Hollow_Perception 2021/03/13 15:38

『ReIn∽Alter』完全解説記事・第八回(Ep.4前編)

 お疲れ様です、anubisです。
 今回もノベルゲーム作品『ReIn∽Alter』のストーリーや設定などに関する解説を行っていきたいと思います。
 ネタバレ有り記事につき注意。
 いよいよ最終エピソードであるEp.4となります。こちらもEp.3と同様、かなりの長さとなることが明白なので「前編」「中編」「後編」と三週に分けていきたいと思います。
 厳密にはEp.4は「Ep.4 "Alter"」と「Ep.- "Transcendence"」の二部構成になっているので、後編で「Ep.-」について触れる形になると思います。

 さて、今週は、Ep.4の前半について述べていきます。
 最終話だけあって怒涛の勢いで物語の真相が明かされていきますが、なかでも前半は「現代異能モノ」というジャンルであることすら超越した展開を見せる上、登場人物の複雑な心情が描かれていく為、本作屈指の難解なパートと言えるかも知れません。


これまでの解説記事

・第一回(Ep.1前編)
・第二回(Ep.1後編)
・第三回(Ep.2前編)
・第四回(Ep.2後編)
・第五回(Ep.3前編)
・第六回(Ep.3中編)
・第七回(Ep.3後編)


Episode.4 「Alter」(新生)

タイトル画面についての解説


・分割版Ep.4のタイトル画面。統合版でもこの画面が使われています。

 ここに至ってようやく、タイトル画面に隠された表現の意味に触れられます。
 各タイトル画面にはキャラクターと共に二重螺旋が描かれていますが、その色を見てみましょう。
・Ep.1(唯理)――赤と黒
・Ep.2(静音と煌華)――両者ともに赤と黒
・Ep.3(星生と優利)――星生が赤と白、優利が赤と黒
・Ep.4(謎の少女=プルミエール)――赤と白

 この色は「異能者の遺伝子の混じり気」を表現しています。
 もっと正確に言えば「異能者」というより「異能者の元となった存在《零種(アルター)》」ですね。(すぐ後に詳しく解説します。)
 赤と黒で表現されているキャラクターは、肉体的には《零種》とヒトの祖先が入り混じっています。
 一方で赤と白のキャラクターは、《零種》としての純血種と言えます。
(そもそも、プルミエールは《零種》そのものなのですが。)

 さて、それでは本編を見ていきましょう。

星を棄てた民――アルター

 Ep.3のラストで、死を選ぶ為に唯理のもとを離れ、何処かへ去ってしまった零。
 場面はそこから一転し、「ゼロ」と呼ばれる男の視点で物語が描かれていきます。
 名前が察しがつく通り、彼は零の関係者であり、いわゆる「前世」に当たります
 彼は親友である、冷淡な印象の少女――プルミエールと一緒に居ます。

 場所は、現代よりも遥かに発達した技術を持つ、地球から遠く離れた星。その宇宙船発着場です。
(なお、本編であるところの現代編の舞台は地球です。)
 未来のようですが実は、本編(現代)の数百万年以上も昔の話。
 ゼロとプルミエールは他の仲間たちと共に、寿命が訪れた今の宇宙を脱出し、別の宇宙・惑星への移住を行おうとしていました。

 彼らの正体は 《零種》(以下、アルター)と呼ばれる、ヒトとは異なる種族 です。
 雑な表現をするならば、現代の人から見て彼らは「宇宙人」と言える存在です。
 アルターは 《虚数認識論(ホロウ・パーセプション)》 と呼ばれる、物理法則を無視した超越的な技術を持ちます。
 これは「宇宙外生命による観測から無限のエネルギーを引き出す」というものであり、本ゲーム「ReIn∽Alter」の正体は、宇宙外存在=プレイヤーが世界を観測する為のインタフェースに当たります。
 たとえば「人が手から炎を放つ」という”描写”が表示された時、観測者がそれを見て理解・想像することによってエネルギーが生成され、実際にその描写通りの現象が引き起こされるという訳です。
 いわゆるメタフィクション的設定ですね。サークル名がそのまま「Hollow_Perception」なのも、サークル名まで巻き込んだメタフィクション演出だったりします。
(勿論、他の自作品にも適合していると思い、この名前にしたのですが。)

