バンドマンのギターアンプの選び方について
https://twitter.com/n_s_lab_tokyo/status/1874078190454661506
先日、ギターアンプを買い足しまして、
気づけば僕のお家には
- Orange OR15H
- Orange Rockerverb50H mkii
- Marshall SV20C
- Fender SuperSonic112
- Vox MV50 Boutique
- hotone NANO LEGACY heart attack
- PositiveGrid BIAS mini Head
- Quilter OverDrive200
という感じに、ギターアンプ類が増えてきたので
使い勝手とかサウンドとか、全体的な「思ったこと」を書き留めておきます。
ギターアンプ選びの参考になったりはするかも。
基本的に車なしでの持ち運びは厳しい
最初から持ち運び前提の
VOX MV50とHotone NANO LEGACYは対象外ですが
それ以外の、比較的正統派のアンプヘッドやコンボアンプ類。
徒歩移動メインで持ち運ぶのは厳しいです。
不可能じゃないです。
OR15Hくらいのサイズで本当にギリギリ持ち歩くって呼べるレベル。
ケトナーのTubemeister30とかも多分同水準。
ケースに入れて肩から担げるサイズ感が実質的な持ち歩きの限界値だと思います。
それ以上のアンプサイズは、アンプヘッドだけであっても
それなりの覚悟と根性は試されます。
サイズ感と音量のバランスが妙に良いのが
QuilterのToneblockシリーズと、BIAS mini Head。
後述の出力でも語りますが、持ち運べる小さいアンプは出力が際どいものが多い中
持ち運べるサイズ感かつ、出力も十分なのはこのあたりのモデル。
最近はペダルエフェクタータイプのヘッドアンプも増えてきて
出力も高いものが増えてきているので、
そのあたりは未体験ですが、便利そうなので気になります。
”なんのために買うアンプなのか”を前提として
持ち歩いて使うのであれば、音色や出力は二の次で持ち歩けるサイズ感かは一番重視すべきポイントだと思います。
持ち歩けるサイズで満足行くアンプがないなら、
アンプシミュレーターで我慢するか、持ち歩き用にnanocortexとかToneXとかを買い足すしか無いわけです。
出力について
僕の個人的な考え方としては
ドラムの生音に対して自分の音がモニターできる音量を維持できるか
が大前提となる基準になるので、
バンドのジャンルやドラマーの音量感、スタジオやステージの広さや響きにも影響を受けやすいのですが
ここからの感想はすべて「ロックやるバンドならこれくらいだろ」を前提とした基準となります。
真空管アンプとトランジスタアンプの音量差
巷でよく言われる定説として
真空管アンプの出力ワット数とトランジスタアンプの出力ワット数の差は3倍
みたいなざっくりした話をされる人が居ますが
ちょっとそれは本質的じゃないと感じています。
トランジスタのアンプは、
インピーダンス・マッチングを考えなくても、とりあえずつなげるアンプが多くて
出力ジャックにも4~16Ω対応と書かれていることも多いですが、
その分、インピーダンスが高いスピーカーほど音量が下がります。
特にスタジオやライブハウスなんかは、「1960A」と機材リストに書いてあるくせに
ヒューマンエラー防止の為に4Ω入力を蓋して16Ωだけにしていたり、
旧モデルを使い続けていて16Ω入力しか無いキャビを置いていたりなど
16Ω入力を使うことになる場面が非常に多いです(個人の感想です)
それなのに、カタログスペックやモデル名として書かれているのは
「60W(4Ω接続時)」みたいなかたちで、
接続できるインピーダンスのうち、最も低いインピーダンスのスピーカーに接続した際の出力値をスペック表記していることが多いです。
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/252094/
VOX MV50の場合は
> パワーアンプ出力:最大50W RMS@4Ω、25W RMS@8Ω、12.5W RMS@16Ω
と明記されていて良心的ですね。
真空管アンプの場合は
インピーダンスをあわせて接続する仕組みとなっているため
きちんとアンプ側のセッティングをすれば、出力はどのインピーダンスのスピーカーでも大きくは変わりません。(サウンドは多少変わる)
出力値と音量の目安
という前提を把握したうえで、
何ワット相当のアンプがどのくらいの音量感になるのかを想像していくことになるんですが。
以降の「~W級のアンプ」という表現は全部
真空管アンプ基準の値となります。
トランジスタアンプの場合は、インピーダンスごとの仕様が書かれているアンプなら
キャビネットのインピーダンスを加味して読み替える必要があることに注意です。
インピーダンスごとの仕様が書いてなければ、
