【インタビュー記事】クリエイターピックアップ(ゲスト:ゲームセンターテクノワールド久保店長)
クリエイターピックアップのゲスト対談を編集して、インタビュー記事として投稿します!
インタビュー:ゲームセンターテクノワールド・久保店長
(聞き手:Ci-en運営プロデューサー スミダ)
岩手県奥州市江刺区にある小さなゲームセンターで、レトロなビデオゲームから最新ゲームタイトルまで数多くの筐体(きょうたい)だけでなく、ユーザーの皆さんの筐体を設置までしてくれるゲームセンターテクノワールド。お客様の熱(霞)を食べて生きていると言う久保店長。テクノワールドの成り立ちやお客様とのコミュニケーションから生まれたキャラクターなどをお聞きしました。
ゲームセンターテクノワールド自己紹介
岩手県奥州市のゲームセンターテクノワールドです。
2016年に閉店の危機でsosツイートをしてバズりました。そこからなんとか続けています。2020年にコロナ禍のGW前の緊急事態宣言下でゲームセンター環境音AMSRがバズりました。よろしくお願いいたします。
岩手の地で「霞」を食べるゲームセンター
ー:開店前にインタビューの時間をいただきありがとうございます。じゃあまずは久保さんの自己紹介をお願いしたいんですけど、テクノワールドさんの場所はどの辺りにあるんですか?
久保店長:
岩手県のゲームセンターなんですけども、皆さんご存知かどうか分かりませんが、岩手県って相当広くてですね。北海道の次に広いんですよ。面積的には四国4県分くらい大きいんです。
なので岩手県内でも端から端までだともう行脚なんですよね。その広い岩手県の中でも割と南の方にありまして、東京から考えれば同じ県内でも割と近い方なんじゃないかなという場所にあります。
ー:なるほど。テクノワールドは創業何年目なんですか?
久保店長:
ここに移って営業してからは12年半ですかね。
震災の次の年に起業をしまして、株式会社テクノワールドの代表取締役に就任いたしました。まあ僕一人しかいないんですけど(笑)
そこから、ゲームセンターは風俗営業店なので警察に申請を出さなければ営業できないんですが、その申請に3〜4ヶ月かかるので、申請が終わったのが翌年の2013年の1月。そこから営業開始で12年ということになりますね。
ー:「ここに移ってから」とおっしゃってましたけど、その前は違う場所にあったということですか?
久保店長:
ええっと、奥州市って十何年か前に合併して奥州市になったんですね。その前は水沢市と江刺市と近隣の市町村が合併したんですけど、元のテクノワールドは水沢市というところにあったんです。今は元々江刺市と呼ばれていた場所にあります。同じ市内での移動ですけど、昔のことを考えると隣の市に移ったかなっていうくらいの距離感ではあります。
ー:引っ越しをしたということなんですね。
久保店長:
そうですね。元々運営していた会社が「ゲームセンターをやめる」と言い、「もうこんな状態ではやっていけないからやめる」と。その時に「いや、ゲームセンターなくすのもったいないな」と思っちゃった僕が起業をしました。
ただ、同じ場所でやるとなると、家賃交渉などいろんな意味で「あ、無理だな」と思ったわけですよ。お店の売上と機械のラインナップを考えた時に。じゃあ別の場所でやるんで機械を売ってくださいと交渉して、中の機械を購入して他のハコ(建物)に移して営業する形を取りました。
ー:なるほど。「場所を残したい」という気持ちが強かったんですね。
久保店長:
そうですね。運営のノウハウはできたと思っていたのでやれるんじゃないかなと思って始めたんですけど、まあ見通しは甘かったですね(笑)
ー: 当時は何台ぐらいゲーム機を動かしてたんですか?
久保店長:
最初はビリヤードとかダーツとかも置いてあったんで、スペースを取る分、ゲーム筐体としては60台くらいだったんじゃないですかね。そこから色々あってダーツとビリヤードを撤去して、空いたスペースに筐体が増えていった形です。今は90台くらいあるんじゃないですかね。
ただ駐車場が……ファンタジスタの大島店長が「地方のゲームセンターは駐車場が大事」って言われてますけど、うちは狭くて15〜16台くらいしか停められないんですよ。昔はちょっと離れた空き地を第2駐車場として借りていたんですが、2年くらい前に不動産屋さんから「売れちゃいまして」って言われて、今は住宅になってるんですよね。
ー: なるほど……やっぱり駐車場が広いのはメリットが大きいですか?
久保店長:
メリットでしかないんじゃないですか。集客に余裕があるっていうことは。
ー: テクノワールドさんがある場所の立地的にはどうなんですか?