 このような凄まじい力を持っているアルターですから、膨大な寿命の中、何不自由なく暮らしてきたのですが、彼らとて宇宙そのものの終わりは書き換えられませんでした。
 そしてもう一つ、彼らは重大な問題を抱えていました。
「生命の創造」を悪と捉える価値観を何百万年間も貫いてきた為に、繁殖能力が退化し、完全に失われてしまったのです。
 地球の生物から見たら、まさしく神のように永遠的な生命力を持つアルターですが、それでも「存在」である以上、いつかは滅びてしまいます。
 そこで、彼らは他の既存生命に自らの遺伝子を書き込み、継承させることを考えました。
 従って、彼らの宇宙の旅は、単に居住可能な宇宙を探すだけでなく、遺伝子を乗せることが可能な生命体の捜索も目的としていました。

 さて。
「低い繁殖能力」――煌華の「妊娠しにくい体質」。
「超常的な力」――《ReIn》。
「遺伝子への書き込み」――異能者が持つ、遺伝的な特異性。
 伏線は物語の各所に散りばめられていました。
 具体的にどう現代と繋がるかは後述しますが、アルターこそ、異能者のルーツとなる生物なのです。
 有り体に言えば、異能者とは「宇宙人の血が混じった人間」だった訳ですね。

女神アカシア

 次のシーンでは、故郷を飛び立ったゼロとプルミエールが宇宙船の中で過ごしている様子が描かれます。
 ゼロは「観測者」――すなわち、本作のプレイヤーに対して、《虚数認識論》を実装する装置である「ホロウ・ジェネレータ」の力について説明します。
 彼は暗に、プレイヤーに対して「観測を続ける」という形で協力を要請しています。
「作中のキャラクターがプレイヤーと協力する」というのは不思議な話ですが、これはまさに「Acassia∞Reload」で行われていたことですね。
 そしてこのシーンでは、まさにその作品名を冠する用語である「アカシア・リロード」についても言及されます。


 Ep.3にも登場したワードですが、その正体は「アルターの記憶・人格を保存し、適合率の高い肉体が発見された時にはそれらを書き込むシステム」です。
 つまり、アルターは「アカシア・リロード」の力によって転生を行うことが出来るのです。
 なお、"システムの語源"として説明されている「記憶の女神」とはすなわち、当サークルのマスコット「記憶の女神・アカシア」のことを指しています。(つまり、単なる神話上の人物ではなく、実際に存在しています。)
 ここで、彼女の姿を見てみましょう。

……どこかプルミエールや星生に似ていますよね。
 裏設定なのですが、アルターの容姿は遺伝子改変によって、女神アカシアの特徴である 「青みがかった銀髪」「黄金の瞳」 を持って生まれます。(姿は描写されていませんが、ゼロや零も、銀髪かつ金色の眼を持ちます。)
 これはアルターなりの信仰の表明です。
 ちなみに、このイラストで女神アカシアが座っている石柱のようなもの(こんな外見ですがコンピュータです)が「ホロウ・ジェネレータ」。この中に現象改変システム「ホロウ・パーセプション」および、転生システム「アカシア・リロード」が実装されています。
 言い換えれば、これは「異能の源」にして「天国」でもある訳です。

 さて、話を戻します。
アカシア・リロード……或いは「生きるということ」そのものについて、ゼロとプルミエールでは意見が分かれていました。
 「ただ自分が生きていること」を至上の価値と捉えるプルミエールは、アカシア・リロードの力を信用しており、「いつか死を迎えても、それまでに転生先として利用可能な肉体が用意出来る環境を整えればいい」と前向きに考えています。
 しかし、ゼロはそうではありませんでした。
 彼は「死」をひどく恐れており、たとえ転生が出来ようとも、死という絶望そのものは回避出来ないと考えているのです。
 また、「遺伝子の書き込みによって繁殖し、後世を遺す」という行為についても、死の恐怖を紛らわせるには足りないと考えています。
 それゆえに彼は「何のために生きるのか、何のために死ぬのか」という問いの答えを探していました。
 そして、「いつか無に還る虚しい人生を、それでも肯定出来るような"最高の死"」 を求めるようになりました。
 ゼロのこの心理こそ、彼の転生体である零というキャラクターの中心に在るものです。
 Ep.2後半の解説で述べた通り、記憶を喪失していない本来の零は(Ep.1から描かれてきた印象に反して)変化など望んでおらず、「世界ではなく自分が間違っている」という自己否定的な思考を抱いている訳ですが、ゼロもまた同様です。
 彼は死という「変化」に恐怖していますが、同時に、死から解放される方法は「死を受け入れること」しか存在しません。ゆえに彼はどれだけ苦しかろうと、死を望まずとも、その「唯一の方法」と向き合うしかないのです。
 そして、ゼロが抱くこの希死念慮じみた感情は、この後の展開によって決定的なものとなります。
 
