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20250113_軟膏基剤の重要性とステロイドのお話

20250113_軟膏基剤の重要性とステロイドのお話


基剤の重要性
https://www.youtube.com/watch?v=YoiZNQTeV3g


水溶性基剤か油性基剤か

水溶性
水で流れる
水を吸う(ジュクジュクした患部に使う)
直に乾いて使用感が良い(個人差大)
酸化されない(保存に適している)


油性
水で流れない
水を吸わない
べたつく
酸化される

保湿が必要な場合は油性が選ばれる




ボトル状の物は開封後3カ月程度
チューブ状の物は開封後6カ月程度

直接手で使用した場合、雑菌や手の水分の影響でもっと短くなります
スパチュラや綿棒などを使って直接手に触れないように意識し、
必要分を取って患部に塗るのが理想


軟膏かクリームか


主な水溶性基剤
マクロゴール軟膏(虫刺され目的の商品に多い)
滲出液を吸収すると基剤が溶けて流れるので、ガーゼと併用します。
乾燥や刺激などの副作用が起こることがある(乾燥肌・保湿目的では使わない)

主な油性基剤(保湿剤)

白色ワセリン(プロペト)
ワセリンと言っても企業によって使い心地が違います
プロペトはワセリンから更に精製して不純物を取り除き、眼軟膏としても使えるとのこと

比較的安いため、油性基剤として多用されている印象があります



ゲル化炭化水素
透明感があり、ゲルっぽい見た目の軟膏です
主成分の皮膚からの吸収が良く、伸びが良いため、当店で作っている薬局製剤の基剤の多くはこれを選んでいます


他にも白色軟膏などがありますが、使用されている市販薬が思いつかないため割愛します
当店の保湿剤(薬局製剤)は白色軟膏を使用しています


クリーム剤
乳化した基剤です
外相が水で中に油を含む水中油型(O/W型)とその逆の油中水型(W/O型)の2つに分類されます。

薬価収載されている皮膚外用剤は大部分がO/W型だそうです
外相に水性基剤を使っているため、使用感は水溶性基剤に近くなります
混合比率などは企業秘密みたいで、詳細は企業に問い合わせが必要になります

市販薬で販売するときはここまでこだわる必要性はまず無いと思います

油中水型(W/O型)
例;ヒルドイドソフト軟膏














ステロイドについて
抗炎症作用や免疫抑制作用などにより、皮膚炎などにおける痒みや腫れを抑えます
免疫抑制作用があるため、感染症由来の皮膚炎には使えません
虫刺されではステロイドと抗生物質の合剤を出す医者も多いです(蜂刺症やムカデ咬傷など)



大きく分けて5つに分かれます
下から順に 

Weak(弱い)
Midium(普通)
Strong(強い)
Very Strong(とても強い)
Strongest(最強)

の五段階になります
市販薬の場合、Strongまでしか使えませんし
Strongestを使う場合は限られている印象です



市販薬の場合はStrongまでしか使えません

ステロイドのそれぞれの強さの比較もあったのですが、資料を見つけることが出来ませんでした

主に処方箋で手にすると思いますが、真っ当な皮膚科なら今の皮膚の症状に合った薬を出してくれます(内科などでついでに出してもらった場合は知らん)

医師の指示通り使ってください

と言われても、医師の指示が無かったり、聞いてなかったりする人も多いです
薬剤師が服薬指導をしても聞いてなかったり、相槌を打つだけの人も多いです

虫刺されなどは数日で治りますが、皮膚炎や湿疹などは一か月以上必要な場合も多く、長期間の治療が必要です



食べ物も物凄く大事で食物繊維の多い野菜類やキノコ類を積極的に食べる
インスタント食品・酒・スナック菓子・甘い清涼飲料水は食べないようにする(糖質過多が問題)

睡眠も大切です





当店では詳細を聞いて出来れば患部を見せてもらって、サンプルの軟膏などを使ってタッチテストや肌触りを納得してもらって薬を選んでいるのですが、こんな売り方をしているお店ってまず存在しないらしいですね

ほとんどの薬局は客の判断で薬を選んでいるみたいですので、物凄く簡単に言いますと
「痒い・腫れたと感じた時に塗る薬を常備薬として一本置いておいて」
と言っています(特に虫刺され)

それ以上言ってもなかなか理解されないので、これだけです
痒い・腫れたと感じた時に都合よく病院が開いているとも限りません


長引く・痒みが収まらない場合に皮膚科・薬局に行ってもらいます


基本的にステロイド軟膏は「短期的に使う」か
「長期的に使うとしても医師の指導下で使う」ことになります
ですのでネットなどで流れている「ステロイドは悪」という風評に流されないようにしてください



