東横とこの悪魔創作紹介その1

悪魔創作時代の、悪魔ちゃん紹介資料公開

2017年の私の活動は、悪魔クラスタばかりをしていたといっても過言ではない。72体の悪魔からなる「ソロモン72柱」という悪魔を中心に、”ほぼすべての悪魔を女の子化してみる”活動をしていたのだ。
その際に調べた、いろいろなことを、キャラデザの理由とともに史実の資料を読み漁った結果をここに数体ずつ記すことにする。
今までまとめるところがなかったからね。

今回はソロモン72柱の悪魔を、ソロモン悪魔の概要とともに序列1・2を紹介します。

概要
悪魔ってなあに?

 悪魔とは、神に逆らい人々を罪や堕落に導く霊的な存在である。
その成り立ちには紀元前にまでさかのぼることができるほど非常に長い歴史がある。
 世界最大の宗教である「キリスト教」は一神教であり、彼らにとって唯一神以外の
神は都合が悪く、下手をすればその神の勢力に滅ぼされる危険な存在となりえた。
そこで彼らはキリスト教の唯一神以外の神を悪として徹底的に弾圧・排斥することで自分たちの国・民族の誇りや考えを守り広めていったのである。唯一神以外を信じる異国の人々を悪い存在(悪魔とそれを信じる間違った存在)として扱い排除することのできるこのシステムは唯一神を信じる勢力を広めるのに都合がよく、むしろ間違った邪悪な考えを持つ・信じる人々を救うためだという大義名分・正当性をも持たせた。
 現代のわれわれの価値観で考えると、一神教のこの苛烈な排他主義のほうが邪悪に見えるが、この考えの萌芽は紀元前までさかのぼることができ、その当時の人々は迫害の往復によって自らの命そして民族や共同体の命すら日常的に脅かされていた。このような状況では苛烈な排他主義が長い歴史をかけて育てられたとしてもおかしくはない。
 人類の歴史がまだ浅い頃の一神教の、生命の本能である自己防衛の究極の形によって悪魔は誕生したともいえるだろう。
 デビルとデーモンという単語はしばしば同一視されるが、もともと悪だった存在をデビル、異国の神や精霊だったものが悪魔になった存在はデーモンといわれる。
事実デーモンという単語には精霊的な意味も含まれている。


ソロモン72柱の概要
 ソロモン72柱の悪魔とは、太古の昔に実在した賢王ソロモンによって使役されたとされる72体の悪魔たちのことである。
 悪魔の総数は諸説あるが、人間と同じまたはそれ以上の数存在する説が有力であり、その膨大な数の悪魔の中から中から72体の有力な悪魔がそろう精鋭部隊のようなものである。
 悪魔一体一体が悪魔世界のエリートであり、それを証明するかのようにほぼ全員が王位・爵位を持っている。
 姿は悪魔のイメージでよくある「コウモリの羽」「角」「矢尻のような尻尾」ではなく、動物や高貴な人間そしてそれらを組み合わせたキメラのような外見が多いのが特徴であり、彼らが選ばれた少数の悪魔であることを際立たせている。
 その能力も、悪さをする類よりは知恵を与えたり使い魔を与えたりと、悪・武力より
頭脳・知性派が多いのもソロモン悪魔の独特な特徴である。
 位を持つ・特徴的な外見・知性的能力・この3つだけでもソロモン悪魔達が他の小物悪魔とは違うことがわかるだろう。

 ソロモンが用事を済ませた後に、全員がツボに封印されて海中深くに沈められたが、
そのツボが割と早い段階で強欲なトレジャーハンターに見つかり封印が解かれたため、
現在では地上に残ったり魔界に帰っていたりするとされる。
 悪魔の序列はソロモンに仕えた順番の説が有力であり出席番号のようなものである。
アスモデウス・アスタロトやべリアルといった世界的に有名な悪魔がマイナー悪魔に
挟まれているのも、序列と偉さ・強大さには関係がない説が有力視されている理由である。


ソロモンと、ソロモンという名前を関する書物について
概要
 紀元前1000年ごろ、ソロモン王はイスラエル王国第3代国王としてエルサレムに
神殿を建てようとしたが、なかなか工事が進まなかったため、無事の建設を祈願するためにモリヤ山で神に祈りをささげた。すると光に包まれた大天使ミカエルが現れ、鉄と真鍮で作られた指輪を授かったといわれる。ソロモン王はこの指輪の力を用いて多数の悪魔を使役し、エルサレム神殿を無事完成させたとされる。
 「ゲーティア」によればソロモン王は神殿を完成させた後、ソロモン72柱と以下多くの悪魔を真鍮の津尾に閉じ込めて封印し、ソロモン王はこの悪魔たちを最後には真鍮のツボに封印して深い湖に沈めてしまう。
 だが後の時代になって強欲なバビロニア人が発見し、中に宝物が入っていると思って開けてしまう。もちろんその中にいた72柱と以下悪魔軍団は自由になり元居た世界に帰ってしまう。
 ただしべリアルだけはその場にとどまり、近くにあった偶像の中に身を潜め、近づく人々に信託を与えたとされている。