久保店長:
全然良くないですよ。 震災の翌年に場所を探していたんですが、意外とどこも空いてなかったんです。3.11の時、奥州は割と被害が少なくて、空き店舗というものがなくて。ゲームセンターはある程度の広さが必要じゃないですか。色々探したんですけど見つからなくて。
とはいえ大規模でやらなくてもいいとは思っていたので、たまたま空いていたのがここだったというだけですね。
本当だったらもっといい場所があればとは思っていました。何しろ周りは畑と田んぼしかないポツンとした場所に存在する建物なんでね。
ー:久保さんは2025年の3月で55歳になったとお見かけしたんですけど、2013年に起業する前はゲームセンターに勤められてたんですか?
久保店長:
この業界に入ったのが30歳くらいの時ですね。それまでは父がレストランをやってたんでそこに勤めてたんですけど、飲食店も厳しくて。それで「僕一人が抜ければお店として存続できるでしょ」って、親から離れて出稼ぎに出ようかと。
その時にたまたま近隣にあった当時のテクノワールドの店長さんが、「他の県なんだけど行ってくれるんだったら口を聞いてあげるよ(社員として拾ってもらえるよ)」って話がありまして。
ー:じゃあ一時期、岩手県外に行ってたということですか?
久保店長:
そうですね。茨城と千葉を1年半ごとに2往復した感じですかね。右も左もわかんない状態で行かされて。「アルバイトたちの面倒を見ろ」っていきなり店長として放り込まれて修行してきました。それが2000年くらいから6年くらいですかね。
ー:2000年頃というと、ゲームセンター業界のブームが変わり始めた時期ですよね?
久保店長:
いや、まだあの頃は元気でしたよ。2000年から2003年くらいはまだ元気いっぱいだったと思います。ただ、岩手に戻ってきた頃からちょっとずつ変わってきたなと。
昔は「特定のキャラクターのぬいぐるみをクレーンゲームに入れておけばよし」みたいな時代があったんです。でも徐々にお客さんがキャラクターに飽きてきたりして、何でもかんでも使えるわけじゃなくなってきたのが2003年から2005年くらいだと思うんですよね。
ー:なるほど。
久保店長:
景品(プライズ)に関しては、やっぱり「旬のもの」を入れていれば売上があるんですが、世の中の流れが早くなりすぎると、「これ人気だと思って入れたけど、もうブーム去っちゃったな」って場合も出てくるわけです。
景品業界って半年先の景品を半年前に予約するんですよ。「これ発売するんで今予約してください」って。でも半年後まで流行ってるかどうかわからないじゃないですか。
ー:わからないですね
久保店長:
だから安定して稼げる息の長いアニメのフィギュアとか映画のタイトルとか、そういうのばかり買わざるを得なくなったりするんです。
僕は魚屋さんに例えるんですけど、景品って発泡スチロールでドーンと仕入れなきゃいけない鮮魚と一緒なんです。でもお客さんが仕入れた魚を全部買ってくれるとは限らない。鮮魚は傷む前に捌ければよしですけど、捌けなければ廃棄になっちゃいます。景品も一緒なんですよ。 今時のお客さんは「このクレーンゲーム随分渋いな、他のお店行こうかな」ってなりかねない。そうすると景品は腐るんです。数万円かけて買ったものが数ヶ月で腐ってしまう世界なんで。
それを運営できるのは人口の多い場所じゃないと成り立たない商売なんですよ。うちみたいに常連さんを相手にするゲームセンターでは景品で運営するのはかなり難しい。なので、今はテクノワールドに景品機はないです。もう切りました。
ー:筐体のラインナップについても、今は「完成してないけど買わなきゃいけない」みたいな話を聞きますけど、どういう判断基準で選んでるんですか?
久保店長:
これは株と一緒で、好きな銘柄を買っても上昇するかどうか分からないじゃないですか。 ただ、今は選択の余地がないくらいタイトルが減ってるんですよ。メーカーさんも「別にアーケードゲーム作らなくてもいいや」って思い始めてるんじゃないかなと。
ソシャゲ(ソーシャルゲーム)が流行り始めて、売上が億とかいく中で、同じゲームを作るメーカーとして隣の芝生が青く見えたら、アーケードを作り続ける意味があるのかなって思うでしょうし。 そんな中で作ってくれているだけでもありがたいんですけど、タイトルが減ってる分、選り好みできない。「出たものを買うか、買わないか」それだけなんで。
ー:今までの運営で「絶対に買わなきゃいけない」と思ったタイトルはありますか?
