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【無料公開】隔日連載小説α版『四五アフター・四五編』2

 四五に顔を向けると目が合った。お互い訝しげな表情を浮かべている。
「これ、あなたたちのものですかーっ? なにか調べてたんですかーっ? なにを調べてたんですかーっ? やっぱり、なーにか変ですよねぇ?」
 地下ドームからタートルネックのセーターの女性が叫んだ。おれは地下ドームの鉄扉をもう一度閉めた。
「あっ、ちょっと――」
 中の声も聞こえなくなった。つまり、こちらの会話も聞こえないということだ。おれは鉄扉を押さえたまま、四五を見上げた。
「どうする?」
「テンブリッジの科学史がおかしいって、言ってた……?」
 四五が口元に指をあてながら呟いた。おれはうなずきを返した。
「……科学史に違和感も持っている人が、この林檎の丘で、一体なにを?……あの女性は、アリスさんの存在に感付いてるって、こと……?」
「さすがにそれはないだろう。そもそもアイザック・ニュートンだって有名じゃないんだよな、今の世界では」
 四五は黙ったままなにかを考えていた。手元の鉄扉から鈍い音がして抑えている手に振動を感じた。中からこの扉を叩いているようだ。だが声は聞こえない。なかなかの防音性能だ。
「四五っ、とにかく方針だけ決めよう。あの装置はおれたちのだって伝えていいよなッ?」
 鉄扉に隙間が開いた。反対側から押し返されている。両手に体重を乗せると鉄扉はまたぴたりと閉まった。どんどんと分厚い扉が叩かれる。
「一応二択ある。白状するか、あの人を気絶させるか」
「そんな技術あるかよっ! 生粋のインドア派なんだおれはっ!」
 また鉄扉に隙間ができた。本当に相手は女性なのだろうか。鉄扉の重さの分こちらが有利なはずなのに力で押し負けているこ。
「じゃあ白状するしかない。機能はなんとか誤魔化して回収する。テンブリッジの科学の歴史については、わたしたちはなにも知らない」
「賛成だ」
 方針が決まり鉄扉の上から飛び退くと、その瞬間に勢いよく扉が開いた。タートルネックの女性が穴からひょっこりと顔を出した。その顔にはまだあのにんまりとした微笑が浮かんでいる。好奇心が溢れ出ているような笑顔だった。
「なにか、極秘の調査をしていたんですねっ!? そうなんでよねっ!?」
 女性は首から上だけを外に出したままおれたちを見上げている。本当に亀のようだと思った。
「いや、そんなに大した調査はしてないよ」
「ではなんらかの調査はしていたんですねっ。なにを調べていたんですか、こんなところでっ」
「地質調査です」
 四五が平坦な声で言った。
「地質調査?」
 首だけのタートルウーマンが、首をかしげる。つまり見えている部分全体がかたむいている。四五がタートルウーマンにうなずきを返した。
「この地下ドームは、テンブリッジ大学の中でもっとも古い地下施設です。あの敷き詰められた石は外気にも日光にも晒されずに保存されている貴重なサンプルなんです」
「ほぅ、あの石が……。地質調査に石ってそんなに重要なんですか」
「言葉では言い表せない程重要です」
「そうなんですか。勉強になりましたっ!」
 タートルウーマンは目を輝かせながらペコリと頭を下げた。
「どういたしまして」
 四五もそう言って、小さくうなずいた。奇妙な沈黙が流れる。
「……それでさ」
 二人の視線がおれに向いた。
「地下に、妙な装置があっただろ? 鏡と、ビニール線がつながってる妙な装置だ」
「ありましたっ!」
「あれも、地質調査に使う、信じられない程重要で精密な装置なんだ」
「そうだと思いましたっ!」
「だから、回収したいんだが」
「でしょうねっ! そうだと思ってたのに、急に扉閉めちゃうからビックリしました!」
「あぁ、実はおれたち極度の人見知りなんだ。中に人がいて思わず蓋をしてしまった」
「そうだったんですかっ! 奇遇ですね、わたしもこう見えて極度の人見知りなんですよっ! 友達になりましょうよ!」
「そんな簡単には友達にはなれません、人見知りなので」
 四五が口を挟むと、タートルウーマンは目を見開いて四五を見上げた。
「その通りですね!」
「あと、初対面の相手に友達になりましょうと提案できるあなたは人見知りではありませんよ。人見知りの人間は“知り合い”という関係と認めるまでにも最低で三回以上の接触が必要です」
「えっ! わたし人見知りじゃないんですかねっ」
「人見知りではありません。PARTY PEOPLEです」
「パーリーピーポー!!!」
 首だけのタートルウーマンは、首だけでのけぞった。白い首筋がまぶしい。あごのラインから繋がる両の耳も美しい形をしていた。このタートルウーマンはダイヤの原石だ。メガネを叩き割って髪の毛の手入れをしてあげれば、四五とも張り合えるとびきりの美人になる。おれはそう確信した。
「初対面の相手と簡単に友達にならないほうがいいですよ」
「わかりましたっ! では友達になろうという提案は撤回しますっ!」
「よかったです。装置を回収してもいいですか」
「どうぞ! 中へっ! むさ苦しいところですがっ!」
 タートルウーマンは甲羅の中に顔を引っ込めた。おれと四五は互いの顔を見合い、小さくうなずきあった。
「たぶんだけどさ、悪い人ではないんだろうな」
「かもしれない。友達になる気はしないけど」
「……まぁ、四五とは合わないだろうな」
 おれたちはタートルウーマンを追って、地下ドームに降りていった。

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