ギターの歪みとギターアレンジの再考察
ふと思い立ったので、再考察しながらアウトプットして考えをまとめてみる。
書き終わってふと見たら約7500文字。
読了まで15分程度。
いつもどおりのギタリストの持論エッセーなので、心と時間に余裕のある方向けです
エレキギターにおける歪みの歴史
僕の記憶の限りで歴史をざっくり語ると、
もともとはアンプの許容範囲を超えた際のオーバードライブがはじまりで
ロックとかうるさい音楽が出てきたときに「もっと音量を出してえ!」ってボリューム上げたら許容量超えて歪んじゃったってのが始まりだと思ってる。
「なにその音、クールじゃん!」
ってなったので、みんな真似し始めて
小さな音量でも歪みを再現するエフェクターが開発されていくんだよね
よく、ギターの音作りでエフェクターの並び順とか使い方とかすごく気にしている人がいるけど
そもそもオーバードライブやディストーションの始まりはこんな想定外の使い方から始まってるので、ロックギターにおける音作りは
「借り物の機材が壊れない限りは何してもOK!」
というスタンスで良いと僕は思ってる。
脱線したけど
歪みってのはそもそもが、機材に過負荷をかけて音を壊す仕組みなので
動作が不安定で再現性の低いサウンドだったんだよね
それを、コントロール可能な音色として改善を重ねた結果が
現代のギターアンプだったり、エフェクターだったりというところだと思う。
とはいえ、特にアンプなんかは真空管という未だにローテクな技術を使っているので
物によっては再現性の低いサウンドを出すモデルもあるので
未だにギタリストのギターアンプ信仰が強いのはそういう点だと思う。
ロックとは刹那の衝動である、なんて誰かが言うけど
再現性の低いサウンドというのはまさにそれを体現しているのかもしれない
歪みの仕組み
エレキギターでエフェクターとかを色々知っていると、クリッピングという単語を耳にしたことはあると思う。
歪みの原理の一番わかり易い部分はその「クリッピング」という動作。
さっきアンプの許容範囲を超えた音量を出そうとして歪んだ、という話があったけど
許容範囲を超えたら音が変わった、という動作がクリッピングであり、歪みにおける基本的な原理のひとつ。
同じギターアンプでも
ギター側の音量を上げ下げすると歪んだり歪まなかったりする。
歪まないときはアンプ側の許容範囲内に電力が収まっていて、歪んだときは許容範囲を超えている、と言う感じにざっくりイメージしておくと
歪んだギターサウンドにおける音作りや演奏の幅は広がると思う。
もう少しちゃんと理解するなら、動画で見たほうが早いと思うので見つけた動画を紹介しておく
https://youtu.be/fHJwSqhrKGs?si=TynuWPbWtq1OYCeW
波形のてっぺんが削られて、少し台形のような波形に変化してるのがわかると思います。
歪むと何が変わるか:①アタックとサスティン
ギターは弦楽器で、はじいて音を出すタイプの楽器なので
本来であれば、はじいた瞬間の音が一番大きくて徐々に減衰していく音になるのはイメージできると思う。
音作りでよく使われる単語で言い換えるなら
アタックが大きくて、サスティンが徐々に小さくなっていく
みたいな感じか。
この音に対してクリッピングを行うとどうなるかというと
一定以上の音量は歪んでしまうので、まずアタックは大きく歪む。
次にサスティンについては、許容範囲を超えた部分は音量とならず歪み続けるので
音量的にはクリッピングし続けている間は音量が変わらないように聞こえる。
ディストーションサウンドのサスティンが長く聞こえるのは
こうした歪みの原理を考えると当然のこととわかる。
歪み自体の音色もそうだけど
こうしたサスティンの長さが、ギターソロなどでのロングトーンと相性が良いので
ロックギターでは歪んだサウンドが重宝されるというのはあると思う。
歪むと何が変わるか:②周波数特性
ちょっと物理が絡んでくる面倒な話になるのだけど
さっきの歪みの原理の動画にあったように、歪んだ波形は頂点を潰されて台形のような波形になるという説明があったと思う。
そうした台形のような波形を矩形波と呼んだりするのだけど
矩形波を人工的に、数式で作り出そうとすると
複数の周波数の波を重ね合わせて作ることになる
僕も計算式はよくわからないのでツールとビジュアルに頼るんだけど
https://vrlab.meijo-u.ac.jp/edu/sinusoidal-wave-synthesis.html
こちらのサイトで、波形の下のメニューに有る係数プリセットから「矩形波」を選ぶと、矩形波を作るための合成方法が表示される。
複数の周波数の音を重ね合わせた音=矩形波 であるなら
矩形波に近い音≒複数の周波数が重ね合わさったように聞こえる