久保店長:
ないです。あればいいなとは思いますけど、お店が傾くから絶対入れなきゃっていうタイトルはないですよ。 逆にテクノワールドは2016年あたりに一度「もう無理なんで閉めるかもしれない」みたいなSOSツイートをしたことがありまして。それ以降、会社としての体力がなくなって筐体を買えなくなっちゃったんですよ。
今はレンタル業者さんが入って機械を入れてくれているので、今のラインナップで運営できています。 レンタル業者さんのおかげですね。タイトルがコケて筐体の値段が下がったタイミングで購入して、「手入れ(アップデート)」で生き返ったものをウチに紹介してくれたりするので。
ー:久保さんの運営スタイルって、俯瞰で見ている感じがしますけど、ご自身ではどういうタイプだと思いますか?
久保店長:
僕は「仙人」ですよ。 お客様がゲームに対して持っている「熱」を吸って生きている、ゲームセンター運営仙人ですので。霞 を食ってるみたいな。
ー: (笑)
久保店長:
例えば、古い『ビートマニア』の5鍵盤の筐体があるんですけど、あれはお客様の持ち物なんです。「自宅に置きたいけど場所がない」って相談されて、「じゃあうちに置けば? 売上折半すればいいじゃない」って。それが今現実になっていて、お客様がトラックを借りて運んできて置いたんです。 みんなのゲームの熱量を僕が受けて、運営という形でテクノワールドが存在している。僕の報酬はないんで、どうやって生きてるんだろうって感じですけど(笑)
ー:面白いですね。レベニューシェアだ。
久保店長:
だから逆に、熱量が下がってきてるなって思うやつを置いておく意味があるのかなって思っちゃったりもするわけです。「自分たちで支えますから」って置いてくれたのに支えてくれないんだったら、僕の食べる霞がなくなるわけなんで。
以前、レンタル業者さんが『パラパラパラダイス』っていうレアな筐体を入れてくれた時があったんですよ。X(旧Twitter)とかですごい話題になったんですけど、結局珍しいタイトルではあるんですが熱量のある人がいなければ売上にならない。1ヶ月の売上が数百円とかだと「(テクノワールドにとっては)熱量足りねえんだな」と思ってお返ししました。
ー:なるほど、話題にはなるけど……ということですね。
Ci-enの活用とテクノワールドの未来への提言
ー:続いて『Ci-en』についてお聞きしていこうかなと思うんですけど、久保さんが『Ci-en』を最初に使われたきっかけは何だったんですか?
久保店長:
きっかけは、それこそ岡山のゲームセンターファンタジスタの大島店長ですね。大島店長と「売上の底上げをしなきゃいけないよね」という話をしていた中で、「『Ci-en』っていうサイトがあるよ、うちはもうやったよ」と伺いました。
筐体を入れて売上を上げるのには限界があるじゃないですか。じゃあ外部から売上を…と考えた時にCi-enを始めました。
ー:テクノワールドさんはクラウドファンディングはされていますか?
久保店長:
してないですね。クラウドファンディングをするっていうのは、本当によっぽどのことだと思っているんです。ただ、その「よっぽど」に本当にヤバい時っていうのはもう手遅れなんで、活用した方がいいのかなとも思うんですが、今はそこまででもないかなと。
僕は作りたいゲームがゲームセンター向きではないと思うので。高田馬場にあるゲーセンミカドさんみたいに「新タイトルが出ないから自分たちで作る」っていうのもすごいなと思いますけど。
ー: テクノワールドさんの取り組みとしてICカードに貼るシールとかグッズを作られていましたよね?
久保店長:
あれは元々、うちにいらっしゃっていた漫画家の茜りう先生がファンアートを描いてくれたんですよ。で、「ゲームセンターを支援したい」という別の団体の方が「そのイラストを使ってシールを作りますよ」と手を挙げてくれて。「売上はテクノワールドで使ってください」という、恐ろしい支援が発生したっていう(笑)
ー:すごいな、本当に熱と愛情で持ってるのがテクノワールドっていう。
久保店長:
そうですね、熱量という霞を食って生きてますので。
『Ci-en』のサイトを利用したのも、普段遊びに来るお客さんはゲームをすることで支援してると思ってくれているんですが、距離が遠くてなかなか来れない人たちの受け皿になってくれたらいいなと思って活用させていただいているんです。
プラン名も「テクノワールドで500円遊んだつもりになったプラン」みたいなネーミングで。「遊んだつもりでここに支援していただければ助かりますよ」と。
ー:Ci-enに来てくださるユーザーさんって、意外といろんなクリエイターを探してる感じがあるんですよ。「推しは複数持たないと」っていう意見もお聞きしますし。
久保店長:
そう、一人の推しに全没入してると、その推しが引退した時に精神的ダメージがでかすぎるから、推し活は広くやっておくべきだと。地元のお店が潰れた時に拠り所が他にあれば、精神的ダメージが軽減されるんじゃないかなとは思います。
ー:ゲームセンターを運営する久保さんから見て「こういうゲーム作ればいいのに」みたいなアイデアはありますか?
