【全体公開】「気軽に描いた落書きのほうがバズる説」の正体
こんにちは!イラストレーターの久保田です。
SNSを見ていると、定期的にこういう話を見かけませんか?
「時間をかけて描いた絵より、気軽に描いた落書きのほうが伸びた」
イラストレーターなら1万回は聞いたことがある話だと思いますし、実際に自分の投稿で経験して、なんとも言えない複雑な気持ちになった人も多いのではないでしょうか。
ただ、これを見たときに僕は一つの疑問が浮かびます。
では、その人が今から10回連続で気軽な落書きを投稿したら、一体どれくらいの数がバズるのか?と。
今回は、この「気軽に描いた落書きのほうがバズる説」の正体について、少し深掘りして考えてみたいと思います。
▼落書きがバズって見える理由
まず、落書きがバズること自体は、たしかに「ある」と思います。
完成絵よりもラフな絵のほうが、勢いや表情が強く出ていたり、見る側が気軽に反応しやすかったりすることがあるからです。
完成絵はクオリティが高い分、見る側も少し構えてしまうんですよね。
圧倒的な画力を前に「すごい」「綺麗」という、完結した感想で終わってしまうこともあります。
一方で落書きには、いい意味での「隙」や距離の近さがあります。
「あ、この表情好き!」
「この勢いがおもしろい!」
「サッと描いてこれなのすごい!」
みたいに、反応の入り口が広いんです。
特にキャラクターの表情やネタ要素、流行の話題に合っている落書きは、完成度とは別の強さを持っています。
ただし、ここで注意したいのは、バズっている落書きは決して「ただの雑な絵」ではないということです。
軽く見えるだけで、実際には構図、表情、キャラ解釈、線の勢い、投稿タイミングなど、多くの要素が絶妙に噛み合っています。
つまり、落書きだから伸びたというより、落書きの中に「伸びやすい要素」が凝縮されていたと考えるほうが自然です。
▼「落書きなら毎回バズる」の罠
ここが一番大事なところです。
「気軽に描いた落書きのほうがバズる」と聞くと、まるでそれが「バズの必勝法」のように聞こえるかもしれません。
でも、僕はこれはかなり危ない考え方だと思っています。
なぜなら、そこには強力な「生存者バイアス」がかかっているからです。
僕たちが見ているのは、あくまで「バズった落書き」だけです。
その裏側にある、バズらなかった膨大な数の落書きは、そもそも僕たちの視界に入ってきません。
「落書きが伸びた人」は目立ちます。
でも、「落書きをたくさん投稿したけど、ほとんど伸びなかった人」は目立ちません。
だから、たまたま伸びた投稿だけを見て、「やっぱり落書きのほうがバズるんだ」と決めつけるのは少し早い気がします。
もし本当に落書きが必勝法なら、同じ人が10回連続で落書きを投稿すれば、その多くがバズるはずです。
でも実際には、そんなに簡単ではありません。
バズるかどうかは、絵の完成度だけで決まるものではなく、ジャンルの熱量、投稿のタイミング、フォロワーとの相性、ネタのわかりやすさ、その時のSNSの流れなど、いろいろなものが絡みます。
なので、正確に言うなら「落書きはバズりやすい」のではなく、「落書きの中にも、たまに異常に拡散されやすいものがある」くらいが現実的ではないでしょうか。
▼とはいえ
落書きを軽く見ていいという話ではありません。
むしろ、落書きはSNSにおいて極めて強力な「武器」になります。
最大の利点は、「手数の多さ」です。
完成絵だけでSNSを運用しようとすると、どうしても投稿頻度が落ち、投稿する側の心理的ハードルも上がります。
その点、落書きやラフは、もう少し軽やかな気持ちで世に出せます。
そして、その「軽さ」ゆえに、描き手の癖(ヘキ)や、キャラクターへの深い解釈が、完成絵以上にダイレクトに伝わることもあります。
ただ綺麗な絵を並べるだけでなく、「この人はこういう魅力的な表情を描くんだ」「このキャラのこういう部分が好きなんだ」という温度感を伝える。これはファンを増やす上で、とても大切な要素だと思います。
だから僕は、落書きを「バズ狙いの魔法」として扱うのではなく、「自分の魅力を多角的に見せるための手札」として使うのがいいと考えています。
完成絵、ラフ、表情練習、制作過程。
こういうものを混ぜながら、自分にとって「どんな表現が反応されやすいのか」を探っていくのがよい方法ではないでしょうか。
▼まとめ
「気軽に描いた落書きのほうがバズる」という話は、完全な間違いではありません。
落書きには、完成絵にはない「勢い」や「反応のしやすさ」という独自の強みがあるからです。
でも、それを過信しすぎて「描き込む必要はない」と思ってしまうのはちょっと危ないです。大事なのは形式がどちらかではなく、その投稿に「見た人が思わずリアクションしたくなる何か」があるかどうかです。
落書きは、その「何か」がひょっこり顔を出しやすい。でも、必ず出るわけではありません。
SNSはなかなか読めない場所です。
頑張って描いた絵が伸びないこともありますし、気軽に出したものが急に伸びることもあります。
でも、だからこそ実験する余地があるんじゃないでしょうか。
完成絵を「本番」とするなら、落書きは「公開テスト」のようなもの。
完成絵だけにこだわりすぎず、たまには気軽な落書きも出してみる。その中で、自分の絵のどこに熱量が集まるのかを見つけていく。
それくらいの距離感でSNSと付き合っていくのが、絵描きにとって一番健やかな形なのかもしれません。
以上、イラストレーターの久保田でした。
それでは!
※個人的感想なので話半分参考程度にお願いします。
※いいねや感想頂けると喜びます。