本当は恐ろしいファ●タジ●ア●ト展

楽しみにしていたファ●タジ●ア●ト展。
大好きな天野●孝の絵を眺めていると、関西弁のお姉さんが声をかけてきます。

「F●シリーズは6が一番お好きなんですか?」
「はっ、ひえっ、な、ななな、なんでわかったんですか?」
「先ほどからこの魔導アーマーの絵をずっとご覧になっていたので」

ホールの中央に飾られたF●6のキービジュアルのテ●ナの絵は、他のそれとは明らかに一線を画し、"一段上"の扱いを受けていました。
値札には「係員にお問い合わせください」と書かれており、一体いくらするのか分かりません。ちなみに、他の五~六十万円くらいの絵にはすでに売約済みの札が貼られ、まだ買い手がついていないのは百~二百万円か、「お問い合わせください」の絵だけです。見えている値段から考えると、三百万円以上はするのでしょうか。

「世間的には7が有名で人気ですけど、やっぱり一番は6ですよね。魔法と科学の共存するスチームパンクの世界観がうんたらかんたら(キモオタ早口)」
「分かります! やっぱり6ですよね(極上スマイル)」
「(キュン……!!)」
「よろしければおかけになって話しませんか?」

主催企業の人だったようです。男性スタッフと違ってスーツじゃないので気づきませんでした。黒ずくめのお姉さん、スカートのスリットがエッチです。
というかよく見たら室内で関西弁喋ってる人はみんなスタッフです。関西の会社なのでしょうか?

「こんな立派な額入りの絵なんてちょっと」
「ご安心ください! 額もお値段に含まれています」
「値段書かれてないじゃないですか」
「それはこれからのご相談です」
「今日は買うつもりじゃなくて、見に来ただけなんですよ」
「どうぞおかけになったままゆっくりとご覧ください。ほら、照明で色加減が変わるんです」
絵と同じくらい高そうな照明器具で壁から外してイーゼルに立てかけた絵を照らします。
「うわぁ、これは図と地の輪郭線を際立たせることで平面の絵でありながら見る人に立体感を訴えかけ、その距離と角度から見え方の変わる代物……これは実物の絵じゃないとうんたらかんたら(キモオタ早口)」
「お目が高いですね! 今はコロナでおうち時間も増えてますから、部屋に絵を飾る方も増えているんですよ? お客さんも受付で『部屋に絵を飾っている』とアンケートにご回答いただきましたよね」
「飾っているのはただのポスターで……それに絵画は経年劣化するじゃないですか」
「と思うじゃないですか。実は特別な技法で描かれているので、何年経ってもこの色なんです」
「でも何百万円も払うお金なんて持ってないですよ」

キラキラ光るお姉さんの瞳から目をそらし、壁のほうをちらりと見ます。
月々の支払いにボーナス払いも加えたローン返済ができるとのこと。
絵画もローンで買う世界なんですね。

「ところでお若く見えますけど、もしかして新卒の方ですか?」
「はい、一年目です(大嘘)」
「でしたらお支払い金額が不安なのも無理ないですね。でもご安心ください。弊社では百十九回分割払いが可能です。私どもの経験から申しますと、月々二万円までのお支払いなら今後のライフプランも加味した上で、余裕を持った返済が可能です」
「ウッ、すみませんお腹痛くて……う●ち漏れそうなんでトイレ行ってきてもいいですか?」
「えっ、あっ、はい」
「(タタタ……ッ!!)」

無事トイレには間に合い、事なきを得ました。

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