田上俊介背景画展 2020/11/21 20:22

【全文公開】 「田上俊介公開インタビュー (インタビュアー:進行豹)」

お世話になります。

田上俊介「まいてつ」「ものべの」背景画展
http://honest-akiba.com/event/2041

内の小催事として、11/15 20:00から開催されました、
「田上俊介公開インタビュー」

の質問と回答を公開させていただきます。

インタビュアーの発言は<>でくくったものとなります。
(笑)などのニュアンス表記は略しますが、田上先生は終始にこにことお話くださいましたこと、とくに付記しておきます。

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【Q:絵を描くようになったきっかけは?】

物心つく前――というか、物心がないときから描いていたそうです。
「本当に小さなころから描いていた」と親からは。
こどものころの絵も、実家に残っていたものをみせてもらったことがあります。
ですから、何がきっかけ――という感じでもなく、自然と描き始めていたのかなと思います。


【Q、ではプロになったきっかけは?】

小学校高学年くらいのころに、マンガ家になりたいと思って模写をはじめました。
透明下敷きの下に元絵を敷いて、絵を移して……当時大好きだったのはドラゴンボールです。

模写から、コマ漫画を描くようになりました。
鉛筆描きで、完結をさせるようなものでもなく、ただ描きたくて描くマンガですね。

依頼でしたら、模写に関するものを小学生のときからうけていました。
弟や友人から……もちろんなんの報酬もありませんでしたけれども。

最初に報酬をいただいたのは、マンガ家アシスタントとしてです。15歳のとき。
中学卒業してすぐに専門学校に入りまして、一年くらいしたころに、学校に紹介してもらいました。
週間連載のマンガ家の先生――盛田賢司先生の専属アシスタントです。

アシスタント業が忙しくなって、学業がおろそかになって、並列で入っていた定時制高校は高校中退することになってしまいましたが、
その以前から「絵以外のしごとは自分には無理だな」と思っていました。
それこそ、小学生のころから。

<何故そのままマンガの道にいかなかったのですか?>

週間連載があまりに大変だと感じて。
その世界に身近に触れて「自分には無理だな」と。
と、マンガを描いているうちに、1コマ1コマ、コマの中の「絵」そのものにこだわっている自分に気づいたこともあります。
マンガよりも、コマの中の絵の方に比重があったというか――。

それで、絵に行きたいと自覚しました。

イラストレイターの道に進んだきっかけは「久遠の絆」という当時大好きだったゲームです。
久遠の絆のファンアートがファンブック向けに募集されいたのを雑誌か何かで見て、投稿しました。

アシスタントをしながらPCを買って、ペインターを入れて、描いて、おくって――
そうしたら出版社の編集さんからご連絡があって「アンソロジーの表紙を描いてくれ」と。

<最初から表紙のお仕事だったんですか?>

そうですね。それが一番最初にイラストでいただいたお仕事です。
その出版社さんでイラストの仕事を引き続きいくつか――と、マンガも少し描きましたね。

<そのマンガは、「久遠の絆」のファンブック探したら載ってます?>

……(目をそらしつつ)載ってないですよ。

<『電撃ゲーム三大賞』のイラスト部門大賞は、その時期にご受賞されたんですか?>

電撃ゲーム三大賞は、仕事とかに繋げようとかそういう意識ではなかたんです。
募集してるからチャレンジしてみたら、大賞をいただけて。

<息をするように大賞を取った?>

いやいや、そういう感じでもありません。
当時は……カラー2枚とモノクロ5枚だったかな? テーマなしで、自由に描けたんです。
だから連作を構成しました。
「マンガにしたいな」と思っていたお話をイラストに。

<ご受賞をきっかけに、キーリですよね?>

はい、同じ『第9回電撃ゲーム三大賞』の小説部門で大賞を受賞された壁井ユカコ先生とご一緒させていただきました。
受賞をきっかけにたくさんのお仕事をいただけるようになって、イースはその後ですね。
当時はスケジュールに空きがなくて、受けられる仕事より断る仕事が多くなってしまったことを記憶しています。


<そんなさなか、どのようなきっかけでPCゲームの背景を手がけられるようになったのでしょうか?>

PCの背景は、仕事の依頼をひとつ受けたら、紹介、紹介で、ずっとお仕事をいただいている感じです。
いまは背景の方が多いか、キャラと半々くらいな感じ。

<ウェザーロイドのお仕事はどのような流れで?>

これも、募集してたので応募しました。
ウェザーニュースさんの天気予報を見るのが好き。作業中ずっと流してたんです。
そうしたら、キャラ作るので、という公募があって……。
プロだということを隠して、しゅく、という名義で。
しゅくは母かたのおばあちゃんの名前です。
絵を描くのが好きな人だったので。

<公募→受賞→お仕事、がとても多いと感じるのですが、逆に公募に落ちたことは?>

(10秒くらい考えてから)……あー、ありますね。あります。
覚えてる範囲で採用されなかった公募は1個です。とはいえ、3つか4つくらいしか応募した経験もないのですけれど。
落ちてしまったのは、マスコットキャラ系のやつでした。