久保店長:
ありますよ。例えば『にじさんじ』さんで『パワフルプロ野球』の「栄冠ナイン」を使った企画が流行ってましたけど、その対戦をゲームセンターでやれるシステムを作って欲しいって思うわけです。育成はSwitchでやって、出来上がったチームをアーケード筐体に持っていって対戦して、戦績や報酬がフィードバックされるとか。
既存のゲームの側(ガワ)でいいから、新しく知恵と勇気で戦えるタイトルはあるんじゃないかなって。
あと、タイトーさんの電車のゲーム(※『電車でGO!!』等)がありましたけど、あれは「日常」なんですよ。いつでも同じ電車の運転ができるからやらなくなる。一方で『ボンバーガール』みたいに「このマップは2週間しかできません」ってなるとやらなきゃってなる。電車のゲームも「今期はこの路線しかできない」みたいな限定感があれば継続した売上がついたかもしれないです。
ー:面白いですね。メーカー間のコラボとかもあればいいのにと思いますよね。
久保店長:
そうですね。バンダイナムコさんの汎用筐体をコナミさんが使わせてもらうとか、垣根を取り払ったコラボがあれば安く上がるのになって思ったりします。 ただ、僕は「ゲームが得意な人はゲーム作っちゃダメだ」と思ってるんですよ。
ー:どういうことですか?
久保店長:
以前、クイズ専門の団体が作ったアーケードゲームが出たんですけど、ダメでした。理由を自分なりに考えたんですけど、クイズが得意な人って早押しをやりたがるんですよ。でもアーケードでそれをやると、同じ100円払ってるのに回答権がないまま終わる人が出る。それじゃゲームとして成り立たないじゃないですか。 得意な人に作らせると、得意な人たちだけが楽しめるゲームになりがちなんです。だから参考程度として有識者に話を聞くのはいいけど、全てを任せてはいけないと思ってます。
ー:なるほど。『ストリートファイター6』のモダン操作みたいに、裾野を広げる工夫が必要だと。
久保店長:
そうですね。初心者の気持ちが分かる人が作らないとダメなんじゃないかなと思います。
ー:インディゲームのアーケードゲームとか出たら面白いかもしれないですよね。Steamみたいに。
久保店長:
『exA-Arcadia(エクサアルカディア)』なんかはインディみたいな感じからスタートしたと思うんですけど、結局こだわりすぎて値段が高くなっちゃった。もっとシンプルでいいんですよ。 フラッシュメモリを刺すだけでゲームが切り替わるようなものとか。ただ、大昔のゲームは「100円で2時間遊べる」とかになっちゃうんで、今のゲームセンターにはミスマッチなんです。「10分で100円」くらいは取りたい。 だから「ベルトアクションはどうですか?」って聞かれたら、今のままじゃダメだと。「1ステージ100円」くらいのシステムにしてくれるならありです。
ー:なるほど、ボリューム感の調整が必要なんですね。 最後に、テクノワールドさんのキャラクターについてもお聞きしたいんですが、あれはどうやって生まれたんですか?
久保店長:
SOSツイートをした2016年頃、岡山のファンタジスタさんを見つけて「ジスたん」というキャラがいるのを知って。うちもキャラクターが欲しいなと思って当時のTwitterで公募したんです。
5件くらい応募が来て「どれにしようかな」と迷っていたら、お客さんに「全部採用すればいいじゃない」と言われて。「天才だな!」と思って5人全員採用しました(笑)
あと6人目は、高校生のお客さんがホワイトボードに描いた落書き(ののくてちゃん)なんですけど、「これも仲間に入れてください」って言われて採用したら、今や一番人気ですからね。分かりやすいんです。記号は強いなと(笑)
ー:インパクトのあるキャラクターは強いですね(笑) では最後に、久保さんから皆さんに一言お願いします。
久保店長:
僕も今55歳で、40代と50代では体の作りが全然違うので結構やばいなと思ってまして。 多分65歳、定年の年くらいになったらテクノワールド自体「もう十分かな」って思っちゃうんじゃないかなと危惧しています。なので、僕がやってるテクノワールドは「あと10年くらいが限度なんじゃないかな」と思っていてください。
だから「行きたいな」と思ってる人は、僕が65になるまでに行かなきゃと思ってほしいし、逆に「奥州市にゲームセンターを残したい」という熱量がある人がいれば、その10年の間に資金を作って「私が引き継ぎます」という話を僕にしてください。 「いつまでもあると思うな親とゲーセン」ですから。僕の体が元気なうちに来てほしいですし、「これで元気出せよ」って感じで『Ci-en』で支援してくれると嬉しいです。
ー:ありがとうございます。「インディのアーケードゲーム」を作って『Ci-en』でクラファンやるのは行けそうな気もしてきました(笑)ありがとうございました!
久保店長:
ありがとうございました。