Huyumi 2022/11/13 14:48

同人エロゲが売れるには

・はじめに

 わたしが同人エロゲを売ると決めてから、じゃあどういった物なら十分売れるのか?
 とここ数年で考えてきたことをまとめた記事になります。
 反面教師として幾つかの例を出すかもしれませんが、なるべく固有名詞を出さずにふわふわした表現で乗り切りたい所存。
 ほんと喧嘩したいわけじゃないので。あくまであれがこうダメだったから、こうした方がいいってことだよね、と言いたいだけです。

 本題に入ります……なんですが、まずは商業エロゲの話からになります。
 その後に同人エロゲの話や、それを作る側としての考えに移ります。



・商業エロゲ

 なぜ商業エロゲの話になるかというと、いま商業エロゲはかなりヤバい段階に入ってます。
 老舗のブランドがどんどん解散していき、現存するブランドも動きが鈍かったり、名前だけ残っていて解散していないだけというケースが多いです。
 ようは売れにくくなってるんですね。
 そんな中で、じゃあ同人エロゲなら何故売れるのか、今、この方法で売れたとして、今後どういった流れを避け続けたら現状維持、ないし発展していくのか見て行かないと危ないなと思いました。

 そんなわけで商業エロゲが売れにくくなった原因を見ていきたいと思います。

 また、わたし自身、業界人というわけではなく、ファンとして結構ライトな層からの視点ということを留意してもらえればなと。
 的外れなことを言っている可能性は高いですし、一意見を好きに言っているなと温かい目で見逃してもらえれば幸い。


・ゲーム性の欠如

 まず商業エロゲと同人エロゲが共通している項目として、省コストという点が挙げられます。
 商業エロゲのノベルゲームとしての在り方は、コンシューマーが作るRPGより遥かにコストを抑えられています。
 商業エロゲでRPGやアクションとしてしっかりゲームを作っているのはごく一部大企業だけで、基本的にはノベルゲームという形式が主流なんですね。

 初めて同人エロゲの界隈を知った時は、わたし自身とても驚きました。
 だってみんなゲームしてるんだもん。
 少し前まではツクールのデフォ戦や、それを少し弄った程度が多かったんですが、今では結構システム凝っていたり、デフォ戦ベースでもこだわっているというのが伝わってきます。
 同人エロゲで売れている作品のゲーム部分、力が入っているとは思いませんか?

 他にも商業エロゲのブランドがソシャゲへ移行するにあたって、必然的にゲーム性を求め始めるという点もあり、わたしの結論としては、同人エロゲ界隈では「ゲーム性が求められる」になりました。
 主な動機としては少しでも遊びたい、意思決定を行いたいになると思います。


・エロの重要性

 こちらは主に商業エロゲの話になるのですが、同人エロゲでは作者が好きな性癖を突き抜けているのに対して、商業だとかなり冒険しにくい空気が漂っています。
 一応触手が出てくるような作品はあるのですが、そういったエロを重視した所謂抜きゲーは全体の一割かそれ以下の割合になると思います。

 市場規模が収縮し切って参考にしにくいので放置しますが、じゃあ何故エロゲという界隈が抜きゲーが主流にはならなかったのか。
 それは泣きゲー文化が主流になってしまったからだと思います。

 まぁ『key』なんですが。
 大体葉鍵と言われるこの辺が泣きゲー文化、シリアスなシナリオ、純愛ゲーム文化を構築し切ったのがエロゲ界隈の発展と、その後の衰退に繋がったのではないかなと。

 マーケティングにおいてエロという要素はそれだけで人を惹き付けます。
 そうしてエロゲをプレイして、そのエロが抑えられていたのだとしたら期待して手を取ったユーザーはどうなるのかなと。
 純愛が主流になったせいでプレイの内容が狭まったのも、エロを強く押し出せないことに繋がっているなと。
 非処女ヒロインが燃える界隈こわいよ。

 エロが軽視された結果は他にも影響していくのですが、一旦はこの辺で。
 余談ですが、葉鍵である『Key』は『kanon』辺りからアニメ化されており、かなり早い段階で全年齢化の道を見て、手探りしていたと思います。
 作品を継続してアニメ化出来るほど人気が出たのはもちろんなんですが、全年齢⇔アダルトを往復させてユーザーの反応確かめていたんだなとか、ミニゲームを積極的に採用してゲーム性の重要性も調べていたと思います。
 いや、わたしが勝手に同じ方向見ていると勘違いしているかもしれないけど。

