芦緒みきな 2022/11/21 21:14

20221116一次創作/ほの暗い/死ネタあり

芦緒みきなさんには「青い鳥が羽ばたいて消えた」で始まり、「月が綺麗ですね」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字)以内でお願いします。

https://shindanmaker.com/801664

登場人物
俺:スズ。
ヒダキ:ヒダキルリ。希死念慮がある。

青い鳥が羽ばたいて消えた。自室のカーテンを締め切り、パソコンに目をやる。無機質な光だけが部屋を照らしていた。先程までみえていたはずの柔らかな青色が一色欠けた程度で足が細かく震えるのが自分でもわかる。注意していたはずの貧乏ゆすりは、指摘する友人もいない狭い部屋では止める術もなかった。

×月×日。幼い頃からの友人、ヒダキに誘われて、電車で数時間。都心部から離れた自然豊かな村に連れられた。たった二人で携帯の電波も入りにくい旅館へチェックインした。村の旅館は自分の部屋よりも広く、近くに川が流れてて、自然を見渡せる解放感のある場所だった。

「ね、スズ。いいところでしょ?前から一回は来てみたかったんだよね〜」
「何でお前が得意げなんだよ」

ヒダキがあまりにも得意げに話すものだから軽く頭を叩いて、旅館に持ち込んだ荷物を広げる。
「だっていいことじゃん?!」
「まぁ、そうだけど……」
「いつだって最期だと思って生きてなきゃ。楽しいことぜ〜んぶ逃しちゃよ!」
「その『最期』って口癖やめろよ?ヒダキ」
「えぇ〜じゃあスズも貧乏ゆすり早くやめろよな」
「あれはあんまりしてないからいいだろ!」

ヒダキは変わったやつで、引きこもりの俺を連れ出すのはいつもこいつだった。大学の陽キャに囲まれているくせに、一番に連れ出すのは俺。絶対絡んじゃいけないだろ?って思うような柄の悪い人やホームレスのような人へついて行こうとすることもあった。「最期」が口癖なのも相まって自分自身を大切にしていないようにすら見えた。

電車で移動してる時なんて、数ヶ月前に「SNSでバズった〜」なんて言いながら俺に自慢してきた6桁代の人間が見ているSNSアカウントを気まぐれで消してみせたりするのだ。何もできない俺への当てつけか?ともおもい、鍵垢から苦情なんかをったこともあるくらいだ。今思い返すと好意があるからこその嫉妬だったし、思い出すと若かったなぁなんて思う。

宿泊客の少ない季節らしく、夜になると宿の明かりは俺たちの部屋と従業員たちの部屋だけだった。
ヒダキはいつだって行動を起こすのは急だ。

「スズ!外の景色、見に行こう!」
「え、うん、まぁ…いいよ」

森の中、空は曇っており、月や星は見えなくなっているが部分もあるが、雲の隙間から見える空からの輝きは都心にはない美しさだった。紺色と深緑に囲まれ、近くの川は星々の輝きを反射して黄色く光っている。

おもむろにヒダキが川の方へと歩みを進めていた。

「ヒダキ、陽があるわけじゃないから、風邪ひくよ」
「スズは心配性だな。大丈夫だよ、楽しいし、きなよ」
そういってヒダキはにこやかに冷たい水の中に俺を引き摺り込む。

それからの記憶はよく覚えていない。ワンシーンだけ覚えてるのは石を俺に振りかざすヒダキが見えた、ような気がする。ただ、頭から血を流す、真っ赤に濡れたヒダキの姿。

回らない頭で携帯電話で救急車を呼ぼうにも電波も繋がらないし水に水没した影響か画面も真っ黒になっていた。

大学では俺がヒダキを殺したという噂で溢れている。パソコンの中も俺の周りではヒダキに関連したことで溢れていた。ヒダキは見目の良い人間で、少し気まぐれなところが魅力的だーなんていう輩が多かった。だからか、異様にフォロワー多いSNSには個人情報がダダ漏れ。本名、学歴、無断で掲載されてる写真なんかもあった。

最後の投稿をスクリーンショットしてる人間もいた。たった二人きりの時間ヒダキの真昼間に書かれた最後の投稿は時間にそぐわない言葉。二人きりの電車のなかおそらく、俺に向けて伝えられた言葉。

「月が綺麗ですね」

俺は部屋を出て川へ歩みを進めた。

一次創作はお得意さんプラン以上とおもっていますが、診断メーカーから考えたものなので全体公開で置いておきます。ほの暗い物語が好きです。

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