シリーズ思い出語り Part6『Machiavellist~②制約と課題』
『Machiavellist』のストーリーの方針が決まったら、まずは台本化作業。これは当初から一貫したやり方で、台本を書いてから、更にゲーム内のテキストに打ち込みは、特にCSツクールはコピペができない以上、完全に二度手間になる。それでも敢えてそうするのは、長い目で見たら、結果的にその方が効率的だと思うから。
どんな仕事でも、大掛かりな案件ほど、まずは計画が立たないと話にならない。「作りながら考える」で、最後までスムーズにいけると思うのは無謀。何か問題が出たり、途中で気が変わって変更などあったりしたら、混乱や無駄が生じて一気に非効率になる。だいたいにして、過去の経験からも言えるけど、エタる要因はそもそもが無計画―――という例が実に多い。
私のゲーム観からすると、ストーリーはRPGの設計図。ストーリーに沿ってゲームを展開し、銃を集めていくコレクションゲームなのだから、ストーリーが整わなければ、柱がグラグラな建物みたいな物。
ただ、当時の私の感覚としては、「整える」という意味でストーリーを重要視はしていたものの、それ自体を愉しむのは「ついで」の話でしかなかった。だから、中身については、あまり精査していたとは言えない。とりあえず「ハードボイルドっぽい何か」を、いろんな映画とか海外ドラマとかを参考に真似事みたいな組み立てだった。
リアルな現代世界を舞台にすると、本来あり得ない魔法とかモンスターとかを出す為の理屈が面倒臭くなりそうだったので、結局はRPGでよくあるファンタジーの世界をベースに、時代としては定番の中世ではなく、より未来の、現代と同じ時間軸のファンタジー世界―――という舞台設定になった。舞台となった国も、当然架空の国だけど、モデルにしたのは現代のアメリカの暗黒街。
移民問題が世界的に叫ばれるようになり、そんな中で現れた時代の寵児、ドナルド・トランプ大統領。それらを眺めながら、「移民問題」「大統領選の裏側」を、前回書いた「巨大な陰謀」のテーマとして取り扱いたくなった。このシリーズのストーリーは毎回何かと時事ネタに影響されている面が強いw
ただ、いくら「ファンタジーだから」で誤魔化しても、それでも政治的要素を取り入れる以上、何かと理屈がゴチャゴチャしがちになったし、これで「作りながら考える」スタイルでは、それこそどこへ行くか分かったもんじゃない。だからこそ、RPG制作が本格的に始まった2018年初頭から最初の一ヶ月近くは「構想」に専念し、ツクールは起動さえしていない。
まずはシナリオを完成させ、関係する全てのテキストを「台本」としてまとめた。これさえできていれば、実際のテキスト入力はひたすら機械的作業で、立ち止まったり、修正を繰り返すような場面が殆ど無い。加えて、台本からゲームに入力する過程の中で、改めてテキストの見直しもできるし、それぞれのシーンをイメージしながら作るから、これはマップ作りにおいても、「予めイメージできている」状態の方が、作業に入りやすいなどのメリットもある。ちなみに私自身、構想を経て実際に制作が始まってから、ストーリー変更した例は、シリーズ10作で一度もない。
ストーリーができたら、次はシステム面だったけど、これに関しては誤算続きだった。主な原因はツクフェスの制約。
元々やりたかったシステムとして、銃のコレクションゲームである趣旨から、古今東西あらゆる名銃を出す訳だけど、どの銃にも活躍の機会を与えたいと思っていた。ただの「装備品」だと、より強力な銃を手に入れたらポイして終わってしまう。
そうならないよう、全ての銃に「スキル」を紐付けて、通常攻撃としては、装備している銃しか用がなくても、「スキル」を使う場面で、他の銃にも出番がある。そして、戦略性を深くして、多種多様なスキルに満遍なく活用法があれば、あらゆる名銃が、名に恥じない活躍をしてくれる。だからこそ、コレクションが楽しくなる―――というゲームにしたかった。私が戦闘面においても「戦略性」に拘る理由がそれ。単調な殴り合いじゃ、いくら種類だけ取り揃えても、単純に攻撃力のある銃以外は用無しになってしまうから。
ところが、いざ制作に取り掛かったら、壁にぶつかった。最大のネックが、ツクフェスでは各人スキルを8種類しか持てない仕様。登場する実材銃は50種類以上で考えていただけに。全くもって枠が足りない。てか、今時スキル8枠って、ファミコン時代のドラクエかよw
諦めかかったが、代替案が閃いた。「アイテム」なら全員共通で使えて、枠は64種類あった。つまり「銃」を「装備品」としてだけでなく、「アイテム」として使用もできて、「アイテム使用」での特殊効果が実質的な「スキル」という考え方。こうして、苦肉の策ではあったが、技や魔法よりも「アイテム」が戦略の要となる独自スタイルが出来上がった。まあ「アイテム」だと、誰が使っても効果が一緒、という不満は残ったけど、パーティ全員64+自前の8種類のスキルを使いこなせるようになった幅広さという意味では、とりあえずの満足はできた。
それから、マップ制作でも、いざ取り掛かったら美的センスのなさを露呈し(そういえば中学生の頃も、不器用な上に絵心皆無で美術の時間がとにかく苦痛だった。提出物だけでも真面目に出して「1」だけは回避していたけどw)、初代ではとうとう自作マップはまともに見られたモノじゃなく、サンプルマップの存在が本当にありがたかった。
一方、データベースになると、特に戦闘テストは楽しかった。前述の通り、戦略性を深めるという目的で、属性やらステータス異常やら様々な事を試して、勝つか負けるか、ギリギリの調整を詰めていくのが。そんなのはプレイヤーの人が苦痛だろうとか知った事じゃないw
とにかく自分が楽しければそれで良かった。本格的な処女作を作っている最中は、そもそも公開する事さえ殆ど考えていなかった。ただ、とにかく純粋に作っていて、全てが楽しかった。今改めて考えても、この初代『Machiavellist』こそが、プレッシャーも飽きる事も無く、制作が最も楽しかった作品だったと断言できる。