 ソロモンの名前が冠される書物の中で最初期のものとされる書物は『ソロモンの誓約』である。これは大天使ミカエルから五芒星の彫られた指輪を授かったソロモン王が、ベルゼブブを筆頭とする数々の悪魔を使役してエルサレム神殿の建造をさせたという、悪魔を扱うマニュアルであった。ソロモンが悪魔を従える際に使用した指輪はこの書物によって初登場している。

 ソロモン王は外交を重視して国を豊かにするタイプの王であったため、近隣諸国とのつながりを強くしようと多くの異国の娘を愛し、最終的には700人を超える王妃と30人の妾をもった。そしてそれぞれの相手の信仰する神のための儀式に参加した。
 だがこのやり方は庶民に異国の神への信仰をもたらし、その異国の神がのちに悪魔に堕とされたことからソロモン王は「悪魔を従わせた王」の由来となったのだとされている。事実ソロモン王亡き後のイスラエルは内紛により分裂している。

 『ソロモンの小さな鍵』とは、ソロモン王が使役したとされる72柱の悪魔について
記された、悪魔学の中でも特に有名で最重要な部類である書物であり、17世紀にフランスで成立したとされる魔導書である。ソロモン王の作とされているが、真実として考えるには無理がある。
 『ソロモンの小さな鍵』は5部構成の魔術書であるが、ソロモン72柱と称される悪魔たちの地位や特徴・使役方法などが詳しく記されているのは、「ゲーティア」と称される第1部であり、その内容のわかりやすさと派手さから、現在ではその部分自体が『ソロモンの小さな鍵』の代名詞であるほど有名である。
他の部では方位の霊・黄道12宮・天にいる霊を扱ったりしており、『ソロモンの小さな鍵』は単に悪魔だけを扱った書物ではないことがわかる。
 それでも第1部の「ゲーティア」が重要なのは変わらず、第1部とされていることからも成立当時はこの部分しかなく、他の部はのちに付け加えられたという説も存在する。悪魔たちを召喚して従わせるための手段が、『ソロモンの小さな鍵』に書かれているというわけである。

『ソロモンの大いなる鍵』という書物もあるが、これはソロモンの名を冠する7つの写本をまとめたものなので、小さな鍵の対の存在ではない。


以下、悪魔紹介


バール 
序列1位  王  あまりにも有名で派生の多いソロモン悪魔の筆頭

概要
 バールは、ソロモン72柱において序列1位の悪魔である
地獄の東方に君臨する王であり、66の軍団を持つとされている。
最高レベルの知名度と地位を持つソロモン悪魔の筆頭的存在である。

容姿
 猫・ヒキガエル・人間の王の全てを兼ね備えた姿で登場する。
『レメゲトン』から400年後になって描かれた『地獄の辞典』においては
クモの体が追加されて、現代人がよく知る姿となった。

 バールという名前には主人・王という意味があり、この名前から派生する大悪魔も存在する。バルベリト(ベリス、ソロモン悪魔28位)・バール・ゼブル(ベルゼブブ、ハエの王)、バール・ぺオル(ベルフェゴール、怠惰の悪魔)、ベリヤール(べリアル、ソロモン悪魔68位)、バール・ハダト(狩りの神。この悪魔はこれの説がある)など、バールの部分はその多くがベルと変化している。
 上記の派生悪魔の存在も、この悪魔(神時代含む)の信仰の広さと影響力の大きさを表す証拠となっている。

 頭が3つあったり複数の姿をしているという背景には、バールという悪魔は一つではない、複数の派生悪魔や宗教争いの過程においてキリスト教などに敗れたかつての部下たちの怨念がその身に凝縮していることを暗示しているのかもしれない。
 名前については、"バール"は神様だったころの名前であり、悪魔は"バエル"表記であるとして名称を区別する人・文献が少なくない。

能力・解説
 しわがれた声であらゆる知識や策略・奸智を召喚者に伝える。
悪魔としての能力は、「強さ」「支配」「大胆」「破廉恥」「復讐」「感受性」「高慢」「野心」が領域とされている。
 透明化は原典においても強調されており、これを召喚者の求めに応じて行使してくれると言われる。

