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Huyumi 2022年06月17日 15:33

『ルシアの夢想』あとがき

・はじめに

 『ルシアの夢想』のあとがきになります。
 開発中こんなこと考えていたとか、舞台裏含め作者が好きに語るいつもの場所です。
 作中で語られていない設定などが公開されますが、あなた自身の解釈を優先してあげてください。

 11000字ぐらいあります。
 ネタバレ注意です。




・戦闘システム

 1vs1決戦システム。
 かなり昔から一対一で戦うにあたって盛り上がるシステムというのを考え続けて、ル想の開発時期まで数多の他アイディアに負けることなく生き残っていたんですが……まぁ今のシステムではありませんでした。
 元々上段、中段、下段(もしくは弱中強といった三種属性)の組み合わせで敵の行動と同じ物で攻撃、防御が成功、といった物をベースに考えていたんですが、そういった属性などのじゃんけん要素を最低限ゲームに発展させたシンプルな作品なら『召喚指揮候補生』
 複雑な作品だと同じ同人エロゲの『FalseMyth』が存在しており、

 この両者と違って独自性は出せるか?
 ビジュアルでわかりやすくしているがそれを目指せるか?

 という問いには両方「否」だったので、現存の形である、また別のタイマン最高システムに持っていきました。
 例によって調べてもそれらしいシステムが出て来ないのはわたしのインプット、学習が悪いのか、誰もが考えたことがあるけれど何かしらの理由で破棄される邪道なのかはわからず不安です。新しい星を生み出せるなんて早々無い。

 過去作共通の思想なんですが、まず回復行動を縛っています。
 RPGで回復がコンスタントな行動になってしまうのなら、受けきるステータスと行動を構築するゲームになるんですよね。
 それはそれで極まるとプレイしていて面白いんですが、基本的なゲームテンポが悪くなってしまうので別の方針で開発を行っています。
 ブラッドボーン共々、リゲインシステムの基礎となった『Chrono Ark』ですが、この作品回復能力が強力にもかかわらず、敵の行動がそれ以上に苛烈、そして幾つかのシステム上回復行動は一ターン生き延びて、その猶予で勝利するバランスになっていて面白いです。

 戦闘のテンポを良くしたいという思想もあり、『最果てを目指す』でも攻撃と防御を同時に入力してターンの密度を圧縮しています。
 今回も1ターン基本5行動の中で、その行動では攻防一体になっています。ついでに回復も。
 他ゲーと比較するとこの行動が1ターン扱いになるんですが、情報量が多く、密度を増したことにより、5ターンとして見ても遥かに早いテンポで戦闘が進むのではないでしょうか。

・シナリオ

 気づけばヒロインがラスボスだった。
 特にこれといったきっかけは無かった。
 今まで素材の関係上、ラスボスに関しては狭い範囲から選んで配役出来なかったな、とか。
 ラスボスが自分、ヒロイン、仲間など、近しい人であればあるほど、因縁深い敵になるな、とか(簡単に扱うと裏切りになってプレイ感が非常に不快になるので注意)
 『装甲悪鬼村正』のラスボスは基本ヒロインっていかしてるな、とか。
 たぶん、そんな小さい物が集まって、気づけばそんな物語を作りたくなった。

 いざ作るとなって、真っ先に考えたのはどれだけ話の核を秘密にするかだった。
 察しが鋭い人にはチュートリアル時点であたりを付けられそうだし、そんなに隠し切れる自身は無い。隠そうとすればするほど面白さも隠れてしまう気がする。
 なのであまり隠さずに、三章以降はほとんどの人が理解していけるように情報を開示していく。
 気づいた人にはその段階から、反応を楽しむ物語になればいいなと。
 悪いことをしていると自覚しているヒロインの葛藤や苦しみを、見守るお話。
 わたしの描く登場人物は、どこか自罰的な所が魅力的だと言う人も居るし、プレイヤーとしても同情してヒロインを好きになってくれそうではある。
 もし同情せず、敵意を増すのなら、挑発的な選択肢で反応を楽しんだり、いつも通りEDでコロコロしてもらおう。
 そんなこんなで草案が出来上がりました。