 プレイヤーは唯理という優しいヒロインを見ているため直感に反するかも知れませんが、これらの 「そもそもゼロ(零)は死(による死からの解放)を望んでいる」 という背景が、物語ラストにおける零の選択に繋がっているのです。

青き星へ

 宇宙の旅を始めて、長い時間が経ちました。
 旅の中でアルターたちは様々な災難に見舞われ、予備の転生用肉体を喪ったり、「怪物」に襲われて死傷者が発生するなどしました。


・さらっと「虚数領域」などと書かれていますが、これは当サークル作品の共通設定である「宇宙(=世界)ではない”無”の領域」を示す言葉です。また、この「怪物」の正体は《虚数認識論》の副作用によって発生するものであり、「Acassia∞Reload」に登場する敵モンスターはその一部です。これは「現象改変を求める際のイメージがブレること」によって起こる現象です。

 しかし、彼らは出航から300万年もの時を経て、ようやく「居住可能性」と「近似性が期待出来る生命の存在」という二つの条件をクリアする星に辿り着きました。
 その星こそ、物語の舞台である地球です。
 多くのアルターはこの星の発見によって歓喜しましたが、彼らの中でもひときわ繊細な心を持つゼロは、「この侵略行為によって自分たちは本当に救われるのか」と疑問を抱いていました。
 とはいえ、その疑問を他の者たちに呈することはなく、地球の実地調査に参加します。


 
 この調査は、Ep.1で零が《観測》の異能を覚醒させる際に想起している場面です。
 この時は、視界の通らない森林を見渡す為に《観測》で視点を各所に飛ばして調査していました。
 さて。この場面におけるゼロですが、彼は地球の生態系を見て「恐ろしい」と感じています。
《虚数認識論》のお陰で生存の為に他の動物から何かを奪う必要がなく、繁殖もしなかったアルターは、長いこと「生命が本来持っている活力」「生きることに対する必死なまでの執着」から遠ざけられていました。
 その為、(ゼロが偶然踏みつけた虫が簡単に死んでしまったように)個々が非常に弱く、それを補うかのように凄まじい勢いで繁殖を繰り返す地球の生命に、恐怖を覚えてしまったのです。
 死を恐れるゼロにとって、彼らの在り方はあまりにも残酷でした。
 同行しているプルミエールは「この星に自分達の脅威となり得る生命体など存在しない」と言い、ゼロの恐怖心に共感出来ていませんが、それに対して彼はこう独白しています。

「個々がどれだけ弱くても、この星が、ここに生きる命の在り方そのものが僕を否定し、孤独にする」、と。

 この想いこそゼロ/零が抱く孤独感、そして本作における異能者たちが抱える孤独感の根源に在るものです。
 アルターは、異能者は、そうでない者にとって「よそ者」だったのです。
 初めから彼らは、人間から見て「違う」生命体なのであり、そこには孤独にならざるを得ない運命が存在していました。

「ヒト」の誕生――ReIn∽Alter

 アルターによる調査が進み、彼らは自身との近似性が比較的高い哺乳類を発見しました。後の、ヒトの祖先に当たる生物(いわゆる「猿」)です。
 そして、これらの動物にアルターの遺伝子を書き込むことになります。
 これは現代から約700万年ほど前の出来事です。