 バール神はイスラエル周辺にあった異教の神の中で最も有名だった神が由来であり、
もともとは槍と稲妻を持った勇敢な戦士の姿をしていたという。そして武闘派の妻アナトがいたとされている。
 かつての中東から北アフリカの地域(イスラエルの北隣にあったカナン地方など)で
崇拝されていた偉大な農耕神であり、各地に神殿が作られるなど当時の人々の生活に
由来する親しみのある神であった。それゆえに恵みをもたらす嵐や雨・雷を操る力を持っているとされる。
 悪魔でないころでもバールの影響力は強大であり、旧約聖書においては自分たちユダヤ人を脅かす存在だとして激しく敵視し、何度もバール信仰を禁止していた。否定的に書かれ、淫乱な神・生贄を求めるということまで書かれていたほどだ。それでもバールの影響は消えることはなく、現代においては大悪魔としてその影響力を残している。

 大悪魔バールには、一つ情けないエピソードがある。
ある日バールは、自分への生贄に最適な一人の羊飼いの魂を奪おうとするが、家の主人の
助言によって失敗に終わり、持っていた本「アッピンの本」を奪われるという失態を○すというものである。その本にはバールに忠誠を誓った部下の悪魔やバール自身の本当の名前があったとされているが、詳細や実在性は不明である。

デザイン
 デザインは、王の中の王としての王冠、そして悪魔としての白いツノ、毒を出せる紫の手、腰から生えた2本の腕と合わせた4本の腕を持つ。クモの悪魔なのに手と足を合わせて8本ではなく6本なのは、彼女が悪魔としては幼齢であることからタランチュラと足りんチュラ(手足の数が足りない)をかけているのである。


アガレス
序列2位  公爵  人に隠語を教える地震の悪魔

概要
 アガレスは、ソロモン72柱において序列2位の悪魔である。
バールと同じく地獄の東部に支配領域があり、31の軍団を持つとされている。

容姿
 手にカラス・鷲などの猛禽類を留まらせてワニにまたがった、穏やかな老人賢者の姿を持つ。膝が見える服装をしている。

能力・解説
 「言葉を教える」能力が主であるが、その中身は不品行であり下品・不道徳なことを
召喚者に言わせることを楽しみとする。一応あらゆる語学に通じている博識な悪魔であるため召喚者に普通の知識を授けることは可能である。
 「権威あるものを失墜させる」については、社会的地位はもちろん、霊的な権威も含まれる。霊的な権威とは、自分を高めようとする意志によって得たもののことである。「走る人間を硬直させ、走り去る者を引き戻す」ともあるが、これは自分に協力的でない者、以前別れてしまった有力者を、召喚者の望む通りに動かす力であると解釈でき、合わせるとここからリーダーシップのある悪魔とも解釈できる。
 他には拳で地震を起こすことによる物理的な破壊も可能である。

 天使時代を引きずっている悪魔のうちの一体らしく、憎しみは神・天使にのみ向けられておりその破壊的な能力に似合わず人間に対しては慈悲深い。
 特にアガレスは優しい悪魔であるが、地震を起こすという1点においてのみ人間に害成す存在となる。元々は時間と農耕の神であったらしい。

デザイン
 デザインは軍服を着て悪魔の角と羽を持つというシンプルなものである。
ズボンがなくても軍服だけですっぽり体が覆える小柄である。この子をデザインした当時は悪魔に興味はなく72柱をそろえるつもりはなかったため、元ネタにある賢者・ワニ・カラスの要素は一切ついていない。
 東横とこにとってはソロモン悪魔をそろえる2年前からいたキャラであり、唯一の古参キャラでもある。ソロモン悪魔女体化のきっかけでもある。

参考文献リスト
・荒木正純『知っておきたい 天使・聖獣と悪魔・魔獣』(株式会社西東社、2011年)
・高橋一人・ほか『天使と悪魔がよくわかる本』(株式会社PHP研究所、2006年)
・幻想世界を研究する会『よくわかる 「魔界・地獄の住人」事典』
  (株式会社ウェッジホールディングズ、2008年)
・天使悪魔ドットコム『図解天使悪魔辞典』(株式会社幻冬舎、2009年)
・おおつ やすたか・ほか『悪魔大百科』(株式会社メディア・テック、2006年)
・TEAS事務所『萌える悪魔事典』(株式会社ホビージャパン、2012年)
・森瀬繚『「堕天使」がわかる事典』(SBクリエイティブ株式会社、2014年)
・TEAS事務所『萌え萌え悪魔事典 side黒』(株式会社イーグルパブリシング、2007年)
・TEAS事務所『萌えるソロモン72柱の魔神事典』(株式会社ホビージャパン、2014年)
・早乙女研究所・ほか『別冊宝島スペシャル 天使・悪魔・妖精イラスト大事典EX』
 (株式会社宝島社、2011年)
・草野巧『図解 悪魔学』(新紀元社、2010年)
・青狼団『ソロモン王の鍵 魔導書』(二見書房、1991年)
・山北篤・ほか『悪魔事典』(新紀元社、2000年)
・C・ド=プランシー・訳、床鍋剛彦『地獄の辞典』(1990年、講談社)

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