・エンディング

・Aエンド (リタ)
 魔王との戦いを諦め、リタと村で過ごすエンディングです。
 「諦める」ことの肯定は「最果て」でもやっています。
 何故かというと、わたしという人間がとても弱いからなんですね。
 「諦めなければいつか届く」というのは眩し過ぎて、痛いです。
 どれだけ頑張っても出来ないことは出来ないし、そもそも頑張ることすら大変な状況だってたくさんあると思います。
 だから、諦めたとしてもそれを許容してくれる場所はきっとある。
 今諦めたとしても、いつか頑張れそうな時に頑張ってみればいい。
 そんな……そんな、自分が言って欲しかったメッセージを込めました。

 まぁそんなエゴだけじゃなくて、プレイヤーの選択肢の幅だとか、ルシアに対してリタが対称的な存在になっているかとか、今のルシアの本当の心情がどうなっているかとか、たくさん表現できることがあったので自然と実装されたEDでした。


・Bエンド (ルシア)
 本来想定しているものです。

「いつも通りヒロインをEDで好きに出来るぞ!」

 と笑っていますが、今までと違ってどう好きにするかを物語の締めとしてここから全てを作っています。

 もし魔王を許せないのであれば、もしルシアを受け入れようと思うのなら、相応の選択をしてほしいなと。
 そこにどういった動機があるかは細かく描写せず、ただ結果のみで英雄譚を終わらせられるように、"はっきり"とした選択だけを置きました。

 ちなみに、最初に殺す、殺さないを選んだ時、ルシアは逆のことを言います。
 殺すのであれば、殺さないメリットを。殺さないのであれば、殺さないデメリットを。
 彼女としてはどちらの選択でも本当に構わなくて、一度選んだ選択を揺さぶってから後悔のない本当の気持ちを認めて(選んで)欲しい、そんな一念から胡乱な動きをしているんですね。相変わらず不器用。

 さて、はっきりとした選択と前述しましたが、終始どっちつかずの曖昧な選択も用意しています。
 これはAエンドと共通の理念で、是か非か、必ずしも決める必要はないと思うからです。
 そもそも過去の所業が直接描写されていないので、どれだけ悪いことをしてきたのか判断材料がとても薄いので、論理的に選べない余地は十分にあると思いました。
 ……一応、過去にどんなことをしてきたのか、具体的なエピソードは考えているのですが、それを作品内外問わず語ってしまうとルシアを嫌いな割合が一気に増えてしまうと思ったので避けているところはあります。
 死ぬほど癖のあるヒロインですが、好いてくれる人が多いと嬉しいので小細工をしたわけですね。

 スチル。
 タイトル画面にもなっているスチルですが、どれ程の人がこんな結末を予想していたでしょうか。
 手に関してですが、胸に手を添えています。
 「武器、入刀!」みたいなイメージです。ここを狙ってくださいねとはっきりと意思表示しています。

 外套を下に敷いているのですが、まだルシアの余力は残っている証だったりします。
 戦闘中は魔法で構成しているリボンや髪の毛すら一時的に魔力(光)に変えているので、その辺りが溶け切っていない辺りもそうですね。
 ただこれ以上足掻いても勝てるわけではないので、満足した辺りで落ち着いて最後になるかもしれない会話を楽しもうという気持ちが強いです。

 余談ですが一度裏切った(?)女なので、どうもラストの会話付近は胡散臭く自分でも感じ、いきなり背中から刺してきそうな雰囲気が出ていたので、なるべくそう感じないような会話の流れを意識していたりします。



