ホラーノベルゲーム「鈴の隠音」あとがき

鈴の隠音

2020年8月に公開したフリーホラーノベルゲーム「鈴の隠音」の「あとがき」です。

ゲームのプレイはこちらから


※全ENDクリア後の閲覧をおすすめします。ネタバレ満載です。











物語について

初期にテーマとして考えていたのは以下の3つ。

  • 最終的な原因は怪異ではなく人間
  • 最後は物理で怪異に勝利
  • 邦画ホラーのような1本道シナリオ

邦画ホラーの怪異って、洋画ホラーと違って結構人間味があるんですよね。
なので、人間が生み出したもので人間が苦しんで、でも人間が生み出したものだからあっさりと物理で倒せる怪異、という形になりました。

各種エンドのお話も、1本道シナリオから大きく外れないようにしています。

影響を受けたと思われるもの

◆人間が一番怖い、というのは大好きな貴志祐介先生の「黒い家」から来ています。
とにかく悪の塊と対峙する話で、いわゆる幽霊や霊とは違った怖さがあります。

別に渡辺夫妻が悪の塊だと思って物語を創ってはいませんでしたが(娘のために手段を選んでいられないという親の気持ちもわかるため)、「  」エンドで真相を告げられたときに「散々呪いと戦っていたのに、原因はこの頭おかしい夫婦の所為かよ!?」と憎しみを抱いていただけてれば嬉しいな……と思ったりします。

◆もうひとつ人間が怖いものとして、大好きなのがとっても有名な「呪怨」です。たくさんシリーズがあるのですが、おそらく一番最初のお話となる「オリジナルビデオ版」がおすすめです。
狂気しかないんです。まさにグロ&ホラーに目覚める瞬間でした。とにかく理不尽で暴力的に苦しめられていく、そこに理由とか無いんです。

ゲームとしての仕掛け

前半と後半で、プレイヤー側に求める事を変える

  •  前半では、見えない存在への好感度についての選択肢
  •  後半ではさゆりが生き残るための選択肢

になっています。

攻略の難易度が高くなって面倒なのはわかっていました。
でも、初回プレイで「この選択肢は何だろう?」となって、何度かプレイすると「もしかしてこの選択肢には法則が?」と気づいていただけたら楽しいなぁと思って実装しました。

音を聞いて正解を探す仕掛け

 ノベルゲームを作ると決めたときからやりたかったギミックです。RPGのダンジョンではよく見る仕掛けなのですが、ノベルゲーム系の謎解きはパズルが多い印象だったので違うものを入れてみたくて。

冒頭に物語のメインを入れる

 長編フリーゲームはプレイしてもらいにくい、と散々聞いていました。なので、プロローグでとにかくガッ! と何かしなければ、と思い後から作って差し込みました。

とにかく質より量な効果音

今回の物語のメインは、なんといっても耳を潰すところなので(?)、効果音は沢山用意しておきました!
「耳を潰す」って、だれかにやってもらうわけじゃなくて、自分でやらなければいけないところが、まさに「ホラー」だなと思っています。

今では有名になった「TYPE-MOON」の「月姫」でも、「質より量!(※)」って言っていたので、私もそれに倣うようにしています。音にこだわってウダウダ言う前に、とにかく沢山収集しました。

※同一人物の立ち絵なのに顔が全然違うものが多数あった時に言っていた言葉。質を気にせずとにかく量を作ることで作品完成に近づける・量を作ることで後の質を上げる、的な意味だと思っています。

キャラクターについて

さゆり

ホラーなので、主人公は女の子で。最初はもう少し元気な子でしたが、語り手として扱いやすくするためもあって、少々冷静で落ち着いた性格になってしまいました。そこから、インドアな趣味(映画鑑賞)であったり、料理が得意だったりと個性が生まれました。

ヒロインと比べるとあまり目立った色のないキャラクターですが、美香を必死で助けようとする彼女の姿はとても素敵で、プレイヤーさんにもそういった面を気に入っていただけたらなと思っています。

ホラーだと、元気な女の子が恐怖でひきつっていく感じを想像しますが、さゆりみたいなおとなしめな子が心の内側から徐々に弱っていく感じもいいなと思っています。

美香

元気で人懐っこくて寂しがり屋。幼馴染っぽいヒロインポジションとして登場させました。美香が事件に巻き込まれることによって、さゆりも事件に関わらざるを得なくなってしまうので、美香の役割は本当に重要でした。(もっと出番ほしかった)

最初の短いシーンでめいっぱい元気で明るい子を演出 → 鈴の音により弱っていく → 助けなきゃ! という流れを丁寧に作らなければ、物語が自然と前に進みませんので……。

