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老津ちお

老津ちお 2021年05月13日 18:00

〇[オワリ] 10

先に言ってしまえば、花園干枝、(本名、北園干枝)は霊体だった。
「いたぁっ‼︎干枝さん仁です!急でごめんなさいなんですけど、ついてきてください!」
だからまず、最初に干枝が、さも人を探している風にキョロキョロしている仁を見つけ、その後に、仁もテレビでよく見た顔を見つけ、お互いに認識しあったところで。ファーストインプレッション、仁のキャラクターに押される。
きっと、全くもって、今まで行方不明だった人間の事情を慮っている余裕すらない退っ引きならない理由があるのだろうけれど。わちゃわちゃと慌ただしくする、ある種の自己中心的な動作から、夢中になって視野が狭くなってしまう子供のそれに似た、垢抜けない子なのだという分析結果を出す。
なぜなら、それは干枝にとって重要なことであったから。
仁は、手を引いて連れて行こうとする。
「って?」
機敏に自分の手を退かして、掌握を躱す。
あ、嫌がったようでショッキングかもしれない!
優しい女性である女優の干枝は、そんな風にしまったと思って、フォローを入れようとするも、もう一度、干枝の掌が向かってくる。
「?」
もう一度。
もう一度、もう一度。
もう一度、もう一度、もう一度。
「まってまって!仁さん⁉︎」
「なんで避けるんですかぁっ!」
ラッシュを続ける仁に、耐え切れず、飛び退いてヒヤリ。
後方を通行していた殿方に、少し透けてしまった。
一般的な霊体のイメージである、透けるという特性を干枝は有している。
「ひどいですっ‼︎」
ここでそんな事実が露出してしまっては、見るからに日常を生きる女子中学生との会話がややこしくなってしまう。それを危惧し、気配り故に行った避難を、非難されてしまう。
どうやら、死角だったこともあって、透けてしまったことには気がつかなかったようだけれど、したらば、謝るしかない。
「ごめんね、仁さん。何か理由がありそうだね、わかりました。ついていくから、行きましょう」
承諾した後、二人は、駆け足でその場を離れる。
初動、一手、仁がまた干枝の手首を掴みにかかる。
それを、ギリギリ(本当は少し透けたけれど、)躱すと、むーーう。と悔しそうな顔をする。
暫定的に子供っぽいというイメージは残る。
けれど、だからこそ、一体何がこの子にそこまでの緊急性を感じさせているのかと、干枝は心配にさせられる。
仁は、つい先程の知見から、潜伏場所を、人目のない、人気のない路地裏にした。それから、干枝は仁の話しを聞いた。
汗だくになって息切れしている仁の様子を見ていると、とてもとてもその辺りの事情を無視してはいられなかったのだ。
反対に、息切れもしない。汗もかかない干枝にの機微に気がつく注意力は仁にない。疲労困憊しているから。とも言い切れない。平常時だろうと、もしかしたら気がつけないかもしれない。
話しの舵は干枝が握り。大人の先導がしっかりしていて、話しは仁にとって良い方向へ、またもトントン拍子に進んでいった。
「とすると、仁ちゃんのお兄さん。大変な渦中にいるみたいだね」
実は私も、そのことで。
干枝は、言いかけて、なんでもない、と訂正する。
いやいや、そんな思わせぶりな訂正の方が返って気になってしまうものであり、案の定、仁をも喰らいつく。
「ええとぉ……これを説明するためには、私の事情も知ってもらわなきゃいけないんだけどぅ」
とりあえず、じゃあ、まずは結果だけを話そっか。

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老津ちお

老津ちお 2021年05月12日 18:00

〇[オワリ] 9

それはまるで、瞬間的な出来事で、仁は一台の車が消失する瞬間を目撃していた。
まるで元々そこには車がなかったかのように、消えたのだ。物質の空白を、代わりに埋めようとする空気の対流が起こる。
同時に仁を拘束していた腕が弛んだので、その気を逃さず、またその懐中で暴れて脱出を図る。と、案外するりと腕の中をぬけられてしまった。
まるで諦めたかのように。
思って、その理由を目視するため。その犯人像を確認しようとするために振り返ると、視線の動線上に消失したはずのワンボックスカーを見つける。
一瞬理解は追いつかなかったけれど、男はそれを見て、震えていた。
奇異那の側にいる痩せ型の男。そちら側に、その車があるのだ。
なぜだかはわからない。
けれど、そのおかげで、とりあえず、逃げ出すことはできた。
「なあ、カトー。マジックって知ってるよな?原理はあれと同じだ」
自分を誘拐しようとしていた人間を警戒するも、男は仁を離したまま唖然として震えている。
「……瞬間移動マジックのタネと同じってこと?ですか?」
「違う。お前の置かれてる現場のことを言っている。お前の驚いている現状のことを言っている」
「……んえぇ?」
「その辺は、お前の兄貴が詳しいさ。兄貴を探しな」
兄貴に反応して、誘拐未遂男が仁を睨む。
「ばか。てめーの相手は俺だろうが」
後ずさる男。
「不運にも急な俺の登場に震えてるんで、可哀想なんで、教えてやるけどよ。まずその不運って認識を改めな。カトーの一件には、俺も一枚噛んでんだわ。だからさ、最初から、こいつ(奇異那)も俺の息がかかってた。大人しくしてろ」
どうやら、奇異那の知り合いらしい。
仁がそう理解できたところで、奇異那の呟き声に、痩せ型の男は反応を見せる。
今日はよく喋る。
痩せ型の男にしか声は届かなかったが、それを聞くと彼は舌打ちをする。
ダッ、と。
脱兎の如く。
こちらへの注意が逸れた隙に、それまで蛇に睨まれたように固まっていた男が、仁に向かう。そう気がついた頃には、飛びかかられている。