大抵は接続できる一番低いインピーダンスの値(4Ω時が多い)なので、
よくある16Ωキャビなら値を1/4しておきましょう…
さらに同じワット数でもアンプによって音量差が出るので
あくまで出力値は目安でしかない、というのは覚えておく必要があります。
そのうえで、僕の実体験を元にすると
15W:ロックバンドだと厳しい
20W:MAXでギリなので、環境によっては厳しいのと音作りが限定的
30W:実用域の最下限
50W:実用十分。ボリューム調整もちょうどいい
100W:歪まないクリーンを出したいならこれくらいの余裕がベター
という塩梅です。
15Wは実体験として、OrangeのOR15での音量感のイメージです。
ちょっとモニターできるかギリギリくらいだったので、PAありのライブで返しもらう前提なら行けると思います。
個人的には、環境に依存してまともに演奏できなくなる可能性があるアンプはハイリスクだと思っているので、あまりバンドで使えるとは思っていません。
20Wも実体験。MarshallのSV20Cのヘッド部だけ持っていって弾いたんですが、
かなりゲイン高めのセッティングではありましたが、バンド演奏に耐えうる音量でした。
ただ、ゲイン下げると音量も下がるので、音作りの幅が狭まるのはネックですね。
歪ませたサウンドしか使わないなら、ギリギリOKの範疇な気がします。
30Wは20Wの感覚からの想像です。
20Wがギリギリだったので、30Wあればなんとかなるだろっていうのと
AC-30とかいう名作アンプがあるので、世間の評価的にもこのくらいは行けるだろうと思っています。
50Wからはスタジオやライブハウスの常設アンプもあるクラスですね。
実体験としてもRockerverb50Hは全く問題なく使用できますし
このクラスだと、マスターもそれなりに上がるのでパワーアンプ側の真空管のニュアンスが出やすくて、アンプで歪ませてロックやるなら一番ちょうどよいと思います。
ちょっとロック感あるスタジオとかだと
50WのJCM900とかJCM800とかを置いているスタジオもあると思います。
あとはFender系は60Wクラスのアンプもちらほらありますね。
100Wもスタジオ常設アンプの定番ですね。
ここまで来ると、マスターボリュームを12時以上にあげるのが怖くなってきますが
50Wほどパワーアンプ側の真空管のニュアンスは出やすくないので
エフェクターなどの前段で音作りをしていく人や、なるべくきれいなクリーンを出したいならこのくらいの余裕のある出力が良いと思います。
スタジオの定番、JC120やDSL100なんかもこのクラスですね。
100W超え始めると、
今度はキャビネット自体の許容入力を越え始める可能性が出るので
取り扱いに注意が必要になります。
1960Aとか4発キャビは300Wくらいですが
PPC212とかの2発キャビは120Wだったりします。
あらためてMV50のスペックを見ると
> パワーアンプ出力:最大50W RMS@4Ω、25W RMS@8Ω、12.5W RMS@16Ω
ということなので、
もしその場に16Ω接続しかできないキャビしかなかったら、
15Wクラスのアンプということで、かなりバンドで使うには心もとないサウンドになると思います。
「トランジスタアンプなら真空管の3倍の出力を選べ」
というのはあながち大外れでもない、
むしろリスクヘッジとしては適切な値だと思いますが、
安い買い物でもないので、意味を理解してきちんと吟味して選べると良い気がします。
僕が使っていたトランジスタアンプは
QuilterOVERDRIVE200:200W(インピーダンスごとの表記なし)
BIAS mini Head:300W(4Ω時)
という出力なので、概ね100Wクラス級ですね。
足元のTONEXなどで音作りを完結させるために、比較的クリーンが出せるアンプということでこの出力を選んでいます。
余談ですが、Kemper Powerrackの出力は
> 600W(8Ω)または 300W(16Ω)
とのことです。
プロファイリングアンプなので、歪みなくクリーンに出力する必要があるので
やはりこのくらいの余裕は必要なんですね。
サウンドにこだわってKemperやHelixを使って
出力はパワーアンプにしているよ!って人は、
最低でも16Ωで100Wクラスのパワーアンプを使うことをおすすめします。
キャビネット・スピーカー数と音量
同じインピーダンスのキャビネットでも
スピーカーが多いほど音量は増えますし、許容入力も増えます。
インピーダンスにかかわらず
スピーカー1つにつき40~60Wくらいの許容入力のものが多く
キャビネット全体で見ると
4発なら単純計算で160~240Wくらい、2発で80~120Wくらいが許容入力
となるものが多い気がします。
許容入力っていうのは、ここまでのアンプやエフェクターの入力みたいに
「これ以上いれると音が割れてしまいますよ」みたいな話じゃなくて
