夢幻台 2022/12/20 00:00

コラボ2022・制作後記

これは「ゲーム制作にかかわる人が自由な記事を作る Advent Calendar 2022」12/20の記事です。
https://adventar.org/calendars/8046

初めましての方も多いと思います。フリーゲームクリエイターの端くれ、夢幻台と申します。

今回は今年完成&公開したコラボ長編RPG「パーティー×ナイトmare」制作後記として、制作前・制作途中に思った事、またこれから共同制作をやろうと志す方に「自分はこんなやり方でやりましたよ」的な経験談を書かせていただければと思います。少しでも参考になれば、また楽しんだり、なにか考えるキッカケにして頂けたなら幸いです。

敢えてツクールフォーラムを選ばなかった訳

コラボ作品を公開するのは今回で4年連続になりますが、過去3年は「ツクール公式フォーラム」で参加者さんを募集し、フォーラム内で制作・完結するスタイルを取っていました。「ツクシティ」「ユニバーサル・ツクール・ジャパン」「ツクールメモリア」どの作品も評価され、胸を張っていい結果を残せたと思っています。ですが「じゃあ今年もフォーラムで」と思ったか…と言われれば、答えはNoです。

2021年コラボ作品「ツクールメモリア」を完成させ、次はどんな企画をしようか…と考えを巡らせていたのですが、何となく、本当に何となくなのですが「空気が後ろ向き」なのを感じました。「こんなの面白そうじゃないですか?」と書けば「正直、参加率低そう」と返され、「何か新しいことやりたいですね」と書けば「何か付加価値がないと参加は厳しい気がする」と返され…。面と向かっては言えませんでしたが正直これが結構ショックでした。

夢見がちな自分に、いい加減現実を見ようよという気持ちがあったのか(実はそれ以前からそういう空気は感じ取っていました)。それが積もりに積もって上記のようなやり取りになったのかもしれません。そんな中でじゃあ次のコラボ作品はどうしようか、と考えた時、またツクールフォーラムで企画したとして「完成はできるだろうけど、いいものが作れるか?」と自問した時、正直自信はありませんでした。そういう事もあり、フォーラムでのコラボ企画はちょっと様子見しよう…となりました。

突き動かされた「圧倒的な熱量」

そんな中で、とあるブラウザRPG「バースセイバー」と出会いました。
https://versesaver.jp/web
2021年8月からサービス開始し、現在も好評継続中の本作は端的に言うと「自分のキャラを創造して活躍させることができるゲーム」。参加者さんは皆さん自分のキャラ「マイキャラ」を持っていて、それぞれが戦闘時・必殺技発動時・一般的な会話に至るまで、かなり細かく設定でき、キャラ同士まで含めて交流も非常に盛んなゲームです。ゲームをプレイしていて感じたのは、皆さんの自キャラ愛、そして活発な交流、そして何より創作に対しての「熱」でした。

そんな中でふと「皆様のマイキャラでRPGを作ったら面白そうですね」という話になり、すごく話が盛り上がりました。もちろん自分がツクラーであることは言っていませんでしたし、参加者さんにどれだけRPG制作経験があるかは未知数でした(後で結構な方がRPGツクール経験者であると知りましたが)。ただ、このバースセイバー内に漂う「圧倒的な熱量」を感じて「これなら行ける」「ここなら行ける」と思ったのも事実です。

バースセイバーには自分でBBSスレッドを立てる機能もあるので、まずは軽い気持ちで「皆様のマイキャラでRPG企画」としてスレッドを立ててみました。そうしたらなんと、立てた当日にいきなり参加募集が複数あり、あれよあれよという間に参加表明が増え、スレッド立て3日で12キャラ、1週間で20キャラ越え。「これは作るしかなくなったぞ」という気持になるとともに「この熱量ならすごいものが作れそうな気がする」と感じました。

結果として企画立ち上げ1週間でオープニング作成、翌週からは毎週更新で35週。ほぼノンストップで完成まで駆け抜けた訳ですが、それは参加して下さった方の圧倒的な熱量に後押ししていただいた、というのが大きいです。ゲーム制作においては技術・センス、共同制作に関してはコミュニケーション力など必要とされるものは多々ありますが、何より一番は、制作にかける熱量がどのくらいあるかどうか、という事なんだなと再確認させられました。

もしゲーム制作で迷ったら「ゲーム制作にかける『熱』はあるか?」を自問自答してもいいかもしれません。そして『熱』を奮い起こす何かを見つけることで、素晴らしい作品を残すことができるのかなと思うのです。

企画にあたって心がけたこと

ここからは本作「パーティー×ナイトmare」企画・制作にあたって心がけたことを書いていきます。これから共同企画を考えている方、またはゲーム制作で完成まで持っていきたいと考えている方の、少しでも参考になれたら嬉しいです。

大切な人様のキャラ、扱いには細心の注意を払う

参加者さんによって「マイキャラをどこまで自由にしていいか」は違います。自分の場合は大きく分けて

1.基本的にはどう動かしてもいい
2.ある程度自由に動かしてもいいけれど、登場場面や台詞には注意する
3.基本的に指定されたこと以上のことはしない

の3つで考えました。明確な線引きはしておらず曖昧な要素も多いのですが、そこはBBSでのやり取りや、マイキャラの各作者さんの扱いを見ながらの判断になります。このあたりは過去に何度もコラボ作品をやってきて、その辺りの「嗅覚」は鍛えられていたのが大きいです。

