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らふすけっちいんく 2022年06月26日 15:00

【アフターストーリー】ベルセルク家の場合【姫と騎士】

原案・原作:香川俊宗(LAUGH SKETCH Inc.)
執筆:巽未頼


昔から誰よりも強くありたいと願っていた。誰よりも優しく、尊敬している姉を支えられる自分でありたいと願っていた。

願いはある意味叶い、一番大事なことは叶わなかった。

余は誰よりも強くなった。鍛えれば鍛えるほど強くなり、周りからは『天賦の才』と褒められた。家臣にまざって鍛錬し、誰よりも過酷な訓練に耐え抜き、背中で語りつづけた。そんな余に皆もついてきた。そして、誰にも負けなくなった。
一番大切な姉様にさえも。

昔の自分は姉様を一番支えられる存在になりたいと思っていた。どんな鍛錬も、辛い訓練も、終わった後に姉様が笑顔でほめてくれたり、一緒にお風呂に入れれば疲れも吹き飛んだ。
そんな関係を、強くなりすぎた自分自身が壊してしまった。

騎士を目指した強さは戦場で認められ、姉を支えるはずの武は自分を姫にした。姉様の背中を守り、矢面に立つはずだった強さは家を率いるために使われることになった。姉様を共に支えるはずだった仲間は家臣となった。
ベルセルク家の当主に任じられたあの日から、余の心の中の時計は止まったままでいる。

大公選に勝利した日も、お祭り騒ぎとなっていたここ数日間も、それは変わらない。
姉様……ティーナのために身につけた力は、誰よりも大切な人のために一度も役に立ったことがない。むしろ、余とティーナが共に歩む邪魔にしかなっていない。それでも、今の余にはティーナが褒めてくれたこの武の才を捨てるわけにはいかなかった。この『天賦の才』を全力で発揮し続けなければ、褒めてくれたティーナを裏切ることになる。

以前のように気軽に触れてくれないもどかしさと寂しさをぶつけるように、戦場に身を投じた。大公選も同じだった。目の前の競争相手を敵と思い、何も考えずにただただ自分の力をぶつけていった。
ただ、少しだけ違ったこともあった。大公選の行われている間は、ティーナともごく普通に話ができた。今まで悩んでいたティーナとの距離感とか、自分の全力をぶつける相手がいないことを気にしなくても良かったからだ。それほどまでに大公選で競い合った他の貴族は優秀で、ある意味充実した日々だった。あるいはこの日々がずっと続けば、余とティーナは何かを取り戻せたかもしれなかった。

だが、大公選は終わった。ティーナは騎士のまま、余は大公という1つ上の地位に上った。上りつめてしまった。お互いの地位は絶対に覆らない差となった。隣国の危機はあれど、少なくともあの時競い合った貴族家と協力できれば乗り越えることはできるだろう。だから、今の余にとって一番大きな問題はティーナとまた離れてしまった距離なのだ。

祝賀会の前日、余は夢を見た。子どもの頃の夢。一番幸せだった頃と、悪夢のような現実が始まった日。忘れることのできない日。

最初は姉様と一緒に何かをしたいだけだった。見よう見まねで稽古に参加をはじめ、お師匠様に叱られた。一緒に叱られると一緒に頭を下げながら、横目でお互いに小さく舌を出して笑ったり、稽古の合間に食べるお菓子をつまみ食いしたり。そんないたずらも一緒にした。どんな時間であっても一緒なら楽しかった。


悪夢は姉様に稽古で勝ってしまった日から始まった。魔法なしで、歳の差があるにも関わらず、『天賦の才』は余に勝利をもたらした。その日から、少しずつ同じ稽古をする日は減っていった。より過酷で、より強さを求める内容を1人か、大人と一緒に課せられた。

それからしばらくして、激闘の末、余はついにお師匠様に勝つことができた。膝小僧をすりむきながら、細かな切り傷まみれの足を小鹿のように震わせて、それでも余は勝利した。膝をついていたお師匠様の顔は見ていなかった。たまたま見ていた姉様の顔を見る余裕もなかった。
そして、次の日の朝、余は次期当主となった。頭の中が真っ白になる中、姉様の「おめでとうございます、セラフィーナ様」という言葉に、絶望したことを覚えている。
「待って!」と叫んで目が覚めた。寝汗ではりつく肌着に不快感を感じながら、上半身を起こした。立て膝が視界に入る。お師匠様に勝った時と違い、今日の祝賀会のためにケアされた膝。ぱっと見では傷は見当たらない。大公の衣装に合わない傷が見えないよう、この数日魔法で隠されているからだ。

「ねぇ、さま」

小さく呟いた。この膝には自分が刻んできた努力も、膝枕で本を読んでくれた姉様のような優しさも、何もない。

大公の宮殿に仕えるメイドの噂話で聞いた。余は『孤高の王』と民衆から称えられているという。何が孤高か。余は、共に歩みたかっただけなのに。

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