よくあるQ&A



処方してもらった薬を使い切らずに余ってしまいました
残しておいていいですか?
処方された薬にも使用期限があります
見にくいですが、チューブに使用期限が書かれています
開封した薬は3-6か月以内に使い切ることを想定しています
余った薬は他人に分け与えたり、長期保存したりせずに捨ててください



塗った塗り薬を子供やペットが舐めてしまいました
少量なら問題ありません。もう一度患部に塗ってください
容器その物から取り出して舐めるようでしたら、保管に問題がありますので子供やペットが触れない場所に保管してください

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2025年1月12日 保湿剤使っているけど肌荒れが改善しない どうすれば良い?

保湿剤使っているけど肌荒れが改善しない
どうすれば良い?
https://www.youtube.com/watch?v=CpyXu8pC8UE


保湿剤の使い方は適切か?

ベッタリ使うのではなく、薄く延ばして使う
たくさん塗った方が効果があると思い込んでいる人が多い

すり込まずに手のひらで優しく延ばす
入浴後五分以内が理想
身体のしわの方向に塗るのが良い

よくある思い込み
×ステロイドは使ってはダメ
→必要に応じて使う



サブスクの値段設定みたいな話をしますがお金で解決できることです


飲み薬は何が何でも嫌 派閥

外側からのみの対策になるため、やや効果が下がります
スキンケアをしましょう

出来ることは保湿の延長程度しか出来ません


月に2000円程度なら出せる人向け
ビタミンB2B6が入っていて、効能効果に肌荒れが取れている保健薬を飲みましょう

月に5000円程度なら出せる人向け
ビタミンB2B6に加えてカルシウムや漢方薬が入った保健薬を飲みましょう


月に10000円程度出せる人向け
5000円の商品に加えてアミノ酸製剤を足しましょう



あくまで目安なので、必要な保健薬は変わります
粘膜の弱い人は脂溶性ビタミンを足したり、貧血気味の人は鉄剤を足したりします

早い話、その人によって必要な栄養素が大きく変わるので、自己判断せずに薬剤師に相談してその薬局で買いましょう



必要な栄養素は変化していきます
自己判断で服用を辞める人が後を絶ちませんが、自己判断で保健薬を辞めた数か月後に「やっぱり飲まないと調子が悪い」と言って継続しないといけない人が多いです

物価高で継続が難しくなってきた場合、他の商品に変えたり、やっぱり必要だったりしますので、信頼のできる薬剤師が居るお店で商品を買ってください

国はネット通販の緩和をしようとしていますが、保健薬の適正利用を出来なくなって、逆に医療費が増えるだけだと思います

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20250112 データは大切_データで見るトイレ後の手洗い問題

データを取る重要性
https://www.youtube.com/watch?v=2JD_fOtzRf4

最近は何でもかんでも「エビデンス(根拠)を出せ」という人が増えました
エビデンスとは何か? というと、統計資料ですね
統計を取ることによって条件付けと起こる割合が分かります

ではどのように統計を取っているのか
という点を見ている人は理系の考え方が出来る人だけのような気がします
これは私個人の体験談で、エビデンスはありません
エビデンスを得るためには「何時」「何処で」「誰が」「どのような方法(測定方法)を用いて」「どのような結果が出たか」という5W1Hが必要になります


青森で記録的な大雪が降りましたが、大雪が降った時のデータだけでなく、継続したデータ(時間経過)と
他所の地域はどうだったのか(場所による違い)が必要になります

ですので、普段雪が降らないような場所でも「雪が降らなかった」ということを証明するためにデータを取り続ける必要があります






昔から「トイレに行っても手を洗わない人が多い」ということが話題に上がります
この話は昔からの経験であり、エビデンスはありません



ではどうするか? というのが市場調査になります
消費者庁が消費者の手洗い等に関する実態調査を行っていました
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/risk_commu_norovirus/pdf/risk_commu_norovirus_shiryou4.pdf
問題なのは「何時」かこの資料を見ただけでは書かれていないこと
調べた結果、平成27年(2015年)11月17日(火)13時30分~16時15分と平成27年12月10日(木)13時30分~16時15分に行われた講演のようです
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/risk_commu_norovirus/

今から約10年前のデータなので、点としてのデータしかありません
国勢調査のように定期的にデータを取らないと継続したデータとして意味を持たなくなります
気象庁が行っている各種データは同じ場所で継続して測定しているデータとして重要な意味があります