前半の短い出番ではありましたが、美香の良さや可愛さが伝わっているといいなぁと思います。ヒロインの座を唯と争ってほしいので、本当は前半でもうちょっと可愛いシーンを書きたかったです。
前半の出番が少なめな分、生存するエピローグではこれでもかというぐらい喋ってもらいました。可愛い。

大人びたふりをしているけど、実は子どもっぽくて、どこか抜けている。背伸びしている大人手前の少女というイメージです。美香と比較すると、ちょっと創作ならではなヒロインかなぁとは思います(でも可愛いと思います)。

美香と対照的な性格にすることで、前半と後半でしっかりと物語をわけ、メリハリをつけました。そうすると、冷静で落ち着いているさゆりと唯で性格がかぶってしまうかな? と思ったのですが、いくつかシーンを創っているうちに、

・お姉さんぶって頑張っているけど実はおびえまくりなさゆり
・大人ぶっているけどあまり冷静ではない唯

が見えてきて、二人の掛け合いも面白いものがたくさん生まれました。どこか似ている二人がパートナーになって、終盤を切り抜けていくのも楽しいだろうと思い、唯のキャラクターが決まりました。

ただ、ふたを開けてみたら、唯の言う事を全部聞いていたら一発でグッドエンドを迎えられるようになっていました。唯ちゃんの優秀っぷりったらないわ。

女の子3人!

主人公がいて、巻き込まれる友人と、一緒に立ち向かうパートナーという設定はほぼ初期に固まっていました。
ホラーの主役といえば女の子だ!
ホラーだしひどい目にあうのは女の子にしよう → 巻き込まれる友人は女の子
パートナーとは後半ずっと一緒に行動してほしい! → パートナーは女の子

で、全員女の子となりました。
わたし女の子のきゃぴきゃぴしている描写好きだなと、自分の性癖を自覚しました。

こころがけたこと

読みやすさ

 とにかく文字を大きくしました。ノベルゲームにとって、読みやすいは正義です。

待ち時間の短さ

 意識して、フェードイン・アウトの時間を短くしました。演出の都合上、待ち時間を入れる場面も出てきますが、それも多様せずに「ここぞ」の場面のみに絞りました。

 自分でプレイする際に、フェードイン・アウトにたっぷり時間がかかるゲームが苦手なので……。雰囲気を重視すると仕方がないとは思うのですが、手持無沙汰な時間を作ってしまうので、私みたいにせっかちな関西人だと「ぐぬぬぬぬ」と思ってしまうんですよね。

古き良き

 いわゆる「古き良き」なノベルゲームを目指しました。分かりやすく言うと、サウンドノベルゲームなのですが、こちらは某社の出すゲームを指すのであえて使わないようにしています。一応。

 文字・背景・音だけの演出だと、ほとんど小説を読んでいるように、自分の想像力を駆使してゲームをプレイできるのが、ノベルゲームの利点ですね。

 テキストウィンドウが画面下部にあるビジュアルノベル?よりも、ウィンドウが全面にあって、地の分もあるノベルゲームの方が個人的には好きです。小説の延長のように読めます。というか、こっちのほうがホラーに向いているのでしょう。

逆にビジュアルノベルはセリフが主になるので、アニメや漫画の延長的なイメージです。華やかな演出とかあるなら、こっちのほうが良い……。

音楽(追記)

(何度も編集してたら抜け落ちていた……)

今作では、終盤で重要なシーンとなる森の中のBGMをマツモトイワキさん(twitter)にお願いしました。とてもぴったりな曲を作っていただいて本当に感謝です。

EDテーマはSiwさん(twitter)にお願いしました。
めっちゃわかりやすくホラーゲームのオマージュ的に作っていただきました。映画のラストみたいで、とってもお気に入りです。
たぶんホラーゲームに詳しくなくても、たいていの方は何の曲かすぐに分かってしまうと思います……。

おわりに

「あとがき」をまとめるのに随分と時間がかかり、完成をほぼ諦めていました。
ですが、めでたく「ティラノゲームフェス2020」で佳作をいただくことが出来、これは何かしなければと筆をとった次第です。

制作中、何度も「面白い」「面白くない」を繰り返してしんどかったですが、
改めてゲームをプレイしてみると、面白いです。好きなところが沢山あります。
ちゃんと、自分が面白いと思えるものを作れていたんだなぁと、改めて思いました。
ただ、人を選ぶ作品であることは間違いないなぁとも思いました。

この作品を作って、また沢山感想をいただいたことで、見えるものがたくさんありました。
自分がこのゲームの中で何を上手く表現出来ていて、何が足りていなかったのかがわかった気がします。

今後の制作では、もっと自分が「好き」「面白い」と思えるものを作っていきたいなぁと思います。人生は有限ですからね。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!

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