 ここで、プルミエールは「ホロウ・ジェネレータへのアクセス権限はイントロン下に隠しておくこと」と説明しています。
 アルターがアルターである所以として「(《虚数認識論》を実装している)ホロウ・ジェネレータを操れること」は必須条件ですが、知性が未成熟な生命体に与えるのは危険過ぎる力です。
 その為、ある程度、意識が成熟した段階でアクセス権限が発現するよう、遺伝子に処置を施したのです。
 このアクセス権限こそが現代編における「異能」の正体であり、異能者とは、アルターへの先祖返りが進んだ人間のことなのです。
 異能を発現させる時に瞳が金色になるのは、金色の瞳を持つアルターに一時的に回帰していることを示しています。
(「魔族」は、先祖返りの度合いが低いのに無理やりアクセス権限を発現させられ、遺伝子が暴走してしまった人間です。)
 また、本作のタイトル「ReIn∽Alter」とは、「アルターによって遺伝子(相似記号によって模されているもの)に《ReIn》が書き込まれた」という、まさにこのシーンを表現している訳です。

 こうして、遺伝子にアルターの特徴および異能の素質を書き込まれたことにより、この星に初めて「ヒト」が誕生しました。
 本作における「ヒト」とは、進化によって自然に誕生した種ではないのです。
 なお、これは現実の話ですが、最古の人類とされる猿人「サヘラントロプス・チャデンシス」も大体、700万年前くらいに存在していたようです。

 さて、遺伝子への処置は無事終わりました。しかし、もともと遺伝的侵略に乗り気ではなかったゼロは、この一件が決定的となって希死念慮が確固たるものとなってしまい、こんなことを言います。

「自分たちはよそ者である」という認識が強い彼は、地球とそこに住まう生命を尊重して「ヒトが自分たちを排斥することを望むなら、それを受け入れよう」という決意を抱いた訳です。
 それに対しプルミエールは「自分たちは知恵を授けるのだから、肯定的に捉えて然るべきだ」と返します。
「どれだけ愚かしく残酷に見えても、地球はありのままで在るのが正しく、自分たちは間違っている」 と考えるゼロ。
「自分たちの在り方こそが正しく、地球はそれに適応して高度な発展を遂げるべきである」 と考えるプルミエール。
 この時、もともと親友でありながらも価値観が違っていた二人の思惑は、決定的なズレを生みました。
 このズレが、Ep.4後半で描かれる遠い未来――現代編の結末に繋がります。

「愛」という感情

 次のシーンでは、「ヒト」が生まれてから約600万年ほど経っています。
 とんでもないスケールのお話なので時期の表記はかなりざっくりしていますが、こちらは現代から10万年ほど前の描写です。
 ヒトは既に多くの種に分化し、淘汰と進化を繰り返して発達していました。(この頃には既に「ホモ・サピエンス」と呼ばれるものが誕生しています。)
 一方で、アルターの後継者としてはまだ力不足でした。
 そんな中、彼らのうちの半数が、寿命によって命を落としました。
 そのことにゼロは深く悲しみ、絶望し、孤独感を覚えました。
「このままアルターの歴史は終わり、虚無へ還ってしまうのだ」と。
 彼は孤独感を癒やすため地球を旅しましたが、「よそ者」である彼を受け入れる生命体は、ホモ・サピエンスも含めて誰一人として居ません。

 しかし、孤独な旅の果て、そんな彼に近づいた者がただ一人だけ存在しました。
 金色の髪の少女――唯理の前世に当たる人間です。

 彼女はまだ完全ではないものの、アルターとの類似性が他の人類に比べて大きく高まった、突然変異個体でした。
 その為、繁殖力の低さも継承してしまっており、ヒトの群れから「女の役割を果たせない異常な存在」として一人、追い出されてしまったのです。
 そんな彼女ですが、言葉を発することは出来ないものの、ゼロの中に渦巻く孤独感に共感し、彼を抱きしめました。
 ゼロは、自らの感じた未知なる安らぎに対して「愛」という名を付けました。

 アルターは「愛」というものを感じたことがありません。
 彼らは《虚数認識論》という、個人で行使出来る圧倒的な力を有しているため、本質的には他者など必要としていないのです。同族に対する優しさは「愛」ではなく、純然たる「倫理・正義感」です。
 一方でこの時代のヒトもまた、仲間を守る利他行動を取ることはありますが、それは「愛」と呼ぶには些か原始的過ぎる原理――「自己や群れの保護」という本能によってそうしているに過ぎません。
 しかし「アルターである自分に手を差し伸べた」少女の在り方は、ゼロにとって「愛がある」と感じられました。
「愛」とは何なのか――その答えはどこにも存在していませんが、少なくとも彼は「異なる他者に手を差し伸べる勇気、”自分と違うこと”を赦す優しさ」を「愛」と見たのです。

