キネマトグラフィカを読んで

高度経済成長期を舞台にした小説が読みたい!
バブル時代を背景にした小説が読みたい!
ラジオか何かで聞いた話では、林真理子がまさにバブル時代の作品をよく書いているらしいですが……
今回は、新宿の紀伊国屋書店へたまたま入った際に上述のコンセプトに合致するハードカバーが複数タイトル見つかったので根こそぎGETした作品のうちの一つがこれです。
本作『キネマトグラフィカ』は、厳密にはバブルが弾けて間もない頃を舞台とする作品です。
そして古き良き映画業界をモデルとしています。主要登場人物のほとんどが営業職なので、おさぼり営業マンの一翼を担うものとして、とても共感する部分があります。
メーカーが代理店を訪問したら、相手はお客さんなのになぜかこちらが接待を受ける。
そんなことが起こりうる業界は今もこの国に存在します。
構成としてはある映画会社にいた同期のメンバーたちが数十年後に同窓会を開き、当時を懐かしみながら回想シーンへ突入し、また現代へ戻ってくるという形です。
その内容は、各メンバーが映画を上映するためのフィルムプリントを日本全国新幹線で乗り継いでリレーするというものです。各々がフィルムプリントを手にするタイミングで視点を担う群像劇です。
テーマは男女雇用機会均等法が施行されて間もない頃の、仕事と結婚を両立しえない女性の宿命を描いたジェンダー論を内包するものでした。
プロットとキャラクターはいくばくか物足りない感はありましたが、背景とテーマはいい感じでした。最後まで楽しく読めました。特に最後らへん。まさか百合エンドとは。