脚本『願いの果実』第1章「読み合わせ」その3
脚本『願いの果実』第1章「読み合わせ」その3
キャラクター 邦洋、良平、浩太、香南
照明がつく。
中央のイスに座る香南。
邦洋と良平がそわそわしている。
良平 好きな劇団とか……。
邦洋 良平、まだだ。まだ聞くな。
良平 え~だめか。
邦洋 浩太がジュース買ってもどってくるまでの辛抱だ。
良平 初の女子部員だぞ。時間が経つほど質問事項が山積していく。
邦洋 みんな同じだ。しかし、今おまえがした質問を戻ってきた浩太がしてみろ。香南さんにとって、2度同じ質問に答えることになる。
浩太 確かに。それは失礼だ。しかし……。
香南 あの。
2人 はい。
香南 わたしのこと、カナでいいです。
2人 はい。
良平 この情報はどうする?おれたちが抜け駆けしたみたいになるぞ。
邦洋 分かった。本人から要望があったことを、おれたちから浩太に言おう。
良平 オーライ。
浩太が戻ってくる。
浩太 ただいま~。ジュース買ってきたよ。カナから選んで。
邦洋・良平 おい!
浩太 え。
邦洋 知り得ないはずの情報を、なぜ知ってる?
浩太 何のこと。
良平 カナって呼び捨てしたことだ。
浩太 ああ、適当。
良平 適当!?
浩太 いいだろ、部員なんだし、フランクに呼び合えば。
邦洋 待て待て。まだ部員と決まったわけではない。
浩太 え。でも、部員になりたいってさっき。
邦洋 はっきりさせておく!
邦洋が声を張り上げる。
邦洋 今、カナは想像上の演劇部にいるのであって、われわれと同じ世界にいるわけではない!
香南が、ジュースをチューと飲む音。
浩太 邦洋、何を言ってる。
良平 おまえもジュースを飲め。
邦洋 説明させてくれ。
良平 いいからジュースを飲め。落ち着け。
香南 こういうことじゃないですか。わたしはこの部の内情を知らないのに、演劇部に入りたいと言った。つまり、わたしが入りたいのはわたしの描いている演劇部のイメージであって、そのイメージは、現実とはほど遠い可能性もある。
邦洋 いかにも。
浩太 ナイス、わかりみ。
香南 で、そのすり合わせをちゃんとしたいんですよね。
邦洋 まあ、お互いのためにも。
香南 ふうん。
香南、3人の顔をまじまじと見つめる。
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