まじで「物理的にこれ以上つっこむと焼け切れたり破れたりします」って話なので
絶対に超えてはいけない値となります。。。
で、スピーカーが多いほど
音の出る出口が多いので音量は増します。
ただし2倍3倍みたいなわかりやすい感じではないですが……
細かいことを言うと、
スピーカー自体の能率だったり、オープン・クローズバックか、周波数特性との相性でも
聞こえる音量感はだいぶ変わるとは思いますが
レンタル機材に対して、それを把握するのはほぼ無理なので、
スピーカーが多いほど音は少し大きくなるよ
というざっくり理解で良いとは思います。
スタジオやライブハウスのレンタル機材のほとんどは4発キャビだと思いますが
まれーに2発のキャビネットとかもあるので
そういう場合には、15W~20Wクラスのアンプだと心もとない場合もありそうです。
30Wクラスでもなんとかというところでしょうか。
カフェ・バー的な環境だと1発キャビの場合もあるかもしれないですね。
そうなると100Wクラスのヘッドアンプを接続した場合は
マスターを上げると普通にスピーカーがぶっ飛ぶので、まじで気をつけてください。
音量は小さめで、返しをもらうようなスタンスを撮りたいですね。
僕は自作の許容入力60Wスピーカー1発のキャビを
バンドリハで使ってみたことがあるんですが
QuilterのOVERDRIVE200のマスターを半分くらいまであげてしばらく演奏したら
普通にスピーカーが飛びました。
ともかく、1発キャビはちょっとロックバンドで使うには心もとないと思います。
機能性
こうした前提をクリアしたうえで、
ようやく音色……と思いきや
バンドユースなら機能性として見るべきポイントがあります。
ひとつめは、センドリターンの有無です。
特にアンプで歪ませたいギタリストで
ディレイやモジュレーション系を併用したい場合は
センドリターン必須となります。
そうでなくても、
歪んだ状態からさらにギターソロなどで音量をあげたい場合、
そうしたブーストSWのような機能がなければ
センドリターンにブースター、もしくは通常時の音量ダウン用のボリューム系エフェクターを挟む必要があります。
近年のアンプだと多くのモデルに付いているので
あまり気にしなくても良くなってきては居ると思いますが
比較的古いヘッドアンプを中古で買う場合や
超小型ヘッド、ペダル型ヘッドアンプを買う場合は要確認だと思います。
なんども例にあげちゃいますが、
VOXのMV50にはセンドリターンは搭載されていません。
単純にジャックを付けるスペースの問題な気もしますが。
ふたつめは、マスターボリュームの有無です。
僕の手持ちアンプだと、SV20CはMarshallの1960のレプリカなので
マスターボリュームはなく、アンプのゲインのみでのコントロールになります。
スタジオやライブハウス、なんなら自宅レコーディングなど
様々な環境で演奏するうえで、マスターボリュームがないアンプはかなり厄介です。
もしサウンド面で惚れ込んで、マスターボリュームのないアンプを買うのであれば
対応したインピーダンスのアッテネータを購入するのがおすすめです。
アンプとスピーカーの間につなぐ抵抗で、マスターボリュームの代わりになってくれます。
3つ目としては、チャンネル数ですね。
アンプ側で歪みON/OFFを切り替える必要があるかどうか
改めて自分の演奏スタイルを確認したほうが良いです。
センドリターンの際に言っていた
ソロのブースト有無の問題、もこのチャンネルの機能性次第ではカバーできる場合もあります。
Marshallの定番機種、JCM2000/DSL100なんかは
Ch1/2両方ともそれなりに歪むので、クリーンと歪みの切り替えにも使えるし
ソロのブースト用のチャンネルにも使えるという便利さが定番機種となった強みの一つだと思います。
(でも、クリーンと歪みとソロブーストも使いたい人はTSL100を買っていた……)
僕の手持ちアンプだと
Rockerverb50HとSuperSonic112は2ch仕様ですが、
ほぼ完全にクリーンと歪みでchが分かれています。
QuilterのOVERDRIVE200は、どちらのチャンネルもある程度歪んでくれるので
ソロ向け切り替えにも使えるような感触で、
OVERDRIVE200をメインとしてサウンドを組み立てていた時期もありました。
音色
ギタリスト的には、いちばん大事なのはこの音色で
本質的には
「この音色のためなら他の何かを犠牲にしても良い!!」
ってアンプに出会えるのがサイコーだと思いますが
あんまり説明することがないので後回しにしましたw
好みの差なので本当に好きなのを選べと思いますが、
手持ちのアンプや、触ったり視たことあるアンプをベースに、
知っている範囲でブランドの特徴みたいなものを紹介します。
Marshall
定番度No1。
比較的廉価なものから、プロ仕様・ヴィンテージまで揃っていて
サウンドも聞き馴染みがある定番サウンドなので
迷ったらこれ!!