 葉鍵の『Leaf』も今ではすっかり全年齢に舵をとっていますね。
 ゲーム性を意識していたのも共通しています。


 アニメ化するぐらいバズるか、そういった動きを作れるぐらいの資本が無ければ、エロゲがまだまだ売れるように新しい風を探ることも出来ないように思います。
 が、別に『lose』は全年齢の他にコストが抑えられ気味な音声作品へとシフトしていますね。

 エロゲ売れるからエロゲ作ろうぜ。
 泣きゲのほうが売れるから泣きゲ作ろうぜ。
 ソシャゲのほうが売れるからソシャゲ作ろうぜ。
 とひたすら誰かが作った流れに便乗する割合が多くて、界隈の多様性を出して発展させようとした人が少なかったのも原因な気がしてきました(乱暴)


・クリエイターの過酷さ

 厳密にはライターとイラストレーターへの負担が物凄いという話。

 泣きゲーが主流になってから、物語部分を手掛けるライターへの期待と負担が強くなり、同等の役割を担っているだろうイラストレーターは褒められにくい環境が生まれました。
 レビューでイラストについて熱く語れることは珍しく、見ていて苦しんだろうなと。

 対して総合芸術の華部分となったシナリオライターは……ラノベに逃げたのである!
 それは当然! だってライター1人でゲームの評価がされてしまうような環境なら、利益の大部分を取れて負担も少ない界隈に行く。一人で生きていけるんだもの。

 だいぶラノベに行って人材流出激しかったよねってお話です。
 なんならその後ソシャゲにも取られた。ソシャゲで今までの名前使っていい上に活躍出来るのなら、もうエロゲライタースカスカよ。
 ちなみにシナリオが目立つ華で、イラストレーターが目立ちにくい華(最低限出来て当たり前だろで減点されやすく、シナリオと比べて加点されにくい)なんですが、プログラミングや音楽担当しているクリエイターはもっときついと思います。南無。


・違法ダウンロード

 みなさん、DLsiteやDMM、steamがどの辺りから目立つようになったか覚えてますか?
 2010年辺りにはまだまだ知名度低かった印象があります。
 DL販売の環境が整うのが遅くて、違法DLで商業エロゲが大ダメージを受けたと思うんですね。
 そこに売上取られて、それの対策に費用割かれて、結果色々冒険しにくい環境にも繋がったのかなと。
 あとアダルト作品リアルで買うの敷居が高く、DL販売の環境が全盛期に充実していれば現在の方向性でも今のまま結構変わっていたのかなと。
 違法DLとDL販売の結論に関してはsteamがデータ出しているのでその辺り確認を。

 今からでも遅くないのでパッケージ売りにこだわっているブランド、早くDL販売もして欲しい(切実)



・スマホ

 steamが目立たなかった頃、PCでゲームするのならコミケで買ってきた同人ゲームかネトゲかエロゲかフリゲという時代がありました。
 そんな中で物語やアダルト要素を楽しみたいのならエロゲは貴重な選択肢だったんですが、そうでもなくなったのがスマホの登場。
 これがあまりにも強い。どれぐらい強いかというとPCの使い方わからない世代が産まれつつあるぐらい凄い。
 大多数の若者がPCを触らずに、スマホのアプリなどで満足し、商業エロゲの世界に入ってこなかったというのが問題点の一つかなと。


・まとめ

 商業エロゲが売れなくなったまとめなんですが、
・ゲーム性、エロの軽視
・クリエイターの待遇
・販売経路の確保
・スマホの出現

 この辺りだと思います。たぶんどれか一、二個であればまだ全然舞えていたんですが、流石に色々重なり過ぎて無理なのかなと。

 前述した通り、この分析はガバガバな可能性が高いです。
 一番比較すべき抜きゲーにまるで触れていないので。あくまで個人的指標を見る程度。
 自分なりの基準を見出すことが大切で、あれこれ偉そうに言ったり、分析の是非はどうでもいいのです。


・同人エロゲ

 さて、本題。
 商業エロゲの実態はなんとなく把握したので、同人エロゲで意識する部分です。


・ゲーム性

 凄く重要視される要素だなと思いました。
 売上が伸びやすいゲームはゲーム部分がしっかり作られていることが多いです。
 レビューでもゲーム性を重視している作品には、ゲームデザイン、バランス、ユーザビリティについて言及が強く、エロに関して触れられることのないレビューすらもそこそこあります。
 なので、ゲームとしてしっかり遊べる物を作っても売れる、がわたしの結論です。

