七画 形 2022/12/03 02:23

神様ノ季節開発忘備録①「世界観表現及びアート面」

フリーゲーム「神様ノ季節」について


「 ー 白く染められた地を彷徨い、滅びゆく世界に抗え ー 」
どこまでも白い世界を彷徨う3Dマップ探索RPGです。

以下のサイトで公開中です(DL形式・無料)
ふりーむ
フリーゲーム夢現

この開発忘備録記事では
①世界観表現及びアート面
②探索・イベント面
③戦闘システム面

の3回に分けて記事を書いていこうと思います。
今回の記事では①の「世界観表現及びアート面」について軽くここでまとめておきます。

地形&気候から「生活」を作る。

今回紹介している「神様ノ季節」をはじめとした「構想コード:D」シリーズにおける世界観は一枚の自分で描いた地図から始まりました。地図には地形や気候の流れを書き、そしてその環境から考えられうる生態系を設定し、そこに人間を放り込んで出来ています。

「神様ノ季節」の主人公達であるヒョウセツの民も地図の設定環境から文化観を詰めています。
ヒョウセツの民は寒い土地に隠れ住む一族です。寒い土地は植物が育ちにくい為、農耕はあまり期待出来ません。なので彼らは狩りをしながら獲物を追い移動する狩猟民族のスタイルになっています。よく移動するので住居はテントがメインとなり、族長である主人公をはじめとした一部のメンバーに強い権限がある社会形式になっています。また、タイトル画面にある文字をカクカク調な廻想体 ネクストユーピー(B)に選んだのは物資が限られた彼らの文字文化が木などに文字を刻んだり掘ったりして表現する「刻み文字」形式であるという設定から来ています。(地味なこだわりです)


コンセプトアートイラスト:カザナ様 
立ち絵イラスト:TANBO様



3D表現は「3レイヤー」で画を作る。

戦闘画面など見せたい部分についてのマップ表現は「3レイヤー」を意識しています。
「前面」「中面」「遠景」にオブジェクト(木や岩などの置物)を置くことで画面を見た時の立体感と臨場感を演出しています。

特に前面については画面を邪魔しない程度の調整が難しいですがあると無いのではかなり変わると思います。


↑戦闘画面は特にこだわってます。前面に花を置くことで臨場感を演出


BGMの重要性。印象は目ではなく耳から。

BGMの選曲にはかなりこだわりました。曲調や音質を合わせる為、極力同じクリエイター様の曲で固めるようにしています。

フィールド用曲はGRIMOIRE NOTES(グリモアノーツ) 様龍的交響曲 様でまとめ、
戦闘曲はM-ART 様不協和世界の音楽博物館 様を中心に使ってます。

また、選曲の際は曲を何度も繰り返し聴き、曲から感じ取った情景と感情をあてはめる形で各シーンに採用しています。また逆に曲から着想を得てシーンや情景作りにつなげることも多いです。

こうしたBGMのこだわりには訳があって、イラストやマップといった視覚的要素は確かに人を惹きつけ楽しませてくれる要素ですが、感性に訴えかけたり印象として人の記憶に残りやすい又は記憶を想起させる時の鍵となるのは視覚的要素というより聴覚要素が強いという持論から来ています。
かつて見た景色を鮮明に思い出すことって意外と難しいのですが、かつて何度か聞いた曲は何となく鼻歌で歌えたりしますよね。

自分としては「面白い」とか「良かった」と感じられる作品のあり方には2種類あり、
「HOTな面白さ」(=ゲームをしている最中の熱中に感じる面白さ)と、
「CHILLな面白さ」(=ゲームが終わった後に思う余韻や思い出した時に思う良い記憶としての面白さ)
が存在すると思っていて、後者である「CHILLな面白さ」も充実させたいという思いからBGMにはかなり注力しています。単に自分もゲームや創作作品を完走し終えて後から余韻に浸る時間が一番好きなのもあるんですけどね。


「質」ではなく「質感」の重視。

自分は作品づくりにおいて「質感」というものを大事にしています。クオリティである「質」も重要ではあるのですが、自分は「質」を落としてでも「質感」にこだわります。

言葉に表すのは難しいのですが、自分にとって「質感」とは「整合性」であり、「感触」であり、「雰囲気」です。
そういう意味ではキャラクターのドット絵表現やマップのローポリ感、イラストレーター様に描いて頂いたキャラクターイラストは自分にとって良い「質感」を演出しています。

正直なところ今の時代はUnityやUE5を使いアセットストアにあるリアルな3Dモデルを使うことで販売されているソフトのような見た目が超美麗なゲームは誰でも作れるとは思います。しかし、質だけを求めれば求めるほど求められるものが増え、粗が目立つようになります。

例えば、NPCキャラがドットの場合は細かい装飾部分や人相などはプレイヤーの想像力で自分好みに補完され没入感が出来ますが、リアル調な3Dモデルだった場合は「少し好みの顔じゃないな」とか「このキャラ当たり判定変だな」とかで気になったりして雑念みたいな感想が大量発生しますし、3Dマップに木や岩ひとつ置いても質が高すぎると「地面と比べて彩度が合ってなくてなんか浮いてるな」みたいに違和感を感じやすくなります。


↑拾えるものや動かせるものなどを強調する為に敢えて浮いてるように見せているものもある

つまりは質を高めると細かい動作や素材の質の僅かな違いなどの「整合性」を合わせるのが非常に難しくなりますし、高い質が自己主張し過ぎてプレイヤーの想像補完の余地を奪い、人が作品に触れた時の「感触」の柔らかさを無くしてしまうのです。そしてそうした粗の塵が積もって「雰囲気」を壊してしまうのです。

メーカーの開発ではそういった膨大な粗や違和感は人数で地道に潰していったりするのですが、個人開発はかなり難しいです。
それに余談ですが、仮にそれがクリアできたとしても、ぱっと見の質が高すぎるとどうしても金も人も多くかけているようなメーカー品と比べられやすくなってしまって見劣りして辛い批評に遭いやすいという地獄をよくアプリストアなどで見る気がする……。


最近話題のイラストAIについても同じで、確かに高い「質」は備えるレベルになってはきたのですが現状の技術だとまだ

「顔は良いけど姿勢が固く見える」だとか
「構図は良いけど目の焦点が合ってない」とか
「デザイン悪くないけど染み出る感情が乏しい」とか、
「すごく動きはあるけど何を考えているのか読めない」とか

そういった整合性がなく粗の多い「違和感」を感じます。そういう意味ではまだ「質感」の獲得には至ってないので自分としては採用しづらいです。

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