 彼女は異能こそ使えませんが、「ヒトでもアルターでもあり、ヒトでもアルターでもない」という立場上「原初の異能者」と言える人間です。
 この少女、そして唯理が「主人公」である所以は、異能の有無や戦闘能力の高低ではなく、心に「愛」を抱いていることにあります。
 彼女たちは、誰よりも特別だったのです。

救済の旅、その終着点

 ゼロは、ホロウ・ジェネレータにアクセスして傷だらけの少女を癒やした後、二人旅を始めました。
(零が《治癒》に覚醒した際に想起した記憶は、この場面です。)
 彼らは世界中の孤独な人間たちを励まし続けました。
 独り寂しく死にゆく者を勇気づけ続けました。
 ゼロは少女から感じ取った愛を、人々に再分配していたのです。
 そんな二人の前に、プルミエールが現れます。
 アルターは人間と直接触れ合わない方針であった為、ゼロを咎めに来たのです。
 しかし、孤独な者達を見捨てることは彼には出来ません。
 彼はプルミエールに対し「もし目に障ったら、僕を殺してくれ」と頼みます。
 それはつまりプルミエールではなく人間の少女を取ったということに他ならず、彼女は悲しみつつも承諾しました。

 その一件以降も旅を続けましたが、やがて終わりは訪れます。
 少女の寿命がやってきたのです。
 その儚い結末に、ゼロは絶望しました。


・ここの語りは、星生の「人は生まれた瞬間に孤独になる」という台詞を意識しています。

 そして苦悩の果てに、生きる理由――「もう死んでしまった少女に愛を伝えたい」という想いを抱きます。

 彼は少女の遺体を埋葬しました。
 敵対を約束したプルミエールですが、とはいえ親友。彼女はゼロを気遣うように、埋葬に付き添います。

 ここはEp.3でも描写されたシーンですが、その意味はここでようやく分かります。
 零は少女に対して転生を望んでいたのです。
 しかし、少女はまだアルターとしては未成熟である為、プルミエールは転生を否定しているという訳です。
 彼女は、零の執着心を「彼自身を苦しめるもの」として否定し、「人と関わるのは止めたほうがいい」と忠告します。
 ですが、孤独という感情、として愛という感情を知ってしまった零には、もはやそれを選べません。

 ゼロは孤独から救われるため、「愛」を選びました。
 プルミエールはこの時点ではまだ明確な意志を持ってはいませんが、「飽くまで孤独であり続けること」を当たり前のものとして選びました。
 このゼロとプルミエールという二人のアルターの考え方の違いこそ、本作の最重要ファクターである「孤独と、それに対する二つの回答」に繋がっているのです。

 シーンは変わり、ゼロのその後が描かれます。
 少女の愛を失った彼は、「満たされぬ者が他者を満たすことなど出来ない」と言い、もはや他者を救うことを止めてしまいました。
 そうしているうちに、長かった人生にも終わりがやってきます。
 少女と初めて出会った地点である砂漠で、彼は寿命が尽きるのを待ちました。
(ちなみに、その砂漠とはサハラ砂漠のことです。「サヘラントロプス・チャデンシス」がサハラ砂漠の一角に生息していたらしいことになぞらえて、そこをゼロと少女にとっての”物語の開始地点”にしました。)

 しかし、死を望んでいた筈の彼は、間際になってそれを拒絶します。
 彼は生きる理由を見つけてしまっていたのでした。
 意識が消えゆく中、彼はアルターが信奉する女神「アカシア」に祈ります。

「どうか僕の存在を抱き留めてくれ。この希望が叶えられる時まで、永遠に。この存在理由が果たされる時まで、無限に」

 女神アカシア――すなわち「アカシア・リロード」は彼の意志を受け止め、かくして現代にて、「ゼロ」は「零」として記憶を引き継いで転生しました。



――今回はこの辺りで。
 この過去編は物語全体の真相が明かされるパートなので、シーン数のわりにかなりの長さになってしまいました。
 次回でEp.4本編の終了まで行きたいと思います。Ep.-(アカシア編)は一週で終わる想定ですが、場合(その時の忙しさ)によっては二週に分けるかも。
 

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