<打率7割5分……田上先生がいかに化け物かをあらためて実感させていただきました>


【Q:今回の背景画展出展作の中で、特に印象に残っているイラストがあれば教えてください】

一番ややはりスノーホワイトですね。今回の背景画展のために描き下ろした一枚ですので。
それから、メインビジュアル、ハチロク。
これは同じ角度からの資料写真がなかったので、いくつもの写真から構図を決めて描きました。
ものべのからだと、バス停です。
ものべので一番最初に描いた背景だと思います。当時そんなには背景を描くことに慣れていなかったこともあり、印象に残っています。


<写真ベースで描くものと、いわば空想で描くもの、どちらの方が描いてて楽しいとかありますか?>

写真ベースで描くのにも、空想で描くのにも、それぞれ別々の楽しみがありますね。
とはいえ、写真があるとやっぱり楽は楽です。


【好みのタイプを教えてください(僕の好みはクーデレです)】

難しい……ですね。
タイプ、といわれると、具体的なイメージはないです。

<絵に描かれてる女の子のラインはいかがですか?>

ああ、ビジュアルでいうとそうかもしれません。
黒髪とか、ぱっつんとか。

ものべのならありすが好きですし。
まいてつではポーレットですけれど。


【Q:ものべのに描いた背景の中で、ここに住みたいって思った背景は何処ですか? どの家に永住しますか?】

有島家ですね。
美しい洋館ですし……裕福そうですし。


【Q:先生は絵を描く際、小物や全体の色味など下書きから細部を決めて清書されますか?それとも徐々に決めて描かれますか?】

最初の段階ではほとんど決まってないことが多いです。
ラフはノリで描いてます。あたり程度に。
ですから、描いていくうちに小物とかもバンバン変化します。

描き方としては、描いていくうちにイメージを固めていくのが一番ラクです。
オーダーによっては細かく最初から決めてきっちり描くことももちろんあります。
その上で、「こっちがいいな」と思ったら変えていくスタイルが、一番描きやすいなと感じます。


【Q:背景画と人物画、それぞれ描く際、意識をおく点に違いはありますか?また、人物と背景の組み合わせではいかがでしょうか?】

両方それぞれこだわりがあります。
けど……人物の方には、あまりよくない意味での強いこだわりがありますね。

自分の好みを、人物の方には強くいれこみたくなってしまう。
背景は人物よりも、客観的に見れる部分が多い。

人部と背景の組み合わせですと、人物の方にこだわりがあるのでそっちに意識がより行きます。
人物を引き立てるための背景になる。

人物を描くのが好きなんだと思います。
男性を描く方が好き。

なぜかというと、女性は描いても描いても、自分の中に「なんか違う」という感覚が出てしまうんです。
自分の体が男性の構造なので、リアリティを掴み切れないのが、その一因かなと感じます。


【Q:今回展示されている作品はどれも色鮮やかで色彩に富んでいますが、私は個人的に田上さんのモノクロ作品も大好きです。
例えば田上さんの墨絵や水墨画風の人物画や背景画なんていうのも個人的に非常に見てみたい気持ちがあるのですが、田上さんはそういう作風に興味はありませんか?
またはそういう作風で描くのであれば、どんなものを描きたいですか?】

墨絵や水墨画。興味あります。
もともとマンガから入ってるので白黒は好きです。
色でいうと白・黒・赤が好き。

だけどいまは全然描けていませんね。
単純に、描く余裕がない。

白黒もっと描きたいです。
筆ペンの感覚とかも好きですし――うん。水墨画もやってみたい。


【Q:類稀な技術を持って多くの仕事をこなす田上さんですが、今後やってみたいお仕事や興味があるジャンルなどはありますか?】

お仕事であればなんでもやりたいです。

特に今興味をもって、勉強したいな、と思ってるのは3Dです。
立体で考えなくちゃいけないキャラクターデザインとか、モデリングできるようになったら、全体を構成してデザインできるので。



【Q:鉄道車両のイラストを描く時に、こだわっている事とかはありますか?】

間違えないことに尽きます。
僕には、手癖でごちゃごちゃって描いてごまかしちゃうところがあるんです。

よくご指摘いただくまいてつのメインビジュアルの自動連結器は、くるって回転してどっちにも向くと思い込んでしまってました。


【Q:蒸気機関車の次は何を描いてみたいですか?】

ラッセル車を描いてみたい。かっこいいですよね。
あとは古いもの、資料もあまり残ってないような車輌も描いてみたいと思っています。


【Q:まいてつの仕事を受ける前と後で変わったことは?】

人前にでる機会が増えました。
とはいえまいてつ関係で出るときにはいつも進行豹さんと一緒なので、そこは安心してます。


【Q:最近の失敗談があれば教えてください(仕事でもプライベートでも)】

失敗しすぎて覚えてないくらいなんですけど――
パクチーレモンのカップ焼きそばを友達にすすめられて食べてみたらすごく美味しくて、通販で1ケース買ってみた。
そしたら18個入りが7ケース届いてしまった。126個。
検討してるとき買い物カゴにいれてそのまま決済しちゃった。
20個くらいは自分で食べたけど、親戚とか友人とかに配りまくった。