 ただ難易度や手間が一定数超える、もしくは難易度選択、レベルで殴るなどで排除できないとエロに関わらないゲーム性はネックになりやすいです。
 エロに関わるゲーム性においても、カロリー多過ぎると苦しいイメージ。


・エロ

 これすんごく難しくて、エロとゲーム性ってトレードオフになることが多いんですね。
 コストが限られている以上、どちらかに力を入れたらどちらかが欠けていき、バランスを考えないとテンポが悪くなったり、コンセプトが迷子になりがちです。
 だからと言ってテンポを意識するとエロを取って付けた感じになりますし、ゲーム性とエロを足すとそれが性癖外の人にはそもそもプレイしてもらえないというケースも出てきます。

 性癖は掛け算であり、それこそゲーム性と上手く掛け合わせると爆発することもあれば、爆死することあります。
 そのために「アダルト描写オフの設定」文化があると思います。
 これがあると、性癖は受け入れられなくても、ゲームとして楽しめる余地が残る。
 アダルト描写オフの機能搭載している作品少ないんですが、総じて売り上げが伸びていると思うのは、ターゲット層を広げているからかなと。
 そうでなくてもユーザビリティが優れていると評価される一因になるのかなと思います。

 また、同人エロゲの性癖、性的指向の大部分は八割以上陵○になります。
 じゃあなんで純愛系作っているのかと問われれば、純愛が好きだから。
 マイノリティであるにも関わらず、わたしは最低限売れると判断して開発を進めました。
 当然わたし自身同人エロゲユーザーなんですが、作品を探すときは純愛系、もしくはゲームとして面白そうであればエロを度外視して作品を購入する修行僧めいた生き方をしています。
 総合芸術が内包する一つの要素を無視、ないし苦痛を感じながらコンテンツを消費するのですが……まぁ周り見てみるとたまに同胞がいるんですね。
 少ない純愛系一生懸命探したり、エロを度外視し購入したりする僧が。

 なのでこの性癖の市場規模の弱さは、固定ファンがつきやすい、ゲーム性を重視した場合、純愛系が好みではない層からも支持してもらえる作品になりえると判断しました。
 純愛系エロゲ、割合としては少ないんですが売上の平均値は上になると思っています。
 流石にこれは調べてないけど。いつか調べるのもよさそう。

 さて、長く脱線しましたが、現状の結論としては
ゲーム性を重視して作る場合、性癖は自分の好きな物を作ってよい」になります
 純愛系は他の特殊性癖と比べて最低限の市場規模は維持できているように見えるので、一旦はこれで。
 まぁでも顧客多い性癖作れたり、ゲーム性よりエロを重視すべきと言うのは確かだと思います。
 その辺、戦闘中エロは理にかなっていると感嘆しています。エロとゲーム性融合させて、欠落するコストを最低限に抑えているので。例によってわたしに趣味じゃないので無視しますが。


・サムネイル

 サムネイルー! 大事ー!
 サムネが良いと売上が伸びます。ここでの良いを掘り下げると、

「エロい」「肌色が少ない」「わかりやすい」「印象に残る」「お洒落」
 などです。

 「肌色が少ない」とは何ぞやと思いますが、DLsiteの作品一覧見てもらえればわかるんですが、肌、もしくは局部が見えていないタイトルは売上が伸びやすいように見えます。
 周りが肌色ばかりだから「印象に残る」のが一点と、ゲーム部分もしっかり意識しているんだなと「わかりやすい」です。

 あとコンセプトや雰囲気がわかりやすかったり、純粋にデザイン性に優れていると目立っていいですね。
 ついでに言うと作品紹介ページも見やすかったり、お洒落だとよりプロモーション強くなるんですが俺はそっち方面ダメなんだ見ないでくれ。
 もう絶対キービジュアルやUIは外注し続けるぞ。紹介画像も凝った方がいいなら外注するかも。




・エロの所見

 ちょっと話を戻しまして、同人エロゲに置いてエロは大切だよって個所を掘り下げます。
 色々なコンテンツを摂取して、大勢の総意かどうかはわからないけれど、少なくとも自分の好みであるというは幾つか見つけていて、例えば「明言されない心理描写
 行為において実はこんなことを考えている、考えているだろうと妄想させる描写は受け取り手が好きに補完出来て良い表現だなと思いました。