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老津ちお

老津ちお 2021年05月11日 18:00

〇[オワリ] 8

声を上げるも、むぐーむぐーと顔の中で音が篭るばかりで、視界の隅の、奇異那は仁に一瞥もくれない。
これが奇異那に課された指令であったことを察するも、ショックを受けている暇などない。
近くには、車内の広そうなワンボックスカーが止まっている。
そして、力加減などなどから、推定男性と思われる、中学生を拘束している彼は、明らかにそちらの方へ仁を引きずり始めていた。
じたばたと暴れるも、口元のその手に噛み付こうとするも、用意周到に厚手の手袋なんかがしてあって、文字通りに歯が立たない。
「まんまとカトーの妹を連れて来てくるの、お疲れ」
今度は奇異那の方から、奇異那ではない声がする。
「……っ⁉︎」
後方より、仁を羽交い締めにしていた男の動きが止まった。
今の仁からは、位置的に見えないけれど、気づけば、痩せ型の男が奇異那の向こう側に立っていて、
「てか、お前、死にたそうなくらい無愛想なツラしてるけどよ。嫌なことでも何かあった?」
奇異那に聞いていた。
首を振る奇異那。
「じゃ、生きていてーのかの?これまたなんで?」
自分たち、(少なくとも奇異那はそんなふうにみえないけれど、)中学生に、急に変な話題を投下してくる男性の声に、誘拐犯が硬直しているところを見るに、危機感寄りの不穏さを抱かされる。
今だ、と思ってジタバタして見せても、むしろ、石化してしまった誘拐犯の懐中に囚われてしまったように、相変わらず逃げられない。
男は続ける。
「世間一般では、進んで死を選ぶことは悪いことのような風潮だけど、感覚ってのは生きているからこそあるわけだろ。だから、苦しみは生きているから感じるもので、生きているから苦しい。じゃ、死ってのはある種の救いになるはずだから。言われてるほど悪いものじゃないんじゃなーかなって思うんだ」
ダムが決壊したかのように、平坦な抑揚で男は喋る。
「自殺なんてその最たる例で、励ます側としては、『生きていれば、もっと幸せなこともあるから死ぬな』って主張なんだろうけど。そんなこと言う奴らなんて、大抵、既に幸せな奴らだろ」
——喋る。喋る。
聞いていれば聞くだけ、仁の逃走リスクや、人に目撃されるリスクが大きくなるというのに、不思議と誘拐犯は微動だにしない。
まるで、聞き入っているかのように。
……警戒しているのだろうか?
「死にたい奴の気持ちなんて知らないくせして、一方通行の価値観を押し付けてよ。なにが『人のために』だ。ただの自己満足の自分勝手を、正当化してんじゃねえ」
——語る。語る。
「死にたい奴は、死にたくて死のうじゃなくて、生きたくなくて死にたがってんだ。今の責め苦が永劫に続く見立てしかなくって、刹那が悠久だと勘違いしてしまって、だったら救われたいと思って、死にたいと思うんだ」
「自分がそこまで追い詰められたこともねーくせに。または、自分がそれを否定できるだけの深い考えもねーくせに。人の安寧を邪魔するんじゃねえと俺は言う。アフターケアする覚悟も、見立てもないくせに、自己満で人の救済を邪魔して、己が救済した気になって人を苦しめやがって」
「死にたい奴は、死ねば良い。死は悪くない。そう悪いもんじゃない——俺は邪魔するけど」
んで、お前は生きていてーの?
再びの質問の後。
奇異那は沈黙を作る。
「わからない」
内心で、怪訝そうに身構える仁をよそに、奇異那はやすやすと答える。
なぜを問われたところで、彼女は多分、考えてしまったのだ。
「多分、私には生きている理由はない。何かしたくて生きてなんかいない。生きているうちに、たまたま死んでいないだけみたいな、私の生存はそんな理由なんだと思う」
「そっか、わかってんじゃん。『これが自分の生きる意味』とか言っちゃってるそこの愉快犯なんかとは比べ物にならないな」
こちらに一瞥を送る。
愉快犯の誘拐犯。
視線を向けられ、水を向けられ、誘拐犯の動揺が密着した体を伝ってくる。
仁からの視点では、真後ろの人間の詳細な動きはわからないけれど。逃走経路を確認しようと、誘拐犯がチラリとワンボックスカーを見て、また視線を奇異那の方にいる男に戻す。
その時だった。
仁の視界から車が消えた。
え、
え。
え?

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