「宇宙人が見える世界」~11月の短編ファンタジー
1
私は物心ついた時から、宇宙人が見えた。
灰色っぽい緑色で大きさは中学生くらいだったり、人間と似ている姿だけれど人間の1.5倍の背があったり、全身に毛がはえているものがいたりと、いろいろな宇宙人がいた。
自分にはあたりまえに見えていたから、みんなにも見えているのだと思っていた。
宇宙人はだいたい30人に1人くらいいて、そういうものだと思っていた。
けれど、みんなには普通の人間に見えているのだと幼稚園に入ってわかった。
幼稚園の年少さんの先生が、宇宙人だったのだ。
その宇宙人は、人間の1.5倍くらいの背だった。5歳の私には、ものすごく大きく見えた。
目は大きくまぶたがなく飛び出しぎみで、頭は烏帽子をかぶっているように長かった。
名前はゆり先生と言って、みんなに人気だった。
友達や母親は「ゆり先生、芸能人のAに似てきれい」と言っていて、私はとてもびっくりした。
Aにはまったく似ていなかったし、きれいとはとても思えなかった。
人気のゆり先生を絵に描く子は多かった。
私もゆり先生を描いた。
するときまって、みんなに笑われた。
「頭が伸びてる~」「ゆり先生だけ、でっかい」
確かにみんなの描くゆり先生は、頭が伸びていなかった。大きさも他の先生と同じくらいだった。
そして、着ている服が違った。
それは、年少さんレベルの絵でもはっきり違いがわかった。
私が描くゆり先生の服は、スキューバダイビングの人が着ているようなぴたっとした服だった。
みんなが描くゆり先生の服は、ピンクのエプロンをつけていた。
「みさちゃんの描くゆり先生、服もへ~ん」
確かに変だった。
どうしてこんなにみんなと違うんだろう。みんなには、こんな風に見えているんだろうか。
それでも5歳の子たちの描く絵はへたくそだったから、私は母親にゆり先生を描いてもらうことにした。
母親は絵がうまかった。
そして、母親が描いたゆり先生の絵を見て私は驚いたのだ。
「ぜんぜん、違う」
どうして?
私は母親に聞いた。
「ママには、ゆり先生、こういうふうに見えるの?」
「そうよ。美沙ちゃんにはどう見えるの?」
幼稚園で描いた絵を母親に見せた。
「あら、上手ねえ」
母親は、私がまだ5歳だからうまく描けないのだと思っていたのだ。
「ゆり先生は、ほんとに頭がこう長いんだよ。ママにはそう見えないの?」
「普通に見えるわよ」
「ゆり先生は、こういうぴたっとした服なんだよ」
「あら、いつもエプロンしているわよ」
「ゆり先生は、ママよりずっとずっと背がおっきいんだよ」
「そう? 同じくらいよ」
「ゆり先生の目はおっきくて、少し飛び出してるよね?」
「ぱっちりしてるけど、飛び出してはいないわよ」
母親は笑いながら言った。
私は確信した。みんなと私とでは、ゆり先生の姿が違って見えているのだと。
私はこれまで見た変わった姿をしている人たちを、その場で描いた。
「ママ、こういう人、見たことある?」
「あら、宇宙人かしら?」
「宇宙人?」
「そうよ。人間にはそんな人いないもの」
そうか、私は宇宙人を見ていたのだ、とその時わかった。
そして、幼稚園のみんなにも母親にも、どうしたわけだか人間の姿に見えているのだ、と。
次の日、幼稚園に行くと、私はすぐさまゆり先生のところに行き、聞いた。
「どうして、みんなにはその姿に見えないの?」
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