仕事の方でも失敗しまくってますけど――それの中身は言えません。


【Q:作業に疲れた時の、気分転換の方法などありましたら教えてください】

作業に疲れたときには、自分の描きたい絵を描きます。

<首切り浅右衛門が気分転換に辻斬りするみたいなことおっしゃってますが……書きっぱなしだと脳がつかれませんか?>

大丈夫です。
むしろ寝たりする方が苦手です。
寝てる時間がもったいない気がしてしまって……

生きてる間に自分の描きたい絵を描ききれないと思うので、休んでる時間があれば描きたい。
気分転換は、描くことです。

スランプも結局描かないと解消できませんから……描けないときも、結局は描いてます。

<バーサーカーですね>

あー、わりとそうかもしれません。


【Q:先生の作品は「まいてつ」で知りました。リアルな描写なのだけれど、温かみを感じる絵のタッチが好きです。作品は、実際にモデルになる場所まで出かけて描いていらっしゃるのですか?】

大量の資料写真を撮って送っていただけるので、僕が自分で行って描くことはほとんどないです。

<8620は実機を見てますが、見る前と実機を見てからかわったことは?>

資料がいいので、実物を見てからと見た後で特に印象が変わった部分はありません。
スケール感とかもわかるような写真を送っていただけてますし、わからないところは質問したら補足してもらえるので……
実物も、写真から受けたイメージそのままでした。


【Q:「まいてつ」の術仙炭鉱廃駅の「星極駐車場」とはいかに?「月極駐車場」ではないでしょうか】

星極さんという方がオーナーの私有駐車場なんですよ。きっと。


【Q:今までに、人生の転機となった出来事は何かありますか?】

さっきのお話にもでましたけど、電撃三大賞をいただいたこと。
それから20代半ばころに体調を崩してしまって、それから健康に気を配るようになったことです。

大賞をいただいて多忙になって体調を崩してお仕事に穴をあけてしまって……
「こんなことを二度としてはいけない」と、走ったりするようになりました。

走りのは、今も継続して走っています。
走るの本当は嫌いなんですけれど、体調管理だけじゃなく、メンタルも鍛えられるような気がして走ってます。

走ってると本当に苦しいのですが……
今後の人生で辛いことあったときに、「あれだけ苦しいのを乗り越えてるのだから」と頑張れそうな気がして。

作業するときバランスボールの上に乗って座ってるのですが、それも健康には寄与してる気がします。



【Q:ものべの、まいてつでの裏話や印象に残っていることはありますか?】

Loseさんの背景のお仕事は、余裕をもった納期でご依頼いただけるので、じっくりと取り組めるんです。
特に印象に残っているのは「御一夜市上空」の一枚で、これは描いても描いても終わりませんでした。
一日数時間ずつの作業で、二ヶ月間かかりました。
普通はそこまで時間をかけて描けないので、ものべのまいてつのお仕事に関してはいいことしかないと思っています。
本当にありがたいです。


【Q:モチベーションを保つ秘訣はなんですか?】

次に仕上がる絵のことを考えながら描くこと。
最新の絵が自分の中で最高傑作だと思ってるので、自分が今描いてる絵の仕上がりを、次に描く絵を見てみたいんです。
その思いがモチベーションになっています。


【Q:プロとして目指すこと/画業の最終的な(今のところの)目標はなんでしょう?】

絵の仕事を続けること――死ぬ瞬間まで描き続けること。
なかなか難しいことだとは思うのですが、それが一番の目標です。

自分の名前とかが出ない仕事でいい。
若い頃は名前が出る仕事がしたいとか、有名なタイトルにかかわりたいとかはあったのですが、今は絵の仕事なら、なんでもいい。

ずっと続けていくとうまくなれる気がするし、うまくないと仕事がこないので、一生仕事を受け続けたい。

<田上さんにとって「うまい」とは?>

あー……難しいですね。
仕事をし続けられることがうまさ……

うん。いろんな意味のうまさがあると思うんですけれど、「仕事をもらえるうまさ」を前提として、それで生計を立て続けたいし、自分が納得する絵を描けるという意味のうまさも追求し続けたいと思っています。


【Q:今後、個展を開催してみたい都市がもしもあったら教えてください】

全国どこでもやってみたいです。もしお誘いいただけるのであれば、お気軽にお声掛けください。


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インタビューは以上となります。

なお、田上俊介「まいてつ」「ものべの」背景画展が終了となり11/23(月・祝)いっぱいをもって、

『田上俊介「まいてつ」「ものべの」背景画展ショップ』での通信販売も受付終了となります。
https://taue-gaten.booth.pm/

特にキャンバスアート類は再受注をお受付できる見込みが現在のところございません。
お求めご検討の方は、どうぞお忘れなきようご注意のほどお願いいたします。

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