・テーマなど

 キーワードは、
 「罪の実」になります。
 といっても食べると頭良くなるけど、怒られちゃう――みたいな話ではなく。


「過去、許されざる罪を犯したとして、償う当事者が居ないのならその罰はどうなるのか」

「当事者の末裔が許してしまう、あるいは無関心であるのなら罪は罪で無くなるのか」

「罪人が善人に変わったのなら、その生は祝福されるものなのだろうか」

「許されざる罪人が生み出した存在がポジティブな物だったとして、その親である存在の罪と天秤がどちらに傾くのか」


 といった色々と考えてしまう要素が詰まっていますが、まぁ難しいことはどうでもいいんだよ。
 多分、最後にあなたが選択したそれが全てなのだから。


 余談ですが主人公=実のイメージで、ルシアが花になるので、UIには花モチーフのデザインが多いです。
 それもツボミだったり、咲き誇っている物はまるでなく「想い出す」など肝心なタイミングで開花するようになっています。
 この辺り厳密にわたしが指示したわけではなく、なんならUI担当の方に魔王についてまるで教えていないので、結構偶然の側面が強かったりします。
 戦闘中のメッセージウィンドウにある、いばらの棘のような、どこか後ろめたかったり、それでいて優しい感じ! という雰囲気や花というモチーフの希望は、ラフから固める時にわたしが結構選んで残せる立ち位置にはあるものの、指示した物のほうが少なく、ラフのどこにも無ければ残らなかったので、その辺偶然が生んだ産物にしては綺麗だなと感じています。


・キャラクター

・ルシア
 やべー女。
 気づいたら生まれてた、やべー。

 名前の由来は「光」です(意味はラテン語辺りで、発音はポルトガル語辺り)
 強過ぎる光は毒になる、または単純にミスリードとして。
 ぶっちゃけ後付けした感の方が強く、キャラデザが確定してから一番合いそうな名前をずっと考えて丁度良さそうな単語を拾うとこうなりました。

 初めに意識したのは「ロリママ」
 そんなにちっちゃくは無いのだけれど、少女が母性持っているようなキャラを作ってみたかった。

 ただそこから掘り下げていき、ふと付与された属性を振り返ってみると、
「(ほぼ)実母」「従者」「恋人」「教官」「戦闘狂」「求道者」「愉悦部」……パッと思いつく感じでこれぐらい並んでしまうのでそれはもう酷い。
 この状態、もはや属性が整えられたキャラクターというよりは、生身の人間に近いので特に描写を気を付けない方が自然に滲み出て美味しいのかなと。
 物語前半に関してはルシア自身の掘り下げは少なく、世界観や魔王に関しての語りばかりで、彼女自身を好きになるフックは少ないようだが、ここで好きになり過ぎて許す、許さないの選択に影響が出るのも違うのかなと思い特にルシア自身の掘り下げは意識しないことにした。ボロ出そうだし。
 後半に入り、真相を知った上で今までの物語を振り返ると、自然にルシアのことを深く知り、彼女のことが好きになるか、あるいは裏切られた憎悪が膨らむだろう構図はちょっと面白いなと。

 おかしな話ですが、シナリオ書き切った頃合いで、

「あれこの子、かなり酷いことしているな?」

 と悪行を客観視でき(手遅れ)、必死にヘイト集めない構造にしています。
 何百年前の所業と強調したり、未練達が中立ないし、同情的な立ち位置だったり。

 攻略対象のようなキャラがここまでの悪行を、それもやむにやまれぬ事情が別に存在せず行った前例ってあっただろうかと思い返し、辛うじて思い出せた存在としてマキマさん。
 たぶんマキマさんがルシアの固い場所になって、コッコロが柔らかい場所になったんだと思います。たぶん。

 また人として弱点が無いと人間味に欠けると思ったが、貧乳を気にしているという設定をキャラデザの方から早期に取り入れたので、まぁ弱点自体はあるっちゃある。
 (魔法で見た目コントロール出来るのに、貧乳にコンプレックス感じているのは大人になっても胸だけは育たず、そこだけ盛っても癪だからという僅かな抗い)

