レベルデザイン進捗 シャペロン(境界線)システム
こんばんは! 今日の進捗を報告します。
レベルデザインのため、シャペロン(境界線)システムの導入
レベルデザインの事情で、色々検討した結果としてVRであるようなシャペロン(境界線)システムを導入しました。単なる見えない壁と比べてプレイヤーへの視覚的なナビゲーションの点で優れています。
シャペロンに関しては例えば以下を参照してください。
なぜシャペロンを導入したか
シャペロンを導入した理由はいくつかあるのですが、
- テーリのアクションの性能が高すぎて、レベルデザインが激烈に難しい問題
- 常に綺麗な景観(遠景)を見せつつ、ゲームとして面白いステージをつくるため
- 3Dのマップは相当うまくつくらないと「どっちへ進めばいいかわからない」という問題がすぐに発生し、難易度以前の問題でプレイヤーが躓く可能性が高いため
- 「ゲームが進んだら行けるようになる」という表現のため
- 現実的に3Dマップを制作する妥協点
などです。ひとつひとつ説明します。
テーリの性能の高さ
テーリはアクションゲームの中でも相当高い性能を持っています。多段ジャンプや飛行はできないのですが、壁キックとワイヤーアクションでほとんどどんな所にも、プレイヤースキル次第ではありますが行くことができます。
この調整自体は意図的なもので、ある程度は「ズルを許す」の精神でできたほうが楽しいと思いますし「プレイヤースキル次第で」という所なので、そこも含めて楽しんでほしいという思いがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=ODmMrl_STi0
ただ、限度というものもあります。この性能の高さと3Dマップの自由度故に極端なRTAも可能になってしまうのも考えものでした。
ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドでは色々なイベントをスキップしていきなりガノンドロフに挑むということもできましたが、それはやはり鬼のような調整の賜物だと思います。私の作品では、もう少し無難なレベルデザインをしようという方向性で考えています。
テーリは性能が高いと言っても「壁キック」「ワイヤーアクション」ができなければ、そこまでの壊れ性能ではありません。そしてどちらも壁や地面などでトリガーするアクションなので、このシャペロンシステムでは壁キックやワイヤーアクションができないようになっています。
つまりこのシャペロンシステムさえ使っておけば、それなりに無難なレベルデザインができるようになるという優れものなのです!
映像としての景観とゲームとしての面白さの両立
ふたつめの理由として、映像としての景観とゲームとしての面白さというものがあります。
2Dの横スクアクションゲームを考えてみてほしいのですが、「背景」と「床・壁」は全く違う性質を持っています。つまり、床や壁はプレイヤーが立ったり壊したりできますが、背景はプレイヤーに一切干渉しません。
一方3Dゲームというのは床・壁がそのまま背景になりやすく、広い景色を見せるということは、そこに行けるということが多いです。ただ、いくつかの観点から、私のゲームでは「広い景色を単なる背景として見せたい」という考えに至りました。
この理由は色々あるのですが、端的に言えば「プレイヤーが迷ってしまうから」です。3Dで広い景色にそのまま行けるようにすると、どう頑張っても目的地がわかりにくくなります。後半のステージで難易度が高いのであればいいと思うのですが、序盤のステージには適しません。
また上級者の場合、広ければ広いほど前述したような「ズル」で迂回するルートができてしまい、それをすべて考慮しつつレベルデザインをするのに限界を感じました。
動線として
もうひとつは動線としての役割です。シャペロンシステムがあれば、どんな初心者でもどっちへ進めばいいかわかるようにできます。
うまいレベルデザインは「道」をつくることだとは思います。だだっ広い砂漠でも、道さえあればどっちに進めばいいかはわかります。ただその道に気づかず進むということもあり得ますし、その場合にどうすればいいかわからない状況に陥るくらいなら、始めからシャペロンシステムで向かうべき方向を提示してあげたほうがいいかなと思ったのです。
そしてこの動線をつくる労力は、正直想像するよりずっと重いです。序盤の数か所くらいならできるのですが、後半になってくるとワケがわからなくなってきます。そしてそれは作者だけでなくプレイヤーも一緒です。
アンロックシステムのため
他にも、「ゲームで一定の条件を満たしたら進めるようになる」というアンロックシステムの観点でも有用と考えました。これはわかりやすいですよね。
これは色々表現の方法はあると思います。たとえばゼルダの伝説シリーズではNPCが「通せんぼ」してきたり。ただ私のゲームでは開発リソースの観点から、できるだけ簡便かつ、単なる「見えない壁」よりは視覚的にわかりやすい方法にしたいという思いがありました。
現実的な労力でマップをつくる妥協案として
……そして最後に。たとえば今回、ただまっすぐ進んで星を取るだけのステージになっていますが、これは左右がシャペロンを壁にしている以外は、本当に単純に足場を配置しているだけです。
3Dのレベルデザインをしていて強く感じたのは、壁や穴などの(砂漠なら流砂など、通行不可であればなんでもいい)「通行禁止エリア」の存在が非常に重要で、それさえあれば結構柔軟かつ簡便にレベルデザインできるということです。
ただ「砂漠」でそれを用意するのが非常に難しいという問題がありました。壁を設置しすぎると景観を損ないます。雰囲気を壊さずに用意するのが難しい。落ちたらミス扱いになる「流砂」案も、後半のステージならともかく前半で用意するには難易度が高すぎるだろう、と判断しました。
そして壁や穴以外の方向で通行禁止を表現するのは結構難しく、たとえば森のステージとか、市街地のステージとかこれからどんどん用意していくことを考えると、シャペロンのような概念はあったほうが多分今後のレベルデザインをする上で重要と考えました。
納得感
あと個人的に大事だなと思うのは、プレイヤーの納得感です。
たとえば壁キックやワイヤーアクションが使えない壁というのは、レベルデザインをするならどこかで絶対に用意したくなります。先ほども例にあげた「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」でも、祠では壁を登れませんよね。
そこに「祠では壁を登れない」というような一貫性のあるルールがあることは重要、と考えました。
実装上はどんなオブジェクトでも個別に壁キックができないなどの特別扱いはできますが、プレイヤーには区別がつきません。遊ぶのも大変ですし、なにより特別ルールが追加されればされるほど納得感がなくなります。
シャペロンシステムだけは壁キックやワイヤーアクションができない、という制限は、わかりやすいですしルールとして納得してもらえると考えました。
今後
ひとまずお試し版ということでまっすぐ進むだけのステージにしてみましたが、これを今後は分岐などを用意して3Dらしく拡張していく予定です。乞うご期待!