夢幻台 2022/12/25 00:00

「勝ち」を超えた「価値」~勝ちに拘った人間が知った、勝つ事よりも価値のある事のお話~

これはツクールアドベントカレンダー25日目の記事です。
https://adventar.org/calendars/8043

初めましての方もいるかと思います。ツクラーの端くれ、夢幻台と申します。今年は縁あってツクールアドベントカレンダー2022の主宰を担当させていただきました。今年のツクールアドベントカレンダー最後の記事となりますが、どうぞお付き合いください。

今回は28年ツクール制作を続け、そしてコンテストに挑戦し続けた自分が今年に体感した、ちょっと不思議な感覚に関して書かせていただければと思います。

戦いが終わり…不思議な感覚

2022年に制作・完成させたコラボ作品「パーティー×ナイトmare」。これを「フリーゲーム新人コンテスト」に提出しました。いやアンタ新人じゃないでしょ、という突っ込みが来そうですが、このコンテストには「超ベテラン部門」というものがあり、自身の作品はそちらにエントリーすることに。コラボ作品でのコンテスト挑戦は(作品登録で自動的にエントリーになるものを除いて)初めての事でした。

せっかくのコラボ作品、そして過去最高のコラボ人数と規模、一番自分の自信の持てる主人公、ということもあり、目標はグランプリ。つまりコンテスト最高賞としていました。

そしてそれは、獲れなかった。

しかしながら「審査委員長特別賞」という、大変に名誉な賞をいただきました。唯一無二のこの賞を受賞したことで、不思議な感覚を感じています。コンテスト結果後の自分の心境として予想していたのは、

「グランプリを獲って喜んでいる」か
「グランプリを獲れなくて沈んでいる」の

二択しか考えていませんでした。なので「グランプリは獲れなかったけれど喜んでいる」という全く予想外の心境に驚いています。グランプリと特別賞ってどちらが上なのか、ちょっと考えたのですが、結論としては「どちらでもいい」と。あれだけ勝つことに、上に立つことに拘っていた(と思っていた)自分が「どちらでもいい」という気持ちになった事にも、重ね重ね驚いています。

コンテストに挑み続けた、自分でも気づかなかった「本当の」理由

自分自身、コンテストに挑み続ける一番の理由は「刺激が欲しい」だと思っていました。

作品を作って公開、プレイしてもらえて嬉しい。それでも十分刺激的なのですが、それだけでは何かが足りない。コンテストに参加することで、受賞すれば嬉しいし、落選すれば悔しい。受賞しても落選しても、周囲が引くくらいに大きなリアクションを起こす。迷惑極まりないと思われるかもしれませんが、それだけ「刺激」に飢えているのが自分なのかもしれません。そしてその「刺激」を自らの手で作れるチャンスとしてコンテストを位置づけていました。

しかしながら、他にも理由がある事に気が付きました。それは「認められる事」。認めるという行為は、自分で自分を認める、他人が自分を認めてくれる、両方あると思いますが自分は欲張りにも、両方とも欲していました。

自分で自分を認めようというのはこれまで散々やってきました。「自分が認められない作品で、どうやって他人を認めさせることができるのか」と言い聞かせ、作り続けてきたので。でもそれは揺らぎやすい不安定なもの。周りからの批判、揺らぐ自信、進まない制作、出ない結果。様々な要因が、自分で自分を認める行為を妨げて来ました。自分だけで自分自身を認めるのって、実はすごい難しい事なんだなと。

なので自分だけでなく、他の方からもちゃんと認められたい。自分のこの自認を揺るぎないものとするために他の方、それもコンテストという揺るぎない「結果」が残る場所で認められたい。それが自分のコンテスト挑戦への意欲を駆り立てる原動力だったと気づかされました。

「勝ち」を超えた「価値」

自分が初めてコンテストで受賞したのはツクール制作を開始して7年目のことでした。受賞のお知らせ(当時はWebでの結果発表の前に事前に電話連絡があった)を聞いた時にはそれはもう、舞い上がって喜んだ記憶があります。