この「嗅覚」実際にやらないと身に付かないものだと思っているので「自分は他のキャラを変に扱ってしまいそう…」と恐れず、まずは色々なキャラや作者さんと交流する所から初めて見るといいかと思います。

ただし、どのタイプでも共通するのは「ちゃんとキャラと作者さんに敬意を払う事」自由に動かしていいというのは、蔑ろにしていいという意味ではありません。そのあたりの履き違えには細心の注意を払う事がポイント。そしてそれは十分に注意していればそんなに難しくありません。

とにかく「動いている所を見せる」

更新が滞っていると「この企画、大丈夫?」と不安になるもの。少なくとも自分はなります。ツクールに触れたことのある方ならゲーム制作の難しさ、時間のかかる様は分かるのですが、今回に関して言えば、参加者の皆さんはツクラーではありません(実は後からそれなりの方がツクールに触れたことがある事は分かったのですが)。なので、ゲーム制作は大変なので更新には時間がかかる、と言ったところで、極端な話「そんな事は知った事ではない」です。

そんな中で不安にさせない方法と言えばやはり「動いている所を見せる」。結果として週1更新を35週、一度も休まず続けました。途中、新型コロナで陽性になったり、仕事で忙しい時期があったり、実は更新が際どい週があったのは事実なのですが、皆さんを心配させてしまう方が自分自身が不安になってしまうので、多少頑張ってでも更新ペースは守り続けました。これに関しても、ある程度のルーティーンを設定すると上手く行きやすいです。それも「絶対ルーティーンを守らなきゃダメ」というものでもなく、大体でいい。あくまでも更新ペースの指針にするに留め、強○する・されるものではないようにすることがポイントです。無理してまで制作している姿を見せてしまうとそれも参加者さんを不安にさせてしまいます。

参考までに週1更新を続けていた時の週のルーティーンを載せておきます。

1.日曜夜:次の更新の追加キャラorイベント決定(基本1週間で4つ)。
2.月~水曜:イベント内容やマップを考える(通勤時間も活用)。
3.水~金曜:↑のアイデアを元にマップを制作、データベースもここで。
4.金~土曜:イベント作成開始。マップを繋げるなどの細々した作業もここ。
5.日曜夕方まで:↑から続けてイベント制作、終わったらテスト&公開。
以降、1に戻って繰り返し。

アイデアに関しては上記「バースセイバー」のゲーム内で各キャラに様々なセリフが設定されていて、しっかり各キャラが立っていた事、また参加者さんがアイデアをドンドン出して下さったのがすごく有難かったです。テストプレイも沢山していただき、バグも事前に潰すこともできました。感謝しております。

基本は明るく楽しく!

参加者同士の意見、またはゲームコンセプトとの折り合いを付けるポイントは避けられず、どうしても対立する場面は出てくるとは思います。でも「〇か×かではなく、△か□かの違い」であり、結果として意見が反映できないことになっても、その言った方まで否定してはいけない、と考えています。そして意見を違えることはあっても完成したらノーサイド。参加して良かった、ツクってよかったな…と思えるように心がけました。

こればかりは参加者さんの意見を聞かないと分からないですし、全てパーフェクトに良かったよ、と思われてはいないと思います。もしかしたらちょっと言わせてほしいこともあるかもしれない。でも「気持ちよく参加できること、そのための雰囲気づくりに細心の注意を払うこと」は常に心がけていた部分である、ということは分かってもらいたい所でもあります。

制作そのものが壮大な「遊び」

上記とも重なりますが、とにかく「遊び」の範疇は出ないことを心がけました。気張って真剣に創るのもいいですが個人的には、特に共同制作においてはギラギラ、バチバチ、ガツガツした雰囲気はあまりいい結果を産まないと思っています。

企画立ち上げから完成~公開、さらに言えばそれに対する反響まで含めて1本のゲームをプレイしているような感覚で、楽しく作らせていただきました。仲良しこよしで大いに結構。せっかくの「遊び」ですから。

そして「1本のゲームをプレイしているような感覚」で作らせて頂いた渾身の作品「パーティー×ナイトmare」現在も公開中です。そして公開後、ある種のエンディングともいえる素晴らしい出来事が起きた訳ですが…、これについてはまたいずれ語ることもあるでしょう。

まだ未プレイの方はぜひプレイしてみてください。そしてぜひ感想を!

ダウンロード版↓
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_10404.html

ブラウザ版↓
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm23359

最後に…

「これだけの人数、よくまとめましたね」と言われることがよくあります。その度にお答えしていることなのですが、自分の意識としては「まとめた」という気持ちはありません。むしろ「ごく自然にまとまった」というのが本音です。それだけ参加して下さった方が素晴らしかったおかげで、これだけの大作を完成させることができました。

本作「パーティー×ナイトmare」に参加して下さった皆様に心から感謝を申し上げて、この記事の〆にしたいと思います。

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