という逆?対偶?を考えると、
歪んだ音というのは、本来の音が持っていなかったはずの周波数が付加されていると捉えることができる。
これが歪みでよく言われる「倍音が付加される」という話で
基本的には、本来の基音よりも高い音域が付加されたような聞こえ方になる。
バンドアンサンブルの中でのエレキギターの役割
バンドアンサンブルの中で、エレキギターはどんな役割を担うことがあるか。
音楽の三要素のリズム、ハーモニー、メロディで考えると
メロディを担当するのはリードギター
バッキングギターはリズムとハーモニーのどちらか、あるいは両方を表現する必要がでてくる。
リードギターの音作り
リードギターはメロディを担当するので
求められているのは
・メロディがわかるような音程感
・他のパートに負けずに聞こえやすいこと
の2つがメインかなと思う。
フレーズによってはロングトーンも多かったりして
歪ませることでロングトーンを綺麗に聴かせられる恩恵は大きいので
基本的にはある程度歪んでいるほうがフレーズの聞かせやすさは上がると思う
あとは他のパートに負けずに聞こえやすいことの観点だけど
これは3つ考え方があって
単純な1つ目は音量をバカでかくすること。
ただこれは難点があって、他のパートが聞こえづらくなるのでバンド全体のハーモニー感が薄れてしまう
じゃあ音量を上げすぎないためにどうするかというと
1つ目は、他のパートの鳴っていない音域を出すようにする
じゃあEQとかで調整すれば一発じゃん?とは思うかもだけど
そもそも鳴ってない帯域をいくらEQでもち上げても、実際には聞こえてこないわけで。
そうなったときに、
歪ませることで本来鳴っていない音域が付加される、という効果のメリットが見えてきそう。
歪ませることで本来あんまり鳴っていない帯域の音も含むようになるので
生音に比べると、全帯域がまんべんなく出たサウンドになっていて
その結果として、EQを使うことでどこを出してどこを出さないかを意図的に操作しやすくなっている。
そして、音量を上げすぎずに聞かせる方法としての2つ目は
アタックをきっちり出すこと。
弾きはじめのアタック感がきっちりあると、人間の意識がそっちに向くので
カクテルパーティー効果によってその楽器が聞き取りやすくなる。
音楽に慣れ親しんだ人なら意図的に意識するパートを変えたりして聞くことはできるけど
一般的には「今聞いている音」にしか意識が向かないことがほとんどなので
アタックの音とかで聞き手の意識をこっちに向かせると、音量はさほど大きくなくてもフレーズを聞いてもらいやすくなる。
歪ませるとアタック感が減ってしまうので
こちらを意識するならあまり歪ませすぎない方が良い、という話になるのかもしれない。
ということで、歪ませることによるリードギターへの恩恵は色々あるのだけれど
歪ませることで失う要素もあるので、
このあたりのバランス感を楽曲やバンドサウンド全体を加味しながら調整する必要がありそう。
バッキングギターの音作り
リズムとハーモニーを重視すべきバッキングギター。
この2つのバランス感が大事になってくるパートだとおもうけど
ひとまず片方ずつ考えてみる。
まずはリズムを聞かせるギターの音作りだけど
これはわかりやすくて、アタック感がある方がリズムは感じやすいはず。
どこが音のはじめかはっきりと分かるので、特に何も意識しなくても演奏におけるリズムを感じ取れると思う。
歪ませることでアタック感は失われていくので
リズムを重視するならあまり歪ませすぎないほうが良さそう。
次にハーモニーなのだけど
こっちは考え方がすこし複雑で
作曲の段階で意図したコード感をきっちり伝えたい場合は、音程感がきっちりしていないといけない。
なので、必然的に基音が聞きやすいように歪みは少なめのほうが良い結果になると思う。
ただ、本当にコードのサウンドだけで成り立たせると楽器数が少ないバンドアンサンブルだと少しさみしく感じてしまうこともある。
周波数帯域的にも、より広い帯域で音が鳴っていたほうが、聞き手に与える迫力は増していくので、そういった意味の数学的・音楽理論的でないハーモニーを考えると
歪ませたディストーションギターは、いろんな周波数帯域が出ているので1パートでただっぴろいハーモニーを聞かせるのにうってつけの音色とも言える。
音程を聞かせたいなら、歪みは少なめ
音域を聞かせたいなら、歪みは多め
というところで、上手くバランスを取っていかないといけない。
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歪みの話から派生してギターアレンジの話
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