しかしながらその後、ネットでの反応を見ると「なんでこの作品が受賞しているのか」という反応があったのがショックでした。しかも複数。もちろん受賞を喜んでくださる方もいたのですが、「疑惑の受賞」的な意見の方が多かったのも事実です。単なる嫉妬かな…と思えたら幸せだったのかもしれませんが、割とちゃんと文章で受賞を疑っているその様は「お前なんか認めないよ」という強い意志の表れにも取れました。

そしてそれは2度目の受賞(ツクール制作12年目)の時にも変わりませんでした。これに関しては金賞を狙っていて銅賞だったという事も大きいとは思いますが、それでも「お情け受賞」という言葉も頂き、やはり「お前なんか認めないよ」的な意志を感じました。それもやはり複数。自分は受賞したんだぞ、自分は勝利者なんだぞ、ひたすら自分に言い聞かせてはいたものの、押し寄せる批判を押し返すほどの自信はどうしても持つことができず、モヤモヤは残ったままでした。

そして今回。審査委員長特別賞を受賞し、その報告をTwitter上でさせてもらった時の事。本当に多くの方から祝福のコメント等をいただきました。一緒に制作に協力して下さった共同企画参加者の皆様、プレイして下さったプレイヤーの皆様、これまで自分を応援して下さったフォロワーの方々、そして一緒にコンテストで競い合ったライバルとも言える皆様までも、一時期は返信が追い付かないレベルでたくさんのお祝いコメントでした。それが本当に嬉しかった。それを見て、ああようやっと認められたんだなと、心から思えるようになりました。

ただその「やっと認められた」も、厳密には正しくないことも知りました。コメントの中には10年以上前の作品の頃から実は知っていたという方も、中には「自分の青春時代を彩った作品の作者」とまで評価して下さっていた方の存在に気付き、「やっと認められた」ではなく「実はもうずっと前から認められていたのに、気が付いていなかった」という事なんだ、ということを改めて感じました。影ながら応援して下さった方には気づかなくてすみませんと思うとともに、改めて感謝したいとも思いました。

今回の「パーティー×ナイトmare」の制作、公開、そして受賞を通して、周りからの批判はそれを上回る祝福で、揺らぐ自信は積み重ねた経験で、進まない制作は作り切った作品で、そして出せなかった結果は最高の結果で。揺らぐ自認の要素、その全てを越えて、ようやっと自分で自分を認めることができた気がします。

そしてそれは「勝ち」を超えた「価値」があると感じています。

ツクールに「ありがとう」

28年、本腰を入れてやった趣味といえば、ハッキリ言えばツクールしかやってきませんでした。正直、他の方と比べれば趣味の幅は圧倒的に狭い。それでもツクールをやってきて良かったと思っていたし、今回の事で続けてきたことが本当に間違っていなかったと確信しております。全ては報われた、これで本当に報われた。

実質、新人ではない自分にも参加する場を与えてくれた新人フリコンさんに、
評価などデリケートな要素が絡む中でも快くチャンスをくれた企画参加者さんに、
作品を楽しんでくれたプレイヤーの皆さんに、
これまで応援してくれたツクラーさんの皆様に、

そして、知識も技能も才能も無い自分に、これだけの作品を作らせてくれた
ツクールに「ありがとう」。

先を進む楽しみ

審査委員長特別賞を受賞の際、新人フリコン主催・高橋リョウタさんに「引き続きゲーム制作への情熱を枯らさずに活動を続けてほしい」というコメントを頂きました。幸い、今回の受賞で「やってやった」感はありますが「燃え尽きた」感はありません。このままゲーム制作を続けて行った先に何があるのか、何を感じるのか。今回のように28年目にして感じた新たな感覚がその先にあるかもしれない。

また一段と、ゲーム制作に楽しみができました。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
もしよろしければ渾身のコラボ作品「パーティー×ナイトmare」ぜひプレイを!
ダウンロード版↓
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_10404.html

ブラウザ版↓
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm23359

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