と言いたいところではあるけど
スタジオやライブハウスにもよく置いてあるので
差別化が図りづらいところは難点かもしれない。
でもやっぱりMarshall買って思ったのは
Marshallの音は良いね!だったので、
好きな音がするって第一印象で思えたなら後悔はしないと思います。
Orange
僕は大好きOrange。
Marshallと同じUK系のアンプなので、ガッツがあって厚めの歪み方がするのは共通項だと思うんですが
ドンシャリ気味でキラキラ感あるサウンドのマーシャルに対して
ミドルもガツンと出して歪ませることで”いなたい”サウンドを出すようなイメージが有ります。
あと、オレンジ色の見た目がキュートです。
存在感や圧力のあるサウンドが欲しければ候補に上げて良いアンプだと思います。
UK系同士、Marshallキャビとの相性も悪くないですが
Orangeキャビとつなぐと「これがOrangeの出したい音かー」とはなります。
ただ、Marshallより重たいので、可搬性は✗
Fender
MarshallとかのUK系と対を成すUS系アンプというイメージで
厚く、粘りのあるサウンドがUKだとしたら、カラッとして勢いのあるサウンドがUS系のイメージ。
特にFenderは、クランチとかの軽めの歪みのときのコード感がきっちり出るのが気持ちよくて、リズムバッキングを弾いていて楽しいアンプだと思います。
ただ、コンボアンプがメインラインナップで
ヘッドとキャビが別れているアンプが数少なく、
ヘッドを買ったとしてもライブハウスのキャビはMarshallなので、Fenderの良さが出し切りづらい……
ということで、手持ち移動派のバンドマンにはちょっと手が出しにくいアンプ。
僕が買ったSuperSonicシリーズは
コンボアンプでもスピーカーにVintage30が載っているので、たぶんヘッドを買ってMarshallに繋いでも割とそれっぽい音が鳴ってくれる設計に鳴っているんじゃないかな、と邪推しています。
Hughes & Kettner
持っていたことは無いんですが、周りで何人かが使っていたりよく見かけるので印象値だけちょっと触れますが、
どちらかと言うとUK寄りだけど、機能性に優れていてかなり万能に扱いやすいアンプの印象です。
クセ強めなMarshallやOrange、Fenderに比べると
きちんと自分の意志でサウンドメイクをしていけるアンプな気がします。
ただ、独特のライトアップされる見た目が好きになれるかはかなり大きい気がします。
その他最近の小型アンプ類について
小型アンプ類は、最近のニーズに合わせて開発されたプロダクトなので
メーカーやブランドの特色というよりも、そのアンプ自体が何を目指して作られているかでかなり特徴が変わると思います。
VOXのMVシリーズなんて顕著で
伝統のAC系サウンドを意識したモデルもあれば、MarshallっぽいRock、DumbleっぽいBoutiqueとか、同じメーカーから出ていてもモデルごとにはっきり系統が分かれています。
今どきのアンプの選び方
- 持ち歩けて
- 十分な音量で
- 自分の目指す音が出せそうなアンプ
を買いたい、というのは皆共通の願いですが
最後の一つは答えが見つからないので、延々と迷い続けることになりますね……
ただ、前者2つは
ある程度想像通りの結果になるので
ここに書いた僕の経験談を、ちょっとでも参考にしてもらえると
ギターアンプ選びの失敗が減らせるかなと思います。
最近のアンプキャプチャ系機材(ToneX/Kemper/nanocortex)
の品質はめっちゃ高いので
アンプがほしいと思ったら、まずはアンプキャプチャ機材を買って
気になるアンプのモデルを一通りじっくり試奏してみる、というのは今どきのアンプ選びのやり方として有意義な気がしています。
オーディオインターフェースがあるなら
ToneXは無料でいくらかのモデルが試奏できますし、
ToneXPedalやKemperやCortexとかを使えば
バンドサウンドにマッチするかも確認できますね。
使い終わったらオークションとかに流せば
1~2万程度の赤字、もしくは中古で買ったなら買値と同レベルで売れるかもしれません。
10万超えのアンプを買ってからがっかりするリスクを考えると、
まあ安いのかなと思います。
ToneXやCorteXなんかは、アンプを買った後も
小機材で動く際の自分のサウンドメイクとして、
買った自分のアンプをキャプチャーして持ち運ぶ使い方もできるので
アンプを買う前に買っておくのは有意義なのでは?と個人的には思います。
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