ハナノウタ
名もない詩謡いの少女がいた。
少年は、すべての人に少女が愛されるようにと、名前を与えた。
名前は少女に意味を与えた。
そして少女は、女になった。
女のウタゴエは黄金色の調べ。
その音色に込められた想いは、数多のヒトの心に寄り添った。
女のウタゴエは慈しみの花。
悲しみも苦しみも抱きしめて慰めてくれるコエ。
そのコエが、そのウタが。
その名の真意を貫いていった。
やがて世界は永遠に眠るであろう。
ゆっくりと、女のウタゴエを、香りを、慈愛を脳裏に焼き付けながら。
その花の詩は、永遠の子守唄。
壊れた母性と偶像的な愛の調べ。
女も気づかぬ忌みを孕んだ名前は