話が脱線しましたが
「何時」=平成27年(2015年)11月の少し前

「誰が」=消費者庁消費者安全課

「何処で」=全国8地域(北海道、東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国、四国、九州)

「どのような方法で」=
• 対象は全国の16〜65歳の男女2000名 ※手洗いをしないと回答した人を除く
・年齢人口比に応じてサンプルを回収
•家庭での手洗いが調査対象

となります



その結果、トイレ後に手洗いしない人が全体の15.4%居るということが分かりました
ここで初めて「エビデンスがある」となりました。

ではこれをノロウイルスの予防に繋がるか?と言うエビデンスを取ろうとしましょう

予防効果があると証明するためには被験者の手にノロウイルスを付着させて日常生活を送ってもらい、感染する人の数を数えればエビデンスがあることになります

が、現実問題としてこれは不可能です

何故不可能か

・ノロウイルスの潜伏期間は比較的短いとは言え、感染に必要な日数が数日ある(その分、被験者への食事や宿泊施設のお金も必要)
・予防効果が無ければ高確率で感染するような病気の調査に協力する国民が少ない

という理由で手洗いを行っているかどうかの市場調査と比べて調査することが非常に困難だからです


他の資料ですが、手を洗うだけで手に付着した一般細菌が1%に削減されることが知られています
https://www.okayama-fureai.or.jp/0000002369.html


一般細菌の数が減ればウイルスなども同じぐらい減っていて、経口で入るウイルスの数が減り、感染予防になるよね
という考え方で「手洗いは感染症予防に有効である」と言われています

同様にマスクは飛沫拡散予防・うがいは口腔内の一般細菌の洗浄という意味で感染症予防に効果があると考えられます



感染症の話になりましたが、記録と言う物は
0(観測されず)やOver(多すぎて測定不能)であっても、どういった条件下でそういった結果が出たのかという記録が必要です

災害や犯罪や病気は起きない方が良いのですが、起こってから大騒ぎして防災・防犯・防疫の重要性はあまり言われません
大切なのは起こってしまった災害や犯罪や病気からどのようにして次の災害や犯罪や病気を起こさないようにするかであって、フィードバックが大切になります

そのフィードバックをするためにもデータの蓄積は重要になります



オマケ

ウチがコロナ禍の記録を残している理由が正にこれで、次のパンデミックに備えて新型コロナの時に日本国はどのような政策を行ったのかと言うことを記録しておく必要があると感じたため、本を作りました

スペイン風邪の資料を漁ったのですが、当時は識字率も低く、書籍は見つけられませんでした
(NHKの映像なら見かけた)
https://order.pico2.jp/shop1/kaerunokimoti

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2025年正月の近況報告

あけましておめでとうございます

今年も医薬品業界は薬不足を再三言われることになると思います
ですので今年の抱負は
「高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する」
こととなりましょう

消費者の方には今の日本には本当に医療用医薬品が無い状況だということを理解していただきたいです
主な理由は国が薬価を下げ過ぎて&基準を上げ過ぎて製薬企業が利益を出せずに上がった基準に対して設備投資すら出来ない状況である
のが問題です

ただし市販薬なら流通していることが多いので、欲しい薬は市販薬で買ってください(メジコン・ロキソニンなど)
ロキソニンS(市販薬)に関しては採算が合わないので2024年10月に値上げをされましたが、医療用医薬品は2024年6月の薬価改正で全体で0.97%「値下がり」しています


製薬企業としては医療用医薬品を作れば作るほど赤字になって来ているのかも知れません(他にも電気代高騰・人件費高騰・社会保険料増額・損害保険料の高騰など、間接的に経営を圧迫する理由があります)


医療制度そのものは素晴らしいのですが、その制度を維持するためのレールがボロボロです
電車は高級車両なのに、その車両を走るためのレールが錆びていたり、運転手や整備士が居ないのが今の日本の医療制度だと思ってください

ですので、今の医療制度はアテにせず、自分で医薬品を確保する・風邪やインフルエンザなどに感染しないようにするという努力が必要になってきています


今シーズンはインフルエンザが大流行し、伊賀では高校が「学校」閉鎖を起こしました
年末年始の応急当番ではコロナ前の二倍ほどの患者数になり、インフルエンザ薬を十分な数用意していたにも関わらず、卸に発注をして持って来てもらったそうです