 他には「主人公」かなと。
 物理的には最終的にはそうなるのだが、精神的にも弱点になっている。開幕魔王を一度殺してるし。
 ほとんど依存に近い溺愛をしているので、何でも受け入れる。早期に言葉で説得出来たのなら、魔王としての振る舞いも諦めてくれる。
 そのためAエンドでは、主人公がそう望まなかった故に戦うこと、自らの武を磨いたり確かめる――魔王行為に関しては辞めてしまっている。
 そこから主人公と彼女が向き合って、改めて魔王が死んだことを確認したり、再び同じ人生を歩む可能性がどれ程あるのかはわたしは知らない。プレイヤーが決めた解釈でいいと思う。


・リタ
 サブヒロイン……というかサブキャラですね。
 役割としては"世界"の代理人。
 守られるべき無辜の人々の一人であり、主人公とルシア二人の世界を外から観測するのが主な仕事です。
 大体こんな子が居るという意識を植え付けたいだけで、リタ本人の掘り下げはほとんど行われていません。
 村イベントでルシアの掘り下げのついでとか、世界観掘り下げのために質問役が主ですね。
 あんまりキャラが立ってルシアから意識を逸らされても困るが、完全に存在感無くてもそれはそれで困る。

 彼女一番の見せ場は、転機イベントでしょう。
 この時、選択に応じて大体その意思を尊重しつつ、リタの人間性が掘り下げられます。
 そして戦わないと決めるまでに、リタが戦わなくていいと言うことはありません。
 あくまで判断はあなたが決める物で、リタとの会話はそれを確認するものに努めています。


・主人公
 プレイヤーである、あなたの分身。
 ……だけではまぁ説明が付かないので最低限考えていることなんかを語ろうかなと。

 一人称に関して。
 前回と同じで「私」にしています。
 一つは中性的なイメージにしたかったこと。
 もう一つはルシアが用いている一人称のため。
 主人公は生まれたばかりの雛鳥で、少なくとも序盤、ルシアは親鳥であり、自分以外の人間全てでもあった。
 だから、魔法が使えるのは当たり前だと思っていたし、ルシアと同じように戦えるのも"普通"だと思った故に、規格外の"化物"に至れた。
 この辺プレイヤーの意識とかなり共有出来ていると思うし、チュートリアルでルシアが教えられなかった細かな部分はゲームシステムが教えてくれているので、より成長が早い説明にもなったりして気に入っている。


・スチル

 イラスト方面でまだ語っていない箇所があればそれを纏める項目です。

 視点について。
 イベントスチルの視点位置ですが、基本的に主人公側の主観に見える位置に設置するよう徹底してもらいました。
 もちろん没入しやすいようにですが、割と問題が多くて構図に激しい制限が掛かってしまいました。
 大体似たような感じになってしまう上、描いていて恐らく大変かつ退屈だったのではないかなと。
 特にえっちなイラストではより問題になり、重要な部分がメッセージウィンドウの位置から出せなかったり、描いて魅力に映るシチュエーション、体位の数が限られてしまいます。

 この辺、今後捨てるべきこだわりであるなと感じます。
 没入感よりイラストとしての魅力が優先されるべきだと思うので。
 ……と言いつつ、なんとか鏡やカットイン駆使して維持していけないかなぁと企んでいます。大切なんだ、わたしには。


・アダルト

 例によって全年齢向けCi-enなのでふわっと語ります。

「なんか書けるんじゃね?」

 という思春期みたいな万能感が制作前からありましたが、書けましたね。
 前半はエロく、後半は愛のある感じに描けているのではないでしょうか。

 あと書いていて気づいたんですが、地の文削った上に単独ヒロインだと実況プレイや言葉攻めみたいな雰囲気にしかならない。
 ぶっちゃけ喘いでいる余裕すらテキストには無いので、ご奉仕系メインの作風で良さそうです。そっちのほうが好きだし。

 結構全年齢とスチル使い回したりしています。
 これコストが限られている苦肉の策で、全年齢シーンを少しでも豪華にしたいという一念からでした。
 予算確保できなかった以前に、予算確保できていてもこの辺アダルトに割くか全年齢、戦闘方面に割くかの割合なので、この辺のバランスは今後も悩むことになりそうです。


