結局、キャラの魅力が全てって話(その2)

前回、同じタイトルの記事(結局、キャラの魅力が全てって話)で述べたことをおさらいします。

その作品が読む人、見る人に取って胸打つものであるかどうかは、主人公に感情移入できるかどうか次第。

結局、これに尽きる。そういう話です。

近い将来、私は自分が何歳のときに錠剤をのめるようになったかという記事を書くことになるのですが、その下書きをしたためているときに小学校低学年の頃に想いを馳せていたのです。
そうしたら、思い出したことがありました。

私は小学校低学年から高学年の境目の時期に、関東から関西へ転校しました。
日本の東と西は、言語も、文化も、風土も、何もかも違う国でした。もしも私があのときあのまま転校せずに元の学校で暮らし続けることになったら……? そう考えただけで、えもいわれぬ感慨が込み上げできます。

そんな私に秒殺でヒットしたのがこの小説でした。

新潮社から発刊される文庫版5Pから16Pまでの序章を経て、第一章の17Pから18Pにかけて、こんなパラグラフがあります。

転校間もないころは、誰もが親切だった。なのに誰もが親しくうちとけてこない。新入りが歯を剥いたら、すかさずコテンパンにやっつけてしまおうと狙っている猿の群れさながらに、みんなが私を遠巻きに眺めた。

お分かりいただけるでしょうか。エヴァンゲリオンの碇シンジを髣髴とさせるこの描写。
これは転校を経験したことのある人なら誰もが共感するところだと思います。
ただ、「転校を経験したことのある人」というと、かなり数は限られてくると思います。

この小説の恐ろしいところは、冒頭の一文を上述のエピソードよりもさらに強烈なパワーを持ったセンテンスを持ってきているところです。

世の中には「コールド・リーディング」と呼ばれる話術があり、占いの現場などで用いられます。その中の一つに「ショットガンニング」というスキルがあります。
「お前、モテないだろ?」とかそういう奴です。大抵の人はモテモテ~ってことはないから、多くの人に当てはまる問いかけなのです。こういう投網のような語りかけを幾重にも行い、相手の反応を探りながら少しずつ照準を絞っていきます。それが占いやセールスの現場で行われる「コールド・リーディング」という技術です。

これと同じように、『無伴奏』の冒頭はこんな一文から始まります。

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小説に応用される「コールド・リーディング」の一端とは

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