「呪いの人型と真実の壺」〜7月の短編ファンタジー


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 悔しくて悔しくてはらわたが煮えくりかえる、そんな経験はないだろうか。
 みやびは今まさに、その真っただなかにいた。
 38歳、これまで頑張ってきた仕事が認められ、大きなプロジェクトの総責任者に抜擢されたのは1年前だった。
 社会的にも影響のある大きな仕事だった。
 みやびは持てる人材を活用し、自分の知力、経験、スキル、アイデア、エネルギーをすべて注ぎこんでやってきた。
 仕事にのめりこみ、とちゅう3年越しの彼氏と別れたくらいだった。
 それでもみやびは満足だった。こんな大きな仕事をやれるのは、生涯においてもうないだろう。
 命さえ注ぎこむ勢いで、その仕事に邁進していた。
 出来上がりも上々で、お披露目の日を皆がわくわくしながら待っていた。

 ところが、急に雲行きがおかしくなった。
 クライアント元と連絡がうまく取れなくなってきた。何が起こっているのか、よくわからなかった。
 気がついた時には、自分とは関係ないアイデアが別に立ち上がって進められていた。
 あろうことか、自分のアイディアもところどころ盗まれていた。

 みやびを総責任者として任命してきたクライアント元に再三問い合わせても、はぐかされているような返事しかもらえなかった。
 みやびのストレスはピークに達した。そうして辞任するところまで追いこまれた。解任されたわけではないけれど、総責任者だったはずがいつのまにか窓際に追いやられ、肩たたきをされ続けたようなものだった。

「いったい何でこんなことに?」
 自分の仕事がダメだったのなら仕方がない。だが、明らかに皆に好評だったのだ。
 仕事に巻きこんでしまった人たちにも申し訳なかった。彼らも同じようにはずされてしまっていたから。そのうえ彼らには、途中から支払いもされていなかった。

 最終的にわかったことは、ある人物にプロジェクトが乗っ取られてしまったということだった。
 その人物は、みやびの補助をする立場で4か月前にプロジェクトに入ってきた40代の男性だった。
 彼はみやびの補助をするどころか、影でいろいろ立ち回り、そのプロジェクトを乗っ取ってしまったのだ。
 こんなことがあっていいものだろうか。理不尽すぎる。
 女性が1人、独立して仕事をしてきたのだ。理不尽なことはこれまでにも何回もあった。涙をのんでやってきたことも数知れない。
 けれどこれほどまでおかしなことは、初めてだった。
 誰かを心の底から憎むというのも、みやびにとって初めての経験だった。


 夏の夜、絶望的な気持ちでみやびが1人とぼとぼと道を歩いていると、道端に占いのような台が出されていた。
 双子なのだろうか、そっくりな老婆が2人並んで座っていた。どちらも同じような黒い服を着ている。
 思わず占ってもらいたくなったが、よく見ると台に置かれたプレートにはこう書いてあった。
 左の老婆の前のプレートに書かれていたのは、『呪いの人型』
 右の老婆の前のプレートに書かれていたのは、『真実の壺』



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