この調子で感染拡大していくと、生産量より患者数が多くなり、備蓄していた薬も無くなる可能性が出てきました

日本は医療制度が優秀過ぎて海外では病院に受診しないレベルの軽症患者でも病院に行って、薬をもらってくるのが当たり前になっています
日本の医療リテラシーは東南アジアより低く、国民全体として見てみると医療に関する知識は相当低いと言えます
病気を予防することを放棄して病気になってから病院に駆け込む人が多いです(日本の場合、予防するより治療費の方が安いから)
海外ではありえない話ですね


なお、日本の薬価がどれほど安いのかということを比較してみると、有名な商品で医療用医薬品と同じ成分・同じ含有量の市販薬を見てみた結果



SG顆粒 薬価(一回分) 8.2円/1回
セデス・ハイG 1298円/6回分=216.3円/1回

ムコダイン 500mg 10.1円/1錠(一回)
ムコダイン去痰錠Pro 1430円/10錠=143円/1錠(一回)

ロキソニン 60mg 10.1円/1錠(一回)
ロキソニンS(市販薬) 768円/12錠=64円/1錠

メジコン錠 15mg 5.7円/錠
メジコンせき止め錠Pro 20錠(一回2錠) 1,529円/10回分=153円/一回

・・・シオノギヘルスケア、多いな


薬価は仕入れ値・市販薬は売価とは言え、こんなに値段が違うのであれば、製薬企業が医療用医薬品を作らなくなるのも当然です
(市販薬の場合、半分が仕入れ値としても薬価と全然違うのがお分かりいただけると思います)

製薬企業もある程度利益が出ないと社員を雇えませんし、古くなった工場を修繕することも出来ません
薬価を下げ過ぎた結果、医療用医薬品が不足していると考えてもらえれば幸いです
(GMP違反の基準が厳しすぎるという意見もあります)


予定も書こうと思ったのですが、文章が長くなりすぎたのでこの辺で終わっておきます

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2024年12月18日 DX化とお薬手帳

マイナンバーカードに紐付けした保険証(俗に言うマイナ保険証)が話題です
マイナ保険証にしてオンラインで情報を見れるようになったら、紙のお薬手帳が要らないんじゃないか?
という話も出て来ています

確かにDX化することにより、お薬手帳の存在意義が疑われる世の中になりました
オンラインで他の病院の投薬履歴を見れるのなら、オンラインで併用薬の確認をすればよく、お薬手帳は要らない・・・ということになります


すべてをオンラインで行うと欠点もあります

・情報の更新が医療機関によって違うこと
ネットに繋げているからと言って、常時データセンターにアクセスして上書きしている訳ではなく、一定の時間で更新をしているとの話です
ですので、緊急時などは更新が間に合わないことがあるとのこと(すごく稀な場合だと思いますが)


・通信することが必須になるので、通信設備が整っていない医療機関や災害時や停電時には情報を受け取れない
通信設備が整っていない医療機関はさっさと導入して欲しいのですが・・・


・患者自身が過去の病歴を知る手段が無くなる
医療機関はデータセンターにアクセス出来ても、患者はアクセスすることは不可能だと思います
(将来的にアクセス許可を得るアプリが出るかも知れませんが、出たとしても電気と通信設備は必須です)

過去の病歴や投薬歴を振り返るためには必要になります


・サーバーやデータセンターでの障害
あってはならないことだと言われるでしょうが、長期間使用していればそういうことも出てくるかも知れません
海外からのサイバー攻撃でも障害は起こり得るので、可能性として考えておかないといけないでしょう


パッと思いついたのはこんなものでしょうか?
以上の理由からデジタル化したからと言っても紙のお薬手帳が不要になる訳ではありません
「デジタルと紙併用」を勧めています




なお、市販薬も購入時にお薬手帳にシールをはるべきだと考えていますが、現時点としては

・記載する成分が多すぎて成分毎に書くのが難しい(薬局の営業に支障が出る)
・企業に上記を依頼しても、そういう紙媒体を用意するコスト(売上)が無い

という理由で詳細に書くことは現状難しい状態です

ただ、商品名を書いたり、医者や薬剤師に見せる成分表は渡していますので、保健薬と併用が気になる人は言っていただければお渡しします(ただし、当店での話であって、他の店はどうやってるかは知りません)


あと、市販の風邪薬を飲むときに何故か病院でいつも貰っている常備薬を飲まない人が居るのですが
ちゃんとした薬剤師なら併用することを想定して商品を販売していますので、病院の薬と一緒に飲んでください

病気の基本として、短期で治せる病気を優先して治します
長期の病気の治療を優先して短期で治せる病気を放置すると、だいたい悪化します
(糖尿病患者の場合、糖尿病の薬を飲みながら風邪薬を追加で飲んでください。糖尿病の薬を飲まなくなる人がたまに居ます)

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