 具体的には『らぶりー』という成人コミックで、姉妹の姉のほうが男性側のほうを好きで、それを妹が強引に引っ張って三人で――というあらすじなんですが、この妹ちゃん、いざえっちし始めると基本的に姉の顔ばかり見てますし、姉がトロトロになってまともに思考が回っていない段階に入るとキスもするようになります。姉と。
 この辺姉のことが大好きだけど、同性かつ姉妹なので一般常識から拒絶されそうで、男性側をきっかけにして少しでもお姉ちゃんと絡みたいという欲求が見て取れてえっちです。明言されてないので全部わたしの妄想なんですけど。

 あとはことに至るための導入や、その後のアフターがしっかり描かれていると実在感が増して良いなとか。
 同じ純愛にカテゴリされても、複数の作品で魅力が離れてしまうのかなと思えば、背徳感も大事だなと思ったり(ロリとか、隠れてこっそりとか、疑似不倫などに共通するポイント)


 さて、これらのエロの重要性や、魅力的に描くために必要な手法などをいつ理解していたかと言えば、ル想の開発折り返し時点では既に気づいていました。
 その上で何故ル想で実現出来ていなかったかと言うと、簡単に言えば余裕が無かった、細かく言うと心情描写に関しては構造上の欠陥――ルシアの心情をある程度隠さないと物語が成り立たない、導入の大切さに関しては全年齢シーン含む、含まない両方のテンポを重視した結果……を筆頭に、開発リソースが足りなかったなど様々な要因が重なっています。

 開発リソースは相対的な物で、エロと非エロでは絶対数を共有されます。
 簡単に言うとエロをもっとこだわることは可能だったが、ゲーム性の水準を下げる必要があったため、その判断を迫られた時、わたしの中で好きな物を作るというラインから外れてしまうため、エロを軽視し現状の方向性で受け入れられないか試す機会になりました。

 この相対的なリソースバランスの実感は色々と問題で、ル想の全年齢スチル、あれ以上に削ることは他の同人エロゲクリエイターにしてみれば余裕だし、当たり前の選択として採れたと思うんですね。
 でもわたしは全年齢スチルを最低限確保した上で、残りのリソースをエロに割り振りたいと考え、まぁこの思考回路から間違っている、適正が無いと思っていて、エロを最低限満たした上で余剰リソースを非エロ部分に割り当てるのが当然かつ、わたしの最低限の基準はかなり非エロ側に寄っていると自認しました。

 他者と比べて恐らくエロを重要視していない、軽視しているだろう現状。
 それを変化させることが出来そうにない心理、適正面の問題。
 現状心身不調が著しく自身の性欲に致命的なレベルの問題を実感しており、尚且つ作る側に回ってしまったが故にプレイヤー側としてインプットすることがかなり厳しくなっている。
 十分な枚数のイラスト外注費の捻出も課題ですし、価格帯移行の開発スタイルの調整もミスが許されない。
 なんならインボイス制度が始まるので売り上げを10%伸ばさないといけないし、その辺の面倒な税金処理が増えることから開発リソースが削られてエロのバランス云々以前の個所から殴られる。

 軽く説明できるだけのわたしによる同人エロゲ開発の難しさはこんなもんで、あぁもう終わりだよって気分ですがわたしが生きている以上同人エロゲの次回作は開発されます。
 一度の失敗で是非を出すのはナンセンスですし、ここまで見ても他の食い扶持の稼ぎ方よりはまだ分の良い賭けになります。

 あ、ここまで言ってるとエロ軽視して次回作作りそうだなって感じがしましたが、自分に出来る最大限の試みでエロを重視して次回作を作る予定です。
 どこまで自分の中で非エロ削れるか、削った結果今後そのような制作スタイルを継続出来るか、なども見ていきます。
 ゲーム部分を難易度選択にして色々な層に対応しようとして、全体の開発リソースが削られるのでまたリソース配分のバランスが……など様々な問題もありますが。



・おわり

 予想通りに生産的な記事の更新ペースが月一以下で遅いです。瀕死の魚、びちびち。
 この記事のテキストも一年前ぐらいに七割書いて放置していた物を、ようやく整えて出すことが出来ました。
 まぁのんびりしていこうと思います。年辺りの制作ペースと、金額設定についても考えるだけ無駄感が出てきましたが致し方なし。

 すっかりプレイしなくなった商業エロゲですが、サクラノ刻の発売を楽しみにしていたりします。
 あと一年ぐらい延期しても出してくれるなら買うよ。リリース現実的な現状びっくりだよ。

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