HkKkBW4MFk0ccKspLVd8iXjR

中章『ヒトデナシは笑うのか』
https://www.youtube.com/watch?v=h-xg4FSrlpw&list=PL9nQcMjZ8HkKkBW4MFk0ccKspLVd8iXjR&index=2











(電話がなっている)


・・・もしもし。
ああそうだ。呉裕二だ。
船に乗っているところすまないね。
いや。君たちに聞いたこれまでの話をもう一度おさらいしたくてね。

・・・よっと。
送った画像は見てくれたかい。
ははは。僕がまとめたんだ。
まあそんな大層なもんじゃない。
抜けているところもあるかもしれないが、
無いよりはマシだろう。

おっと。この画像の情報だけを鵜呑みにしてはいけないよ。
一番大事なのは君たちが体験して得た情報だ。
これには君たちから聞いた情報の一部しかないのだから。
心配なら雛抱町に行くまでに、体験してきたことをよく思い出しておくといい。

・・・え?なんでこんなことをするのかって?
・・・奇妙な話だがある夢をみてね。
その夢の中で君たちに情報の整理をさせるように言われたのさ。

・・・ここからは私の直観だがね。
きっと雛抱町では今まで以上に困難な事件に鉢合わせることになると思うんだ。
既にこの事件は酷く入り組み、全貌が見えない状態だ。
そう。それこそ迷宮のようにね。
だから君たちが迷宮で迷わないようにするためには、
出口へ向かうためには大きな謎を解かなければいけない。

つまりその謎を解くためには情報が大事ってことさ!
いや。すまない。年を取ると話が長くなってしまって困る。
それじゃあそろそろ切るよ。
君たちの無事を祈っている。

ん?報酬かい?
はっはっはっは!!!!
もちろん期待しておいてくれ!
伊達に社長はやっていないからね!
君たちが迷宮から出た暁には報酬金に上乗せして旅行でも行ってもらおう!
ピアノのコンサートなんてどうだい?
いいピアニストと知り合いでね。彼の弟子のコンサートがあるらしいんだ!

はっはっは!それじゃあいい加減切るよ。
幸運を。見送ることしかできない僕を許してくれ。



プツ・・・プープープー

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ニーハオ三平 2020/08/31 10:07

魂募集企画『メカクレちゃんになりませんか?』

はじめに

やあ。ニーハオ三平だよ。
面白いものがみたいというデスゲームの主催者的なノリで行っている魂募集の企画ですが、今回はすでにキャラが決まっている状態での開始となります。今までは魂に合わせて制作してきましたが、この子が出来た経緯が経緯ですのでこういった形で始めさせていただこうと思います。

経緯

私の息子である紫恒くんがある日こんなツイートをしました。

興が乗った私はすぐに彼の性癖もりもりのキャラを描いたのです。
そうして生まれたのが通称『メカクレちゃん』。
今回の企画の主役でございます。

なかなかどうしてこの子の評判がよく、私も気に入っていたものですから、魂募集をしようという流れになったわけなんですね。

設定

鬼の娘
年齢は100歳越え(詳しくは不明)
ただし、人間的には14~16歳程度

服装は一族特有のものであり
本人は恥ずかしがっているが儀礼として着ている

普段は肌の露出が少ない服を好んで着る

(文章構成:紫恒)


私と子供たちが集まって「こんなキャラクターだよね」という妄想話を紫恒くんがまとめてくれたものが上記のものになります。

この設定は順守しなくてもいいです。

キャラをみて、勝手に妄想を膨らませた設定ですので、順守する必要は全くありません。しかし、我々審査員が思い描いているキャラクター像はこういうものということは明記しておきます。ガッツリ設定に寄せるもよし、自分の想像するキャラになってもよし。それは魂の皆様にお任せいたします。


募集要項

・審査基準:ニーハオ三平の琴線に触れること
ニーハオ三平が魂募集をする際は毎回この基準を設けております。難しいことはいいません。貴方の得意なことや私の興味を引けるようなことをしてください。一芸披露するもよし、歌うのもよし、キャラになり切ってセリフを読んでみるもよし、自由にやってみてください。

・補助審査基準:どれだけこのキャラっぽいか
設定を書いておきながらこれを無視するわけにはいきません。私個人的にはメイン審査基準を重要視しております。しかし、今回審査員として参加するメカクレちゃん発案者の紫恒くん的には、ここに強いこだわりがあるようです。別に設定に準じろと言っている訳ではありません。我々に「ああこのキャラに似合っている」と思わせるだけでいいんです。なかなか難しいですね。

・応募手順

①審査基準、補助審査基準を参照し、動画を作成する。再生時間に制限はない。動画といえど、別に黒背景に音声だけ乗せるだけでも良い。

②Youtubeに限定公開の形でアップし、ニーハオ三平のTwitterリンクのDMに動画URLを送付する。どうしてもYoutubeに投稿できないのであれば動画データを何らかの形で、同じくDMに送付すること。

③募集期間終了後、審査が終わるまで待つ。審査の結果、該当者一名にのみ連絡を行います。魂が決定した際は、ニーハオ三平のTwitterにて終了宣言を行いますので、それをもって落選通知とさせていただきます。

・募集期間
2020/8/31~2020/9/30まで
(募集人数や該当者なしの場合は延期する可能性もあります)

・審査員
企画者/メイン審査員:ニーハオ三平リンク
発案者/特別審査員:紫恒リンク

・備考
①該当者にはこのキャラのLive2Dモデルを無償で差し上げます。また権利についても完全にお譲りさせていただきます
②年齢性別経歴国籍一切不問です。例え男性の方でも審査員を唸らせることができたら、該当者になる可能性があるかもしれません。
③DMにて私から応募者にアクションを取ることは殆どありません。しかし、応募者からの質問には答えられる範囲で答えていこうと思っております。
④応募先のDMはニーハオ三平のTwitterのみです。そちらに送っていただいたものを他の審査員と共有し、審査させていただきます。

最期に

今回は私の子供である紫恒くんを相方に据え、彼以外の子供たちも応援してくれている魂募集企画となります。もし、私の作成したモデルが気になったり、どんな人が私の企画で選ばれているのか知りたい人は私の子供たちの所に行ってみるのもいいんじゃないでしょうか。

この企画は酔狂な絵描きが、自分の『面白い奴がみたい』という単純な欲求を満足させるために始めたものです。しかし、私はそんなこととは別に、能力を持っている人にはそれを見せるための機会があってもいいんじゃないかという意思も込めてやっております。

これはチャンスです。
私は活動に関して一切の強○はいたしません。
体は無償で差し上げます。権利も全てお譲りいたします。
詐欺と感じたなら私の子供たちに聞きに行ってみてください。
いいですか?何度も言います。

これはチャンスです。
貴方の明日を変えてしまうようなチャンスなんです。
貴方がそのチャンスを手に入れようと、
私に動画を送ってくれる日を楽しみにしております。

ニーハオ三平



審査員:紫恒よりコメント

応募が受かった際には、サイボーグキョンシーとか言う訳の分からない輩が勝手に兄面をしてくると思いますが、認知してもしなくてもどちらでも構いません。是非受かった際には気楽に活動して頂けるとこちら側としても嬉しいです!!




子供たち一覧

・紫恒 Twitter Youtube
・ゾンB子 Twitter Youtube
・音沙花 優華 Twitter Youtube 
・蓮托 Twitter Youtube
・Bex Twitter Youtube
・月渡トキオ Twitter Youtube
・まみたす Twitter Youtube
・WEB Twitter Youtube

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