・ルシアの生涯

 以下ルシアの略歴です。
 どうしてああなったのか、自分が納得のいく物を書いただけの物です。
 これで本記事は終了です、閲覧ありがとうございました。



・生まれてから
 人口三桁もいかない小さな村に、猟師の両親の間に長女として生まれる。
 親はあまり猟師の生々しい生活に触れさせる気は無かったが、ルシア自身は刃物や弓矢、剥製、生肉といった存在に興味や忌避感は薄く、子供にも出来るようなお手伝いをして過ごしていた。

・9歳頃
 少し離れた妹が生まれ、彼女の面倒をみつつも両親の仕事が気になり、狩りに同伴することも増えて来た。
 父親と二人で狩りに行った時に盗賊三名に出会い、父親は盗賊も予期せぬ重めの一撃に出血しながら意識を失う。
 僅かながら先に動揺を抑えた盗賊がルシアを攫おうとするが、ルシアはその場で抵抗を続け、盗賊達の暴行は少しずつ激しくなっていった。
 この時のルシアの心境としては、自分が耐えていれば頼りになる父親が起きて救ってくれる、また父親の回復を願うものだった。
 その疑いの無い願いが魔法として治癒能力を発現させたが、肉体操作の魔法は他者に影響を及ぼさず、結果として行き場の無い想いがルシア自身へ治癒能力を付与する。
 軽く殴ったりする程度の暴行ではルシアはまるでひるまず、盗賊の手段は武器を用いたり、手足を折ったりする損傷も視野に入れた攻撃に移っていく。
 一向に目覚めぬ父親と苛烈になっていく攻撃に、ルシアは父親の身に付けているナイフを手に取り反撃を始める。
 当然子供の攻撃はものともしない盗賊達だったが、長時間の攻防により盗賊達は疲労が始まり、ルシアは彼らの武器の扱い方や、普段家で行う狩人としてのお手伝いを思い出し、ナイフを上手く扱えるようになっていく。
結果血を流し、骨折れようとも立ち上がり続けたルシアは盗賊一名の殺害と、残りの撃退を行い窮地を脱する。

 父親の様子を確認するが、しばらく前に出血が多く事切れていた。
 使い方のわかった魔法により、時間を掛けて重傷の治癒と肉体を強化し、悲しみを堪えながらも父親の遺体を抱えて村に帰還する。

 しばらくは消沈していたルシアだが、妹を支えるためにも落ち込んでいられないと前を向こうとする。
 この時良かったことを思い出そうとし、一番強烈な感情は盗賊を撃退した時の物だったことを認知(誤解)する。
 生き延びたこと、大人の男性複数に武力で抵抗出来たこと、短時間で今までの経験含め成長に繋げられたこと、そして父親の安全を確保できるという様々な感情が混ざりあったポジティブな感覚だったが、これをルシアは闘争の快感だと認めた。これが魔王の種になる。


・15歳頃
 妹も十分育ち、母親と共に狩人としての生活を支えるが、この時既に戦闘能力自体は魔法を扱えない母親を超えていた。
 それでも技や知識では敵わないので、あくまで学ぶ身として従っていたが、ある日獣により母親が脚部へ重傷を負う。
 満足に歩けなくなった母親は外での活動は行えなくなった。
 ルシアは妹を守りながら狩人として活動する自信は無く、兵役に服せる年齢にもなっていたため、大きな都市へ出稼ぎに行くことを決意する。その動機の一つとして、治安維持に微力ながら力を貸し、父親のような悲劇を減らしたいというものがあった。

 兵士として訓練を受ける日々を送るルシア。
 最低限の武器の振り方や扱い方、身体の動かし方は身に付けていた物の、兵士としての対人技術は新しくもあり、適正もある技術だった。
 また村や兵士としての日々でも魔法使いは身近にまず存在せず、居たとしてもルシアほど能動的に扱える物では無かった。そのため戦う手段として魔法を用いたり、日常品を魔法で生成し、長時間維持する集中力のトレーニングを行い、兵役やまた何か有事が発生した時に備えていた。

