お菓子で小説シリーズ「雪の宿」
こんにちは、皐月うしこです。
Twitterや他の活動で作成した作品をこちらでストックしていこうと思います。
「お菓子で小説」シリーズ
(1話300文字ほど)
お題「雪の宿」
台所のお菓子コーナーに、いつも決まってストックしてある定番のお菓子がある。
「おばあちゃんってこれ、好きだよね」
何気なくそう口にしてみたら「そりゃね」と嬉しそうな声と共に、祖母は台所まで歩いてくる。「おじいちゃんと初めて一緒に食べたのがこの雪の宿なんだよ」と、懐かしむように手にとってパキンとふたつに割ると、袋をあけて割れた欠片を差し出してくれた。
「それで、甘い面を上にするか下にするかで喧嘩したんでしょ?」
「そうそう」
何度も聞いた祖父母の馴れ初め。けれど、いつまでも飽きない味につられて、やはり手が伸びてしまうものらしい。
「それで?」
懐かしむ祖母と同じ味を口に含みながら、あの頃の祖父の視界を想像した。