 給料の大部分を仕送りにしていたため、ルシア自身の生活は貧しい物だった。
 狩人としての知識を利用し山菜などを手に入れ、それを調理し小腹を満たしたり、街を散歩することで色々な刺激を得たり、人々の生活を観察することが趣味であった。
 衣類や装備の手入れをすることも日常的で、その中で装備品の構造を理解し、後に魔法で作り上げることにも繋がる。

 知識に対する興味もあり、兵士向けに無料で開放されている書物を読んで、まず文字を学ぶところから始めた。
 この時、誰かに教えを乞うことはなく、効率が悪くともあくまで自らの力のみで学んでみたいという欲求を優先し、ここから数年間文字を学ぶ日課を続けた。
 意外と苦手かつ、そこまで時間に余裕があるわけでもなかったので時間が掛かった。

 少女にして兵士というのは珍しく、酔った勢いで襲われかければ適当にボコボコにし、恋愛的アプローチをされてもルシアはいまいちその辺の機微に疎かったため断り続けた。
 彼女からしてみれば興味があることは強者や自らの強さへの探求であったため、様々な人々を好きになる事はあっても、自らより強くないため愛することは出来そうになかった。


・18歳ごろ
 変わらず兵士としての生活を続けて居たところ、近隣の情勢が悪くなり、他国との小競り合いが多くなって来た。
 ある日大規模の戦闘が迫っている時、使えそうな兵士を集めている段階でルシアは真っ先に志願した。
 全ては治安を守るためと、自らの探求心のために。

 その大規模戦闘が想像以上激化し、自軍は戦線を下げたのだが、少数の部隊は撤退が間に合わず前線に取り残された。
 その中にルシアも混ざっていた――いや、意図に取り残された。
 敵軍から降伏勧告が通達される、悪いようにはしない、これはあくまで政治による戦争であるため兵士である君達に恨みはない、と。
 仲間内で降伏するという意見がまとまりつつあることを尻目に、ルシアは装備の手入れを終え、弓を取った。
 そして敵軍目掛けて射った。慌てて仲間が取り押さえるが、その重装備ごとルシアは数メートルも投げ飛ばした。

 ここまで追い詰められ、絶望的で、命を奪うことが合法になる環境は他に無い。
 自身の安全? 家族の未来? 味方の処遇? 自国の勝敗?
 普段から大切にしていたそれも、今はもう関係無かった。
 これ以上の闘争はもう一生訪れないと思ったから、人は追い詰められた時に最も成長できることを彼女はよく知っていたから。

 彼女単独による戦闘は三日続いた。
 囲まれても切り抜け、寝込みを襲われても魔法が闘争心を活力に変え、化物相手に無理だと撤退する兵士を追いかけては殺した。
 唯一、魔法使いの優秀な兵士だけは死にかけたが、運良く勝利出来たルシアの頭の中は、魔法を上手く使える戦士は強い、そして相手の魔法を用いた戦闘技術だけだった。

 三日後、一向に攻め入って来ない敵がどういう動きをしているのかを確かめる偵察兵が見たのは、敵から略奪した食料を呆然と与えられるがままに食していた、ルシアと他の兵士だった。


・20歳頃
 理外の戦果を上げて、化物が居る国を攻める必要は無いと安寧を勝ち取ったルシアは英雄と崇められていた。
 ただ誰かのためではなく、自分のためだけに戦っただけの自分が英雄とは呼ばれるのは不本意で、得た名声に付きまとう諸々が面倒でルシアは国を逃げ出した。

 その時莫大な富を実家に送ったのを最後に、家族のことを意識することはほとんどない人生に変わる。
 実際生きるのに困らないほどの富を得た母と妹は、当分の間平穏に暮らすことが出来た。

 ルシアの容姿としては、若い女性として(胸以外は)順調に育っていた。
 ただ様々な想いを抱え村を出た、そしてまだまだ成長できる余地がある見た目ということで、これからは十五歳前後の見た目を維持するようになる。

 気ままな旅を続ける中、世界を知ったり、強者を探し求めたり、戦いの気配に引き寄せられていると、竜が近くに居るという町にたどり着いた。
 そして(竜にとって)折悪く、若者が竜の住処からタマゴを盗んで来た。
 大切なタマゴの在処を突き止め、理知的だった竜は町に対してタマゴを無事に返し、盗人に粛清さえ出来るのであれば他に一切被害を与えないと交渉をした。

 町全体の総意として、直ちに盗人とタマゴを確保して許しを請おうという中――ルシアは初めて見た竜に理知的ではなかった。
 町へ大量の被害を出しつつ戦闘が始まり、竜が空からブレスを吐こうとすれば、タマゴを人質に手の届く範囲に竜を引きずり落とし、二日ほど続いた死闘の末、ルシアは竜へトドメを刺すことに成功した。

 少なくない死人と、大きな町への損害が発生したが、誰もルシアを批難することは出来なかった。
 熱で目は潰れ、片腕片脚は千切れ、全身無残な火傷を負っていたが、それでも治癒を始めている竜より恐ろしい少女がそこ居たからだ。
 百メートル近く離れた家の影から陰口こそ叩かれたが、流石に自分が悪いと甘んじて受け止め、少しでも贖罪になればと価値ある竜の遺骸は全て寄付した。

 その日の晩、久しぶりに食べた晩ご飯はとても美味しかった。
 竜のベーコンエッグはまた食べたいなとルシアは思った。


・40歳頃
 初めて竜殺しを果たしてから、飛ばれようとも、ブレスを吐かれようとも様々な対処法があるとルシアは学んだ。
 そして今までより遥かに強大な敵単体であった悦びを噛みしめながら、世界各地に存在する竜を見つけては殺して回った。

 絶滅が近くなった竜達は人に協力を求め、ごく一部の危機管理能力が高い人々――ルシアの闘争心は人類にも脅威になり得ると気づいた人々は竜に乗り、ルシアとの最終戦争が始まったが勝者はただ一人だけだった。

 この時ルシアは確信する。
 種として強いのは竜ではなく、それに勝利した私という人間なのでは、と。


・70歳頃まで
 流石に同族殺しには忌避感があり、人類の秩序を乱すのは善意が苛む。
 世界を旅し、強者を見つけては試合を挑む日々を続けていた。
 けれど届かない。
 竜に届いたり、それを超える戦士は時折居た。
 ――それでも、ルシア自身には届かない。

 渇きに堪えられなかった。
 人生の大部分で求めていた強者、自らの限界を確かめられなくて。

 自分を思い返す。
 コツを得る環境を整え、逆境で咲き続けた武力の華を。

 魔王を、始めよう。


・400歳前後
 95%ほどの人類が消滅しており事実上世界滅亡。
 うち60%ほどをルシアは直接手にかけており、残りは文明崩壊による自然死や物質の奪い合いなどによる争いによる減少。
 この時点でルシアは1からの英雄育成を諦めて、0から始めるため200年間不眠不休で新しい命の誕生を祈る。

 この時居場所を察知した勇者などは「敗者」や「従者」に食い止められたり(前者はただ人を斬りたかっただけ)
 既に発生していた作中には存在しない未練と戦って沈静化した魔王は見て見ぬふり状態。

 家族に関しては、母親が高齢で生きていたとしても、魔王の攻撃の余波により消し飛んだ。
 妹は勇者として直接魔王に討たれた説が濃厚。
 家族側からはルシア=魔王という認識の材料が少なく認知出来ず、失踪こそしたものの一生困らない稼ぎを送ってくれたし、ルシアとしても家族は故郷で仲良く暮らして老衰でもしていると既に過去の物扱いなので、"家族仲"は最後まで悪くなかった物と言える。

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